Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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今回から数話、カルデアの日常に入ります。
第4章は多分7月末になると思うのでそれまでに書きたいことをまとめたいです。


ナンバーズ72 母の企み

冬木市の大聖杯の戦いが終わり、カルデアに戻った直後、遊馬とマシュ、そして……桜と凛は鬼気迫る表情をしたオルガマリーが有無を言わせずに医務室へと強制的に連れ去られた。

 

遊馬とマシュは特異点が続き、戦いの連続だったので体に異常がないか徹底的に調べられた。

 

桜と凛は聖杯の力で英霊を呼び出し、その身に宿してその力を使用した……。

 

オルガマリーとロマニの調べにより、二人は人間からある存在へと変化していた。

 

「間違いないわ……この二人はデミ・サーヴァントになっている……」

 

それはマシュと同じデミ・サーヴァント……人間が英霊と憑依融合した半英霊の存在となっていた。

 

オルガマリーはまさか二人がデミ・サーヴァントになるとは思いもよらず、新たな悩みが増えてこめかみを押さえて溜息を吐く。

 

「はぁ……まさかこんな事になるなんて……あなた達、自ら選択したとは言えその体に宿る力はあまりにも危険過ぎます。今後、私の許可なく使用することを固く禁じます」

 

「「ええっ……?」」

 

「ええっ、じゃありません。もしも勝手にその力を使ったら、そうですね……その可愛らしいほっぺが赤く腫れるまで引っ張りましょうか?」

 

「「ヒィッ!?」」

 

桜と凛はにっこりと怖い笑みを浮かべるオルガマリーに恐れて遊馬の後ろに隠れてしまった。

 

「それが嫌なら、やめなさいね」

 

「「はい……」」

 

まるでお母さんが娘を躾けるようなセリフをオルガマリーは言い、二人はお仕置きを恐れてしゅんと落ち込んでしまった。

 

「……さて、話はこれくらいにして、食堂に向かいなさい。これからあなた達の歓迎会が始まるから」

 

オルガマリーは二人の頭を優しく撫でて出来るだけ笑顔を見せた。

 

そんなに怖い人じゃないと分かると二人は笑顔を返して頷き、遊馬達と一緒に医務室を後にした。

 

医務室にはオルガマリーとロマニ、そしてアストラルが残っていた。

 

アストラルは鋭い視線で二人を見つめて口を開く。

 

「二人共……」

 

「分かっているわ。凛さんと桜さん、二人のデータは人理の戦いが終わった後にすぐに抹消するわ。データはあくまであの二人の体に悪影響が出てないか、何かあった時の対策法を確認するためだけに使うわ」

 

デミ・サーヴァントはまだ謎が多い存在なのでマシュを含む三人が今後何が起きるかわからないので人理の戦いが終わるまでの期間限定でデータを取っていく。

 

「聖杯の力で英霊を呼び出してその身に宿す……しかも体に全く悪影響が出ていない……こんな奇跡のような力、魔術協会にバレたら大変なことになるね……」

 

「ますますこの世界の魔術世界に嫌悪感が出てきた……そんな奴らに二人の未来を奪わせたりはしない」

 

「大丈夫……私が必ずそんなことをさせない。私の、命に代えても……」

 

オルガマリーはまるで自らの使命のように命を賭して遊馬達の安全を確保しようとしていた。

 

それは一度死んだ身でZEXALの奇跡で蘇ったこの命を遊馬達のために捧げようという自己犠牲の表れでもあった。

 

「……オルガマリー所長。あなたの気持ちはとても嬉しい。だが、あなたに何かあれば私たちは悲しむ……自分を犠牲にすることだけはやめてくれ」

 

「アストラル……ええ、ありがとう。でも、私に出来ることをやるだけだから」

 

オルガマリーはそう言い残すと医務室を後にして別室へと移動する。

 

アストラルはオルガマリーの自己犠牲の精神状態を危惧し、共に行動することが多いロマニにメンタルケアをするよう頼み、遊馬の元へ戻った。

 

遊馬は桜と凛を迎えに来たメドゥーサとアタランテに預かって先に食堂へ行ってもらい、遊馬達は召喚ルームへ向かった。

 

遊馬は冬木市で手に入れた5枚のフェイトナンバーズ、そして夢の中で出会い何故か手の中にあった謎のフェイトナンバーズをサークルに置いた。

 

