Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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お待たせしました!

第四特異点!死界魔霧都市ロンドン!

先日も話した通り、Fate/Apocryphaのキャラを少し出しますのでお楽しみに!


第四特異点 死界魔霧都市 ロンドン
ナンバーズ76 第四特異点へ!霧の都と親子の再会!?


冬木市の戦いから少しの日にちが経ったある日の夜……遊馬はまた夢を見ていた。

 

今度もまた不思議な世界の中での夢で星が輝くような夜空に光り輝く花畑が広がっていた。

 

「あれは……」

 

花畑の中に静かに佇む大きなモノがおり、遊馬はそれを見たことがあった。

 

「ファヴニール……?」

 

それは第一特異点でレティシアが召喚した漆黒の竜……邪竜・ファヴニールだった。

 

何故ファヴニールが花畑の中にいるのか疑問に思っているとそこに一人の女性が歩いていた。

 

「ジャンヌお姉ちゃん……?」

 

それは白いワンピース姿のジャンヌでファヴニールに嬉しそうに近づくと、ファヴニールは光に包まれて姿を変えると一人の少年となった。

 

ジャンヌと少年は嬉しそうに手を握り、ジャンヌは頬を染めながら少年にある言葉を伝えた。

 

『私はあなたに恋をしています』

 

それは紛れも無い告白の言葉だが遊馬はそれを置いておいて特に気になることを考える。

 

「なんでジャンヌお姉ちゃんとファヴニールが……?」

 

ファヴニールが少年になり何故ジャンヌと一緒にいるのか分からずキョトンとしていると風景が一変し、薄暗い不気味な世界となった。

 

「何だ……?」

 

遊馬は警戒し、周りを見渡すとそこには衝撃的な光景が広がった。

 

多くの幼き子供達が倒れており、遊馬はその子供達に駆け寄った。

 

「おい!お前ら!何だよこれ……」

 

子供達の一人を抱き上げるが、子供達は既に息を引き取っており、亡くなっていた。

 

「わたしたちは……生きたい……」

 

幼い声が聞こえ、振り向くとそこには顔に複数の傷跡が残る儚い雰囲気を出す少女が立っていた。

 

「お前は……?」

 

すると、少女は何も答えずに霧の中へと消えていった。

 

「ま、待て!」

 

遊馬は手を伸ばすがその少女の姿は完全に消えてしまった。

 

そして……。

 

グサッ!

 

「うぐっ!?」

 

気がつくと少女は目の前におり、遊馬の懐に潜り込んで歪な形をしたナイフを遊馬の腹に突き刺していた。

 

「ごめんね……」

 

少女は悲しそうな表情を浮かべていた。

 

そして、周囲が光に包まれて遊馬の夢が終わる。

 

「……うー、目覚めが悪い……」

 

連続して二つの夢を見て、少し頭が疲れた遊馬は頭を抱える。

 

腹に手を添えるが刺された様子がなく少しホッとするとそこに部屋に侵入していた空がコップに水を入れて持ってきた。

 

「おはよう、遊馬君」

 

「あー、おはよう……空。サンキュー」

 

もはや勝手に部屋にいることすらツッコムのも疲れてきたのでコップを受け取って水をグイッと一気飲みする。

 

「ぷはぁ……」

 

「ねえ、またあなた……夢を見ていたの?」

 

「うん。全く違う二つの夢をな……」

 

「……あまり夢に呑み込まれると良くないわよ?」

 

「そう言われても俺自身がどうこうできるもんじゃ無いからな。夢には何か意味があると思うし……」

 

「……深く考えない方が賢明よ。あなたは背負いすぎているから」

 

「背負うなんて、今に始まった事じゃねえよ。もう慣れっこだ。さてと、早く着替えて飯にするか!」

 

遊馬はジャージを脱いで私服に着替えて自室を出る。

 

その小さな背中に空は不安げに見つめた。

 

「本当に重い運命よね……」

 

空はそんな遊馬の背中を今は見ることしかできず、その場から静かに消えた。

 

