さあ、皆さんお待ちかねの遊馬先生の救済入ります!
え?誰にですって?
もちろん決まってます、彼女にです!
彼?知りませんね〜(笑)
騎士王・アーサー王に勝利した遊馬とアストラル、マシュとキャスター。
そして、騎士王に最後の一撃を与えたホープレイは大剣と双剣をしまい、腕を組んで威風堂々と立っていた。
すると、オルガマリーは目の前の激闘を見て興奮気味になりながら遊馬達に駆け寄る。
「マシュ、遊馬!大丈夫!?」
「はい、所長」
「へへっ!問題ないぜ!」
「良かった。それより、マシュが出したあの盾とその姿は一体……」
「あの盾はお嬢ちゃんの宝具だぜ」
「そして、この力は遊馬君と私の絆の力です」
フェイトナンバーズ、英霊に遊馬とアストラルの力が混じって誕生した新たな存在。
そして、令呪の力でその力の一端を解き放つことができた十字架の盾。
「新たなサーヴァントの力って事ね……マシュ、盾の宝具の名前、分かる?」
「残念ながら、力及ばず……私に力を託してくれた英雄の事は分からなくて」
「そう、宝具の名前も真名も分からないとなると……よし、それじゃあ私が名前をつけてあげるわ!貴女にとって意味があるカルデアの名前を取って、『
「ロード・カルデアス……!」
「おおっ!すっげぇかっこいいじゃん!所長、ネーミングセンスバッチリじゃん!」
「少なくとも遊馬よりは断然あるな」
「なっ!?う、うるせぇよアストラル!俺だってネーミングセンスぐらい……」
「私が知る限り、君のネーミングセンスはかなり絶望的だと思うが?何なら今までの酷いものを一つずつ……」
「お、お前っ!?」
常に遊馬と行動していたアストラルだからそこ知る遊馬のネーミングセンスの酷さを暴露しようとし、周りが面白くて笑みを浮かべているとキャスターはキョロキョロと周りを見渡す。
「さて、と。無事にセイバーを倒したのはいいとして、お前さん方の言う特異点ってのはどれだい?」
キャスターが注意深く見渡すが、ここにあるのは不気味な大聖杯だけで、特異点と思われるモノは見当たらない。
「見事だ……少年」
その声に遊馬達は一点に目を向ける。
そこには立ち上がったセイバーの姿があった。
「私と同じ王の聖剣の名を持つ戦士に、希望の名を持つ皇……なるほど、どうやら少年も人の上に立つ『王』のようだな……」
ホープレイの攻撃を受けて鎧はおろか、体はボロボロになっており、するとセイバーの体は少しずつ金色の光となって消えつつある。
「あっ、あれ見て!」
オルガマリーがセイバーの傍らを指差す。
セイバーのすぐ近くに輝きを放つ金色の水晶体が落ちている。
「もしかしたら、特異点かも……!」
セイバーは暗い大空洞の天井を見つめ続けながら遊馬たちに向けて言葉を紡ぐ。
「少年たちよ……これはまだ始まりにしか過ぎない」
「始まり……?」
「人理修正、『
「グランド、オーダー……!?」
その言葉を最後にし、セイバーは足元から金色の粒子となり、消滅するとまたしてもモンスターエクシーズのカードが残った。
アストラルが手を伸ばすと、そのモンスターエクシーズのカードが宙に浮かび上がらせ、そのまま遊馬の元に引寄せてキャッチさせる。
相変わらず白紙のカードを遊馬はデッキケースにしまうとキャスターの体が光となり始める。
「キャスター!?」
「チィッ!ここで強制送還かよ、マスター!次一緒に戦う時はランサーで呼び出してくれよ?」
「また、会えるか?」
「おうよ、お前さんの運が良ければな。じゃあな!!」
「ああ!また一緒に戦おうぜ!!」
キャスターは拳を突き出し、遊馬は頷いて再会を誓い合うと自分も拳を突き出して拳同士をぶつけ、楽しそうに笑みを浮かべたキャスターも消滅する。
「キャスター……」
