Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

95 / 195
初めてのデュエル回です。
と言ってもそこまでたいした内容ではないです。
デュエル描写って難しいです。


ナンバーズ93 希望の乙女と希望の守り人

ソロモンの呪いの魔術により遊馬とアストラルは暴走する闇の戦士……DARK ZEXALへと合体してしまった。

 

そもそも何故遊馬とアストラルはDARK ZEXALへと合体してしまったのか?

 

元々DARK ZEXALは遊馬とアストラルがベクターとデュエルをした際になった存在だ。

 

遊馬はベクターに騙されていたが、大切なアストラルを守るためとはいえ数々の隠し事や嘘をついていた。

 

その事が逆にアストラルに遊馬への不信感を募らせてしまった。

 

更にベクターはアストラルに対して遊馬を本当に信じているのかと揺さぶりの言葉をかけ、アストラルに『悪の心』を植え付けたのだ。

 

悪の心に支配され、暴走したアストラルは遊馬と強制的に合体し、DARK ZEXALへとなったのだ。

 

今回はソロモンの呪いの魔術によって遊馬とアストラルに宿る『悪の心』と『カオス』が増幅されて強大な『闇』となって暴走してしまった。

 

そして、遊馬とアストラルの意思に反して互いに惹かれ合うように一つとなり、ZEXALではなくDARK ZEXALへと合体してしまった。

 

一方、遊馬とアストラルを救う為にカルデアから小鳥が来たのだが、どうやって来たのかと言うと、その答えは一つ。

 

カルデアにあるコフィンに乗り込んでレイシフトをしたのだ。

 

小鳥は遊馬が特異点でレイシフトをしている間は食堂ではなく管制室にいることが多く、いつもモニター越しに見守っていた。

 

しかし、遊馬とアストラルがDARK ZEXALになってしまい、小鳥は居ても立っても居られずにすぐに行動を起こした。

 

幸いすぐ近くに桜や凛とデュエルするために置いてあったデュエルディスクにデッキをセットし、D・ゲイザーを左眼にセットすると小鳥はオルガマリーに懇願した。

 

「オルガマリー所長、私を遊馬達の元へレイシフトさせてください!」

 

「小鳥さんが!?馬鹿を言ってはいけません、一般人のあなたに危険な真似をさせるわけには行きません!行くならマスター適性がある私が行きます!」

 

オルガマリーは元々レイシフトをする為のマスター適性が無かったが、一度体を失ってからZEXALの力で復活したことでマスター適性を手に入れることができた。

 

カルデアにいるサーヴァントを引き連れてレイシフトを行おうとしたが、小鳥は引き下がらなかった。

 

「私にもマスター適性はあります!」

 

実は小鳥がカルデアに来たばかりの頃に検査を受けた際にマスター適性が備わっていることが判明した。

 

一般人でありながらマスター適性があるのは遊馬とアストラルの戦いを一番側で見続けた数多の力の波動を受けた影響による魂と肉体のランクアップが原因だと思われる。

 

「それに、現状でDARK ZEXALとなった遊馬とアストラルを救えるのは私しかいないんです!他のサーヴァントの皆さんではきっと無理です!お願いします、オルガマリー所長!!」

 

オルガマリーはカルデアの所長として必死に状況を整理し、一番の解決策を模索した。

 

マスター代理として自分が向かうより……誰よりも遊馬とアストラルの事を理解し、そして異世界にて世界の命運を賭けた戦いを二人の側で戦いを見守り続けていた小鳥なら何かを起こせるのではないか?

 

あまりにも分が悪い賭け……下手をすればDARK ZEXAL自身の手で小鳥を殺められる可能性もある。

 

暴走した状態で愛する人を殺める……そんな事が起きれば仮に助かったとしても遊馬とアストラルは絶望してしまう……。

 

しかし、小鳥の眼には恐れは一切存在しておらず、その強い眼にオルガマリーは唇を噛み締める。

 

まただ……また私は、自分ではなくこんなにも幼き子供に重い運命を背負わせてしまう。

 

カルデア所長というあまりにも重い責務がオルガマリーに辛い決断を迫らせる。

 

オルガマリーは爪を手に食い込ませ、カルデア所長としての指示を下す。

 

「わかりました……小鳥、すぐに遊馬とアストラルの元へ、向かいなさい!!」

 

「はい!!」

 

