Fate/Zero──Act.All Fiction   作:むい

10 / 20
「躍動感がない」とのご感想をいただきました。
 ……いや、実は私も思ってたんですよねー。((白々
 どうも戦闘描写とか出来なくて……
 しかも、前半戦の内に大活躍しちゃうと『アンチ・ヘイト』の色が濃くなっちゃうんですよ……
 難しい課題ですね。((他人事のように

──そんなわけで、こんな言い訳をします。

『躍動感のなさは前半戦のみ!
 後半戦は無双に近いゴタゴタが起こりますのでお楽しみに!
 さあ、ここからは延長戦──とかそんな予定はございません!』

 それでは本編、張り切ってどうぞ!


第09話 王の証

『──かかった。』

 

 

 三人の王が各々の王道を語っている最中、ふと球磨川禊が立ち上がる。

 そのまま背を向け、三騎より離れていく。

 

 

「おい、アサシン。どうした? まだ問答は途中だが──」

 

『僕は失念していた。

 主催の征服王さん。場所を提供してくれた騎士王さん。酒宴に相応しいお酒と、僕の我が儘に付き合ってお茶まで出してくれた英雄王さん。

 みなさんが用意してくれていたから何を思うことなく参加していたけれど、僕は何も提供できていない。だから──』

 

 

 ひとつ肴を用意しよう。

 そう言って、霊体と化して消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 球磨川禊の目的地は、キャスターの工房だった。

 彼の発した言葉の意味を考えれば、当然なのだろうが……

 

 そして、キャスターは工房の中心で螺子に貫かれていた。

 細く、長く、微塵の実用性も感じられない──ただただ貫く為の螺子。

 

 瞬く間もなく相手を壁に張り付ける。

 地より螺子を出現させ、相手を貫く。

 

 それらは、球磨川禊がよく使う拘束術のようなものだ。

 

 

『やあ、キャスター。僕は君に会うのを楽しみにしていたけれど、どうだろう? 君は今どうしてそうなってあるのか、わかっているかな?』

 

『あ……ぁ……ああぁぁぁ……』

 

 

 キャスターの返答に、球磨川禊は首を振る。

 言葉を成していないというのも一因だったが、それ以上の不愉快さが彼を侵していた。

 

 

『言っておくけれど、僕は君と戦うつもりなんてない。ただ、ちょっと酒宴に参加してほしいだけなんだよ』

 

 

 キャスターの腕をつかみ、空いた手で螺子を構える。

 先端の潰れた、不格好な螺子。

 傍目には、散々刺殺した後の死体をまだ嬲ろうとしているように見えたのだろう。

 それを見て、ひとりの青年が叫んでいた。

 

 

「旦那! 旦那!!」

 

『……きみが彼のマスターだね。思った通りに期待外れだ。でも、まあ……丁度いいから、君も連れて行こうかな』

 

 

 そのまま、構えた螺子を投げつける。

 

 投擲。

 

 中距離から遠距離の相手に多用する戦闘スタイルだが、今は単純にキャスターから手を離せないから投擲したのだ。

 

 当然、青年は回避した。

 宙返りの要領で宙を舞う。

 ──けれど。

 

 

『ただ避けるだけなら、跳躍じゃなくても良かったはずだ。そんな遊びのような反応。僕からすれば明確な「弱点」だよ。──そして不要な跳躍の結果、僕に着地点を晒すことになる。だから僕は、そこに向かって投擲するだけさ』

 

 

 言いながら、球磨川禊は先端の潰れた螺子を投擲する。

 空中でそれに反応できるほど、青年は芸達者ではなかった。

 そもそも、それが出来る一般人など極少数だろう。

 故に彼の敗因は『運が悪かった』という一言に尽きる。

 

 

『────「大嘘憑き」』

 

 

 着地と同時に身体へと埋まる螺子の感触。

 そんな馬鹿げた余韻に浸りながら、青年は静かに意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 球磨川禊が消えてから戻ってくるまで、五分にも満たなかった。

 

 飄々と軽口を叩く彼のことだ。

 期待していたわけではなかったが、戻った彼は手ぶらだった。

 

 

『やあやあ、お待たせしちゃいました。割りと上等な「肴」だから、みなさんが気にいること間違いなし! 期待してください』

 

「期待も何も……」

 

 

 貴方は何も持っていないじゃないか。

 セイバーは言及する。

 それは少なからずイスカンダルも思っていたことなので異論はないのだろう。

 

 その反応を待っていた、とばかりに球磨川禊は微笑する。

 

 

『いやいや。そろそろ届く頃でね──三分というのは、思ったより長い。みなさんのびっくりする顔が目に浮かぶなあ!』

 

 

 言い終わると同時に、何かの落下音。

 見れば、彼の背後に動かない人影がある。

 すべてを察したイスカンダルは、彼を凝視する。

 

 

「…………アサシン。まさか」

 

『そう。キャスターと、そのマスター。討伐することで預託令呪を寄与されるサーヴァント。聖杯戦争を勝ち抜くなら、令呪の一画がものを言う。

 この瞬間、王の器を語る酒宴には──極上の肴だろう?』

 

 

 口元を歪ませ、奇形の笑みを浮かべながら。

 されど、その双眸に哄笑の色はなく。

 球磨川禊は、そう言った。

 

 

「当然だ。」

 

 

 先に口を開いたのは、やはりというか英雄王──ギルガメッシュ。

 

 

「目先の勝利? 強さを競う? 下らん。すべては凡夫の愚行。元より強さなど計るものではなく、王か、それ以外かの話であろう?

