Fate/Zero──Act.All Fiction 作:むい
「エクストラクラスのほうが良かったのではないか?」というご感想をいただきました。
……ふっ。もう遅い! 時の歯車は回り出している!
いえごめんなさい調子に乗りました。
……えーっと。実を言うと、消去法です。
不遇なサーヴァント──じゃなくて、ハサン殿。
彼以外に退場させられるような要素を持ったサーヴァントが居なかったのです!
あと『EXTRA』のことみん神父が面白くて!
そんな理由かよ!!
仕方ないんだ!
なんでエーテル買って「温めますか?」なんだよ!?
……『めだか箱』からは、『気配遮断』スキルのところでも仄めかしましたけど、戦挙の会計戦が理由です。
思い当たらない方は、読み返してみてください。
……学ランの色とかではありません。
断じて違います。
では、本編どーぞ!
酒宴の幕引き。
ライダーとキャスターの対戦は、キャスターの逃亡により終結した。
固有結界から脱出できる程の宝具だとは思っていなかったらしい。
『やれやれ。実力を見誤ったなあ……とんでもない宝具だ』
「幕引きは興醒めだったな。なあ、セイバーよ」
征服王イスカンダルは言った。
騎士王を冠するセイバーを、王とは認めないと。
彼女の抱く王道は、呪いだと。
イスカンダルは剣で空間を切り裂き、雄牛と戦車を出現させる。
酒樽とウェイバーを戦車に投げ込み、自身も乗り込む。
そのまま一瞥もせずに雄牛に鞭を入れて宙へと飛び立った。
彼女は唇を噛み、征服王が視界から消えるまで睨みつけていた。
ギルガメッシュは嘲笑と共に、彼女を道化だと言った。
だが、人の身に余る『それ』を背負う彼女に──盟友を思わせる彼女に、興味が湧いたと。
実際、彼は決めていた。
この女を自身の所有物(もの)にすると。
黄金の粒子と哄笑を残し、英雄王は去って行った。
残るは球磨川禊とセイバーのみ。
セイバーは球磨川禊を睨む。
二人の言葉に思うところがあったのは、その瞳を見れば。
あるいは、その激情を抑え込まんとする態度を見れば明らかだった。
球磨川禊は口を開く。
『おいおい。そんなに睨まないでくれ。僕は君に何も言わないよ。この聖杯戦争、一番弱いのはバーサーカーさんだからね──僕は、彼の「望み」を優先しているだけだ。だから、セイバーさん。
──バーサーカーさんと、ちゃんと向き合ってあげてよ』
わざとらしい笑みではなく、寂しげな表情を浮かべた。
「彼は、貴女の『決断』を待っている。
裏切りは──彼の心を湖に沈めてしまったんだろう」
その言葉に含まれたワード。
それらが重なり、まったく見えていなかった現実を突き付ける。
「ランスロット…………!」
セイバー──アーサー王は、彼の真名に辿り着く。
否。そんな生易しいものではなかった。
かつて、円卓の騎士を率いたアーサー王。
その一席を担う騎士──サー・ランスロット。
それが、バーサーカーの正体だというのだ。
「彼は……それほどまでに! 私を見れば襲い掛からずに居られぬほど恨んでいるのか!」
『…………被害妄想はやめろよ。』
セイバーの慟哭は場違いで、お門違いだ。
球磨川禊はそう告げる。
『セイバーさんがどう思おうと勝手だけど、バーサーカーさんの気持ちまで踏み躙らないであげてよ。僕の仕事は、ここまでだ』
例によって、セイバーに背を向けて歩き出す。
彼の癖なのだろうか。
浮かべた表情も。発した声も。
その言葉も。その行動も。
すべてが嘘で塗り固められたような彼が、ランスロットとアーサー王の関係を取り持とうとしている。
英雄王は騎士王を道化と称したが、彼のほうが余程道化だった。
『じゃあね、セイバーさん。また明日とか!』
そう言って消えた背中に。
彼に抱いていた嫌悪を、セイバーは感じなくなっていた。
ジクジクと痛みを感じない程に優しく。
心が腐っていく感触さえ、意識できなかった。
久方ぶりに戻った地下室のような場所には、心地よさそうなソファがいくつか並んでいた。
『……こんなソファ、前まであった?』
「ここに長期滞在しているような物言いをするな。そもそも、前からあったものだ」
言峰綺礼の冷静な反応も、彼には懐かしく思えた。
『……まだ7日目だぜ? こんな感慨に浸って良いのかな?』
「知らん。それはそうと、残存魔力がかなり減っているな……宝具の使い過ぎか?」
『そうかもねー。まあ、何十人もの「死」を「なかったこと」にすれば……この身体じゃあ消耗が激しくて当たり前かな。あ、綺礼ちゃん。僕、少し寝るから何かあったら起こしていいよ』
「……わかった」
令呪の最後の一画を、言峰綺礼は躊躇なく使った。
眠りこける球磨川禊に手を添え、令呪の魔力をそのまま流し込む。
ある種、無茶な使い方だ。
魔力の供給など、マスターが魔力を供給量を増やせば良い話なのだから。
しかし、並の魔術師──それも薄く広く魔術を学んできた言峰綺礼には、その素養が欠けていた。
故に、令呪そのものを魔力の塊として、球磨川禊に補給する。
魔法の域に届かんとする奇跡の一端を流し込んだのだ。
これでも疲労が治らないはずはない
そして、酒を呷るギルガメッシュに──一種の『カウンセリング』を受けている。
すると、先程使い切った筈の令呪の跡が痛む。
焼き印を押されたように。
初めて令呪が現れた時のように。
令呪の再配布。
それは本来、マスターに欠員が出た場合に素養ある者が受ける聖杯の選定だ。
まだサーヴァントとの契約が終わっていない言峰綺礼に、なぜ令呪の再配布が……
ギルガメッシュは、愉しそうに口元を歪めた。
「やあ、球磨川禊くん。
最近は頻繁に会っていたのに、急に来なくなって心配したよ。
おっと、むしろ会わないほうが良いのかな?
