Fate/Zero──Act.All Fiction 作:むい
やだなあ、そんなわけ──いや。
ごめんなさい、変わりました。
ホントは四騎の登場で終わるつもりだったんですけど!
終わるつもりだったんですけど!!
思いの外、球磨川くんが動いてくれなくて……
それじゃあ、どうぞ。((丸投げ←
夜の倉庫街。
それだけで怪談に登場しそうな舞台だが、今宵は更に物騒な存在──双槍を携えた美青年と、不可視の剣を構える美少女が激突していた。
セイバーとランサー。
共に三騎士と呼ばれる優れたクラスだ。
セイバーはバランスのとれた能力値と最高の対魔力を持つ、最優のサーヴァント。
ランサーは白兵戦能力と最高の敏捷性を持つ、堅実的なサーヴァント。
そんな二騎が対峙している。怪談などとは比べようもない恐怖だろう。
──対人宝具『風王結界』インビジブル・エア
サイバーの持つ、剣を不可視へと変えている第二の鞘。
その正体は、風。幾重にもなる空気の層が屈折率を変え、覆った対象を透明化──不可視の剣へと変えているのだという。
この宝具の利点は、敵に間合いを把握させないことであり、短期的な白兵戦ではその価値を遺憾なく発揮できよう。
そして。纏わせた風を解放し、破壊力を伴った暴風として撃ち出す、剣技との混合技──
「──『風王鉄槌』ストライク・エア !」
「ふっ──!」
全身を襲う暴風を、ランサーは携えたく紅の長槍で以って切り裂いた。
風という性質上、一度使用すれば再び集束させるのに多少時間を要するのだろう。
暴風の追撃はなく、剣と槍の──美青年と美少女の、鮮やかな対決は激しさを増す。
そして遂に、ランサーが携えた双槍の片割れ──黄の短槍でセイバーの左手を傷つけるに至った。
軽傷であれば、サーヴァントにとって命取りにはならない。
大抵のサーヴァントは自己治癒が出来るのだから。
しかしそれは、傷を負った後で癒やすことが出来るのが前提だ。
──対人宝具『必滅の黄薔薇』ゲイ・ボウ
ランサーの持つ、黄の短槍。
この槍に傷つけられれば、槍を破壊するか使い手が死なない限り癒えることがないという。
故に、ランサーの『必滅の黄薔薇』で傷つけられたセイバーの動きは、どこか精細さが欠けていく。
長期戦になるほど不利になるのは誰の目に見ても明らか。
しかし、左手に負った傷によってセイバーは切り札──宝具を使うことが出来ない。
宝具の使用とは、それほどに繊細な練度が必要なのだ。
しかし、宝具の使用については一家言あるサーヴァント──それがギルガメッシュであり、球磨川禊だった。
「──そこまでだ、雑種」
虚空から射ち出される七つの宝剣・聖槍。
それらは地を縫い、二人の視線をたった一人へと向けさせる。
「黄金の……サーヴァント……」
「何用だ? アーチャー。此度は私とセイバーの戦いなのだが」
「ふん。我と対等に口をきくとは……身の程を弁えよ、雑種が」
アーチャー──ギルガメッシュ。
その尊大な態度は、王の風格・神の威厳を示したものといっても差し支えないだろう。
彼は倉庫街の少し高い位置から二人の対決を観戦していたのだ。
しかし、何かに反応して姿を現した。
虚空より宝剣の先端が現れ、二人は身構える。
ギルガメッシュは口元を綻ばせ、それらを射ち出
「待たれい!」
す前に、野太いというか野蛮というか……
まあ、そんな声がした。
声のする方向を見れば、雄牛の引く戦車に乗って宙を駆ける二人組。
巨漢のサーヴァント──クラスはライダーだろう。
「この勝負。一先ず、この征服王イスカンダルが預かる! 後日宴を催す故、心踊らせて待つが良い!」
十秒にも満たない言葉の中に、膨大な常識外があった。
……此度の聖杯戦争に、まともなサーヴァントはいないのだろうか?