 

食堂にてマシュ達と朝食を取っているとき、遊馬はジャンヌとレティシアを見かけた。

 

一緒に朝食を食べており、夢が気になったので思い切って二人に色々聞いてみることにした。

 

「おはよう。ジャンヌお姉ちゃん、レティシア」

 

「おはようございます、遊馬君」

 

「おはよー」

 

「早速で悪いんだけどさ、お姉ちゃんは昔、俺より少し年上の茶髪でアレキサンダー並みの美少年と会ったことがあるか?」

 

「……は?い、いえ……生前にはそのような子とは会ったことはありませんし、サーヴァントになってからは遊馬君達と一緒に戦った時の記憶しかありませんから、そのような子と会ったことはないと思います……」

 

「急にどうしたのよ?」

 

「実はさ、夢でジャンヌお姉ちゃんが綺麗な花畑でファヴニールと会ってたんだよ」

 

「ファヴニールと?」

 

「しかもファヴニールがアレキサンダー並みだけど儚い感じの美少年になってさ、ジャンヌお姉ちゃんと嬉しそうに手を取り合っていたんだよ」

 

「……おい、ショタコン聖女。あんた何してるのよ?」

 

ジャンヌのショタコン疑惑が深まり、ギロリと鋭い眼差しで睨みつけるレティシア。

 

身に覚えのない容疑にジャンヌは必死に弁明する。

 

「誰がショタコンですか!?そんな男の子なんて知りませんから!私にとって親しい男の子は遊馬君ぐらいしかいませんから!」

 

「じゃあその遊馬が見たって言う美少年は何者よ!?さあ、ジャンヌ・ダルクよ!正直に自白しなさい、それで罪は軽くなるわ!」

 

「だから知りませんから!?」

 

「そう言えばさ、レティシアが竜の魔女って呼ばれた時にファヴニールを召喚してたよな?何でファヴニールだったんだ?」

 

ファヴニールは元々北欧神話に登場するドラゴンであり、それをジークフリートが討ち倒した伝説がある。

 

しかし、何故ジャンヌの憎しみの存在としてジルが望み、聖杯で生み出されたレティシア……ジャンヌ・オルタがファヴニールを召喚出来たのか?

 

遊馬はそこに疑問を抱いた。

 

「……何でかしら?」

 

レティシアは腕を組んで首を傾げる。

 

あの時は何となく復讐心に任せてされるがままのようにやっていたので疑問に思わなかったが、今更になりながら何故自分がファヴニールを召喚出来たのか疑問に思い始めてきた。

 

「別にファヴニールじゃなくても有名なドラゴンなんて世界中に沢山いるわよね……何でファヴニールだったのかしら?」

 

「オルレアンの聖女、ジャンヌ・ダルクと北欧神話の財宝を守る邪竜、ファヴニール……接点が無くね?」

 

「ありませんね」

 

「無いわね」

 

ジャンヌとファヴニール……時代や国や種族が異なる二つの存在が繋がったのか分からず悩んでいると、ジャンヌはあることを思いつく。

 

「もしかしたら……私やレティシアとは違う……『別のジャンヌ・ダルク』がファヴニールと接点があるのかもしれません」

 

「別のジャンヌ?」

 

「そう言えば、騎士王様も同じだけど異なる存在のオルタがいたわね……そう考えるなら、その別のジャンヌ・ダルクがファヴニールの少年?みたいな子と、どういう経緯か分からないけど、親しい関係になった。後に特異点で復讐のジャンヌとして生まれた私がドラゴンを召喚した際にその縁からファヴニールを呼び出せた……って事かしらね?」

 

まだ推測の話だが英霊……サーヴァントと言う不可思議な存在が未知なる可能性を秘めていることを改めて考えさせられた。

 

するとそこに急ぎ足で食堂にオルガマリーが入ってきた。

 

「遊馬、マシュ!新たな特異点が見つかったわ」

 

新たな特異点……フランス、ローマ、地中海に続く第四特異点の発見に遊馬達の緊張感が高まる。

 