キャスターの消滅を見届ける余韻に浸る間も無く、突然大空洞に拍手の音が響く。
ゆっくりと、あざ笑うかの様な調子のその音は大聖杯から聞こえた。
「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。偶然迷い込んだ子供だと思って放っておいた私の失態だよ。まさか君みたいな小さな子供が謎の召喚獣を操り、セイバーを討つとは」
大聖杯に立ち、その男は微笑んでいた。
人間とは思えない不気味な嘲笑を浮かべたその男の顔を、遊馬は見た事がある。
カルデアに訪れ、そしてマシュと話していたところに現れ、技師の一人だと名乗っていた紳士のような男……。
「レフ、さん?」
レフ・ライノールだった。
『レフ!?レフ教授だって!?彼がそこにいるのかい!?』
腕輪からロマニの声が響くと、レフはその声を聞いて不気味な笑みを更に深めた。
「うん?その声はロマニ君かな?君も生き残ってしまったのか。すぐに管制室に来てくれと言ったのに、私の指示を聞かなかったんだね、まったく。どいつもこいつも統率の取れてないクズばかりで吐き気が止まらないな。人間というものはどうしてこう、定められた運命からズレたがるんだい?」
とても初めて会った時のレフとは思えないほどその口調は冷たく、まるで遊馬達を人とも認めていないかの様だ。
困惑する遊馬たちだが、一人だけレフの出現に歓喜の表情を浮かべる人間がいた。
「レフ……ああ、レフ、生きていたのね、レフ!」
「やあ、オルガ。元気そうで何よりだよ」
「ああ、ああ!レフー!」
レフへと駆け寄ろうとしていくオルガマリー。
彼女だけがレフの変貌に気付いていない様だった。
「ダメだ所長、そいつに近づくな!」
遊馬はオルガマリーの手を握ってそのまま後ろに下がらせる。
「ゆ、遊馬!?何を……」
「遊馬の言う通りだ、オルガマリー!その男は人間ではない!邪悪なる存在だ!」
遊馬とアストラルはレフから感じる邪悪な気配に目を鋭くする。
「ほう、私の気配に気づくとは。しかし、変だね……オルガよ、爆弾は君の足元に設置して君は木っ端微塵になる予定だったのに。どうして生きているのかな?」
本当に分からない、どうしてだろう、とレフは考え込む人の様に軽々と恐るべき事実を言い放った。
レフ以外のその場にいた全員が絶句した。
「何だと……!?」
「な、何、言ってるのレフ?あの、それ、どういう意味?」
「いや。生きているとは違うな。君はもう死んでいる。肉体はとっくにね。肉体という枷に縛られ、マスターとしての適性がなかった君は残留思念だけとなってようやくレイシフト出来たという事か」
「な、え……?」
「君は死んだことで初めて、あれほど切望した適性を手に入れたんだ。だからカルデアにも戻れない、だってカルデアに戻った時点で、君のその意識は消滅するんだから」
「そんな……」
キャスターもオルガマリーにはマスター適性がないと言っており、本来ならレイシフトも出来ないはずなのだ。
抗えない現実にオルガマリーは言葉を失う。
「レフ……てめえがカルデアを爆破した元凶なのか!!」
遊馬は強い怒りを抱いてレフを睨みつけた。
「その通りだ、最後にカルデアの状況を見せてやろう」
全員が動揺している隙を突き、レフが水晶体を魔術を用いたのか引き寄せて手中に収めた。
そして、 空間を歪めて空中に赤く輝く球体……カルデアスを出現させた。
「な、何よあれ。カルデアスが、真っ赤になってる!?」
「本物だよ、聖杯があれば時空を繋げることができる。そしてこれこそ人理が焼却した証だ!」
『焼却だって!?』
ロマニの驚愕の声に頷いたレフ。
微かに恍惚の表情が浮かぶその顔は、既に初めて会った時の原型を留めてはおらず、もはや歪な怪物そのものだった。