 そして──慢心せずしてなにが王か」

 

 

 英雄王。

 半神半人の英雄であり、人を超えたモノとしての王。

 彼が語る王道は。覇道は。

 人が歩むには──あまりにも酷だ。

 

 その言葉に、球磨川禊は落胆した。

 笑みを消し、あからさまな消沈を示す。

 

 

『……なーんだ。「我先に」とキャスターを奪い合う、志布志ちゃん好みの昼ドラ展開を期待したんだけれど……やれやれ。こんなことさえ僕の思った通りにならないのか──また勝てなかった』

 

 

 それだけ言って、キャスターに刺さっていた螺子を引き抜いた。

 

 それを期にキャスターは立ち上がり。

 目も虚ろに、彼の魔導書から魔力を溢れさせる。

 不愉快な音と共に、海魔の大群が現界した。

 

 

『イスカンダルさん。貴方は、英雄王を認めていたみたいだけど……騎士王さんには言いたいこと、言い切ったのかな?』

 

「……否。セイバー、アーチャーよ。宴の最後の問いだ。」

 

 

 イスカンダルは一陣の風と共に、戦装束を纏う。

 彼はここで、王としてキャスターを討つらしい。

 

 

 

 

 

 

 

「王とは、孤高なるや否や?」

 

 

 

 

 

 

 

 騎士王も英雄王も、各々の言葉で返す。

 しかし、それの意味するところは同じだった。

 

 孤高だ。

 

 孤独と孤高を履き違えた、などと愚かなことは有り得まい。

 仮にも一国一城の主。

 その魂を英霊にまで召し上げられた英雄。

 

 そんな二人の言葉を、征服王は否定する。

 

 王が孤高なのではない。

 ましてや、王が孤独なのではない。

 

 城の中庭を、砂漠に塗り替える。

 それは、人の臨界を極めた彼の──王の証。

 

 

 

「見よ、我が無双の軍勢を!」

 

 

 

 照りつける太陽と、荒野の大砂漠。

 そこに居並ぶ騎士は、果たして幾百人であろう。

 

 

「肉体は滅び、その魂は英霊として『世界』に召し上げられて、それでもなお余に忠義する伝説の勇者たち。

 時空を越えて我が召喚に応じる永遠の朋友たち。

 彼らとの絆こそ我が至宝!

 我が王道!

 イスカンダルたる余が誇る最強宝具────『王の軍勢』なり!!」

 

 

──対軍宝具『王の軍勢』アイオニオン・ヘタイロイ

 征服王イスカンダルの持つ切り札たる、召喚の固有結界。

 晴れ渡る蒼穹に熱風吹き抜ける広大な荒野と大砂漠を心象風景とし、彼が生前率いた近衛兵団を独立サーヴァントとして召喚して、師団規模の兵団で蹂躙する。

 自身は魔術師では無いが、彼の仲間たち全員が心象風景を共有し、全員で術を維持するため固有結界の展開が可能になっている。

 

 時空すら越える臣下との絆が宝具にまで昇華された、彼の王道の象徴。

 彼の持つカリスマ性の最たる具現。

 

 その場に居た三騎は、各々の反応を返す。

 

 セイバーは感慨に耽り。

 ギルガメッシュは薄く笑みを浮かべ。

 球磨川禊は見飽きたとばかりに首を振る。

 

 

「王とは!

 ──誰よりも鮮烈に生き、諸人を魅せる姿を指す言葉!

 すべての勇者の羨望を束ね、その道標として立つ者こそが、王。

 故に──! 王は孤高にあらず。

 その偉志は、すべての臣民の志の総算たるが故に!」

 

「然り!」「然り!」「然り!」

 

 

 王の言葉に、臣下は揃って同意する。

 彼らが心象風景の共有を果たせる一因であろう。

 

 イスカンダルは愛馬に跨り、剣を抜く。

 

 

「────蹂躙せよ!!」

 

 

 尽きる事なき無数の海魔と、尽きる事なき忠義の軍勢。

 その結末は、軍師の逃亡によって幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

「事前の予定とは大幅にかけ離れているが──此処から先は第二局面だ。ギルガメッシュを動員し、対象を駆逐していく」

 

 

 対戦する五騎のサーヴァント全ての情報を、アサシン──球磨川禊との感覚共有によって得た言峰綺礼。

 その情報はそのまま、遠坂時臣の耳へと入る。

 

 言峰綺礼が球磨川禊にキャスター討伐を命じたのは、実のところ情報収集の意味合いが強かった。

 全陣営が狙っているキャスターを追えば、他の陣営と鉢合わせする可能性は十分にある。

 故に、こちらの意図しない行動をとる事に執念を燃やしているとしか思えない球磨川禊に確固たる指針を与えて放置する。

 情報が拾えれば御の字──といったところだったのだが。

 

 

「……まさか、すべてのサーヴァントと鉢合わせするとは」

 

 

 言峰綺礼の思惑ではなく遠坂時臣の戦略だが、球磨川禊は本当に手のひらで踊っていたのだ。

 それを知った彼は、後にこう言う。

 

 

『まーた知らないところでも負けていたのか。やれやれ。「安心院ゲーム」を思い出すよ──また勝てなかった』




次回「未遠川」
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