「来たか……」

 

「分かりました、すぐに準備して管制室に向かいます」

 

「お願いね」

 

遊馬とマシュは急いで食事を終えるとそれぞれの自室に戻って特異点に向かう準備を整える。

 

「アストラル!」

 

遊馬が準備を終えて皇の鍵の中にいるアストラルに向けて呼びかけると、中から話を聞いていたアストラルが現れる。

 

「話は聞こえていた。遊馬、気を引き締めていこう!」

 

「おう!ところで、ミストラルはどうした?」

 

「……彼は最近とても大人しい。ぶつぶつと自問自答をして悩んでいたよ」

 

「そっか。まあ、あいつが考えて悩むようになったのは良いことだと思うぜ」

 

「そうだな……よし、行こう」

 

「おう!」

 

遊馬はアストラルと共に急いで管制室に向かった。

 

管制室にはマシュ達が集まっており、遊馬とアストラルが到着してようやくオルガマリーの口から話が始まる。

 

「さて、今回で四つ目の特異点ですが、いずれかの時代に黒幕が潜んでいる可能性は高いわ。気をつけてね」

 

「おう!」

 

「分かった」

 

「はい!」

 

「今回のオーダー、第四特異点は19世紀。七つの中では最も現代に近い特異点よ。何故ならその時代は文明の発展と隆盛、人類にとって大きな飛躍を遂げる事になる」

 

「19世紀……産業革命か?」

 

「その通りよ、アストラル。産業革命によって、人類史は現代への足がかりを得たのだから」

 

「産業革命っていうと……あ、ロンドンか」

 

遊馬はカルデアでの勉強の成果が出ており、産業革命の発端とも言える都市、ロンドンを答え当てた。

 

「正解よ、珍しい事に第四特異点は首都ロンドンに特定されているの。そして、今回の護衛サーヴァントですが、クジではなく私が指名させてもらいます」

 

「所長が?」

 

「ええ。今回の特異点は珍しい事に具体的な場所が指定されているの……そこでロンドンで特に所縁のあるサーヴァントを護衛に着かせる事にしたわ」

 

「あ、そうか。確かサーヴァントって知名度補正ってのがあるんだっけ?」

 

サーヴァントには召喚された地域においてその英霊が非常に有名だった場合、それだけで信仰心を集める事になり、より強い実力を発揮する。

 

「その通りよ。現在カルデアでロンドンにおいて最も知名度補正を受けられる二人を護衛に就かせるわ。頼むわよ、アルトリア。ブーディカ」

 

ロンドンにて特に有名な王と女王が前に出る。

 

「私たちにお任せください、マスター」

 

「カルデアきっての英国サーヴァントにお任せあれだよ」

 

アルトリアとブーディカの登場にアストラルは納得するように頷いた。

 

「なるほど、円卓の騎士王のアルトリアと勝利の女王のブーディカか……これほどロンドンの特異点に相応しいサーヴァントは中々いないだろう」

 

「頼りにしてるぜ、二人共!」

 

遊馬が二人とハイタッチをし、特異点に向けて気合い十分の中……。

 

「ぬぉおおおおおっ!?いかんぞ、ブーディカとユウマを一緒に行くことは許さないぞ!余も、余も連れて行くのだ!」

 

ネロは珍しく焦りの様子を見せながら自分も連れて行けと言い出した。

 

オガワハイムの一件以来、ブーディカは遊馬に対しての愛情が強くなっていき、ネロにとって未来の夫がブーディカに奪われるのではないかと危惧していた。

 

「はぁ……ネロ。あなたはお呼びじゃありません。ちびノブ、連れて行きなさい」

 

「「「ノッブノブ!」」」

 

オルガマリーに命令されて敬礼をしたちびノブ達は人海戦術でネロを囲んで胴上げするように持ち上げて管制室から運びだす

 

「ぬぉっ!?は、離せ!離すのだ!!」

 

