Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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始まりました、監獄塔編。
ぶっちゃけ書いててアヴェンジャーがメンドくせえ奴だなと思いました(笑)
まあだからこそ魅力的なキャラでもあるんですが。
ただアヴェンジャーのキャラがかなり難しいので指摘があったら是非ともよろしくお願いします!


監獄塔に復讐鬼は哭く
ナンバーズ95 復讐者と虚無のモノ


ロンドンの壮大な戦いが終わり、カルデアに帰還したのも束の間……遊馬は目を覚ますと監獄のような部屋にいた。

 

「ここは……何処だ?」

 

「人を羨んだコトはあるか?己が持たざる才能、機運、財産を前にして、これは叶わぬと膝を屈した経験は?世界には不平等が満ち、故に平等は尊いのだと噛み締めて涙にくれた経験は?答えるな、その必要はない。心を覗け。目を逸らすな。それは誰しも抱くが故に、誰一人逃れられない。他者を羨み、妬み、無念の涙を導くもの。嫉妬の罪」

 

何故自分がここにいるのか分からずにいると遊馬の頭の中に声が響いた。

 

嫉妬の罪……それを聞いて遊馬は腕を組んで悩んだ。

 

嫉妬はもちろんしたことがある。

 

まだデュエルが下手だった頃、父の形見のデッキが未完成でエースや切り札となるモンスターエクシーズを所有してなかったのでデュエルに負け続け、羨ましいと思ったことは数え切れないぐらい多々ある。

 

しかし、アストラルと出会い、希望皇ホープをその手に掴んでからは沢山の仲間となるモンスターエクシーズと巡り会うことができた。

 

嫉妬があったからこそ、手に入れた時の喜びはとても大きかった。

 

「俺は幸せ者だな……」

 

遊馬はそう呟いて胸にある皇の鍵をいつもの癖で握ろうとしたら……。

 

「……あれ?お、皇の鍵が無い!?」

 

いつも身につけて大切にしている皇の鍵が無くなり、困惑している遊馬に驚かせるように再び声が響く。

 

「絶望の島、監獄の塔へようこそ少年!」

 

「っ!?誰だ!?」

 

「罪深き者、汝の名は九十九遊馬!此処は恩讐の彼方なれば、如何な魂であれ囚われる!お前とて、例外では無いさ。この世にいてはいけない英霊だ。お前の可愛い可愛い相棒とやらの口を借りればな」

 

「この世にいてはいけない英霊……?ああっ!お前、もしかしてオガワハイムで戦った捻くれ真っ黒野郎!」

 

それはオガワハイムの黒幕とも言える正体不明の英霊だった。

 

「誰が捻くれ真っ黒野郎だ……まあいい。第一の塔は楽しめたか?いや、いい。言うな。別に感想が欲しいワケじゃない。此は自動的なサァビスだ。人間には拒否不可能な招待、呼び声による引き寄せだ」

 

「何だそれ?」

 

「第二の塔による歓待。せいぜい、心ゆくまで楽しんでいくがいい」

 

英霊がそう言った直後に黒い霧のようなゴーストが突然出現した。

 

「うおっ!?何だあれ!?」

 

「そうら、さっそくお出ましだ。暖かく脈動するお前の魂が気に食わないらしい。第一の塔ほどでないにせよ、此処にもあの手の死霊はよくよく集う」

 

「ああもう!めんどくせえな!」

 

遊馬は上着の内ポケットに手を入れるが……。

 

「あれ……?D・パッドとD・ゲイザーが無い!?あっ!デッキケースも無え!?」

 

皇の鍵のみならず、デュエリストの大切な武器であるデッキとデュエルディスクとD・ゲイザーが手元になく、遊馬は顔を真っ青にする。

 

あれが無ければ当然いつものようにデュエルで戦うことが出来ない。

 

更には原初の火と銃も無く、遊馬は最終手段としてホープ剣を呼び出そうと思ったが出てこなかった。

 

「くっそう!万事休すかよ!?」

 

遊馬は頭を抱え、絶体絶命の危機に陥りそうになった……その時。

 

「遊馬!!!」

 

遊馬の胸元に突然皇の鍵が現れ、翡翠の宝玉から青白い粒子が溢れる。

 

粒子が集まり、形を成すと遊馬の相棒であるアストラルが姿を現わす。

 

「アストラル!」

 

「待たせたな!行け、ホープ!!」

 

