ソードアート・オンライン~知られざる天才剣士~   作:モフノリ

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二人の攻略 Ep.2

「ぐえっ」

 

「ん」

 

 ほぼ垂直に等しい下り坂になっていた落とし穴の底についた二人は、方や綺麗に顔面着地を決め、方や華麗な着地を決めた。

 顔面着地を決めてしまった彼のために明言するのは避けるが、どちらがどちらの着地を決めたのかはいわなくてもわかるだろう。

 数十秒弱にも及ぶ落下後、二人が着地したのはあいも変わらず洞窟の中だった。

 しかし、落下速度と落下時間から考えるにかなり下のほうまで落とされたのは間違いないだろう。

 システムによって保護されたのか、顔面着地をしたキリトも綺麗に着地したレインのHPも全く減っていないのは不幸中の幸いだ。

 キリトが生きていることを確認したレインはあたりを見回す。

 半径十メートルほどで天井までの高さはさほど高くない開けたところだった。

 そこから伸びている道は一つしか見えない。

洞窟内は壁にぼんやりと発光する石のようなものがあるおかげで決して明るくはないが、全く見えないほど暗がりというわけでもなかった。

 

「ここはどこだ?」

 

 顔を抑えながらのろのろと立ち上がるキリトに問いかけると、キリトも周りを見回して状況を確認する。

 

「隠しダンジョン的なものだとおもう・・・・・・」

 

 キリトはぼりぼりと頭をかきながら一つだけの道の奥を見つめる。

 ぼんやりと瞳が光っているのをみるに、暗がりでも見やすくなる何かなのだろう。

 

 

「進むしかないのは間違いないだろうな」

 

「そうだな」

 

 特に合図するでもなく、二人はその道にむかって足を進める。

 二人の足取りには恐怖という感情は見受けられなかった。

 それから二人はここが一応最前線の層のダンジョンだと思わせないほどに順調に足を進める。

 途中にモンスターが出なかったわけではない。

 二人がただ重度の戦闘狂なだけなのだ。

 レインのレベリングも兼ねて基本的にキリトがサポートに周りレインがメインアタッカーとして動くことは変わらないまま、遭遇したモンスターはほふり続ける。

 二人が進んだ道は曲がりくねってはいたがほぼ一本道だったため迷うことはなかった。

 ただただ長く大して広いわけもでもない道を二人は淡々と進んだ。

 

「あぁ、料理が美味しい店に行ってたらふく食いたい」

 

 小一時間、一本道を歩き続けたところでキリトがげんなりとした顔でぼそりとつぶやく。

 レインもその気持ちはわからなくもない。

 夜通し戦い続けたあと、本来であれば街に戻って朝食を食べている頃だ。

 元の世界で旅をはじめた頃から徹夜が多かったり、食べない日が多く続いた事もあったが、地球にやって来る直前あたりではシルヴィアの所でまともな生活を送っていたし、組織に捕まっていたときもなんだかんだ旅をはじめた最初の頃に比べるとまともだったので、キリト程ではないだろうがレインも多少空腹を感じていた。

 アインクラッドに来てからは仮想世界ということもあり食べ物も最小限で寝るのだって寝る気になったらという暮らしをしていた。

 たまにがっつり食べたり気がついたらやたら寝てたりもするが、それでもレインはまともとは言えない暮らし方をしているほうだろう。

 しかしである、地球に来た時は十五歳だったのでそちらで通しているが、レインも日数的にはすでに十六歳。

 どちらにしろ育ち盛りであることは間違いなく、今日は最前線でお金も稼ぐことができるので、久しぶりにちゃんとご飯を食べようと思っていたのだ。

 それがこんな形で先延ばしにされてしまっているのだから多少はげんなりしている。

 しばらく考えたあと、レインはいつも持ち歩いている軽食のパンを二人分だして、一つをキリトに差し出した。

 

「いいのか?」

 

「さすがに自分一人だけ食うなんてことはしない。隣でぎゃーぎゃー騒がれたり、空腹のせいで足でまといになられても困るしな。ちなみに、これ以上持ってないから後は我慢しろ」

 

「えっと、いただきます」

 

 顔を引き攣らせながら受け取ったキリトはもそもそとパンを食べ始める。

 安全地帯ではないが、この先安全地帯があるとも限らない。

 早くここから出たいということもあるので、二人はパンをかじりながらも歩き続けた。

 

「っていうか、お前よく食べ物なんて持ち歩いてたな」

 