身動きが取れずに連れ出されるネロに対し、ブーディカはみんなに見られないようにしながら悪戯っ子のように可愛らしいあっかんべーを送った。

 

「っ!?お、おのれ、おのれ!ブーディカァアアアアアッ!!?」

 

遊馬と合法的に一緒に居られる特異点の戦いで不謹慎だがとても嬉しく思うブーディカは宿敵であるが徐々に距離が縮まっているネロに対してわざと優越感を出すために珍しく挑発するのだった。

 

そしてネロは管制室から強制的に連れ出され、叫び声が聞こえなくなるとオルガマリーは話を再開する。

 

「こほん。今までとは違い都市部での戦闘になるので気をつけて行動してください」

 

「いいなあ、ロンドン。霧の都。可能なら、ボクも行ってみたかったなあ。シャーロック・ホームズに会ったらサインとか」

 

ロマンはロンドンから生まれた世界一有名な名探偵、シャーロック・ホームズに是非とも会いたいと思ったが、すぐにマシュが訂正する。

 

「ドクター、旅行ではありません。それと、シャーロック・ホームズは架空の人物です。恐らくですが、サインは難しいでしょう。残念ではありますが諦めて下さい」

 

「マシュ、諦めることはないんじゃねえのか?」

 

実はシャーロック・ホームズのファンであるマシュの言葉に遊馬は諦めることはないと反論する。

 

「え?」

 

「だってさ、歴史上にいる人物ならともかく、俺たちにとって神話や物語の登場人物の多くがこのカルデアにいるじゃん」

 

歴史上に実在した英霊の他に遊馬達にとっては空想の神話や物語の登場人物が数多くいる。

 

「可能性が低いかもしれないけど、シャーロック・ホームズがいるかもしれないじゃん。俺も会いたいぜ、世界一の名探偵!」

 

摩訶不思議な存在であるサーヴァント……もしかしたらシャーロック・ホームズが英霊として存在している可能性があるかもしれない。

 

そう考えるだけで自然とワクワクしてくる。

 

「そうですね……私も是非会ってみたいです!」

 

「おう!会ったら必ずサインを貰おうぜ!」

 

「はい!」

 

「あ、ボクの分もお願いね!」

 

シャーロック・ホームズの話で盛り上がる遊馬達にこめかみを抑えたオルガマリーはため息を吐く。

 

「はぁ……あなた達、話は終わりにしてもらえるかしら?」

 

「「「すいません……」」」

 

「では、これより第四特異点のオーダーを開始します。遊馬、マシュ、アストラル、アルトリア、ブーディカ、準備はいいわね?」

 

「もちろんだぜ!」

 

「いつでも行けます!」

 

「次の特異点も必ず攻略する」

 

「行きましょう、ブーディカ女王」

 

「うん、お姉さんに任せてね!」

 

遊馬はマシュ、アルトリア、ブーディカをフェイトナンバーズに入れてデッキケースにしまい、アストラルは皇の鍵の中に入る。

 

「フォウフォウ!」

 

「フォウも頑張ろうぜ!」

 

フォウは遊馬の上着のフードの中に入り、遊馬は意気揚々とコフィンの中に入る。

 

コフィンの中に入った遊馬は目を閉じると体が粒子となり、第四特異点……19世紀ロンドンに向けてレイシフトする。

 

 

第四特異点の19世紀ロンドンにレイシフトが成功した遊馬はデッキケースからマシュ達を出す。

 

「これは……視界が阻害されるほどの霧ですね」

 

「霧と言うよりも煙のような感じですね」

 

「何これ……周りが全く見えないよ……」

 

ロンドンの周囲の建物は辛うじて見えるが、街は霧に覆われてほとんど周りが見えない状態だった。

 

「うわぁ、すげぇ霧……流石は霧の都だな」

 

「遊馬……この霧は吸わない方がいい。これはロンドンスモッグだ」

 

「ロンドンスモッグ?」

 

