なんか個人的に過去作の因縁とか過去を乗り越える戦いって妙に感情移入しますね。
やっぱり燃える感じがビシバシと来ます。
ロンドン中の魔霧が収束して召喚されたのは漆黒の槍を持つアルトリアだった。
アルトリアが口にした『
「ロンゴミニアド……?」
「アーサー王が持っていたとされる槍だ。約束された勝利の剣に並ぶ伝説の武器だ。アーサー王物語では叛逆したモードレッドにアルトリアが約束された勝利の剣の代わりに使用したとされる……」
ロンゴミニアドはアーサー王……アルトリア生前最後の戦いで叛逆の騎士・モードレッドとの一騎打ちで使用した。
そして、互いに相打ちとなり、アーサー王物語の終焉を迎えたとされる。
すると、モードレッドはその時のことを思い出したのか若干体が震えながらも燦然と輝く王剣を構えて漆黒の槍を持つアルトリア……ランサー・アルトリア・オルタを睨みつける。
「父上よ……それほどまでにオレがこの国を救うことを許したく無いのか……?」
モードレッドは自分がロンドンを守るために戦っていることを許してくれないと思い込んでいた。
わざわざ生前の最後に自分を刺し殺した聖槍まで持ち込んで再び殺しに来たのだと思い込みが重なっていく。
「オレが憎いならそれでも構わない……だけど、オレはこの地を……ブリテンを守るためにあなたを、倒す!!!」
モードレッドはロンドンを守るためにランサー・アルトリア・オルタに戦いを挑もうとしたその時。
「──下がりなさい、モードレッド」
アルトリアがモードレッドを庇うように前に立ち塞がり、サーヴァント達が一斉にランサー・アルトリア・オルタと戦闘を開始した。
「ち、父上!?だけど、あいつはオレが──」
「モードレッド。私はもう……あなたを許しています」
「えっ……?」
アルトリアは生前のモードレッドが行った叛逆を許していた。
ブリテン崩壊のきっかけであるモードレッドは許されないことをしてしまった。
しかし、ロンドンで再会したモードレッドは叛逆精神……と言うより反抗期なところは残っていたが、騎士として人間として大きく成長していた。
「あなたは生前とは違う、人として誰かを思いやる優しい心に目覚めています。サーヴァントとしてではなく、一人の人間としてあの頃よりも大きく成長しています。だからこそ、もう二度とあの槍であなたに貫かせたく無い」
アルトリアは優しい目で見つめ、モードレッドの頭を撫でる。
それから振り向いて約束された勝利の剣を構える。
その後ろ姿にモードレッドは初めて自分を信じ、側に寄り添ってくれて最後まで共に戦ってくれた一人の男の姿が重なった。
「ま、待ってくれ父上!!」
「モードレッド?」
「頼む……オレに、オレに戦わせてくれ……!」
「モードレッド、ですからここは私に──」
「ここで怖気ついたらあいつに顔向けが出来なくなる!!」
「あいつ……?」
「オレの……聖杯大戦で共に戦ったマスターだ。そいつは……オレを信じてくれて、悩みを聞いてくれて、死ぬ最期の時まで一緒に戦ってくれた最高のマスターだ。オレにとっては『オヤジ』みたいな存在なんだ……」
「オヤジ……ですか……」
モードレッドが他人に対して初めて大きな信頼を寄せることができた人間。
聖杯を手に入れることは出来なかったが、最後まで戦い続け、二人共納得のできる最後を迎えた。
「オレはあいつに……獅子劫にたくさんの大切なものを教えてもらった。あいつのお陰でオレは変わることが出来た!だからこそ、オレは過去の自分を乗り越えたい!そして……ロンドンを守る為に必ずあの父上に勝って、その勝利をみんなに捧げたいんだ!!」
歪みのない真っ直ぐで真剣な瞳……その瞳にアルトリアは軽くため息をついて折れた。
「……分かりました。ですが、もしもあなたが──」
「その必要は無いぜ!必ず勝ってくるからさ!」
「モードレッド!」
「ユウマ?な、何だ?」
遊馬から何かを投げ渡され、キャッチしてそれをよく見るとそれは何かのキーだった。
そして、遊馬の隣には一台のバイクが止められていた。
「このバイクを使え。相手は馬に乗ってるからな!」
それはダ・ヴィンチちゃんが制作した遊馬のバイク、エクストリームバイクだった。
「アルトリアが前にバイクに乗ったことがあるって言ってたからさ。もちろん、モードレッドも乗れるよな?」
わざと挑発するように尋ねる遊馬にモードレッドはあえてその挑発に乗って不敵の笑みを浮かべた。
「ハッ!当然だ、遠慮なく借りるぜ!!」
モードレッドはバイクの運転の邪魔になる鎧を消し、露出度のある軽装となってバイクに乗り込み、キーを差し込んでエンジンを掛ける。