 軽食ではあるが、多少腹が満たされたことで元気が出たのかキリトは喋り始めた。

 わかりやすいやつだなと思いつつもそれをレインは口に出すことはなく、会話を続けることにする。

 

「基本的に軽食は持ち歩いているんだ。気が向いたら街に戻るようにしてるから外で夜を明かすことも多いしな」

 

「お前、そんな生活してんのかよ」

 

 薄暗いとはいえ、多少の明かりはあるうえに、暗がりに目が慣れたこともあり、キリトの呆れた顔もはっきりと見えている。

 そんなキリトにお前も人のことを言える立場なのか、と聞きたくなる。

 昼間は数時間とはいえ毎日のようにレインの様子を見に来るし、だからといって攻略をサボっている様子もない。

 そしてこうして数日に一度ではあるが夜中にレインを最前線に連れ出してくれるのだ。

 キリトのほうがふざけた生活を送っているのではないのか、とレインは率直におもう。

 結局、第三者からみればどんぐりの背比べでしかなく、どちらとも大して寝ていないし休んでいないのが現実だったりするのだが。

 互いに人のことを言えない生活を送っているのは自覚しているので、相手にとやかく言うことはないので言い争いになることはなかった。

 その後さらに小一時間、安全地帯は一切なかったが、ようやく道ではなく開けた場所に二人は出た。

 薄暗さは先ほどまでの道と変わらないが、闘技場レベルの広さを有しているその場所は明らかに何かがあるだろう。

 そして、二人がいるの丁度対角線上のところに道があった。

 二人はぎりぎりまだ道といえる場所で立ち止まってその広場の様子をうかがう。

 

「嫌な予感しかしない」

 

「俺もだ」

 

「でも、いくしかないよなぁ」

 

「お前の経験的には何があると思う?」

 

 げんなりとした様子のキリトはレインの問いにしばらく考えたあと、眉間にしわを寄せる。

 

「たとえば、ダンジョンボスみたいなのがでてきて取り巻きもたくさん、とか?」

 

 キリトのたとえはたった二人で対処するにはかなり厄介なことこの上ない例え話だった。

 その例え話を聞いたレインは小さくため息をついて顔をしかめる。

 

「それが当たったら、お前のせいだから街に帰ったら飯の代金、八割お前持ちな」

 

「え?!何で俺のせいなるんだよ!」

 

「なんとなくだ」

 

 仏頂面のまま広場に向かって足を進めるレインをキリトはあわてて追いかける。

 薄暗い中、見えにくい二つの黒い影が丁度広場の真ん中あたりに来たとき、ガシャンッ、と音が響いた。

 お約束なその展開にキリトは後ろを振り返り、レインは目の前を見据えた。

 

「通路がふさがれたみたいだな」

 

 レインはつぶやくようにいいながら剣を抜く。

 その後ろでキリトも剣を抜いた。

 先ほどまでふざけていた二人の姿はそこにはなく、二人の黒の剣士が背中合わせにどこから敵がやってきてもいいように待ち構える。

 しばらく待っていると、地下に落ちたときのように地響きが聞こえ始める。

 いまさら地響きにうろたえるわけもない二人は動くことなく周りに集中した。

 徐々に大きくなる地響きが何なのかレインが考えているときに、足元が少し盛り上がった。

 勢いよく地面を見たレインはすぐに叫ぶ。

 

「下だ!」

 

 叫ぶと同時に中心から飛びのいたレインと少し遅れてキリトも飛びのいた瞬間、地面からでかい何かが飛び出した。

 それが飛び出した衝撃で、空中で体勢を崩したものの、すぐに立て直したレインは起用に空中で体をひねって飛び出したものと向かい合う。

その何かの反対側からキリトの間抜けな叫び声も聞こえるので無事なのだろう。

 薄暗いうえに何かが地面から出てきたことによって土煙が立ち込めているのでなかなか、それが何なのか見えてこない。

 

「見えるか?」

 

 反対に飛び退いたキリトが隣まで来たのを確認したレインは声をかける。

 

「いや、ただでかいことしかわからない」

 

 それから無言で二人は土煙が無くなるまで待ち、土煙がなくなり始めて白い身体が見え始め、ようやく全容が見えたときキリトが隣で息を呑む音が聞こえた。

 直径十メートルはあり全長五十メートルはあるであろう白くででかい芋虫がレインとキリトの前に姿を現したのだ。ぶよぶよとした質感に、ところどころ発光している模様の気持ち悪さにキリトが息を呑むのもうなずける。