「カルデアが無事なのはカルデアスの磁場で守られていたからだが、カルデアの外はこの冬木と同じ末路になっているだろう」
『外部と通信がとれないのは故障ではなく、受け取る相手が既に存在していないからか……!』
「ふん、やはり貴様は賢しいな。オルガよりも君を優先して殺すべきだったよ。まぁ、まずは死に損ないから」
レフが指をオルガマリーへと向けた途端、その体がふわりと宙に浮いた。
「どうせカルデアに戻ったら君は消滅するんだ。それなら、君の宝物に触れさせてあげようじゃないか」
「や、やめてよ!だって、カルデアスよ!?」
「そうだとも。ブラックホール、いや太陽かな。何にせよ、触れるモノは全て分子レベルで分解される。君もそうなるって訳さ」
オルガマリーはカルデアスに取り込まれてしまい、その精神が崩壊しかける。
大切だと思っていた人に殺され、そしてカルデアスに取り込まれて消滅する。
絶望に叩き落とされるオルガマリーに一筋の光が差し込んだ。
「かっとビングだ!俺ぇっ!!」
「遊馬!?」
「遊馬君!?」
遊馬はカルデアスに取り込まれたオルガマリーを救うために自らもカルデアスの中に飛び込んでその手を掴んだ。
「うくっ、遊馬……!?」
「ぐああああぁっ!?くっ、しっかりしろ、所長!!」
カルデアスの内部は灼熱の炎の如く熱が帯びており、遊馬とオルガマリーは体に激痛が走る。
「あ、あなた、何をしてるの!?」
「決まってるだろ!あんたを助ける!」
「ほう、カルデアスの中に勇敢……いや、無謀にも飛び込むとは……しかし、いつまで続けるんだい?そのままだと君もオルガと共にカルデアスに呑み込まれてしまうぞ?ふふふ……」
レフの嘲笑を受けながらも、遊馬は決してオルガマリーの手を離そうとはしなかった。
余りにも愚かな行為を面白おかしく見ていたレフだが背後に忍び寄る影に気づいていなかった。
「よそ見をするとは油断大敵だぞ。やれ、ホープレイ!」
「何!?」
嘲笑していたレフの背後に冷静なアストラルの指示でホープレイがアサシンの如く気配を消して忍び寄り、双剣と大剣を振りかざしていた。
「ホープ剣・カオス・スラッシュ!!」
「くっ!?」
レフはとっさに右手を前に突き出して魔術で障壁を作り出すが、ホープレイの強烈な三連続の剣撃の前にあっさりと障壁は破壊され、そのまま右腕を容赦なくぶった切られた。
「ぐぎゃあああああああっ!?」
右腕が細切れとなって吹き飛び、肩から大量の血が流れて思わぬ激痛に顔が歪み、絶叫するレフ。
その際に左手に持っていた結晶を手放してしまい、ホープレイはその結晶を手にしてアストラルの元に戻る。
「ぐっ!しまった!」
「貴様の目的のモノはこれのようだな。これは私が回収させてもらう」
アストラルはホープレイから結晶を回収すると宙に浮いてカルデアスに向かって飛んだ。
遊馬はオルガマリーの手を強く握り、カルデアスに取り込まれないようにしていた。
「諦めるな!俺はまだ所長と一緒にいたいんだ!俺には、俺たちには所長が必要なんだ!」
「私なんかに構わないで!遊馬、あなたはカルデアの最後のマスター、人類の最後の希望なのよ!私なんかの為に、命を捨てないで!!」
オルガマリーは最後の希望である遊馬を何としてでもカルデアスから脱出させようと魔力を放出しようとしたが……。
「オルガマリー!!」
「っ!?」
遊馬はオルガマリーを抱き寄せて名を呼び、真剣な眼差しで約束した。
「俺が必ず守る!」
十三歳とは思えない決意の篭った目で見つめられ、オルガマリーは呆気にとられてしまう。
すると、アストラルもカルデアスの中に飛び込み、激痛に耐えながら遊馬に向けて手を伸ばす。
「くっ……遊馬!行くぞ!」
「アストラル!おうっ!!」