小鳥は強く頷き、決意を固めてコフィンに乗り込んだ。

 

コフィンに乗り込んだ小鳥にカルデア管制室はすぐにレイシフトを始めた。

 

初めてのレイシフトに体調を崩しそうになる小鳥は我慢し、特異点であるロンドンへとレイシフトする。

 

カルデア管制室の尽力により小鳥はロンドンの地下洞窟へとピンポイントにレイシフトを成功させた。

 

小鳥はソロモンの放つ大きな気に呑み込まれそうになったが、それをグッと堪えて堂々と歩いた。

 

「小鳥さん……」

 

「フォウ……」

 

「大丈夫です、マシュさん、フォウちゃん、後は私に任せてください」

 

「待って、小鳥!あなたが戦うなら私たちが──」

 

ブーディカ達がDARK ZEXALを止めようとしたが、小鳥は手を出して静かに制した。

 

「ブーディカさん。今の遊馬とアストラルを止められるのは私しかいません。デュエリストを止められる方法はデュエルしかありません」

 

「デュエルで?」

 

「はい。DARK ZEXAL、私とデュエルよ!」

 

小鳥がデュエルディスクを構えるとDARK ZEXALは静かにデュエルディスクを構える。

 

「「良いだろう……我とデュエルだ!!」」

 

DARK ZEXALは小鳥のデュエルの挑戦に応じた。

 

闇に堕ちたとはいえ、DARK ZEXALも一人のデュエリスト。

 

デュエルを申し込まれたのなら例え神と呼ばれる存在でもデュエリストとしての本能として受けるのは必然である。

 

小鳥は地面に落ちている皇の鍵を拾い、切れた紐を結んで首にかける。

 

そして、もう一つ……地面に突き刺さった紫色に輝くカードを見つける。

 

「これが……アストラルが残したカード……」

 

少なくとも希望皇ホープやフェイトナンバーズではないことはすぐにわかった。

 

もしも希望皇ホープやフェイトナンバーズならあれほどまでに不気味な輝きを放っていないはずだからだ。

 

「もしかして、私が知らないナンバーズ……?」

 

その可能性が特に大きく、アストラルが残したのだから何か大きな意味のあるナンバーズだろうと推測出来る。

 

「これが私に残された最後の希望……」

 

唾を飲み込んだ小鳥は恐る恐るそのカードを手に取った。

 

カードに指先が触れた瞬間……紫色の輝きが小鳥の体に流れ込んだ。

 

「あっ、くっ、あぁあああああっ!??」

 

カードから流れ込む未知なるエネルギーに小鳥は絶叫を上げる。

 

「小鳥さん!?」

 

「こ、来ないでください……私なら、大丈夫……!!」

 

小鳥は胸を強く押さえて体に流れ込むエネルギーに耐える。

 

ナンバーズは持つ者の心の闇を増幅させる力を持つ。

 

遊馬や異世界の力を持つ人間なら問題なく使用することが出来るが、小鳥に耐えられる力はない。

 

ただし、小鳥が首にかけてある皇の鍵はナンバーズの心の闇の増幅を抑えることが出来るのだが、それでも小鳥は心の闇に呑まれそうになっていた。

 

それは小鳥の持つそのナンバーズは特別な意味を持っていたからだ。

 

小鳥の右手の甲にナンバーズの刻印が浮かび上がり、その数字に驚く。

 

「ナンバーズ……98!?」

 

それはナンバーズの中で特に重要で大きな力を持つ『No.100』と『No.99』の次の数字の刻印を持つ『No.98』。

 

もちろん『No.98』のナンバーズは見たことはなく、まだカードは紫色に輝いていてどんなカードなのか判明出来ていない。

 

このままではデュエルで使用することは出来ない、どうすれば良いのかと思っていると皇の鍵がキランと輝く。

 

緑の宝玉から黒い粒子が出てくると小鳥の前に一つの人型へと集まる。

 

「あ、あなたは……No.96!?」

 

「よう、こうして話をするのは初めてだな?小鳥ちゃんよぉ!」

 

それは皇の鍵の中の異空間で封印されているはずのNo.96……ミストラルだった。

 

「あなた……どうして!?アストラルが封印したって……」

 

「そのアストラルがあんな無様な姿になっちまったからな。封印が解かれちまったのさ」

 