既に四度目となる英霊召喚に遊馬は慣れた様子でマシュから渡された聖晶石を砕いてばら撒き、英霊召喚システムから眩い光が輝く。

 

「やあ、小さなマスター君……これからよろしく頼むよ」

 

最初に召喚されたのはキリツグだった。

 

キリツグのフェイトナンバーズは闇の中でナイフを構えて駆ける姿が描かれており、真名は『FNo.65 正義の暗殺者 キリツグ』。

 

「新たなマスターよ……我が槍、あなた様に捧げます」

 

キリツグの次に召喚されたのはディルムッド。

 

ディルムッドのフェイトナンバーズは赤と黄の二つの槍を構える姿が描かれており、真名は『FNo.20 輝く貌 ディルムッド』。

 

「ガハハハハッ!征服王イスカンダル、降臨だ!!」

 

ディルムッドの次に召喚されたのはイスカンダル。

 

イスカンダルのフェイトナンバーズは数万の兵を引き連れ、戦車に乗っている姿が描かれており、名は『FNo.89 征服王 イスカンダル』。

 

「百貌のハサン……我ら影の群れ、あなた様に従います」

 

イスカンダルの次に召喚されたのは百貌のハサン。

 

百貌のハサンのフェイトナンバーズは数多の姿をしたハサン達が深い森の中で座り、立っている姿が描かれており、真名は『FNo.48 百貌のハサン』。

 

「いやっほー!最弱英雄アヴェンジャー、アンリマユ様のご登場だぜ!」

 

百貌のハサンの次に召喚されたのはアンリマユ。

 

アンリマユのフェイトナンバーズは深い闇の中で静かに歩いている姿が描かれており、真名は『FNo.96 この世全ての悪 アンリマユ』。

 

そして……。

 

「こんにちは、遊馬くん。私を呼んでくれるなんて……本当に奇跡ね」

 

アンリマユの次に召喚されたのは……和服姿の式だった。

 

「え?し、式……?」

 

「式さん……?」

 

「いや、違う……君は何者だ?」

 

「私はこのカルデアにいる両儀式とは同じであって異なる存在よ……」

 

「同じであって異なる存在?」

 

「ええ。私は彼女を認識できるけど、彼女は私を認識できないの。詳しいことはあまり話せないけどね」

 

「式には話さない方がいいか?」

 

「そうしてもらえると助かるわ。私は幽霊みたいなものだからね」

 

淡く微笑みながら式は自分の召喚の媒体となったフェイトナンバーズを拾って遊馬に渡す。

 

「これがあんたのフェイトナンバーズか……えっ!?」

 

「これは……!?」

 

遊馬とアストラルは式のフェイトナンバーズを見て驚愕した。

 

両儀式のフェイトナンバーズは真っ白な空間にある花畑の中で刀を構えている姿が描かれており、真名は『FNo.100 空の境界 両儀式』。

 

FNo.100と言う数字……それはナンバーズにとって重要な数字だった。

 

「え?え?ひゃ、100!?」

 

「君は本当に何者なんだ?式……いや、君のことはなんて呼べばいい?」

 

「私?そうね……式はもう既にいるし、名前が被るのも不便だから……『(から)』でいいわ」

 

「空?」

 

「では、空……改めて聞こう。君は何者なんだ?」

 

式……空はアストラルの質問に対し、無垢な笑みを浮かべ、フワリと柔らかく飛んで遊馬の背後に立って後ろから抱きしめた。

 

「空……?」

 

「私は式の幽霊、幻……虚ろのような存在よ。私を召喚してくれた遊馬君には感謝している。だから、これだけは言えるわ。私はあなた達を守るために戦う。何があっても裏切らない……」

 

空の優しく嬉しそうな声から遊馬は空が嘘をついてないと感じ取った。

 

「分かった。よろしく頼むぜ、空!」

 

「ええ。よろしくね」

 

「……あの、空さん。そろそろ遊馬君から離れてもらえませんか?」

 

マシュはいつまでも遊馬を後ろから抱きしめている空に対して顔を引きつらせながら言う。

 

「えー?嫌よ♪遊馬君、抱き心地が良いから」

 