燦然と輝く王剣を右手に構え、左手でハンドルを握ると遊馬は令呪が刻まれた右手を掲げる。
「令呪によって命ずる!モードレッド、過去の己と亡霊を乗り越え、新しい自分へとかっとビングだ!!」
令呪によってモードレッドに膨大な魔力が与えられる。
遊馬はモードレッドへの信頼の証と勝利を信じて令呪を使った。
モードレッドは舌打ちをしそうになったが素直にその気持ちを受け取った。
「余計な事を……!だが、その命令……了解した!!行くぜ、アーサー王!!!」
モードレッドはフルスロットルでバイクを走らせてランサー・アルトリア・オルタに突撃する。
「オラオラ!どけどけどけぇっ!死にたくなかったら下がれやぁっ!!」
とても騎士とは思えない荒っぽい台詞にサーヴァント達は一斉に下がり、ランサー・アルトリア・オルタとの生前以降の一騎打ちが始まる。
ランサー・アルトリア・オルタは漆黒の愛馬……ラムレイの手綱を操り、ロンドンの地を駆け抜け、その後をバイクに乗るモードレッドが追う。
馬とバイクの違いがあるが、騎馬対決となり、あっという間に二人の姿が見えなくなってしまった。
「ちょっ!?見えなくなっちまったけど、どうするんだ!??」
「遊馬、飛行船だ。魔霧が薄くなった今なら使える!」
「よっしゃ!来い、かっとび遊馬号!!」
魔霧の影響でかっとび遊馬号を使用することができなかったが、魔霧のほとんどを吸収したランサー・アルトリア・オルタの召喚によってかっとび遊馬号を呼び出すことが出来た。
遊馬達はかっとび遊馬号の船内に入り、初めて乗るルーラー達は困惑する中、アストラルは飛行船のコンピュータを操作してロンドンを疾走するモードレッドを探す。
バイクで走るモードレッドはすぐに見つかり、アーサー王が乗っていたとされる名馬・ラムレイに乗るランサー・アルトリア・オルタと並列して疾走していた。
アーサー王物語の伝説の剣と槍の激しい攻防が繰り広げられ、強い火花と衝撃波が散る。
モードレッドは初めて乗るバイクでの戦闘だが、直感スキルで最善の攻撃を常に導いて繰り出していく。
しかし、ランサー・アルトリア・オルタが持つ聖槍……最果てにて輝ける槍の加護によって大きな幸運が与えられ、戦況はモードレッドが少しずつ不利になっていく。
そして何より問題なのはモードレッドが乗っているバイクが故障しかけていることだった。
モードレッドは舌打ちをし、ランサー・アルトリア・オルタから大きく距離を取ってからバイクを止めて向き合う。
「チッ……脆いバイクだ。そう長くは走れねえな」
バイクのエンジンから黒い煙が出ており、モードレッドの言う通り長くは走れない。
そもそもエクストリームバイクはダ・ヴィンチちゃんが遊馬のために作ったもので、レイシフト先のあらゆる過酷な環境下でもしっかり走れるようにと、かなり頑丈に作られている。
ちょっとやそっとの派手な運転では壊れることはないのだが……モードレッドの僅か10分近くの運転で既に半壊状態となってしまった。
簡単に言えば……モードレッドの運転がおかしいのだ。
モードレッドの持つ騎乗スキルはBでかなり高いのだが……運転があまりにも雑で乗り物が耐えきれないのだ。
モードレッドの聖杯大戦でのマスターでさえ耐えられる乗り物は戦車しかないと嘆いて言うほどだった。
戦いの決着は次の攻防で決まる……モードレッドは燦然と輝く王剣の切っ先を後ろに向ける。
「見ていてくれ……獅子劫。あの時の最後の令呪……今再び、もう一度王を討つ!!!」
モードレッドの魂、記憶に刻まれた元マスター……獅子劫の令呪が更なる奮い立たせて力を高める。
バイクをフルスロットルで走らせると同時に燦然と輝く王剣の切っ先から魔力を放出してジェットエンジンのようにバイクのスピードを限界を超えて高める。
ランサー・アルトリア・オルタは漆黒の聖槍……最果てに輝ける槍から眩い閃光を放つ。
「突き立て!喰らえ!十三の牙!」
召喚されてから終始無言で戦っていたが、宝具の真名解放でようやく言葉を発した。
攻撃が来ることを分かっていたモードレッドは臆することなく解除していた鎧の宝具『不貞隠しの兜』を纏う。
そして……聖槍を持つランサー・アルトリア・オルタの宝具が解放される。
「『
漆黒の聖槍から解き放たれた光は敵であるモードレッドを喰らい尽くす為に獣のごとく渦巻いた。
竜巻状の光がモードレッドとバイクを呑み込む。
聖槍の光を真正面からまともに受け、モードレッドは消滅したとランサー・アルトリア・オルタは勝利を確信した。
次の瞬間。
グサッ!!