「私と!」
「俺で!」
「「オーバーレイ!!」」
遊馬とアストラルが手を重ねた瞬間、二人の体が赤と青の光となって一つに合体した。
「な、何……!?」
オルガマリーは目の前で何が起きているのか理解できず、遊馬とアストラルが一つになった存在は金色に輝いてその姿を目視することができなかった。
「オルガマリー、今助ける!」
「私たちには君が必要だ。私たちの奇跡で君を助ける!」
二人はデッキからカードをドローし、ドローしたカードをすぐさま発動させる。
「「魔法カード!『死者蘇生』!!」」
それは墓地に眠るモンスターを復活させる、あらゆるデッキにも入る万能の魔法カード。
その力をオルガマリーに付与させる為にカルデアスの膨大なエネルギーと遊馬とアストラルが持つ奇跡の力を使う。
「「うぉおおおおおおおっ!!!かっとビングだぁっ!!!」」
二人の金色の光が更に輝きを増すとカルデアスから赤と青の二つの光が弾け飛び、赤い光は遊馬で青い光はアストラルでマシュの側で転がる。
「遊馬君!アストラルさん!」
マシュが遊馬とアストラルに駆け寄ると、遊馬の胸の中にはオルガマリーが眠っていた。
「オルガマリー所長は……?」
不安そうなマシュの言葉に遊馬は起き上がると、ニッと笑みを浮かべてグッドサインをする。
「心配するな!所長は無事だ!生き返ったぜ!」
「ええっ!?」
「私たちの力とカルデアスと大聖杯の膨大なエネルギーを利用してオルガマリーの肉体を再生させ、魂を定着させた。これでもう彼女は大丈夫だ」
それは遊馬とアストラルの二つの絆の力によって起こした奇跡の力である。
「所長……!!」
マシュは遊馬からオルガマリーを受け取り、生き返ったことに喜んでぎゅっと抱き締めた。
遊馬達はオルガマリーが復活した事を喜ぶが、それに対して激怒する者が一人いた。
「ふざけるな!!!」
「レフ……」
「よくも、よくも私の理想を打ち砕いてくれたな!!」
ホープレイに右腕を斬られ、目的の結晶を奪われ、更には消滅させようとしたが遊馬とアストラルの力で肉体を再生させたオルガマリー……ことごとく邪魔をされ、思惑を打ち破られ、その顔はもはや人間とは思えないほどに怒りで歪んでいた。
「レフ!所長の想いを踏みにじり、カルデアの人達のたくさんの命を奪ったてめえを絶対に許さねえ!!てめえの身勝手な野望は俺たちが必ず打ち砕いてやる!!」
「私と遊馬がいる限り、貴様のような邪悪な存在の思い通りには絶対にさせない!覚悟しておけ!!」
威風堂々とした態度でレフを指差す遊馬とアストラル。
レフは今すぐにでも遊馬とアストラルを殺そうとしたが、ホープレイが剣を構えた臨戦状態だったので下手に手が出せなかった。
すると、大空洞が音を立て始め、地響きに続いて、天井から破片が降り注ぎ始めた。
『まずい、空間が不安定に崩壊し始めている!すぐにレイシフトを開始する!』
「ドクター、急いでください!」
「チッ!次会うときは必ず貴様らをこの手で殺す!!首を洗って待っていろ、九十九遊馬!アストラル!!」
指を鳴らす音に続いて、レフは恨みの言葉を残しながらカルデアスと共に光に包まれ、姿を消した。
大空洞が今にも崩壊しかねない不吉な音を鳴らし続ける。
「遊馬!オルガマリーを皇の鍵の中に避難させる!」
「頼んだぜ!アストラルも早く皇の鍵に入れ!」
「遊馬、君は!?」
「俺は大丈夫だ、ここに来た時と同じ方法で帰るから!」
「わかった!」
もしもの時に備えて眠っているオルガマリーをアストラルの力で量子化させて皇の鍵の中に避難させる。
皇の鍵の中には巨大な異空間が広がり、アストラルは一人になる時などに使用している。
アストラルはホープレイも戻し、自らも皇の鍵の中へと入った。
