Fate/Zero──Act.All Fiction   作:むい

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第12話 聖女と共に

 キャスターと海魔が『王の軍勢』に呑まれる前に、『それら』を含めた戦況を眺めていた者が七名。

 

 セイバー陣営より。

 マスター──衛宮切嗣と。

 助手──久宇舞弥。

 

 ランサー陣営より。

 マスター代理──ソラウ。

 

 アーチャー陣営より。

 マスター──遠坂時臣と。

 アーチャー──ギルガメッシュ。

 

 キャスター陣営より。

 マスター──雨宮龍之介。

 

 アサシン陣営より。

 マスター──言峰綺礼。

 

 海魔を一瞥した遠坂時臣は、ギルガメッシュに懇願した。

 あれを倒すには一撃で雌雄を決す程の宝具──対城宝具以上の威力を以て滅するしかないのだ。

 

 そして、英雄の原初たるギルガメッシュはあらゆる宝具の『原典』を所有する。

 そんな彼の持つ、比喩でなく『天地を切り裂いた』剣を以ってすれば、あの海魔程度なら屠れぬ筈もないのだ。

 

 しかし、ギルガメッシュに剣を抜く気はない。

 彼が『全力で相手するに相応しい』と認めた敵対者にしか使用しないと決めているのだから。

 

 故に遠坂時臣は困り果てていた。

 『キャスター討伐の功績に対する褒賞として預託令呪を寄与する』というのは、遠坂時臣と言峰璃正が決めたルール。

 

 預託令呪の寄与に不自然がないルールを敷き、あらゆる英霊の弱点を突けるギルガメッシュを以って掃討する。

 

 結果。ギルガメッシュの存在を誇示し、遠坂時臣は令呪という最高峰のアドバンテージを得る。それが目的だ。

 

 しかし、遠坂時臣の下手な懇願の結果。

 ギルガメッシュは憤り、先刻海魔に向けて放った宝剣宝槍の七本さえ「汚らわしい」と回収する気を失っている。

 

 絶望的だ。

 

 このままでは、他のマスターに預託令呪が渡る。

 ギルガメッシュを使えない今、それを阻止できるのは──

 

「……綺礼のアサシンを使うしかないか」

 

「あの雑種に、あの塊を消す事など出来まい──綺礼との魔力供給が絶たれて久しいのだからな」

 

「……王よ。今、なんと?」

 

「聞こえなかったか? 綺礼とアサシンの契約は切られている。令呪の再配布もあったしな──大方、あの宝具が原因であろうよ」

 

「…………」

 

 初耳だった。

 最近はアサシンを見ていなかったが、綺礼の命でキャスター討伐と情報収集に従事しているものだとばかり──だとするなら。

 

 

 

──今、アサシンはどうやって現界している?

 

 

 

 そして、虎視眈々と『それ』を狙う魔術師が居た。

 

 最後の陣営──バーサーカー陣営。

 マスター──間桐雁夜と。

 バーサーカー──サー・ランスロット。

 

 間桐雁夜は口元を歪め、呟く。

 

「──やれ、バーサーカー」

 

 低く唸る絶叫が周囲に木霊した。

 遠坂時臣はそれを逸早く察知し、ギルガメッシュに傅く。

 

「王よ。不埒者が現れたようです。マスターのほうは私が誅を下しましょう。然らば、サーヴァントの相手をお願い致したく──」

 

「許す。我も、あの狂犬には辟易していたところだ──これを期に、少し躾けてやろう」

 

 そして、遠坂時臣は空を飛ぶ宝具から飛び降りる。

 簡単な魔術を使って落下速度を調整し、ビルの屋上に着地した。

 そこには、やはり──

 

「……間桐雁夜。お前には失望も感じなかったが、今更何をしている? なぜ聖杯戦争にお前如きが参加している?」

 

「時臣……時臣…………時臣いいいいぃぃぃ!!」

 

 会話が成り立たない。

 地を這う蟲が、間桐雁夜を庇うように急速に羽化する。

 

 間桐の刻印蟲。

 

 不完全ながら、間桐雁夜はそれを使役できるようだった。

 ……しかし。

 

「────我が敵の火葬は苛烈なるべし」

 

 純正の魔術師たる遠坂時臣に、急造の魔術使いたる間桐雁夜が敵うはずもなかった。

 刻印蟲は宙に浮く火で以って焼き尽くされ、術者の間桐雁夜をも焼く。

 

「あああああああぁぁぁっ!!」

 

 文字通りの火達磨となった彼は、身体を地に擦り付けて消火を試みる。

 だが、転げ回るだけで火が消えるのは稀だ。

 

 そのまま、間桐雁夜はビルの屋上から──物語の舞台から、転落した。

 

 

 

 

 

 

 

 川を占拠する海魔が消えたのを良いことに、英雄王と狂戦士は好き勝手な空中戦を繰り広げていた。

 