まるで小悪魔のような笑みを浮かべ、遊馬を更にぎゅっと抱きしめる。

 

「い、良いから離れてください!」

 

「空、離れてくれないか?ちょっと苦しい……」

 

「仕方ないわね……分かったわ」

 

空は遊馬を解放すると、そこに二人の男女が召喚ルームに入ってきた。

 

「キリツグ〜!」

 

「王よ!!」

 

それはアイリとエルメロイII世だった。

 

アイリはキリツグを見つけると満面の笑みを浮かべて突撃するようにキリツグに抱きついた。

 

「キリツグ、お帰りなさい」

 

「アイリ……ああ、ただいま……」

 

アイリを受け止めたキリツグは泣きそうな笑みを浮かべながらアイリを優しく抱きしめた。

 

エルメロイII世はイスカンダルに近づくとその場で跪いた。

 

「ライダー……いや、イスカンダル王。お久しぶりです……」

 

「お前……坊主、いや、ウェイバーだな?」

 

イスカンダルはエルメロイII世が自分を召喚したかつてのマスター……ウェイバーだと気付いた。

 

「はっ……」

 

「ハッハッハ!いやはや、あんなひょっこな坊主がデカくなったな!」

 

「あれから十年近く、経ったから……」

 

するとエルメロイII世が震え出し、ポロポロと目から涙が溢れていた。

 

「またあなたに、会えて、本当に……」

 

エルメロイII世はイスカンダルと再会できて本当に嬉しかったのか、歓喜の涙を流していた。

 

「余もまたお前と会えて嬉しいぞ、友よ……」

 

イスカンダルもエルメロイII世に会えて嬉しく思い、エルメロイII世を立ち上がらせて肩を叩いた。

 

「宴の用意ができてます。あれから何が起きたのか話したい事がたくさんあります……」

 

「そうかそうか、それは楽しみだ!」

 

イスカンダルはエルメロイII世の肩を抱いて召喚ルームを出て、遊馬達もそれに続いて食堂へ向かった。

 

食堂に入ろうとするとそこには……。

 

「いらっしゃいませ。ようこそ、カルデア食堂へ……──あ」

 

「……セイバー、君は何をしている?」

 

メイド姿のアルトリアが出迎え、元マスターであるキリツグがツッコミを入れられずにいられなかった。

 

「おい、セイバー。お主……本当に騎士王か?」

 

「何故、騎士王がそんな給仕の真似を……?」

 

イスカンダルとディルムッドは目の前にいるアルトリアが本物なのかと疑ってしまう。

 

後ろに控えている百貌のハサン達も驚いて動揺している。

 

「ギャハハハ!伝説の騎士王様がメイドォ!?ひひひっ……く、苦しくて腹が……」

 

アンリマユはアルトリアのメイド姿に腹を抱えて大笑いをして床に転げていた。

 

「黙ってろ、最弱が」

 

「ゴパァ!?」

 

笑い転げるアンリマユにゴスロリメイドのオルタが現れ、拳骨を喰らわせて撃沈させ、ズルズルと食堂に引きずり込む。

 

初めて見るアルトリアのメイド姿に驚く中、一人だけ興奮していた。

 

「キャー!セイバー、可愛い!あなたがこんな可愛い服を着るなんて素敵だわ!」

 

「あ、ありがとうございます。アイリスフィール……」

 

アイリはアルトリアのメイド姿に興奮して喜んでいた。

 

「でもなんであなたがこの服を?」

 

「え、えっと……日本には働かざる者食うべからずと言う言葉があります。私はシロウのご飯をたくさん食べてしまうので、少しでもお手伝いが出来るようにこの格好で給仕をしています……」

 

「そうなの?うふふ、セイバーはシロウ君が大好きなのね」

 

「は、はい……」

 

真っ赤に顔を染めるアルトリアにキリツグはギロリと睨みつけるが、アルトリアとオルタは無視する。

 

「ははははっ!騎士王よ、あの時と違って張り詰めた空気が無くなってるな。何があったのか話を聞きたいな!」

 

「ええ、良いですよ。その話はまた今度で。今日はウェイバーとお話しください」

 

「おう!」

 

イスカンダルはエルメロイII世と共に食堂に入り、アルトリアは遊馬達を食堂の席に案内する。

 