「キュウ!」
「フォウさん!さあ、私のところへ!」
今まで避難していたフォウはマシュに抱きついた。
『よし、準備出来た!レイシフトを開始する!』
「遊馬君、手を!」
「ああ!」
最後に遊馬とマシュは離れないように手を握り、洞窟が崩壊する中、レイシフトの光に包まれて二人は目を閉じた。
☆
遊馬が目覚めると、そこにはカルデアの白い天井が広がっていた。
「ここは……?」
「ここはカルデアの君の部屋だよ、九十九遊馬君」
遊馬の顔を覗き込んだのは派手な装飾を身に纏った黒髪の綺麗な女性だった。
「あんたは……?」
「私は希代の天才発明家にして芸術家!レオナルド・ダ・ヴィンチ!気軽に、ダヴィンチちゃんと呼んでくれても良いのよ?」
「ダ・ヴィンチ……?って、あのレオナルド・ダ・ヴィンチ!?え?でもダ・ヴィンチって男じゃ……あれ!?」
勉強な苦手な遊馬でも知っているレオナルド・ダ・ヴィンチだが、遊馬が知る限りダ・ヴィンチは男のはずである。
その疑問の答えを出すのは遊馬の隣にずっといたアストラルだった。
「遊馬。彼……いや、彼女と言うべきか。名画『モナ・リザ』の美しさに心酔してわざわざその姿でカルデアに現界したようだ」
「アストラル!って、ダ・ヴィンチさん、そんなのありかよ……」
歴史に名を馳せる天才発明家のはっちゃけた現界の理由に遊馬は軽く頭痛を覚えた。
「ダ・ヴィンチさんなんて言わないで、私の事はダ・ヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ!いいね?」
「は、はい……」
ダ・ヴィンチの有無を言わせない笑みと迫力に遊馬は素直に頷くしかなかった。
「フォーウ!」
「あ、フォウ。元気そうだな」
遊馬のベッドに潜り込んでいたフォウは遊馬が目覚めると体をよじ登って肩に乗る。
「遊馬……そのリスみたいな生物は何だ?」
「わかんねぇ。どうやらこの世界の特別な生き物っぽいぞ、名前はフォウだ」
「フォウ!」
「異世界には私の知らない生物がたくさんいるようだな……」
「さて、遊馬君が起きたのならまずはロマニに診せないとね」
ダ・ヴィンチは通信機ですぐにロマニを呼んで遊馬の身体検査をさせる。
無謀にも生身でカルデアスの中に飛び込んだのだ、何か異常があってからでは遅いのでロマニは時間をかけて遊馬の体をチェックする。
「よし……検査終了。どこも異常無しの健康体だ。しかし、マリーを助けるためとはいえ、カルデアスに飛び込むなんて無茶なことを……」
「あの時は所長を助けなくちゃと思って無我夢中で……」
「君、本当に十三歳かい?でもあまり無茶のし過ぎは禁物だよ、君が大怪我したら悲しむ者がいるからね。例えば……」
「遊馬君、目が覚めたんですね!」
「彼女とかね」
部屋に勢いよく入ってきたのは初めて会った時と同じ眼鏡とパーカー姿をしたマシュだった。
「マシュ!元気そうだな!」
「ええ。問題ありません。それより、お腹空きましたよね?軽食にサンドイッチを持ってきたので食べてください」
「おおっ!サンキュー、マシュ!ちょうど腹減っていたんだ!」
遊馬はマシュが持ってきたサンドイッチとジュースを食べて空腹を満たし、着替えなどの支度が終わるとマシュ達と一緒にレイシフトの管制室に向かった。
管制室は爆発と火災の爪痕がかなり残っており、その中ではカルデアの生き残った職員が慌ただしく働いていた。
その中でキビキビと指示を出している女性の声が響いた。
「まず瓦礫を早急に退かしなさい!それが終わったら全てのコフィンの点検とレイシフトの為のデータ復旧と修復を急ぎなさい!」
それは遊馬とアストラルの奇跡によって肉体が蘇ったオルガマリーだった。
「所長!」
「遊馬!目が覚めたのね」