「おい! なんで真名を明かしてるんだよ! モロバレだぞ!」
イスカンダルの傍につく小柄な少年──おそらくマスターなのだろう──が、彼の蛮行を叱咤する。
真名とは、サーヴァントにとって命綱と称しても過言ではない。
英霊とは、それぞれが伝承の存在だ。
そしてそれらは例外なく英霊の特性を示唆している。
アキレスであれば踵など、弱点を狙われることは必至──故に、真名とは隠すのが常だ。
……しかし、イスカンダルは自ら堂々と名乗ってしまった。
マスターでなくとも、呆れるのは当たり前だろう。
「名も知らぬ相手を信用できるか? ならば先ずは己から名乗るのが得策であろう。うん? どうだ? 坊主」
そして、そんな堂々に真っ向から影響されてしまうほどのマイナスがいる。
『わあ! 綺礼ちゃん綺礼ちゃん、堂々と名乗ってるよ? 僕は名乗っちゃダメとか言われたのにね。格好いいなー。イスカンダルさん。僕も四人と遊んで来ようっと!』
「待て、アサシン。進むな。止まれ。何の為に宝具を使ってまで死を偽装したと思っている? やめろ。戦闘になる。やめ──」
既に、冷静沈着な言峰綺礼は半分ほど何処かへと消えていた。
球磨川禊は脳内でうるさく響く声を断つため、感覚共有を『消滅』させた。
『ふっふー。これで綺礼ちゃんから離れる切っ掛けが出来た。弱い者の味方をすると決めている僕が、この状況を見過ごせるわけがないじゃないか!』
霊体から実体に移ろうとした時──球磨川禊に変調が起きる。
『ぐぁ。──っ! そうか。令呪……!』
そう。言峰綺礼は、球磨川禊が制御不能になったと知った瞬間に令呪を使っていた。
「令呪を以って命ず──一刻の間、実体化を禁ず」
遠坂時臣に一言もなく令呪を使用したのは、言峰綺礼の独断だ。
しかし球磨川禊には、それが彼の『弱さ』だということを理解していた。
『まったく……綺礼ちゃんは格好いいな。真黒ちゃんとタメ張れるぜ。……登場さえ出来ない主人公が居ると思うかい? はあ──』
嘆息と共に、彼は皮肉気に呟く。
『──また勝てなかった。』
アイリスフィール・フォン・アインツベルンにとって、今の状況は理解し難いものでしかなかった。
七騎の英霊、その過半数──四騎までが一同に会している。
更にバーサーカーまで現れ、負傷したセイバーに猛攻まで仕掛けているのだ。
──聖杯戦争は代理戦争であるが故に不足の事態が多々起こる、とは聞いていたけれど……
これほどか。
監視していたマスターの半数はそう嘆息していたし、一般人に街頭アンケートでもしようものなら『埒外』の二文字が返ってくるのではないかとさえ思う。
そしてバーサーカーは、街灯を引き抜いて武器として使っているのだ。
「奴は手にしたものを宝具に出来るのか……!?」
ランサーの独白は正しい。
ただ一点の欠落さえなければ、正確と言える程に。
「粋がるなよ──狂犬」
ギルガメッシュは虚空より、無数の聖槍を射ち出す。
それは宝具の雨と言っても良いだろう。
しかし、バーサーカーにとってそれは格好の獲物だった。
飛来する聖槍のひとつを手に取り、黒く染め上げる。
「馬鹿な。他者の宝具まで……!?」
そう。それこそが、ランサーの言に欠いた事実。
──対人宝具『騎士は徒手にして死せず』ナイト・オブ・オーナー
バーサーカーの宝具化能力。
手にした武器を自身の宝具として扱い、武器の性能を疑似宝具として底上げするもの。
兵器である限り、彼は何でも使うことが出来るのだ。
そして、クラスがバーサーカーであるにも関わらず冴え渡る戦闘技術。
『無窮の武練』スキルが成し、異質性が際立つ。
──これほどの武芸者が、なぜ狂戦士へと堕ちたのか。
戦闘を眺めながら、そんな疑問を抱くマスター達の背後に──彼は姿を現した。
次回「騎士の心」
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