「19世紀のロンドンで発生した公害の一つだ。産業革命と石炭燃料の利用により、石炭を燃やした後の煙やすすが霧に混じって地表に滞留し、スモッグと呼ばれる現象を起こして呼吸器疾患など多くの健康被害を出していた……結果、1万人以上が死亡した、史上最悪規模の大気汚染による公害事件となった」

 

霧の都と言われているロンドンだが、その背景には暗黒の時代が存在していた。

 

遊馬は思わず口元を抑えるがそれでは意味がない。

 

「ま、マジかよ……でも俺マスクを持ってねえよ」

 

「……仕方ない。遊馬、これを」

 

アストラルは自身の体からカードを一枚取り出して遊馬の懐に入れた。

 

遊馬の胸元に『49』の刻印が浮かび、呼吸がとても楽になった。

 

「癒しのナンバーズ、『No.49 秘鳥フォーチュンチュン』の力で遊馬に悪影響を与える霧を無効化させた」

 

「サンキュー、アストラル!」

 

「文明が発達したのはいいけど、こんなにも汚れているなんてとても複雑ね……」

 

ブーディカは自分が生きていた時代よりも何百年、何千年も経過しているので国が大きく変化しているのは理解出来るが、19世紀のロンドンがここまで酷く汚れているのは納得出来なかった。

 

「ブーディカ、19世紀のロンドンは確かに酷いが、後の時代で公害を無くそうと、自然を取り戻そうと多くの人々が行動を起こしている」

 

「そうだ!ブーディカ、戦いが終わって俺たちの世界に来たらロンドンに連れてってやるぜ!」

 

「ユウマの世界のロンドンに……?」

 

「ああ!前からサーヴァントのみんなと一緒に俺たちの世界に連れて行った時に世界一周旅行を考えているからさ!」

 

「……ありがとう、楽しみにしているよ」

 

ブーディカは遊馬の粋な計らいに感謝をして頭を撫でる。

 

アストラルは周囲を見渡し、霧を凝視する。

 

「……これは!?」

 

その霧はロンドンスモッグとは異なるものだと気付き、その直後にカルデアから連絡が来た。

 

計測によるとこの霧はただの霧ではなく、異常な魔力反応を示していた。

 

どうやら大気の組成そのものに魔力が結びついており、吸い込めば生体に対して有害な影響を与えるものである。

 

遊馬は先程アストラルから『No.49 秘鳥フォーチュンチュン』のカードを受け取り、その恩恵で霧を中和しており、マシュ達は対魔力のスキルと遊馬と契約した際にアストラルから流れるナンバーズのエネルギーで霧を防いでいる。

 

恐らくこの霧でロンドン市民の多くが犠牲になり、建物は全て閉められており、建物内から生体反応があることから生き延びた市民が避難していることは間違いなかった。

 

一刻も早くこの霧を判明しなければならないと遊馬達が行動を起こしたその時だった。

 

「遊馬、サーヴァントの気配だ!」

 

アストラルがサーヴァントの気配を察知し、遊馬達は瞬時に戦闘態勢を取る。

 

コツコツ……と、地面をゆっくり歩いて来て霧の中からその姿が見えて来る。

 

その姿に遊馬達は……特にアルトリアは目を疑う。

 

「あなたは……!?」

 

そして、近づいて来たその者もアルトリアを見て目を疑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父上……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルトリアを父上と呼ぶその者──それはアルトリアと瓜二つの顔をした赤いラインが刻まれた鎧を纏った騎士だった。

 

「えっ!?アルトリアにそっくり!?」

 

「父上……まさか、あのサーヴァントは!?」

 

「も、もしかして……」

 

「なるほどね、そう言うことか……!」

 

遊馬達はそのサーヴァントの正体がすぐに分かり、互いに睨み合う二人にこれからどうなるのかと緊張していると、先に前に出たのはアルトリアだった。

 

アルトリアは約束された勝利の剣を取り出すとその切っ先をサーヴァントに向ける。

 

「っ!父上!?」

 

「あなたに問います、モードレッド」

 

「えっ?」

 