死んでしまうと僕に会うことになる。
眠っても僕に会うことになる。
まさに寝ても覚めても、というやつだ。
わっはっは。……冗談だよ。
ところで、球磨川くん。
未遠川で魔導師が、何やら一大センセーションを引き起こそうとしているみたいだぜ?
僕としては、冬木が壊滅してしまう以外の結末が見たいんだよ。
故に、本来はしないような『真相の開示』を君にしているというわけだ。
うん? そうだよ?
魔導師を止めても、『他の奴』が冬木に大災害を引き起こす。
ふふ。二重の壊滅というわけだ。
さあ、球磨川くん。
冬木の地を救うのだ。
なんならついでに、聖杯をぶっ壊してくれても構わない。
うん? まあ、そうだね。
『猿の手』を引き合いに出すまでもないけれど……
願望の成就というのは、必ずしも『望んだカタチ』になるとは限らないから。
むしろ『希望を願った罰』とでも言うべきかな?
君が『ろくでもないこと』を願わないよう、僕は精々祈るとしよう。
それじゃあ、球磨川くん。出撃だ」
目が覚めた場所は、ソファの上。
最初の二回は教会だったのに、最近はその場のままだ。
……手抜きだろうか?
話し声のするほうへ目を向ければ、言峰綺礼と遠坂時臣が何やら話をしている。
ギルガメッシュは心底嫌そうな表情だった。
恐らく、彼女が言っていた『未遠川』でキャスターが何かをし始めたのだろう。
二人の会話の断片によれば、情報は以下の四つ。
他の四騎もキャスターに迫っている事。
キャスターは巨大な海魔を召喚し、自らその肉の壁に閉じこもった事。
海魔は、対人宝具や対軍宝具では傷つけてもすぐに再生してしまう事。
海魔を打倒する以外の方法としては宝具のを直接狙うしかないが、引きこもったキャスターに攻撃が届かない事。
未遠川の河原に着くと、すぐに『それ』が例の『海魔』だとわかった。
……というか、間違えようがない。
なんというか……蛸のようだった。
ヒトデやタコなんかの海の生物が混ざり合ったような外見をしている。
後に安心院さんに解説して貰ったところによれば、ある神話の最上級に位置する神様を模した怪物らしい。
……威厳のない神様(仮)だ。
そして河原に目を向ければ、既に三騎が居た。
セイバー。
ライダー。
ランサー。
三人で何をしているのかと問えば、イスカンダルの提案した停戦協定と対海魔同盟を二人が受け入れたところだという。
「お前はどうする? アサシン」
『どうだろう? 僕は誘って貰えるなら喜んで仲間になるタイプだけど、主人公の倒した敵がなあなあで一緒に居る展開は嫌いなんだよねー』
「……ふざけているのか? アサシン」
初めて交わした会話が『発言をたしなめられる言葉』だというのも、また対人関係の形成に失敗した──『勝てなかった』だと言えるだろう。
こんな些細な事にさえ勝てない彼が参加すれば、対海魔同盟は一瞬で瓦解するような気がしてならない。
しかし、そこは流石の征服王。
英霊を『その場のノリで臣下に誘ってみる』という、なんとも豪快な──というか。
本人以外の大半が呆れるような手段を以て『絆』を手にした王。
そんな些細な事を気にする器ではなかった。
「……ならば是非もない。此度の海魔同盟、貴様も加わるが良い──アサシン」
『うん。誘ってくれてありがとう、イスカンダルさん。とても嬉しいよ。じゃあ、作戦を聞いても良いかな?』
作戦は、単純に言うと三工程。
一.空と水面を駆ける二騎がキャスターの宝具を露出させる。
二.ランサーが河原より槍の投擲で宝具を破壊する。
三.それらをこなしている間に、マスターを討つ。
そして結果。キャスターとの直接戦闘を避け、自壊を狙う。
対サーヴァント戦では、魔力の供給源たるマスターを狙うのが確実だというのは周知の事実だが──
『三番目。意味があるのかな?』
「ん? どういうことだ」
『えーっと……わからないかな? キャスターはマスターからの魔力供給で現界しているわけじゃないでしょう?』
「……サーヴァントはマスターからの魔力供給なしには現界できない。これは前提だ」
『落ち着いてよ、ランサーさん。だから、供給源がマスターである必要はないでしょう? 現に僕はキャスターのマスターを見ているけれど、キャスターに供給できる程の魔力はない。むしろ……』
「……宝具か。あの魔力が溢れ出す魔導書。あれが供給源になっている」
『そう。つまり、人間のほうを殺す意味はないでしょう? 無用な争いが嫌いなセイバーさんとランサーさんなら、わかるはずだ』
「しかし、聖杯に選ばれたマスターだぞ? また令呪を持ち、殺戮を繰り返さんとも限らん」
『…………ランサーさん、人間不信すぎ。じゃあ良いよ、わかった。その作戦でいこう。僕も適当にいちゃもん付けただけだし。週刊少年ジャンプでも、悪役は倒されるのが王道だしねー』
「なに、王道と言ったか」
『そこに反応しないでよ、イスカンダルさん』
「ふっ──まあ良かろう。では、先陣は余が切ろう!」
雄牛に手綱を入れ、天を駆けるイスカンダル。
しかし、マスターのウェイバーは河原で見守る事となっている。
次いでアーサー王が湖の精霊の加護により、水面を駆ける。
「決着をつけるぞ──キャスター!」
次回「幻想の光」
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