 それが上半身なのかわからないが、半分体を起こしている芋虫を注視するとそれの頭上に赤黒いカーソルと《Dvergr The Fairy》と表示され、五本ものHPゲージもその横に表示される。

 その巨大さと気持ち悪さに二人が動かないでいると、芋虫の周りに何かがポップするときのエフェクトが幾つか光る。

 目を凝らしてみると、ここに来る間もポップしていたドワーフだった。

 

「おい、キリト。わかってるな?」

 

「う"っ・・・・・・」

 

 先ほどキリトが予言したことが現実となったので、レインはにやりと笑いながら先ほどの約束をキリトに確認する。

 全く妖精には見えない芋虫たちの周りにいるドワーフが近づいてきたと同時にキリトは地面を蹴って叫んだ。

 

「ラストアタック決めたほうが八割!」

 

「言ったな?」

 

 先に駆け出したはずのキリトをあっさりと抜いたレインは十体ほどわいているドワーフを全て無視をして芋虫の背中まで飛び上がって背中を剣で切り裂いた。

 今までの敵と比べると芋虫ということもあって身体が柔らかく剣や盾でガードされることもないので剣の耐久値はさほど減る様子はなかった。

 しかし、表面がぬめぬめとしているので下手に切りかかるだけではと斬ることすら難しい。

 敵の上に立つことすらできないのでドヴェルグの周りにいるドワーフのところに行くしかなくなる。

 なかなかに面倒な敵だと認識したレインは舌打ちをして、ぬめぬめの芋虫の体をすべって降りる。

 下では先ほど無視したドワーフが下で待ち構えているのだが、ぬめぬめしている芋虫を蹴って飛ぶことはできない。

 地面に足がついた瞬間に蹴りだしてドワーフたちの間をすり抜けていく。

 決して避けられない攻撃ではないし、相手をするだけ無駄なのだ。

 最小限の動きでドワーフ達からの攻撃を避けたレインは敵が密集していないところに到着するともう一度飛び上がって芋虫に剣を突き刺した。

 そして剣を抜くことなく滑り落ちることで芋虫の背中を切り割いていく。

 

「お前順応すんの早すぎだろ!」

 

 どこからかキリトが喚いているのが聞こえた。

 再び地面に足がついたレインは芋虫からもドワーフからも離れてHPゲージの減りを確認する。

 予想通りというかなんというか、ほとんどわからないほどしか減少していなかった。

 その間にキリトもドワーフたちの間をすり抜けながら芋虫の側面を切りつけていく。

 自分よりもはるかにレベルの高いキリトの攻撃ですらゲージの減りは微々たるもののようでなかなか減らない。

 その様子に眉間にしわを寄せたレインは一度芋虫から離れてドワーフの相手をし始めたキリトのそばに駆け寄った。

 

「キリト!どんな敵にも弱点はあるのか?」

 

 レインも一緒にドワーフに切りかかりながらキリトに声をかける。

 

「基本的に、アインクラッドのモンスターに弱点がないやつはいない。逆に打撃に強いとか斬撃に強いとかもあって、それはどんなものでも覆せない。あの芋虫は見るからに打撃系の攻撃は効かないだろうな」

 

「なるほど。じゃあ、敵に刺したままの武器は消えたりするか?」

 

「へ?まあ、武器を敵に取られても取り返せたりするから消えることはないと思うけど」

 

「それだけ聞ければ十分だ」

 

