超常の裏社会で人造人間になっていた件について 作:八雲 来夢
例の奴のネタが舞い降りてこないので、押してダメなら引いてみろ的な物で書きだしました。反省してます。
ゴポゴポゴポ………
水泡の音が間近に聞こえる
寝起きの倦怠感の様な朧気な意識と覚醒しない脳をそのままに、その音を聞きながら暫くの間微睡んでいた
人の騒がしい声と無機質な機械の作動音も遠くに聞こえはするものの、覚醒していない、つまり回らない脳ではそれをただ一方からもう一方へ聞き流すだけで、今の状態は眠っているのとさほど変わらない。
うとうと、うとうとと、何時までそうしていただろうか
人の騒がしい声は薄れた頃、水泡の音を子守唄に、意識はまたも落ちていった。
_______
ゴポゴポ…………
意識が浮上してきた
今度は幾分かマシな様で、自分がどんな状態なのかを薄らではあるが理解できた。
まず自分は、縦に長いガラスで出来ているような謎の液体(恐らく培養液)が満タンに注がれているカプセルの中で
酸素マスクやら何かのチューブが繋がっている
あとふよふよ浮かんでる
次に、前意識が浮上してきた時の人の騒がしい声について。
一言で表せば、実験に成功した科学者の声だった。
今だに重い瞼を開けた時に機械_自分の生命維持装置だろうか_を弄っていた白衣の男は、自分と目が合うと隈が出来ていた無表情を驚一色に変え、無線の様な物で何処かに連絡した後、自分のいるカプセルの方に駆け寄ってきた。
__此方が、見えるのか…?
歓喜と期待、少しの不安を隠しもせずに男は訊いてきた
頷こうとしたものの頭が動かず、仕方無いので一回瞬きをした。
途端に勢いよく男は語り掛けてきた
__おぉ!見えるのか!分かるのか!!素晴しい!!大成功だ!!!やはり私の理論と演算式は間違ってなどいなかった!!
いや、これは語り掛けると言うより大きすぎる独り言だ。心の中で心ゆくまで叫んでくれ、煩い。
大層嬉しそうにはしゃぐ男を眺めていると、男の後ろにある自動ドアから同じ様な白衣を着た科学者が傾れ込んできた。
彼彼女らは真っ先に真正面にある自分の入ったカプセルを見て、自分の視線が己等に来た事を悟ると皆一様に歓喜の声を上げ出した。
彼等は己が何をしたのかを分かっていないのだろうか。否、分かっている。
分かっているからこそ、今まで出来なかった事が出来る様になった幼い子供の様に喜んでいるのだろう。
それは、新しい玩具を手にした子供のようで、狂気に満ちた、歓喜の声だった。
_______
それから暫く。
意識の浮上と沈澱を繰り返した
意識の浮上している間、あの男は俺の脳に新たにチューブを付け、色々な物を『知識』としてインプットした。その上で男は俺に語った。
「この研究は様々な目的があってな。
一つは人体の創製。”0”から”1”を作り出す事を目的としていた。だがこれは大成功として研究は最終段階へと移行する予定だ。
前々から”体”自体の製作法は分かっていたのだが、今までの試作は全て失敗してしまってね。心臓は動いても脳が死んでしまっていたんだ。
いや、生まれてすらいないのだから”死”という表現は不適切か。
兎も角、これで研究資金も増やして貰えるだろう。実に喜ばしい出来事だ、お前に掛けられる金も増えるしな。
次に人体の可能性の拡大。どんなDNAで構成すれば”至高の肉体”が得られるのかが目的だ。
これは今から模索する事になる、何せ実験体が出来なかったからな。理論上欠点はないが、お前がこの研究の
……あとは
正に”天は二物を与えない”がピッタリだ。奴らはそれを否定し、”複数の個性”を持つ人間がどうしても出来ないものかと悩んでいたのさ。
後は結果を待つだけでな、お前をその
今のお前はまだ
他にも
…………あぁ、万が一に失敗しても、お前は研究員の誰かに貰われていくから安心してくれ。
今俺達の間で、お前の争奪戦が勃発していてな?”0”から創り出した”1”には、確かで揺らがない価値がある。
まぁ、死んだら勿論解剖に回すがな」
「…………そうか」
「ほぅ、声が出せたか!創製の方は順調で何よりだ!睡眠学習ということか?脳橋の関係上今は最低15時間の睡眠が不可欠でな。これから時が経つにつれて3・4時間辺りにできると予想しているが、今のお前は生まれたてほやほやの赤子並だから如何しようもない。赤子は寝るのが仕事だからな」
「………………」
生まれ(?)て数日経過していたらしい。あといい加減分かった事もある。
これ、妙にリアルな夢じゃね?
少なくとも俺は日本の本州のうどん県で3兄妹の真ん中として生まれ育って、教師を目指して県外の某国立大学に合格してキャンパスライフを謳歌していたんだ。こんなマッドでサイエンスな場所で生まれた訳じゃない。
そう……
妙に
リアルな
夢
なんだ!!!
早く目覚めてくれぇ!!!
_______
ピッ
「…………5.02秒。うん、10mを約1秒なら良い方だろうが、まだまだ記録は縮む予測だ。お前は一応万遍無く理想のDNAをプログラミングしたが限界値の予測を計算した所、脚が最も優れているという結果になっている。”多重個性”との相性はまぁ良いと思うし、後はお前次第だな」
「…丸投げか」
「手の込める所は込める、面d……込めなくても構わない所は適当にするが俺達のモットーでな」
「おい今面倒って言い掛けただろ」
「作業時間の効率化だよ効率化。合理的でいいだろう?」
「欠陥作業……」
「実際問題無く動いているし、些細な物なら更新プログラムを作ればいいからな」
「えぇ…………」
「さて、お次は対人格闘の動作だ」
目覚めませんでした。
今現在1ヶ月位経ったらしく、カプセル的な物から出されて体力検査みたいなのをさせられている。
でも夢って凄いね、50m10秒の俺が5秒出した。
走る前にやった筆記テストも何も考えてないのに手が勝手にスラスラ書いていって全問正解。
夢って凄いね!!
あと”個性”とかいう物は出てきてからのお楽しみと言われた。
そもそも”個性”と個性は別物らしい。イマイチよく分からないと首を捻っていたら研究員に鼻で笑われた。いつかギャフンと言わせてやろう、そうしよう。
この後格闘技一通りの動作確認(動き方とかは脳にインプットされている)とか検査を色々して何か広い地下空間からカプセルのある所まで徒歩で帰った。