Fate/Zero──Act.All Fiction 作:むい
とても無気力な私は、何よりの励みにさせていただいております!!
本日より、順次お返事を書かせて頂いてまして……
球磨川くんが好評で嬉しいです!
妄想を重ねた甲斐がありました!!((ぇ
これからも宜しくお願いします!!!
それでは、本編もいよいよ後半戦。
──張り切ってどーぞ!
征服王と騎士王による攻撃は海魔に致命傷を与える事が出来ず、ただただ再生されていくばかりだった。
「キリがないな……」
そして再生能力ばかりでなく、無数の触手が行動のすべてを阻むのだ。
現に、イスカンダルは雄牛を。
アーサー王は自身の四肢を、一度捕らえられている。
これでは、作戦が進まない。
現在河原に居るのは四名。
セイバー陣営より。
マスター代理──アイリスフィール。
ランサー陣営より。
ランサー。
ライダー陣営より。
マスター──ウェイバー。
アサシン陣営より。
アサシン──球磨川禊。
彼らが観ていたのには、理由がある。
マスター側のアイリスフィールとウェイバーは、サーヴァント同士の戦闘に関われない。
ランサーは岸辺より、宝具を狙わねばならない。
そして、球磨川禊は──泳げない。
「貴様、それでも英霊なのか……?」
『おや、ランサーさん。それは愚問だね。泳げなかったら英霊になれないとは、大した偏見だ。いつの世も、そういった思想が戦争を、格差を引き起こしてきたというのに。やれやれ、まったくわかっちゃいない。あるいは、そんな排他的な思考こそが英雄の本質だとでも言いたいのかな?』
「そこまでは言っていない……まあ、その意見は一理あるが、泳げない事を正当化する為に社会を持ち出すな」
傍目から見れば、ただの談笑に他ならない。
そして、アーサー王とイスカンダルが河原に戻って来た。
どうやら、一度態勢を立て直すつもりらしい。
そして。イスカンダルはこの泥試合にケリをつける為に『王の軍勢』を使い、海魔を足止めするからその間に解決策を見つけろという。
なんと無理ゲー。
無茶振りにも程がある。
「そうだな……半刻は稼げよう。それ以上は『1時間だ』
球磨川禊が、イスカンダルの言に割り込む。
『イスカンダルさん。あの海魔は僕が螺子伏せる。だから、貴方は「場所」を提供してほしい』
──此処じゃ被害が大きいからね。
そう呟く球磨川禊は、どこか焦っていた。
わざとらしい笑みを浮かべてはいるものの、明らかに何かが違った。
「……良かろう。戦車に乗れ。なんならキャスター討伐の誉れを独占しても良いぞ?」
『あはは。僕にそんな大役を押し付けるなんて、いじわるだね──まあ、やるだけやるけど……イスカンダルさんだって、出来るならやって良いんだよ』
その言葉を最後に、戦車を駆る。
海魔の付近まで迫り──三騎と一匹は、『世界』から隔離された。
土煙を上げる砂漠と、晴れ渡る青空。
足を踏み入れたのことは二度しかないが、似たような感覚は日常的に経験していた。
──心の中の教室。
彼女が作る空間は、きっとこの固有結界と呼ばれる空間と似たようなものなのだろう。
背後に居並ぶ騎士たちに手を振りながら戦車を降りる。
なんだかハリウッドセレブのような気分になったが、生憎ここにレッドカーペットはなかった。
……敷いて言うなら、これから血の海が出来るかも知れないが。
『海派と言えば、やっぱり志布志ちゃんか。江迎ちゃんも蛾々丸ちゃんも山派だったしねー。……僕はそのどちらにも行けないし、どちらでも作れるというわけだ』
「準備は良いか? 球磨川禊」
『うん。じゃあ、騎士さん達は合図するまで動かさないでね──』
そう言うと同時に、球磨川禊は駆け出す。
海魔もそれに反応したのだろう。
ゆっくりと移動しながら、触手を放つ。
迫る触手を避ける事は難しくなかった。
乱雑にしか狙いを付けられていないのだろう。
学ランは破れ、ほつれ、濡れ、段々と動きを制限していく。
『……海魔と呼ばれている割りに、砂漠でも川でも動きはそんなに変わらないね。でも、足場が違う。そんな当然の違いは──誰から見ても明確な弱点だよ』
100m以上あった距離を、迫る触手を避けながら疾走し。
触手の付け根を足場に、上部へと駆け上がる。
頂上に近づくと、両手に螺子を構えた。
その螺子は、工房でキャスターを貫いた螺子と同じ形状のもの。
肩で息をしながら、頂上へ一足で跳ぶ。
その海魔は、頂上にこそ口部があった。