 会話中も斬り続けていた一体のドワーフの首を切り落として消滅させた後、再びレインは芋虫に向かって駆け出した。

 キリトがドワーフの相手をしてくれているおかげで芋虫の周りにドワーフはいない。

 今までになく力をこめて飛び上がったレインは芋虫の起き上がっている体に剣を突き刺した。

 しかし、今回は地面に垂直方向ではなく、並行に突き刺していて、そのうえ斜め下向きに刺したことで簡単に抜けることはない。

 剣の根元まで食い込ませたレインは器用に剣の柄に足を乗せて、それを土台に再び飛び上がる。

 起き上がっていた芋虫の身体よりも上に飛び上がったレインは、今まで見えていなかったそれを見つけた。

 起き上がっていた芋虫の身体の先端についている明らかに弱点であろう小さな二つの目。

 それの片方に向かってレインは右手の指をそろえてソードスキルを発動させ、右腕の根元まで容赦なく突き刺した。

 次の瞬間、口があったのか、と思うほどうるさい悲鳴をドヴェルグはあげる。

 あまりのうるささに空いた片手で耳を片側だけ塞いで顔をしかたレインは素早く腕を引き抜いてその場から飛び退く。

 剣は芋虫に突き刺さったままだが、他にも予備はたくさんあるので問題はない。

 綺麗に着地をきめたレインは右腕についた芋虫の体液を振り払う。

 現実世界では服まで湿ってかなり気持ち悪いことこの上ないだろうが、仮想世界だと思った以上に振り払うことができる。

 それでも服は体液に塗れているので多少の差でしかないのだが、レインが気にするわけもなかった。

 レインがそんなことをしている間にドワーフ達を蹴散らし終えたキリトが顔を引き攣らせながら駆け寄ってくる。

 

「お前、よくそんなこと出来るな」

 

「これは帰ったら風呂だな」

 

 ちらりと芋虫をのHPゲージを見るとそれでも五つあるゲージのうち一本目の一割削れたぐらいだった。

 目をつぶせば一番ダメージを食らわせることができるが目は二つしかない。

 キリトのダメージ量も微々たる物でしかないのでかなりの長期戦が予想される。

 どうしたものかと考えていると、ひとしきり暴れたドヴェルグは全身を横たえてこちらに身体を傾け始めた。

 

「キリト!走れ!」

 

 レインは走り出したと同時にキリトに声をかける。

 何事かと疑うこともなく、レインと同じ方向にキリトも走り出した。

 それとほぼ変わらないタイミングでドゥベルグがレインとキリトをつぶそうと転がり始める。

 

「つぶされるなよ」

 

「あんなのにつぶされて死にたくねぇよ!!!!!」

 

「あのやわらかさだ。意外と大丈夫かもしれないぞ?」

 

「やわらかくても巨体につぶされたら圧死確実だろ?!」

 

「だろうな」

 

 軽口を叩きながらも走る二人の目の前には壁が迫ってきている。

 最前線では一撃でも食らえば即死だから絶対に攻撃を受けるなとキリトに言われており、後ろから迫っている芋虫も同様であることは間違いない。

 

「レイン!よけれるか!?」

 

 こちらを向いて不安そうなキリトの顔を見てレインは不敵な笑みを浮かべる。

 

「俺のことは気にするな。キリトはこの後にできるはずの隙を狙って奴の目をつぶせ」

 

「わかった」

 

 芋虫の身体のど真ん中にいたレインよりもキリトは先端に近い場所にいたのですばやく横に掃けて芋虫の巨体が通るであろう場所から抜け出した。

 それを確認したレインは目の前の壁に集中する。

 岩壁に足がかりになりそうな場所を見つけたレインは高さが五mはあるそこに向かって跳躍する。

 どうにか足がかりに両足を着地させたレインは再び飛ぶために足に力をこめる。

 転がってきた芋虫と入れ替わるようにそこからとんだレインは芋虫の上を身体を捻りながら飛び越える。

 芋虫が壁に当たったときの衝撃で跳躍距離を伸ばしたレインは先ほどとは反対側の芋虫の横に着地した。

 壁に直撃した芋虫は一時とまる。

 そうしてできた隙にキリトは地面に近づいた芋虫の目をソードスキルを使って斬りつける。

 悲痛の叫びを上げながら暴れ出す芋虫からレインとキリトはいったん離れて合流した。

 

「相変わらず無茶な奴だな!」

 

 合流したとたんにキリトに怒鳴られたレインは顔をしかめる。

 

「できたんだから無茶じゃない。そんなことより、これからどうする?弱点の目はなくなったぞ」

 

 ウィンドウを操作して予備の片手剣を出しながらキリトに問いかける。

 一瞬レインをにらみつけたキリトは暴れるドヴェルグに視線を戻す。

 

「あれ系のモンスターはたぶん――」

 

 キリトが言い終わる前に、果物が弾けたような音が聞こえ、目が合ったところから何かが飛び散った。

 

「――また目が生えるんだよ」

 

 再び状態を起こしたドヴェルグが目をこちらに向けると最初は二つだったぼんやりと光る目が五つに増えていた。

 そして、一度は全て消滅させたドワーフが先ほどよりも多い数で出現する。

 

「なるほど」

 

「レイン、俺がドワーフを全部仕留める間、さっきみたいに飛び上がって目をつぶしてくれ」

 

