東方幻想奇録   作:大栗蟲太郎

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第四話

横暴で傲慢な徒
坂井洋二郎
登場


悪意の行方は何処

「ただいまー」

成三は家の扉を開けて中に入る。

 

「ま、誰かがいるわけでも無いんだけどね」

彼の言う通り、家には誰もおらず、皆が出払っていた。

 

「母さんも買い物行ってるし、父さんも仕事。ボクは絵の勉強をしようかな…」

 

と呟いて、本を開いて読み始めた。

 

暫くすると母親が帰ってきた。

 

「あ、母さんおかえりなさい」

成三は2階から迎えの挨拶をして、呟きサイトを開いた。

 

「さ~て、どんな呟きがあるかなっと…」

 

成三は画面をスクロールさせる。

 

「えっ…?」

 

成三は硬直した。

何故なら、自分の父親が働いているレストランで、クラスメートの坂井洋二郎がふざけてゴキブリのオモチャを入れて、店員を土下座させている写真が拡散で回ってきたからだった。

 

その時、家に電話が掛かって、何かが倒れる音がした。

嫌な予感がした成三は急いで階段を降りて電話の前に行く。

そこで彼が見たものは、ショックで倒れてしまった母親だった…。

 

電話の内容は、成三の父親の働いていたレストランが先のイタズラの件のせいでレストランへの批判が殺到して経営が困難になり、店を畳む他無いと言うものだった。

 

混乱していた成三だったが、我に返って救急車を呼んだ。

 

救急車の中で成三はただただ、その運命を呪うことしか出来なかった…。

 

そして、意識を取り戻さない母親を見ていると、病室に医者の目出素毒太が入り彼に声をかけた。

 

「君が息子の成三君だね?」

 

「は、はい…。それで、母は…」

 

毒太は呼吸を整えて答えた。

 

「いわゆるストレスによる過労ですね。これまで溜まっていたものが何かの弾みで一気に出てしまったのでしょう」

 

「そうですか…」

 

成三は俯く。

 

「何か心当たりが?」

 

「はい…。父の働いていたレストランが潰れまして…それがトリガーになって…」

 

聞くに堪えられなくなった毒太は話を止めさせる。

 

「分かりました。ではこちらで最善を尽くしますのでご家族にお伝えください」

 

「はい、分かりました。では…」

 

成三は病院から出て、駅に行き電車に乗る。

 

「…あ、忘れるところだった」

 

父親に母が倒れた、総合病院に搬送とメールを送り、外を見た。

 

紅い夕焼けが、空を燃やしていた様に見えた。

 

諏訪に着き、電車を降りても尚彼の気分は上がらなかった。

 

しばらく歩いていると、前から3人が歩いてきた。

 

それは、今日自分の父親の働いていたレストランを潰した原因である坂井洋二郎とその取り巻きの榊と丹羽だった。

 

「いやあ、あの店員の顔、マジで笑いもんだったよな~」

 

「ホントホント。お前が有名ブロガーで助かったよ」

 

「それに、名誉毀損になっても少年法で刑も軽くなって済むしな!」

 

好き放題に言いまくる3人に、成三は怒りに震えていた。

 

「お、お前らのせいで、ボクは…。ボクの家族は…!」

 

成三は考えるより先に怒鳴って3人の前にいた。

 

「ん?お前は確か俺と同じクラスの成三……」

 

「田口、どうしたってんだ?そんなに真っ赤になって震えて」

 

「何だか普通じゃないな…」

 

当然と言えば当然だが、怒る成三に訳の分からない様子の3人。

そんな3人に成三は語気を強くする。

 

「お前が、お前らがあのレストランを潰したせいで…!ボクは…」

 

感情をぶちまけたが、3人、特に洋二郎は意に介さずに臆面もせずにこう言い放った。

 

「だからどうしたってんだ?」

 

「えっ……」

 

「あんなレストラン、他にもあるんだし気にすることないだろ?」

 

「そうそう。好きなレストラン潰れて悔しい気持ちも分からんでもないが、気にすんなっての!」

 

「だよなだよな!ハハハハハ!」

 

ただ、3人の自己中心的な理由でゴミのように父親の職場を潰された成三は、悔しさで崩れ落ちるしかなかった…。

 

「いやぁ、成人する前にこう言うことやってみたかったんだよなー」

 

「今なら少年法に守られて、罪も軽く済むしな!」

 

「ホントホント。ヒャハハハハ!」

 

下卑た事を言いながら、歩いて行く洋二郎達。

成三が歩き出したのは、彼等が見えなくなった後だった。

 

ショックで今にも倒れそうな彼に、声を掛けた少女がいた。

 

そう、早苗である。

 

「成三、大丈夫?かなりフラフラしてるけど…」

 

買い物の帰りだろうか、心配そうに声を掛ける早苗だが、成三は疲労からかストレスからか、お門違いの暴言を彼女にぶつけてしまった。

 

「う、うるさいなぁ!何にも知らないくせに!」

 

早苗は、珍しく聞く成三の罵声に涙目になりながら、守矢神社に駆けて行った…。

 

大声で感情を爆発させた成三は、少しスッキリしたように家へと歩いていった。

…父親に送ったメールの文章には、まだチェックマークはついていない…

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