それから、新たなサーヴァントの歓迎会と二つの特異点解決の祝勝会を兼ねた宴会が始まる。

 

人数も増えて来たので給仕の手もアルトリアとオルタだけでは回らなくなり、急遽新たなサーヴァント……イシュタルにも応援を要請した。

 

イシュタルにはアルトリアが着ているのとデザインが少し異なるメイド服を着てもらい、イシュタルは涙を流しながら文句を言った。

 

「何で私がこんなことを……」

 

文句を言いながらも颯爽とメイドの給仕仕事をこなす姿は見事だった。

 

ちなみにパールヴァティーは自ら率先してキッチンに立ち、エミヤと共に料理に励んだ。

 

大変な仕事だが、エミヤと一緒に料理ができてとても幸せそうな表情をしていた。

 

一方、カルデアでも珍しい夫婦が揃ったサーヴァントであるキリツグとアイリは……。

 

「美味しいわね、キリツグ」

 

「ああ……」

 

キリツグとアイリは生前と同じように夫婦仲良く食事を楽しんでいた。

 

エミヤを始めとする料理上手なサーヴァント達が作る料理は絶品で心が満たされていく。

 

「……キリツグ」

 

そこに何かの料理をトレーに乗せたセイバーがやって来た。

 

「セイバー?」

 

「シロウからあなたへの特別メニューです」

 

「士郎が?」

 

アルトリアがキリツグの前に出したのは熱々の鉄板に乗せられた美味しそうな熱々のハンバーグだった。

 

「ハンバーグ……!」

 

「これはハンブルク?」

 

「シロウ特製のハンバーグ……これはあなたの好物だったんですね……あなたがとても羨ましいですよ、キリツグ」

 

エミヤがキリツグに向ける想いの強さにアルトリアは少し嫉妬しながらその場を離れた。

 

キリツグはフォークとナイフでハンバーグを切り分けて口に入れた。

 

口の中に広がる美味さがキリツグの記憶を刺激した。

 

「あぁ……この味だ……懐かしく、そしてあの時よりも更に美味しさが増している……やっぱり士郎の料理は美味しいな……」

 

生前に何度も食べたエミヤの料理……その懐かしさに思わず涙が出そうになった。

 

「本当にシロウ君は料理が上手なのね……セイバーが惚れるのも頷けるわ」

 

「……残念だけど、僕はセイバーを認めないからね。あんな奴に士郎を渡すわけにはいかない。士郎のお嫁さんになるならそれ相応の人じゃないとね」

 

「もう、キリツグったら頑固なんだから……」

 

子煩悩なところがあるキリツグにセイバーを気に入っているアイリはどうしたらいいかと悩んだ。

 

「うーん、このままじゃダメよね……せっかくセイバーとシロウ君が仲が良さそうなのに……」

 

すると、アイリは直感的にあることを思いつき、ニヤリと小悪魔の笑みを浮かべるのだった。

 

「あ、そうだ……せっかくだから……」

 

アイリはある企みを思いつき、それを実行するためにマスターである遊馬の元へ向かった。

 

翌朝……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カルデアのオカンこと、エミヤシロウのお嫁さんになれるのか!?」

 

「本日、エミヤさんに燃える炎のように思い焦がれる乙女達が、己の全てを賭けてこの戦いに挑みますわ!!」

 

「「『第二次正妻戦争』……開幕です!」」

 

「何でさぁああああああああーーっ!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂にて急遽行われた第二次正妻戦争……その司会者であるエリザベートとマリーが堂々と宣言し、何故か巻き込まれて混乱しているエミヤの悲痛の叫びがカルデアに木霊した。

 

そして、アルトリアを始めとするエミヤの謎に満ちた生前からの強い繋がりを持つ女性関係が明るみに出るのだった。

 

 

 




次回、第二次正妻戦争(笑)
遂にシロウの恋愛ターンです!
アルトリア、オルタ、イシュタル、パールヴァティーの四人が結集したので始められます。
シロウの女性関係が白日の下に晒されます(笑)

『両儀式』の名前ですが、こんがらがるので空と言う名前にしました。
空の境界ですからこの名前が個人的にしっくり来ました。

ちなみに今回召喚されたイスカンダル達は第四次聖杯戦争と特異点の二つの記憶持ちにしていますのでご了承ください。

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