「おう!所長、体は大丈夫か?」
一度体が爆弾で木っ端微塵となり、遊馬とアストラルの力で肉体を再生させたので不調がないか心配する。
「ええ。あなた達が蘇らせてくれたからね……寧ろ死ぬ前よりも調子がいいわよ。酷かった肩凝りとか無いからね」
オルガマリーは苦笑を浮かべながら膝を折って遊馬とアストラルに視線を合わせた。
気が張った表情ではなく少し穏やかな笑みを浮かべて遊馬の頭を撫でる。
「遊馬、アストラル。まずはお礼を言わせてもらうわ。ありがとう……私にもう一度生きるチャンスを与えてくれて」
「えへへ。所長を無事に助けられてよかったぜ」
「あの時は運と条件、そして魂がしっかり残っていたから君を助けることが出来た」
「そうね……本当に運が良かったわ。だからこそ、あなた達にもらったこの命……人類の未来を守るために、そしてあなた達に捧げるわ」
「所長……?」
オルガマリーの真剣な表情をしてカルデア所長としての今の思いを打ち明ける。
「遊馬……今この世界はここにいる人間以外は全て滅んでしまった。英霊……サーヴァントと契約できるマスターはあなたしかいない。本当ならあなたのような小さな子供にこんなことを頼みたくない」
すると作業をしていたカルデアの職員達の手が止まり、その視線が遊馬とアストラルに集まっていた。
「だけど、この世界の未来を守るためにはあなた達に頼むしかない。遊馬、アストラル、私たちカルデアの職員は全力であなた達をバックアップする。だから、お願い……世界の未来を守るために戦って欲しい……」
初めて会った時とは違うまるで生まれ変わったかのような雰囲気だった。
それは色々なことが重なり、精神が追い込まれていたことから解き放たれたオルガマリーの言葉だった。
遊馬とアストラルは互いに視線を合わせ、二人は最高の相棒として何も語らずとも一瞬でアイコンタクトを取り、頷いて改めて決意を固めた。
「ああ……戦うさ。もうこの世界とは無関係の人間じゃないからな。マシュを、所長を、先生を、みんなを守るために俺は戦う!」
「この世界の人理を焼却した者、恐らくはレフの背後にいる巨大な力を持つ黒幕がいるはずだ。もしそれらを放っておけば私たちの世界にも危害を加える可能性がある。遊馬と大切な人たちを守るために共に戦おう!」
遊馬とアストラルの決意にオルガマリーは微笑んで頷き、カルデアの職員達は二人の勇気と決意に賞賛して拍手を送った。
「遊馬君、アストラルさん、最後まで共に戦います。一緒に未来を守りましょう!」
マシュは遊馬とアストラルの言葉に勇気をもらい、一緒に戦うことを改めて誓った。
「ああ!俺たちは絶対に負けない!必ず未来を救うんだ!」
「かっとビングだ、遊馬!」
「おう!かっとビングだぜ、俺!」
「では、これより全カルデア職員に通達します。ここに、カルデアの最後にして原初の任務、人理守護指定『グランドオーダー』を発令します!!魔術世界における最高位の任務を以て、我々は人類と未来を救済します!!」
オルガマリーの発令に遊馬達とカルデア職員達は一斉に声を揃えて『はい!』と返事をした。
ここから遊馬とアストラルとマシュ、そして共に戦う英霊達と世界中の様々な時代の様々な場所にある、七つの特異点を巡る旅が始まるのだった。
.
これにてファーストオーダー完結です!
オルガマリーは遊馬とアストラルの力で肉体を蘇生させました。
やっぱり救えなくちゃ遊馬じゃないなと思ったので。
そしてレフはザマァと言わんばかりにホープレイでぶった切りました。
次は第1章、第一特異点が始まります。
ジャンヌちゃん大好きなので書くのが楽しみです。
ジャンヌちゃんと黒ジャンヌちゃん……二人とも遊馬のヒロイン候補にしようと考えています。