アストラルが遊馬と合体してDARK ZEXALになった事で封印の力が解かれてしまい、ミストラルが自由の身となってしまったのだ。

 

「そんな……こんな時に……」

 

小鳥は更に状況が悪化したことに恐怖で体が震え始めた。

 

このままでは遊馬とアストラルを救うことが出来ない……そう思ったが、ミストラルは予想外の行動を取った。

 

「ふん……No.98か……」

 

ミストラルが手を小鳥に向けてかざすと、『No.98』のエネルギーを小鳥から吸収した。

 

エネルギーが軽くなり、皇の鍵の力で更に中和された事で小鳥の心と体が楽になった。

 

「どうして……?」

 

「小鳥、お前はあのDARK ZEXALとデュエルをするつもりか?」

 

「え、ええ……」

 

「それなら俺様が力を貸してやるよ」

 

「ええっ!?」

 

ミストラルが力を貸すと言われ、驚く小鳥。

 

何を企んでいるのかと疑うが、ミストラルはDARK ZEXALを見つめて静かに語り出す。

 

「……今ここであの二人に消えてもらったら困るんだよ。俺様が答えを見つけるためにな」

 

「答え……?」

 

「俺様はまだ答えを見つけていない。自分が何をしたいのか、世界でどう生きるのか……」

 

『お前さ、ドン・サウザンドの一部じゃなくて、自分の存在を示したかった……生きたかったんじゃないのか?』

 

遊馬にその言葉を言われてからずっと考えていたが未だにその答えを見つけられていない。

 

その答えを見つけるためにもミストラルにはまだ遊馬とアストラルの存在が必要なのだ。

 

小鳥はミストラルの言葉に自分を騙そうとしていない、本当に自分に力を貸してくれるのだと感じた。

 

「……分かったわ、あなたの力を貸して!」

 

「ああ。まずはDARK ZEXALに大きな一撃を叩き込め!」

 

「ええ!待たせたわね、DARK ZEXAL!!」

 

小鳥は『No.98』をポケットに入れてデュエルディスクを構えてデッキからカードを5枚ドローして手札にする。

 

DARK ZEXALもデュエルディスクを構え、同じく5枚ドローして手札にする。

 

互いの準備が整い、デュエリストの戦いの宣言をする。

 

「「「デュエル!!!」」」

 

遂に小鳥とDARK ZEXALのデュエルが始まった。

 

「私の先行よ!私のターン!」

 

小鳥は先行を取り、デッキトップに指を置いた。

 

すると、そこからドローする事ができずに指が震えてしまう。

 

それもそのはずである。

 

小鳥は遊馬とアストラルの命を賭けたデュエルをほぼ全て間近で見てきた。

 

一度だけバリアンに洗脳されて意識はほとんどない状態で遊馬とデュエルをした事があるが、本気の命を賭けたデュエルは初めてである。

 

しかも今回は一番大切で大好きな遊馬とアストラルが相手で暴走状態のDARK ZEXALになっているとは言え、世界最強クラスのデュエリスト。

 

デュエルを始めたばかりで初心者に近い小鳥が勝てるかどうかは確率はあまりにも低い。

 

そんな小鳥にミストラルは目を閉じて口を開く。

 

「そんな事で勝てると思っているのか?やらないなら俺様が代わりにやってやろうか?」

 

ミストラルも当然デュエルをする事ができ、恐怖で怯えている小鳥の代わりを名乗り出た。

 

そんなミストラルの言葉は小鳥には励ましの言葉に聞こえ、小鳥は首を左右に振る。

 

「ううん、私がやる。遊馬とアストラルはいつも私を守ってくれた。どんなに恐ろしい敵が相手でも、後ろにいる私を気遣ってくれていた……」

 

小鳥は遊馬とアストラルのデュエルを側で見てきて一般人で力もない少女なので、デュエル中でも遊馬とアストラルは小鳥が傷つかないように気を配っていた。

 

しかし、遊馬とアストラルにとって小鳥は大きな心の支えであり、小鳥がいたからこそ遊馬とアストラルは最後まで戦い続ける事が出来た。

 

「だから……今度は私が遊馬とアストラルを助ける!かっとビングよ、小鳥!ドロー!!」

 

小鳥は決意を固めてドローし、デュエルを始める。

 

6枚となった手札を見て、アストラルが残したカードの召喚条件を確認する。

 

「これなら……行けるわ!」

 