アストラルがカードを掲げると希望皇ホープが現れ、ホープ剣でゴーストを斬り伏せた。

 

「怪我はないか、遊馬!」

 

「ああ。助かったぜ、アストラル!」

 

遊馬とアストラルはハイタッチを交わすと二人の前に黒い霧が現れる。

 

「精霊まで此処に現れたか。いや、お前の場合は自ら来た……と言った方が正しいかな?」

 

「……貴様はオガワハイムの奴か」

 

「お前の正体は何だ?そして、此処はどこだ?」

 

「ここは地獄。恩讐の彼方たるシャトー・ディフの名を有する監獄塔!そして、オレは……英霊だ」

 

そして、黒い霧が晴れるとそこにいたのはポークパイハットと呼ばれる帽子を被った英国紳士のような姿をした青年だった。

 

「悲しみより生まれ落ち、恨み、怒り、憎しみ続けるが故にエクストラクラスを以て現界せし者」

 

「エクストラクラス……お前、アヴェンジャーか?」

 

「その通り、オレのことはアヴェンジャーと呼べ。仮初めのマスターよ」

 

「マスター?俺が?」

 

謎の英霊──アヴェンジャーは突然遊馬をマスターと呼び、遊馬は唖然として目をパチクリさせる。

 

アヴェンジャーは遊馬とアストラルを連れて監獄の中を案内しながら話をする。

 

「死なぬ限り、生き残ればお前たちは多くを知るだろう。多少歪んではいても、此処はそう言う場所だからな。だが、このオレがわざわざ懇切丁寧に伝えてやる義理はない」

 

「ケチんぼ」

 

「黙れ。オレはお前のファリア神父になるつもりはない。気の向くまま、お前の魂を翻弄するまでだ」

 

「ファリア神父?」

 

「まさか、君は……」

 

アストラルはアヴェンジャーの正体に気付いたが、それを許さないアヴェンジャーは青黒い炎を出しながら警告してきた。

 

「精霊よ、オレの正体をまだ語るな。もし語ろうとするならこの炎で焼きつくすぞ」

 

「お前、俺たちの案内したいのか葬りたいのかどっちなんだよ!?」

 

「落ち着け、遊馬。アヴェンジャーよ、君がまだ正体を隠したいのなら君の意見を尊重しよう」

 

アヴェンジャーがあまりにも面倒くさい性格だとすぐに察した遊馬とアストラルは頭を悩ませ始めた。

 

「さて、最低限の事柄は教えておいてやろう。手短にな。まず、お前たちの魂は囚われた。脱出のためには、七つの『裁きの間』を超えなければならん。カルデアなぞに声は届けられないし、同じくして彼方からの言葉が届くことも有り得ん」

 

「カルデアにも……?何でこんなことに……?」

 

「遊馬、これはあくまで私の推測だが、恐らくはソロモンの仕業だろう」

 

「ソロモンの?」

 

「恐らくソロモンは魔術で我々に呪いをかけ、魂をこの監獄塔に閉じ込めて二度と目を覚まさせないようにしたのだろう。実はカルデアで君は眠り続けているんだ」

 

「マジで!?あれ、でもアストラルは何で……」

 

「私はナンバーズの力のお陰で呪いを完全に打ち消すことができたが、君の魂は完全に呪いを打ち消す事ができず、呪いが僅かに残ってしまった……そこで私は眠っている君と合体してZEXALとなり、肉体と魂を一体化させる事で君の魂が囚われているこの監獄塔に来る事ができたんだ」

 

カルデアで今、遊馬は覚めることのない深い眠りにつき、医務室で治療を受けている。

 

マシュたちが心配して見守る中、アストラルだけが遊馬の危機に駆けつけたのだ。

 

「……裁きの間で敗北し、殺されれば、お前たちは死ぬ。何もせずに七日目を迎えても、お前たちは死ぬ」

 

「つまり、その七つの裁きの間の敵を全て倒せばいい訳だな?」

 

「その通りだ。だが此処は魔術王によって作り出された狩り場だ。そう簡単には突破は出来ないぞ?」

 

「そんな事でビビる俺たちじゃねえぞ。それじゃあ……1、2、3、4!」

 

遊馬はその場で軽い準備体操を始めた。

 

こいつは何をしているんだ……?とアヴェンジャーは疑問に思う中、遊馬は準備体操を終えると床に手を置き、クラウチングスタートの態勢を取る。

 