「──っ!??」
聖槍の光の中から赤黒い光が飛び出し、それがランサー・アルトリア・オルタの右肩に突き刺さり、激痛が走る。
何が起きたのか分からないランサー・アルトリア・オルタは自分の右肩に突き刺さったものを凝視した。
それは自分が所有していた武器庫の中に保管されていた王位継承権を示す剣、燦然と輝く王剣だった。
そして、燦然と輝く王剣に続くように聖槍の光の中から一つの影が飛び出す。
「ウォオオオオオオオオオ──ッ!!!」
雄叫びを轟かせ、ヒビ割れた鎧が崩壊し、拳を構えたモードレッドが現れる。
「喰らえっ!!!」
魔力放出によって強化された右拳のパンチがランサー・アルトリア・オルタの左頬を捉え、そのまま殴り飛ばしてラムレイから遠くへ飛ばした。
殴り飛ばされたランサー・アルトリア・オルタは最果てに輝ける槍は何とか握りしめていたが、右肩に刺さった燦然と輝く王剣は殴られた時の衝撃で離れて地面に突き刺さる。
「どうだぁ!!」
モードレッドは限界を超えた加速で突進力を得たバイクと不貞隠しの鎧で防御力を固め、最果てに輝ける槍の光を見事に突き破った。
燦然と輝く王剣を投げ飛ばし、そして魔力を込めた拳の一撃でランサー・アルトリア・オルタに大きな痛手を与えた。
しかし、バイクも鎧もどちらも大破して使えなくなり、モードレッドに残された武器は燦然と輝く王剣のみとなってしまった。
更にモードレッドの魔力も限界に近づいてきており、恐らくは次の一撃で最後となる。
モードレッドは地面に突き刺さった燦然と輝く王剣を取り、刀身から赤雷を輝かせて走り出す。
モードレッドに付けられた傷から流れる血を拭い、立ち上がったらランサー・アルトリア・オルタは既に距離を縮めているモードレッドに真名解放をする余裕は無いと判断し、同じく走り出して最果てに輝ける槍を突き出す。
最果てに輝ける槍の鉾先がモードレッドの心臓に向けられ、モードレッドの脳裏に生前の最期の一時がフラッシュバックする。
まさに生前の最期の一騎打ちの再現……あの時は相打ちで倒れた。
モードレッドにとっての大きなトラウマが蘇るがそれを埋め尽くすように多くの人たちの姿が脳裏に次々と映し出された。
自分を初めて信じてくれた獅子劫、この特異点で出会いと再会した仲間達、その勇敢な生き様を認めた遊馬、そして……生前と違い自分を真っ直ぐに見てくれた最愛なる父上。
今のモードレッドは生前のあの時とは違う。
多くの人達との出会い、大切な人と重ねた言葉、そして戦ってきた強敵との交えた剣がモードレッドを成長させていた。
「オレは、もう負けねえ!!!」
自分の為だけでなくこの国と世界を守り、大切な人たちのために戦うモードレッドは絶対に負けない意思を力に変えた。
モードレッドは体を捻り、最果てに輝ける槍をギリギリで回避し、露出した肌と服を傷つけながらランサー・アルトリア・オルタの間合いに入る。
「ウォオオオオオオオオオッ!!!」
雄叫びと共に足を大きく踏み込み、燦然と輝く王剣を切り上げた。
「──っ!!???」
燦然と輝く王剣は最果てに輝ける槍を持つランサー・アルトリア・オルタの右腕を斬り落とし、最果てに輝ける槍は宙を舞って地面に突き刺さる。
モードレッドは燦然と輝く王剣を両手で持ち、持てる全ての魔力を込めて赤雷を轟かせる。
「我は王に非ず、その後ろを歩むもの。彼の王の安らぎの為、あらゆる敵を駆逐する!」
それはモードレッドが聖杯大戦で辿り着いた自身の本当の望み。
愛する王……父・アルトリアの安らぎの為、王の抱える重荷を共に背負わんとする意思の表れ。
そして、モードレッドの新たな未来を切り開く一撃!