「ほぅ……中々いい手札じゃないか。小鳥!」

 

「まずは永続魔法カード『神の居城 - ヴァルハラ』を発動!自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札から天使族一体を特殊召喚出来る!『リトル・フェアリー』を特殊召喚!」

 

小鳥の背後に美しい石造りの神殿が現れ、天の光から可愛らしい小さな妖精が現れる。

 

「リトル・フェアリーの効果!手札を1枚墓地に送り、レベルを1つ上げる!」

 

手札を1枚墓地に送り、リトル・フェアリーのレベルが3から4へと変化する。

 

「そして、『コーリング・ノヴァ』を通常召喚!」

 

リトル・フェアリーの隣に不思議な球体を持つ天使が現れる。

 

「これでレベル4のモンスターが二体。行け、小鳥!」

 

「ええ!」

 

小鳥はアストラルが残したカードを持ち、祈るように額に持っていく。

 

「お願い……私の大切な人を取り戻す為に、あなたの力を貸して!私はレベル4のリトル・フェアリーとコーリング・ノヴァでオーバーレイ!!」

 

リトル・フェアリーとコーリング・ノヴァが光となって地面に吸い込まれ、光の爆発を起こす。

 

「二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

光の中から現れたのは漆黒に輝く大きな塔で人型に変形していく。

 

「希望の光を喰らう絶望の闇よ、紫電の剣を手に光を斬り裂け!!」

 

ミストラルが口上を高らかに叫んだ。

 

白の双翼に黒と灰の鎧、右肩のプロテクターに『98』の赤い数字が刻まれ、胸には下三角の翡翠色の宝石が埋め込まれ、両肩には漆黒のマントが羽織られ、背中には鞘に納められた大剣を背負っていた。

 

「「現れよ、『No.98 絶望皇(ぜつぼうおう)ホープレス』!」」

 

紫電が嵐のように吹き荒れ、それを纏いながら現れた新たなナンバーズ、絶望皇ホープレス。

 

それは希望皇ホープによく似た姿をしており、絶望皇ホープレスはまるで対を成す存在のように見えた。

 

「希望皇ホープに似ています……でも、絶望皇なんて……」

 

マシュは絶望皇ホープレスを見てとても不安になってしまった。

 

絶望皇、そしたホープレスと言う名前にそのモンスターで本当に遊馬とアストラルを救えるのかと……不安になるのも当然だった。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンド!」

 

小鳥はカードを一枚伏せてターンを終えた。

 

そして、ターンが変わり、DARK ZEXALのターンとなる。

 

DARK ZEXALは右手を掲げると邪悪な闇を宿していく。

 

「「暗き力はドローカードをも闇に染める!」」

 

それはZEXALの奇跡の力であるシャイニング・ドローが闇に堕ちた力である。

 

「「ダーク・ドロー!!」」

 

デッキトップが紫色に輝き、ドローカードを闇に染めて新たなカードを創造する。

 

「シャイニング・ドローが闇に染まった……」

 

奇跡の力さえも完全に闇に染まり、マシュ達の不安がどんどん強くなっていく。

 

DARK ZEXALはニヤリと笑みを浮かべながらフィールドを展開していく。

 

「「魔法カード『ガガガ学園の緊急連絡網』。自分フィールドにモンスターが存在しない時、デッキからガガガモンスターを特殊召喚出来る。『ガガガマジシャン』を特殊召喚!更に『ゴゴゴゴーレム』を通常召喚!レベル4のガガガマジシャンとゴゴゴゴーレム でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」」

 

遊馬得意の戦術であるレベル4のモンスターが二体揃い、そこから展開されるモンスターエクシーズはあれしかいなかった。

 

「「現れよ、『No.39 希望皇ホープ』!」」

 

遊馬とアストラルの希望の象徴であり、数々の強敵を打ち破った希望の戦士。

 

だが今はDARK ZEXALの支配下に置かれ、絶望の使徒へとなってしまった。

 

「「更に『RUM - バリアンズ・フォース』を発動!」」

 

「バリアンズ・フォース!?リミテッドの方じゃない!?」

 

それはランク4限定のリミテッド・バリアンズ・フォースでなく、力の制限が解除されたバリアン世界のランクアップマジック。

 

「「このカードはモンスターエクシーズを『CNo.』または『CX』にランクアップさせる!希望皇ホープでオーバーレイ・ネットワークを再構築、カオス・エクシーズ・チェンジ!!」」