鮫のような無数の歯が無間地獄のような構造で奥へ奥へと続いていた。
そんな口部にビキビキと音をたてながら伸びる螺子を向け、呟く。
『────「却本作り」』
瞬間。一本の螺子が口部から胴を貫き、砂漠の地へと縫い付ける。
──対人宝具『却本作り』ブックメーカー
球磨川禊の持つ、本来の──あるいは、生来の異能。
螺子で貫いた対象の性能を、ステータス・保有スキル・属性・宝具に至るまで、すべてを使用者と『同じ』にする宝具。
本人の言によれば「強さを弱さにする過負荷」。
彼がかつて抱いた『気に入った相手と、どこまでも堕落する』という思想の一端が具現化したもの。
それはつまり、使用者が最低だからこそ意味のある宝具であり──彼だからこそ意義のある宝具。
対象が対象たる要素を排除し、自身の要素で代替として植え付ける。
それは個性の剥奪に等しく、まさしく封印と称して過言ない代物だった。
『却本作り』で海魔を串刺しにした彼は、そのまま反対側の触手へと着地する。
そして今度は反対側の螺子を向け、貫く。
また螺子を取り出して貫き。
貫き、貫き、貫き、貫き、貫く。
螺旋階段のように渦を巻いて駆け下りながら無数の螺子で貫き、海魔の何もかもを制限する。
そんな荒技を、着地するまでの数秒で遂げた。
戦闘と土埃で荒れまくった学ランが、『大嘘憑き』で戻(なお)っていく。
そのまま地面に座り込み、ケータイをいじり始めた。
『君に恨みはないし、僕はキャスターに用があるだけだ。だから、交渉してあげる。……彼を吐き出すと言うなら、君の封印を解いてあげても良い。断るなら、キャスター諸共このまま世界と世界の狭間を牢獄にして永劫の時を過ごしたら?』
世界と世界の狭間。
海魔は今、固有結界という『世界』とは違う空間だからこそ『却本作り』と『大嘘憑き』の二重封印を施されても尚、現界できている。
そして固有結界とは、その内部を『世界』とは違う法則で満たした空間でもある。
そんな固有結界が閉じてしまったなら?
『世界』のあらゆる法則が海魔を襲い、現界したままに『存在』を封印するだろう。
文字通りの無間地獄だ。
勿論、海魔にその言葉が通じるような言語能力はない。
そして、それで良い。
球磨川禊の言葉はキャスターに向けられたものなのだから。
『精神汚染』のスキルによって一種の狂人と化している彼だが、それがわからない程に無知ではない。
なにせ彼に与えている知識は、球磨川禊のそれの十倍に匹敵するのだから。
『……あんまりグズグズしてると、外にいる僕たちの仲間が、君ごとキャスターを討つ方法を見つけちゃうかもなあー』
「……アサシン」
『何かな? イスカンダルさん。僕は今、彼との交渉で忙しいんだけど』
「いや。お前今、その機械で遊んでいただろう……余のマスターから連絡が届いた。指定した時間に、固有結界を解除する」
『ふうん……きっと、提案したのは衛宮さんだね。この分じゃ、マスターの子は殺されちゃったかな? まあ、どっちでも良いかなー。……彼も満足してるだろうし? そんなわけで、もう時間はないみたいだよ? キャスター』
そして、異変が起きた。
すべてのすべてを封印され、存在を「なかったこと」にしたはずの海魔が──再び動き出したのだ。
『……うっわあ。これは予想外だ……安心院さんでも解くのに三年かかったのに、解かないままで動くつもりかよ──また勝てなかった。……イスカンダルさん』
「わかっておる! ────蹂躙せよ!!」
征服王の一声で、騎士たちが海魔へと押し寄せる。
ただし、球磨川禊の見解には誤りがある。
この場において彼の宝具は、その効力を十全に発揮していないのだ。
先の『却本作り』の使用で、残存魔力が軽くガス欠状態だった彼は、無意識に類似宝具を使用していたのだ。
乱発する『大嘘憑き』の代わりに、『劣化大嘘憑き』を。
しかし、『却本作り』の効力だろう。
騎士たちの繰り出す攻撃で負った傷を、海魔は再生していない。
これなら、キャスターを引き摺り出すのも時間の問題だろう。
『……イスカンダルさん。その「時間」って、あと何分くらい?』
「──あと40秒だ」
『そう。……押し切るには微妙な時間だね』
海魔の抵抗も虚しく、40秒という刻限は──あっという間に過ぎた。
次回「騎士王の威光」
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