さて、家に帰ってきた成三は一人、罪悪感に悩まされていた。
一時の感情の暴走により、早苗を傷付けてしまった。
その事に悩んでいると突然、電話が鳴った。
prrrrrr―
早苗の親からの電話だろうか。
受話器を取ったら怒られるのではないか?
そんな気持ちに支配されて中々出られずにいると、留守電になったのかピーーという音の後に、男性の声が流れた。
「田口さんのお宅ですか。お父様が病院に搬送されましたので、お早目に総合病院までお越しください」
どうやら病院からの電話だったらしい。
成三は携帯を開き、既読のチェックが付かないメールを見て全てを悟った。
「はあ…。今日は厄日かな…」
成三は立ち上がり、深呼吸をする。
そして、早苗へのお詫びの品物を買うためにデパートまで歩いて行った。
「さて、どうしようか…」
デパートに着いた成三は地図の前で考え込んでいた。
「ま、無難にお菓子かな…」
エレベーターに乗ってお菓子が売られている階に移動する。
そして、お菓子売り場で何を買うのか考えていた。
成三は栗饅頭の入っている箱を手に取る。
「ま、これでいいかな」
栗饅頭を取って、レジに向かった。
「すみません、これ買います」
そう言って代金を払い、商品とレジ袋を受け取ってお菓子売り場を後にした。
「…そう言えば、いろいろ買っておかないとな」
成三は別のフロアに移動して、日用品エリアに行った。
「えっと…。まずは歯みがき粉だな…それに次は…」
食べ物や洗剤を次々と籠に入れる。
「……すみません、これを買います」
「畏まりました!」
会計の人が代金を計算していく。
その様を成三はボーッと眺めていた。
「はい、代金は3200円になりますね!」
「あ、は、はい!」
突然現実に戻されて、驚く成三。
そして、代金を払った。
「はい、五千円のお支払ですね。1800円のお返しとなります」
釣り銭を渡して商品を渡す。
「……ありがとうございました」
暗い表情は出さずにお辞儀をする。
「またのお越しをお待ちしております!」
笑顔でお辞儀をする店員。
成三はその笑顔から逃げるように日用品エリアを出ていった…。
「もう、これくらいでいいかな…」
一通り買い物を済ませた成三は、エレベーターに乗った。
「さて、早いとこ守矢神社に行かなきゃ……」
成三は一階のボタンを押す。
エレベーターは動き出す。
だが、自分以外の客が乗ってこないのだ。
「…妙だな、他にはもっと客がいたのに」
だが、そんなことを気にする必要もなくなってきた。
そう、エレベーターは目的階に近付いていたからだ。
「さて、もうすぐだな…」
エレベーターは、一階に着こうとしていた。
が、着かなかった。
エレベーターが止まらないのである。
「…うそ、そんなバカな」
成三は焦燥してボタンを連打する。
すると、突然ポーンと言うアラームが鳴って、アナウンスの声が響いた。
『お待たせしました、目的地に到着しました』
エレベーターが開く。
すると、見たこともない山奥の風景が広がっていた。
「……え、何で?」
震える声で誰に訊ねるでもない質問をして、エレベーターから出る。
後ろでエレベーターが閉じる音がする。
慌てて振り向いても、もうそこには何もなかった…。
「…どうすれば、どうすれば良いんだよ…」
成三は肩を落とし、大きなため息を吐いた