 

希望皇ホープが赤い光に包まれて地面に吸い込まれ、光の爆発が起きる。

 

「「降臨せよ、我が力の化身!『CNo.39 希望皇ホープレイV』!!」」

 

そして、光の中から現れたのは希望皇ホープがバリアン世界の闇の力によってランクアップした存在。

 

それは同時に過去にDARK ZEXALとなるきっかけの一つでもあるモンスターエクシーズだった。

 

「「更にバリアンズ・フォースのもう一つの効果!相手フィールドのモンスターエクシーズのオーバーレイ・ユニットを自分のCNo.のカオス・オーバーレイ・ユニットにする!ホープレスのオーバーレイ・ユニットを奪う、カオス・ドレイン!!」」

 

希望皇ホープレイVの手から赤い光線を放つと絶望皇ホープレスのオーバーレイ・ユニットを一つ奪い、カオス・オーバーレイ・ユニットにする。

 

「「そして、手札からこのカードを装備する!」」

 

それはDARK ZEXALがダーク・ドローで創造した闇のカード。

 

希望皇ホープレイVに暴走の力を与える。

 

「「『DZW(ダーク・ゼアル・ウェポン)- 魔装鵺妖衣(キメラ・クロス)』!!」」

 

闇の中から様々な動物のパーツが合わさった日本の伝説の妖怪である鵺をモチーフにしたモンスターが現れる。

 

それは希望皇ホープに大きな力を与える聖獣をモチーフにしたゼアル・ウェポンが闇の力に染まってしまい、誕生した邪悪なる妖魔。

 

「「魔装鵺妖衣は『CNo.39』に装備出来る!装備モンスターは戦闘で破壊されない!」」

 

魔装鵺妖衣は希望皇ホープレイVに装備され、背中に漆黒の翼が生え、更なる鎧が追加で装着され、ホープ剣が大鎌へと変化した。

 

まるでホープレイVが命を刈り取る死神のように姿を変えた。

 

「「更に装備モンスターの攻撃によって相手モンスターが破壊されなかったダメージステップ終了時、その相手モンスターの攻撃力を0にしてもう1度だけ同じモンスターに続けて攻撃できる!!ホープレイVでホープレスに攻撃!!」」

 

希望皇ホープレイVの攻撃力は2600、絶望皇ホープレスの攻撃力は2000。

 

このままでは確実に戦闘破壊される。

 

「小鳥、ホープレスの効果だ!」

 

「うん!絶望皇ホープレスの効果、モンスターの攻撃時にオーバーレイ・ユニットを一つ使い、そのモンスターを守備表示にする!ゼロムーン・バリア!!」

 

オーバーレイ・ユニットを胸の下三角の宝石に取り込み、背中から大剣を引き抜いて地面に突き刺すと希望皇ホープレイVの前に紫色の満月の形をしたバリアが現れる。

 

バリアに弾かれた希望皇ホープレイVは吹き飛ばされ、DARK ZEXALの前で跪く状態となり、守備表示となった。

 

それは希望皇ホープの攻撃を無効にするムーン・バリアに近い効果だった。

 

しかし、攻撃を防いだものの、ホープレイVにはまだ凶悪な効果が残されている。

 

「「ならば、ホープレイVの効果!カオス・オーバーレイ・ユニットを一つ使い、相手モンスターを破壊、その攻撃力分のダメージを与える!Vブレード・シュート!!」」

 

カオス・オーバーレイ・ユニットを一つ取り込んだ大鎌を投げ飛ばし、回転しながら飛んでくる刃にミストラルは的確なアドバイスを出す。

 

「小鳥、罠カードだ!」

 

「わ、わかってるわ!罠カード!『レインボーライフ』!!手札を1枚捨てて、このターンのエンドフェイズ時まで、戦闘及びカードの効果によってダメージを受ける代わりに、その数値分だけライフポイントを回復する!!」

 

小鳥は手札を一枚捨てると七色の虹の光に包まれ、その直後に絶望皇ホープレスが破壊された。

 

「くうっ……レインボー・ライフの効果で破壊されたホープレスの攻撃力、2000のライフポイントを回復するわ!」

 

絶望皇ホープレスの攻撃力のダメージがレインボーライフで回復へと変わる。

 