「遅れるなよ、アヴェンジャー!かっとビングだぜ、俺!よーい、スタート!」

 

遊馬は急いで裁きの間に向かうために走り出し、その後をアストラルが飛んで追いかける。

 

「……ハッ!?貴様ら!オレを置いて勝手に行くな!!」

 

勝手に走り出した遊馬に対しアヴェンジャーは急いで追いかける。

 

何故自分がこんな子守のようなことをしなければならないのかと思いながら第一の裁きの間へと案内する。

 

 

第一の裁きの間に到着するとそこは円形状の広い部屋でそこには一騎のサーヴァントがいた。

 

「まさかお前が相手かよ……」

 

「ファントム・オブ・ジ・オペラ……」

 

それは第一特異点でレティシアに召喚され、遊馬たちと敵対したサーヴァントである。

 

「美しき声を求め、醜きものの全てを憎み、嫉妬の罪を以てお前を殺す化け物だ!」

 

「クリスティーヌ……クリスティーヌ、クリスティーヌ、クリスティーヌ!」

 

ファントムは狂ったようにその鋭い爪を駆使して暴れ始めて遊馬を攻撃し始めた。

 

「ようく見ておけよ、マスター。これが人だ。お前の世界に満ち溢れる人間どものカリカチュアだ!」

 

アヴェンジャーはその風貌に似合わない卓越した格闘術でファントムと交戦して弾き飛ばす。

 

感情が高ぶっているアヴェンジャーの瞳は夜の闇のように黒く染まっており、まるで復讐の炎が宿っているようだった。

 

「戦え。殺せ。迷っている暇はない。何故なら──お前がオレを信じようが信じまいが関係ない。奴は、問答無用でお前を殺すからな!」

 

遊馬の迷いを振り払うように強い口調でキツイ言葉を並べていく。

 

そんなアヴェンジャーの言葉に遊馬は決意を固めてデッキからカードを引こうとした……その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ……あなた、この子のことを気に入ったのね。やっぱりあなたは人間が大好きなのね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美しく清らかな声が響くと遊馬の胸から純白の光が溢れる。

 

そして、光が人の形を成すとそこに現れたのは思いもよらない人物だった。

 

「か、空……!?」

 

それは美しい白の着物に身を包み、日本刀を持つ女性……死の線を視る『直死の魔眼』をその瞳に宿すもう一人の両儀式──空だった。

 

「セイバー……『両儀式』こと『空』。虚無な夢を渡り、此処に参上いたしました」

 

「空……来てくれたんだな!」

 

「貴様はあの時の……!?何故此処に現れた!?」

 

アヴェンジャーは激昂して空に問い詰めると、空は慈愛の笑みを浮かべて語る。

 

「私は虚無にして幻の存在……両儀から更に遡り、始まりの一……「 」を体現したモノ。夢の世界だからこそ、私もここに来ることが出来たのよ」

 

カルデアでマシュを始めとするサーヴァントの誰もが遊馬とアストラルの加勢に向かうことが出来ずに落ち込み、苛立つ中……空だけが唯一遊馬の元へと駆けつけることが出来た。

 

それは空の存在の特異性と空自身が繋がる強大すぎる力が大きな要因となっている。

 

「チッ、余計な真似を……!!」

 

「うふふ。短い間だけど、仲良くしましょう?アヴェンジャーさん」

 

「黙れ、虚ろにして心無き者よ」

 

「否定はしないわ。それよりも……まずはあなたから相手をしましょう」

 

空は刀を抜いて刀身を輝かせながら構える。

 

「愛に狂った悲しき怪人さん……私が斬り捨ててあげるわ」

 

ファントムに切っ先を向け、空は淡く微笑みながら地を蹴る。

 

遊馬とアストラル、そしてアヴェンジャーと空……とても奇妙な色々な意味でバラバラの四人組パーティーによる監獄塔の七つの裁きの試練が始まる。

 

 

 




まさかの追加キャラ、『両儀式』さんこと空さん参上!
出そうと思った理由は空さんを活躍させたいのと、復讐者で大きな心を持つアヴェンジャーと虚無な心の空さんを出してみたいと思ったからです。
実質監獄塔編は空の境界編の続編みたいなものですから。
最初はアヴェンジャーと遊馬の二人の戦いじゃないとダメかなと思いましたが、アストラルもいるので今更かと思い切って出しました。

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