「『
振り下ろされた燦然と輝く王剣から天を貫くほどの赤雷が解き放たれ、為す術のないランサー・アルトリア・オルタは赤雷に呑み込まれて消滅した。
戦闘が終わり、今までに無い達成感にモードレッドは呆然とする。
「……勝った……?」
聖槍を持つアルトリア……ランサー・アルトリア・オルタに勝利した。
ロンドンを守ると同時に越えたい存在だったアルトリアに勝利することができ、歓喜で体が震えてきた。
「やった……勝てた……聖槍を持つ父上に……!!ウォオオオオオオオオオ──ッ!!!よっしゃあああああああああああ──っ!!!」
モードレッドは歓喜の雄叫びを空に向けて轟かせる。
ところが、急に体の力が一気に抜けてフラフラとなる。
「あ、あれ……?体の力が……?」
魔力を極限まで使い、戦いの緊張感の糸が切れ、モードレッドは後ろに倒れてしまう。
すると……。
「全く、戦いの直後に気を抜くなどまだまだですね……」
飛行船から急いで降りたアルトリアは倒れるモードレッドを受け止めてその場に静かに寝かせる。
「父、上……」
「モードレッド、すぐにマスター達が来ます。あなたの治療と魔力を回復させたら聖杯を取りに行きましょう」
「うん……父上、その……」
「あなたの戦いは騎士らしくない荒っぽい戦いでしたが……よく勝利しましたね。よくやりましたね、モードレッド」
「……おう!」
モードレッドはアルトリアに褒められて満面の笑みを浮かべ、遊馬達が回復してくれるまで目を閉じて休む。
一方、アルトリアはあるものに静かに近付いた。
それはモードレッドがランサー・アルトリア・オルタの右腕を斬り落とした時に飛んで地面に突き刺さった最果てに輝ける槍だった。
ランサー・アルトリア・オルタが消滅した事で右腕も消滅し、宝具である最果てに輝ける槍も消滅するが、その前にアルトリアが持ちあげた。
「何故、最果てに輝ける槍が……」
最果てに輝ける槍を持つ自分が存在したことと、何故漆黒に染まっているのかと深い疑問を持った。
アルトリアはセイバークラスであるが最果てに輝ける槍を持って懐かしくなり、思わず生前と同じように構えてその場で軽く振ってみた。
「ふぅ……えっ?」
最果てに輝ける槍を手放そうとしたその時、闇のように染まっていた漆黒が剥がれていくように少しずつ白くなった。
禍々しい棘も消え、槍全体が混じり気のない美しい純白の聖槍へと姿を変えた。
「これは……まさに私が使っていた最果てに輝ける槍……!!」
それはアルトリアが生前に約束された勝利の剣の代わりに使用していた純白の光を放つ『最果てに輝ける槍』だった。
すると、最果てに輝ける槍から聖なる光の粒子が溢れるとそれがアルトリアの中に入っていき、アルトリアが一瞬だけ光を放った。
「これは一体……!?」
そして、最果てに輝ける槍は静かに消滅し、アルトリアの手から完全に消えてしまった。
アルトリアは胸に手を当てて目を閉じると自分の中に最果てに輝ける槍の光が宿っているのを確かに感じた。
「聖槍の光が私の中に……」
何故最果てに輝ける槍の光が自分の中に宿ったのか不明だが、それは決して自分に悪影響を与えるものではないとアルトリアは直感した。
「……信じてますよ、最果てに輝ける槍」
アルトリアはかつて共に戦った最果てに輝ける槍を信じ、遊馬達の元へ戻る。
最果てに輝ける槍の謎の光をその身に宿したアルトリア。
それは……そう遠くない未来にアルトリアに大きな変化を与えるのだった。
.
モー君、乳上に見事勝利!
ただし遊馬君のバイクが見事に大破(笑)
王を討ては獅子劫さんの最後の令呪などを踏まえてみました。
ラストに起きた最果てに輝ける槍の謎の現象……アルトリアに謎のフラグが!?
オリジナリティを少しでも出すために何かないと思っていたら何かが舞い降りました(笑)
次回はいよいよ黒幕との初めてのエンカウントですね。
ここでは私なりの……と言うかZEXAL?のオリジナリティを出したいと思います。