DARK ZEXALはこれ以上何もすることが出来ずにカードを一枚伏せた。

 

「「カードを一枚伏せて、ターンエンド」」

 

「私のターン、ドロー!」

 

小鳥は起死回生のカードを引こうとドローしたが、引くことはできなかった。

 

「……っ、ダメ……何も出来ない……」

 

下手にモンスターを召喚すれば破壊効果のある希望皇ホープレイVの効果の餌食となる。

 

フィールドはガラ空きだが小鳥のライフポイントは6000ポイントもある。

 

そう簡単にやられないと判断し、手を強く握りしめながらエンド宣言をする。

 

「ターン、エンドよ……」

 

「「我のターン、暗き力はドローカードをも闇に染める!ダーク・ドロー!!」」

 

DARK ZEXALは再び右手に闇を宿しデッキトップを闇に染める。

 

ドローしたカードはこのターンで小鳥を倒す為に創造したカード。

 

「「装備魔法『巨大化』!ホープレイVに装備する!我のライフポイントが相手より低い時、装備モンスターの攻撃力は2倍となる!」」

 

デュエルモンスターズで初期から存在している強力な攻撃力上昇の装備カード、巨大化によって希望皇ホープレイVの体が2倍近くに大きくなる。

 

「「更に魔法カード『破天荒な風』!ホープレイVの攻撃力と守備力は次の我のスタンバイフェイズまで1000ポイントアップする!これでホープレイVの攻撃力は6200となる!!」」

 

「攻撃力、6200……!?私のライフを上回った!?」

 

小鳥のライフポイントは現在6000ポイント。

 

巨大化と破天荒な風で強化された希望皇ホープレイVの攻撃をまともに受ければ1ターンキルで敗北してしまう。

 

「「これで終わりだ……ホープレイVでダイレクトアタック!!」」

 

「小鳥さん!!」

 

「フォウフォウ!!」

 

希望皇ホープレイVは大鎌を振り上げ小鳥に向かって飛翔する。

 

死神が小鳥の命を刈るように大鎌を振り下ろした。

 

しかし、小鳥は敗北からの恐怖で顔を歪めて──。

 

「ふふっ……」

 

──いなかった。

 

「それはどうかしら?」

 

不敵の笑みを浮かべ、デュエルディスクを高く掲げた。

 

「この瞬間、墓地に眠る絶望皇ホープレスの効果発動!!」

 

小鳥の前に大きな紫色の魔法陣が現れ、紫電が轟いて壁となり、希望皇ホープレイVの攻撃を防いで弾き飛ばした。

 

「「何!?」」

 

「ホープレスが墓地に存在する時、フィールドの『希望皇ホープ』モンスター1体を対象として発動!私は希望皇ホープレイVを選択して、墓地からホープレスを守備表示で復活させる!蘇れ、絶望皇ホープレス!!」

 

魔法陣から絶望皇ホープレスが小鳥を守るように復活する。

 

そして、アストラルが絶望皇ホープレスを託した真の意図……二つ目の効果が発揮される。

 

「そして、選択した希望皇ホープモンスターを復活させたホープレスのオーバーレイ・ユニットにする!」

 

「「ば、馬鹿な!?」」

 

「希望皇ホープレイVを絶望皇ホープレスのオーバーレイ・ユニットに!アブソープション・ホープ!!」

 

絶望皇ホープレスは背中の大剣を鞘から引き抜き、紫電の光線を放つ。

 

紫電の光線が直撃した希望皇ホープレイVは魔装鵺妖衣が消滅し、光に包まれて絶望皇ホープレスのオーバーレイ・ユニットとなった。

 

DARK ZEXALの戦いの象徴である希望皇ホープレイVが奪われ、戦意喪失となって両腕を下ろした。

 

「「ターンエンド……」」

 

「アハハハハハッ!あの憎っくきホープを無力化して奪ったか!なんと愉快な光景じゃないか!!」

 

ミストラルは希望皇ホープレイVをいとも簡単にオーバーレイ・ユニットにして奪ったことに歓喜した。

 

小鳥は視線をデュエルディスクに向け、絶望皇ホープレスのカードを優しく撫でる。

 

「私……この子の存在理由がやっと分かった気がする……」

 

「存在理由だと?」

 

「うん……だって、絶望皇ホープレスって怖い名前の割には一つ目の効果は攻撃表示から守備表示にして、もう一つの効果は復活してホープを吸収する……絶望皇なんて名前には程遠いもん……」