アルトリアには殺気が一切なく、そのサーヴァント──モードレッドに問いかける。

 

モードレッド。

 

円卓の騎士の一人であり、アルトリア……アーサー王の息子。

 

アーサー王物語の伝説に終止符を打った『叛逆の騎士』である。

 

「あなたはこの世界に召喚された。それはこの世界を救うためですか?それとも、滅ぼすためですか?答えなさい、モードレッド」

 

「オ、オレは……」

 

モードレッドは緊張しているのか体が少し震えながらアルトリアを見ていた。

 

上手く答えることはできない、なんて答えればいいのか分からずにいた。

 

「……父上、質問を質問で返して悪いけど、一つだけ教えてくれ。父上は何でここにいる……?」

 

質問を質問で返すのは無粋だが、モードレッドはどうしてもアルトリアが何故ここにいるのか、何のためにここにいるのかを聞きたかった。

 

それを聞き、アルトリアは静かに答える。

 

「私は……私たちは、人類と世界の未来を救う為にここにいます。モードレッド、あなたの正直な心で問いに答えなさい」

 

アルトリアの言葉を聞きモードレッドは自分の正直な心で答えを出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレは……オレ以外の奴がブリテンの地を汚すのは許さねえ。父上の愛したブリテンの大地を穢していいのは、このオレだけだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさかの予想外の歪んだ答えに遊馬達だけでなくアルトリアも絶句した。

 

どうしてそんな歪んだ答えを出すのか……とこの場にいるモードレッド以外の全てが同時に思った。

 

そして、アルトリアは呆れ果てながら約束された勝利の剣をしまい、モードレッドの発言に頭痛がする頭を抑えながら呟く。

 

「全く……いつか絶対にあの馬鹿姉をこの手でシメなければ。あと、この馬鹿息子は徹底的に教育しなければいけませんね。叛逆精神を叩き直さないと、また刺されそうですから……」

 

アルトリアは内心大きなため息をつきながら少し疲れた表情を見せながらモードレッドに再び話しかける。

 

「モードレッド……この地を守る為に戦う気があるなら、一緒に行きますか?」

 

「えっ!?い、良いのか!?父上!?」

 

モードレッドは目をキラキラと輝かせながらアルトリアに近づく。

 

「良いですよ……ただし、叛逆したら許しませんからね」

 

「おう!オレに任せておけ、父上!!ハッハッハッハ!」

 

堂々と胸を張り、自信満々に答えるモードレッドにアルトリアはまだ戦闘をしてないのにどっと疲れが体に襲いかかる。

 

「子供って難しいです……」

 

モードレッドの登場により生前では体験したことのないアルトリアの親(?)としての苦悩が始まるのだった。

 

 

一方、霧に覆われたロンドンの地で二つの影が地を駆けていた。

 

「こちらに複数のサーヴァントの気配を感じます」

 

「俺たちの敵じゃなければ良いが……」

 

「そうですね……この異常事態は私達だけでは対処出来ません。共に戦える同志がいれば良いのですが……」

 

その二つの影は一組の男女でその美しき容貌から美男美女と言っても過言ではない二人だった。

 

二人は走りながら互いの思いを打ち明けていく。

 

「……今度こそ、君を失わせない。何があっても」

 

「私もです……共に戦い、最後まで共に生き残りましょう」

 

二人が互いを思いやるその気持ちは鋼のようにとても強く、二人の間には深い絆で結ばれていた。

 

そして、二人はまっすぐこのロンドンを救う存在となる光──遊馬の元へと向かっていた。

 

 

 




開始早々、アルトリアとモードレッドの再会です。
歩み寄ろうとした矢先にモードレッドの歪んだ発言にアルトリアも頭を悩ませます。
子育てって難しいですからね……。

そして、ラストに登場した二人はもう皆さんお分かりですよね?
あのカップリングはフェイトシリーズでも好きなので出しました。

あ、一応言っておきますが、カルデアにいる彼女は妹と二人でのんびりお茶をしてますのでご安心を。

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