 海魔殲滅の為に派遣された戦闘機を、バーサーカーは『騎士は徒手にして死せず』で自身の宝具としたのだ。

 

 ギルガメッシュは所有する宝具の『原典』の一つ、古代インド神話にその名を残す空中戦艦の原典──『ヴィマーナ』を駆る。

 

 そして、その空中戦は意外な結末を迎える。

 

 ランサーが疑似宝具と化した戦闘機の上に現れたのだ。

 

「バーサーカー。これ以上の狼藉は許さん。このまま我等が騎士道の邪魔立てを続けるというのなら──!」

 

 言い切らぬうちに──疑似宝具へと、彼の紅の長槍を突き立てた。

 それにより戦闘機の宝具化が解除され、バーサーカーの制御を離れた近代兵器へと戻る。

 不安定なグライダーに成り下がった戦闘機はバーサーカーとランサーを振り落とし、二騎はそのまま落下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 ランサーの代理マスター──ソラウは不満を抱いていた。

 

 ランサーは自身を「危険な戦地に連れて行けない」と言ったが、それは遠回しに「足手まといだ」と言われたようなものだ。

 

 彼と肩を並べて戦いたい──否。

 ただ、彼と一緒に居たい。

 

 ケイネスという婚約者が居る身でありながら、ソラウはランサーを愛してしまっていた。

 

 ランサーの『魅了』──その、呪いとも言うべき加護の影響を受けているのだ。

 しかし、本人に自覚はない。

 当然だろう。『これ』は『そういうもの』なのだから。

 

 そして。自身の愛が『強制されたもの』だと疑う人間が、この世界に一体どれほど居るというのだろう?

 

 そして、そんな思索に耽っていたが故に──彼女は。

 

「……はい。対象を確保しました。はい。……令呪を? ……わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 衛宮切嗣の提案はセイバー──アーサー王の威光を示してしまう事となる。

 それは彼にとって、出来れば避けたい事態だった。

 しかし、策が唯一ならそれを遂行する。

 それが衛宮切嗣の『方針』だ。

 

 例えそれで不利になろうとも、現状で既に他の五騎の真名を看破している。

 挽回は十分に可能だろう。

 

 固有結界を指定の座標で解除し、海魔を特定のポイントに誘い込む。

 そして、セイバーの持つ対城宝具──『約束された勝利の剣』を以って、海魔ごとキャスターとその宝具を掃討する。

 

 アインツベルンの城にてセイバーが剣を抜いた時は不発だったが、それはあくまで例外だろう。

 

 宝具とは『奇跡の具現』。

 それを妨害する存在など、そんなに数が居るとは思えない。

 幸い、アサシンは固有結界の中だ。

 前回の二の舞いになる事はないだろう。

 

 セイバーが水面に立ち、剣を頭上に構える。

 

 纏う風が霧散し、刀身が黄金に輝く。

 周囲からも黄金の粒が現れ、場を満たしてゆく。

 

 と同時に空間が裂け、海魔が水面に降り立つ。

 セイバーはその面持ちを崩さず、敵を見据える。

 

 そして、彼の伝説を象徴する聖剣を振るう。

 

 

 

「────『約束された 勝利の剣』!!!」

 

 

 

 彼女の『竜の因子』から生まれる魔力を『光』に変換し、収束と加速を以って運動量を増大。

 その威力は、光の断層による『究極の一撃』を放つに至る──

 

 

 

 

 

 

 

 肉壁の内側にも届く、まばゆい光を見つめ──ジル・ド・レェは独白する。

 

「結末が恥辱と憎悪に染められどんなに貶められたとしても。

 あの日の記憶は、過ぎし日の栄光だけは、私の胸の内に刻まれていた」

 

 彼女と共に、教会で光に手を差し伸べられたこと。

 

 彼女と共に、数々の戦場を駆け抜けたこと。

 

 彼女と共に、過ごしたあの日々を──

 

 

 

「いかなる神にも運命にも奪えない、穢されない。

 あの光だけは──」

 

 

 

 烈火より尚激しい熱量を持つ光の帯は、その切っ先を以って海魔を。

 穢れてしまった元帥を、討ち滅ぼした。




次回「槍兵の呪い」
ご意見・ご感想、お待ちしてます。

■友人に指摘されました。
 「前書きが長い。後書きが短い」
 自分で閲覧してみて、始めて気づきました。
 …………見づらっ!!!
 何ですか? この読みづらさ。
 話に入るまでのスクロールが多過ぎませんかね?
 ここまで「話にならない」とは……
 読んでくださっているみなさん、ごめんなさい。
 ──そんなわけで、今回から前書きはオールカット!
 後書きにシフト致しました。
 うん。これで友達に脳天チョップされずに済みそうです。
 いやあ、危なかった!

■今日中にあと一話は投稿するつもりですので、お付き合いください。
 では、また後ほど!
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