 

最初、絶望皇ホープレスと言う恐ろしい名前にどんな凶悪な効果が書かれているのか不安だった。

 

しかし、実際にテキストを見て使用し、小鳥は強く実感した。

 

「もしかしたら、絶望皇ホープレスは誰かに絶望を与える皇じゃなくて、希望皇ホープの『抑止力』として生まれたんじゃないかな?」

 

「希望皇ホープの……抑止力だと?」

 

「そう。今みたいに遊馬とアストラルが闇に囚われて暴走状態になってホープが敵になった時に、ホープを止める為に……ううん、ホープを守る為にこのホープレスが存在すると私は思うわ」

 

希望皇ホープの抑止力……絶望皇ホープレス。

 

そう考えれば絶望皇ホープレスの二つの効果の力も納得出来る。

 

暴走する希望の光を絶望の闇で抑え込む……アストラルはこの状況を見越して絶望皇ホープレスを最後の力を振り絞って投げ飛ばしたのだ。

 

「ふっ……おめでたい女だな、さっさとドローしろ」

 

「ええ!私のターン、ドロー!!」

 

小鳥はこれが最後のターンだと思いながら力を込めてドローする。

 

そのドローカードを見てミストラルは笑みを浮かべた。

 

「ふはははは!遊馬に負けない運じゃねえか、小鳥ちゃんよ!そのまま決めちゃいな!!」

 

「うん!魔法カード『死者蘇生』!!お互いの墓地からモンスターを1体を選び、自分フィールドに特殊召喚する!」

 

小鳥が墓地から蘇らせるモンスター……それはDARK ZEXALから二人を取り戻すことが出来る唯一無二のモンスター。

 

「私のフィールドに出て来て!未来を切り開く希望の戦士!」

 

絶望皇ホープレスの隣に金色に輝く魔法陣が現れる。

 

「蘇れ!No.39 希望皇ホープ!!」

 

『ホォオオオオオオープ!!!』

 

希望皇ホープが小鳥のフィールドに特殊召喚され、小鳥の右手の甲に『39』の刻印が刻まれ、再び小鳥の心が暴走しかけるが皇の鍵とミストラルの力で抑え込む。

 

希望皇ホープと絶望皇ホープレス。

 

対を成す二体のホープの名を持つ皇が揃った。

 

「ホープ、お願い……遊馬とアストラルを助けて!!」

 

小鳥は皇の鍵を握りしめて強く叫んだ。

 

「希望皇ホープで……DARK ZEXALを攻撃!!!」

 

これが最後の賭け……恐らくはDARK ZEXALから遊馬とアストラルを救う最後の一撃。

 

希望皇ホープはホープ剣を腰から引き抜き、双翼を輝かせて飛翔する。

 

「ホープ剣・スラッシュ!!!」

 

「「ぐぁあああああっ!!」」

 

ホープ剣の一撃がDARK ZEXALの体を斬り、ライフポイントにダメージを与えながら空中にぶっ飛ばされる。

 

「今だ!!!」

 

ミストラルは小鳥の側から飛び、DARK ZEXALに接近した。

 

ミストラルは両手をDARK ZEXALの体に潜り込ませ、体内に宿る闇の力を吸収する。

 

「「がぁああああああああっ!??」」

 

「くっ、小鳥!皇の鍵をDARK ZEXALに差し込め!!」

 

「うん!!!」

 

小鳥は走り出すと同時に首にかけていた皇の鍵を外す。

 

「かっとビングよ、小鳥!!」

 

小鳥は足に力を込めてDARK ZEXALに飛び込んで皇の鍵を胸に強く差し込んだ。

 

皇の鍵がDARK ZEXALの胸に強く差し込まれた次の瞬間、金色に輝く聖なる光が解放される。

 

「「ぐぁああああああああーっ!??」」

 

「戻って来やがれ……アストラル、遊馬!あれだけ俺様に説教しながら、勝手に消えるなんて許さねえぞ!!」

 

聖なる光がDARK ZEXALの闇を浄化していき、ミストラルは更に力を込めて闇を吸収する。

 

そして、小鳥は皇の鍵を強く握りしめ、思いを込めてDARK ZEXALを抱きしめる。

 

「お願い、戻って来て、遊馬!アストラル!私の……私たちの元に!!」

 

