そういうこともあって今回はだいぶ短いのであしからず
何はともあれ今回でデートのお話はここまでです・・・・・まあ、あんまりデートっぽくはないのですが
それでは本編どうぞ
「高い。遠くまでよく見える」
「ああ。そうだな」
日が暮れて、帰る時間が迫ってきた。なので、俺とオーフィスは最後に観覧車に乗ることにした。理由はまあ定番だからだ。
「遠くまでよく見えるけど、うちは見えない」
「まあ遠くまで見ると言っても流石にそこまではな」
ここの遊園地の観覧車は数ある遊園地の中でも有数の高さを誇ているらしいが、流石に電車まで使ってきたわけだからうちまで見えるということはないだろう。それでも、龍神であるオーフィスの視力ならかなり遠くまで細く見えるかもしれないが。
「うちが見えないの残念。やっぱり世界は広い・・・・・我はそれを知らなかった」
「オーフィス?」
どこか物憂げな表情を浮かべるオーフィス。どうしたのだろうか?
「我は知らなかった。世界の広さも、世界がこんなに綺麗だってことも。我はそれを知らなくて、だから次元の狭間で静寂を手にすることを望んでいた」
「今も静寂を求めてるか?」
「ううん。静寂な世界は今でも好きだけど、今の我にはそれ以上に好きなものがたくさんある。静寂な世界にはそれは一つもないから今の我は求めてない」
俺を見ながら微笑みを浮かべながら言うオーフィス。そんなオーフィスを見て悟る。今のオーフィスは本当にこの世界が好きなんだということを。
「伊槻には本当に感謝してる。伊槻が我をあの家に連れてきてくれなかったら我は静寂以上に大切なものに気がつくことができなかった」
オーフィスは10年前に爺さんがうちに連れてきた。それはオーフィスに静寂よりもずっと大切なものを教えるためだったらしいが、それは見事に成功したようだ。
今のオーフィスは世界の広さも世界の美しさも知っている。他者との触れ合いの心地よさも知っているし、食事の楽しさも知っている、
それらはかつてのオーフィスが知らなかったもの。そう考えると、こう言っては悪いがうちに来る前のオーフィスはいろいろと損していたのだなと思う。
「・・・・咲良」
「ん?」
突然、オーフィスは正面から俺に抱きついてきた。
「それじゃあ外の景色見れないぞ?いいのか?」
「うん、いい。もう十分に見た。今は咲良の温もりを感じたい」
「そっか」
オーフィスのこの言葉に愛おしさを感じ、俺はオーフィスの頭を撫でてやる。すると、オーフィスは気をよくしたのか頬をすり寄せてきた。
「伊槻には感謝してるけど、それ以上に咲良に感謝してる」
「え?」
「咲良の温もり、咲良の匂い、咲良の感触、咲良の料理の味・・・・・我にとって本当に大切で愛おしいと思うものは全部咲良に関わること。だから我は咲良に一番感謝してる」
本当に大切で愛おしいと思うものは全部俺に関わることか・・・・こういうのを恋人冥利に尽きるというのかな。言い方はおかしいがあまりにも嬉しすぎて気が変になりそうだ。
「もしも咲良がいなかったら、静寂以外の大切なものを知ったとしても、我は静寂を求めてたと思う。他の誰でもない、咲良がいるから今の我がいる。咲良がいなかったら、我は今頃次元の狭間にいるグレート・レッドを殺す手段を探してた」
グレート・レッド・・・・・オーフィスと対を成すもう一体の龍神。現在は次元の狭間に居て、グレート・レッドが居るせいでオーフィスは次元の狭間に帰ることができなかった。
実は俺は、そのグレート・レッドに感謝していたりする。彼(?)がいるおかげで俺はオーフィスに会えたわけだし。まあ、オーフィスには流石に言えないが。
「だから咲良には感謝してる。咲良・・・・・居てくれてありがとう」
「ッ!?」
オーフィスのその言葉を聞いた瞬間、俺は妙な感覚に陥った。それは喜びにも似た感情ではあるけれど、それとは少し違う。
これは安堵?安心感?だとしたらどうしてこんな感覚に・・・・?
「咲良、泣いてる?」
「え?」
顔をあげたオーフィスが、心配そうに言う。頬に手を当てると、少し湿っていた。オーフィスの言うとおり泣いているようだ。
「あれ?俺・・・・なんで?」
なんで自分が涙を流してるのかわからなかった。自分のことなのに自分でわからなくて、俺は戸惑ってしまう。
「咲良、どこか痛い?なにか辛い?」
「ううん、違う。違うんだ。そういうのじゃなくて、自分でもよくわからないんだけど・・・・・ここに居てもいいんだなって思って安心してさ」
どうしてそんな風に思ってしまったのかはわからない。わからないが、多分俺は居てもいいって思って安心して、それで泣いているんだと思う。実際そうなのかはよくわからないけれど。
「咲良の言ってること、我よくわからない。わからないけど、悪い涙じゃないならそれでいい。咲良の泣き顔、可愛くて好きだから」
「可愛いか・・・・ははっ。俺なんかよりもオーフィスの方がずっと可愛いよ」
オーフィスを強く抱きしめる俺。そうすることで、オーフィスの存在を確かに感じて、それと通じて自分の存在も確かに感じることができる。そんな俺に、オーフィスもまた強く抱きしめてきて、結局俺達は下に降りるまで外の景色も見ずにずっと互いに抱きしめ合っていた。
遊園地デートの最後の最後で妙な気持ちを抱いてしまったけれど・・・・それでも、今日のデートは俺にとって思い出深いものとなった。
咲良さんは自覚しているわけではありませんが、転生者であることから自分がここに居てもいいのか無意識に不安に思っていました
なので、オーフィスちゃんの『居てくれてありがとう』という言葉で安心感を感じて泣いてしまったというわけです
オーフィスちゃんももちろん可愛いですけど、咲良さんも可愛いと思ってしまった今日この頃
それでは次回もまたお楽しみに!