東方幻想奇録   作:大栗蟲太郎

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第五話


ため息幻想入り

さて、家に帰ってきた成三は一人、罪悪感に悩まされていた。

一時の感情の暴走により、早苗を傷付けてしまった。

その事に悩んでいると突然、電話が鳴った。

 

prrrrrr―

 

早苗の親からの電話だろうか。

受話器を取ったら怒られるのではないか?

そんな気持ちに支配されて中々出られずにいると、留守電になったのかピーーという音の後に、男性の声が流れた。

 

「田口さんのお宅ですか。お父様が病院に搬送されましたので、お早目に総合病院までお越しください」

 

どうやら病院からの電話だったらしい。

 

成三は携帯を開き、既読のチェックが付かないメールを見て全てを悟った。

 

「はあ…。今日は厄日かな…」

 

成三は立ち上がり、深呼吸をする。

そして、早苗へのお詫びの品物を買うためにデパートまで歩いて行った。

 

「さて、どうしようか…」

 

デパートに着いた成三は地図の前で考え込んでいた。

 

「ま、無難にお菓子かな…」

 

エレベーターに乗ってお菓子が売られている階に移動する。

そして、お菓子売り場で何を買うのか考えていた。

 

成三は栗饅頭の入っている箱を手に取る。

 

「ま、これでいいかな」

 

栗饅頭を取って、レジに向かった。

 

「すみません、これ買います」

 

そう言って代金を払い、商品とレジ袋を受け取ってお菓子売り場を後にした。

 

「…そう言えば、いろいろ買っておかないとな」

 

成三は別のフロアに移動して、日用品エリアに行った。

 

「えっと…。まずは歯みがき粉だな…それに次は…」

 

食べ物や洗剤を次々と籠に入れる。

 

「……すみません、これを買います」

 

「畏まりました!」

 

会計の人が代金を計算していく。

その様を成三はボーッと眺めていた。

 

「はい、代金は3200円になりますね!」

 

「あ、は、はい!」

 

突然現実に戻されて、驚く成三。

そして、代金を払った。

 

「はい、五千円のお支払ですね。1800円のお返しとなります」

 

釣り銭を渡して商品を渡す。

 

「……ありがとうございました」

 

暗い表情は出さずにお辞儀をする。

 

「またのお越しをお待ちしております!」

 

笑顔でお辞儀をする店員。

成三はその笑顔から逃げるように日用品エリアを出ていった…。

 

「もう、これくらいでいいかな…」

 

一通り買い物を済ませた成三は、エレベーターに乗った。

 

「さて、早いとこ守矢神社に行かなきゃ……」

 

成三は一階のボタンを押す。

 

エレベーターは動き出す。

だが、自分以外の客が乗ってこないのだ。

 

「…妙だな、他にはもっと客がいたのに」

 

だが、そんなことを気にする必要もなくなってきた。

 

そう、エレベーターは目的階に近付いていたからだ。

 

「さて、もうすぐだな…」

 

エレベーターは、一階に着こうとしていた。

が、着かなかった。

エレベーターが止まらないのである。

 

「…うそ、そんなバカな」

 

成三は焦燥してボタンを連打する。

すると、突然ポーンと言うアラームが鳴って、アナウンスの声が響いた。

 

『お待たせしました、目的地に到着しました』

 

エレベーターが開く。

すると、見たこともない山奥の風景が広がっていた。

 

「……え、何で?」

 

震える声で誰に訊ねるでもない質問をして、エレベーターから出る。

後ろでエレベーターが閉じる音がする。

慌てて振り向いても、もうそこには何もなかった…。

 

「…どうすれば、どうすれば良いんだよ…」

 

成三は肩を落とし、大きなため息を吐いた

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