小鳥の命と願いを賭けた最後の一撃。

 

それは力の無い少女が起こした奇跡を起こす。

 

DARK ZEXALの中から闇は消え去り、光に包まれると二つの赤と青の光に分かれてその場で横たわる。

 

その二つの光は遊馬とアストラル……無事にDARK ZEXALの呪縛から解放されたのだ。

 

「くっ……何が起きたんだ……?えっ……?こ、小鳥!??」

 

遊馬は自分の胸の中にいる小鳥に驚愕した。

 

「遊馬……良かった、DARK ZEXALから元に戻ったのね……」

 

「小鳥……なんでお前が……!?」

 

「小鳥ちゃんはよぉ、愛しのお前を助けるためにデュエルしたんだよ」

 

「えっ!?ミ、ミストラル!?お前まで!?」

 

「お前らが不甲斐ないから俺様が小鳥ちゃんと一緒に助けたんだよ、感謝しろよ?」

 

ミストラルはいつものような凶悪な笑みを浮かべると、アストラルも目を覚ました。

 

「ミストラル……貴様……」

 

「はっ!無様な姿だな、アストラル。闇に呑み込まれて暴走するなんて、所詮お前はその程度か?」

 

「……すまない」

 

アストラルは自分自身の弱さを認め、ミストラルに謝罪した。

 

「謝る相手が違うぞ。DARK ZEXALでデュエルに挑んだのは小鳥ちゃんだぜ?お前が託した絶望皇ホープレスを使ってな?」

 

「小鳥が!?そうか……君が私たちを救ってくれたのだな?」

 

「うん、ミストラルのお陰でなん、と、かね……」

 

小鳥は力を一気に失ったように遊馬に倒れこんだ。

 

「小鳥?小鳥!?」

 

「遊馬、アストラル……ごめん、疲れちゃってもう動けない……これを……」

 

小鳥は皇の鍵とデュエルディスクにある希望皇ホープと絶望皇ホープレスのカードを差し出す。

 

「小鳥……!」

 

「後はお願いね……」

 

「ああ……!任せてくれ……!」

 

遊馬は皇の鍵を首にかけ、希望皇ホープと絶望皇ホープレスをデュエルディスクに置く。

 

「……マシュ!小鳥を頼む!!」

 

「は、はい!!」

 

遊馬はマシュに小鳥を託し、アストラルと共に立ち上がる。

 

そして……二人は今まで静観していたソロモンに視線を向けた。

 

ソロモンはアングルボダに寄りかかっており、遊馬とアストラルに視線を向けられると数回拍手をする。

 

「実に面白いものを見せてもらった。なるほど、これが異世界の戦いか……とても興味深い」

 

ソロモンは異世界の戦いの儀式であるデュエルをその目で見ることができ満足そうに笑みを浮かべていた。

 

「ソロモン……」

 

「それにしても、貴様らは何者だ?ただの人間と精霊では無いな?」

 

「俺はただの人間だ……とっても弱い、ガキだよ」

 

「私もだ……どれだけの力があろうとも、所詮は一つの小さな力に過ぎない」

 

遊馬とアストラルは自分達の弱さがDARK ZEXALへと堕ちてしまい、小鳥やマシュ達に大きな迷惑をかけてしまった。

 

その事を深く悔やみ、反省をする。

 

そして、それと同時に新たな決意を固める。

 

「だからこそ……俺たちは誓う」

 

「もう二度と、己の弱さで過ちを犯さない為に!」

 

「大切な人達を守り抜く為に!」

 

遊馬とアストラルの決意が力となり、それぞれに赤い光と青い光をその身に纏う。

 

「「俺達/私達はもう二度と、絶対に負けない!!!」」

 

デュエルディスクを構え、遊馬とアストラルの背後に希望皇ホープと絶望皇ホープレスが現れる。

 

第四特異点の最後の戦いが遂に終わりを迎えようとしている。

 

 

 




DARK ZEXALから無事に分離し、遊馬とアストラルが復活しました。

あのままデュエルを続けたら間違いなく小鳥ちゃんの勝利ですね。

絶望皇ホープレスが希望皇ホープの抑止力……私なりの解釈ですが、けっこう合ってるんじゃないかなと思います。

次回はいよいよ第四特異点の最終回です。
ソロモンとの決着はどうなるか!?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。