 のろのろと中心に戻ってくる芋虫とその周りにいるドワーフから目を離さずにキリトが敵の倒し方を説明する。

 この世界の敵の動きは現実とは違ってかなり読みやすいので、この世界で生きてきたキリトにはあの芋虫のことも予想できるのだろう。

 

「そのうちまた転がり出すとおもうからそれはちゃんと避けろよ」

 

「わかった」

 

 剣を構えなおした二人は合図するでもなく同時に巨大な敵に向かって再び駆け出した。

 

 

 

 

 

 それからドヴェルグが消滅したのは二十時間以上たったころだった。

 というのも、目をつぶし終えるたびに増える目とドワーフの量が尋常じゃなかったのだ。

 途中からキリトだけではドワーフを相手しきれなくなり、レインも加わったがレベルが低いせいで一体仕留めるのにも時間がかかる。

 それでも、二人で対処できるものだったが、ドヴェルグ自体のHPゲージの減りも少ないので無駄に時間がかかる。

 十二時間過ぎたあたりで、さすがに二人とも集中力が切れ始めたので攻撃さえ仕掛けなければ動かないドヴェルグと目を全てつぶさなければ復活しないドワーフの特徴を利用して小休憩を挟んだこともあり、これだけの時間がかかったのだ。

 本来、ドワーフを対処するパーティーを数組を配置し、身体を切り刻んで弱ってきたドヴェルグが身体を倒し、その隙を狙って弱点の目を総攻撃し、転がったらタンクが防御する、という攻略方法なのだろうが、何しろ二人だったためそんな悠長なことはできなかった。

 レインが起き上がっているドヴェルグの目をふざけた方法でつぶせたおかげで二人でも何とか攻略できたといっても過言ではない。

 ドヴェルグが光の粒子となり消滅した瞬間、二人は喜ぶでもなくその場に座り込んだ。

 黒い服のせいでわかりにくいが、攻撃を食らわすたびに撒き散らすドゥベルグの体液のせいで二人ともすでに全身べたべたになっている。

 

「全身気持ち悪いし眠いし疲れた」

 

 少しはなれたところでぶつぶつと文句を言い始めたキリトをあきれた様子でレインは一瞥して立ち上がった。

 

「ならさっさといくぞ。ほら立て。戻って風呂はいって八割お前が驕りの飯食いに行くぞ」

 

「あぁ・・・・・・そうだった。お前のほうが攻撃力低いのになんでラストアタック取れたんだよ」

 

「それはお前が馬鹿だからだ」

 

「俺のほうがゲージ削ったし、ドワーフだって俺のほうが仕留めてたしここは半々で・・・・・・」

 

「これからの帰り道お前がメインで戦ってくれるならいいぞ」

 

 レインの言葉にしばらくキリトは思案し始める。

 今までだって稼いで過ごしているはずのキリトは大量のドワーフとダンジョンボスであろうドゥベルグを倒したことでそれなりのアイテムが手にはいり、換金すればそれなりの大金になるだろうになぜそこまで考えるのか不思議でしかない。

 実際はただキリトが浪費家だからなのだが。

 しばらく考えていたキリトは小さくため息をついて立ち上がった。

 

「わかったよ。俺が前衛すればいいんだろ」

 

 キリトは一人でさきにずんずんと進んでいく。

 その方が早く帰れるのは間違いないのはキリトもわかっているのだろう。

 レインは自分の弱さを感じつつもどこか楽しんでいる自分に気づくことなく、キリトの後ろをついて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 それから二人が洞窟を出られたのはさらに二十時間以上たった頃だった。

 最終的には二人共バーサクに近い状態で途中で出てくるドワーフを仕留めていた。

 メインアタッカーとかのポジションもなく、とにかく仕留める、というものに変わり、その間二人に会話はなかった。

 何故それほどにも長くなったのかというのは、ただ単にそれだけ長い洞窟だったのだ。

 一本道なのは変わらなかったのだが、とにかく長い。

 出るまで階段もなかったことから、ほとんど分からないほどの緩やかな坂道になっていて落ちた分を上がってきたのだろう。

 洞窟に落ちてからほぼ二日が過ぎ、まだ朝方で夜が開けきっていない空を見て長かったような、全く時間がたっていないような不思議な感覚になる。

 先程まで気が狂ったように戦っていたこともあり、自分から何かが無くなったような感覚にも襲われ、それまですっかり忘れていた空腹と睡魔が二人に襲いかかる。

 

「主街区まですぐそばみたいだからがそこまで耐えろよ」

 

 素早くマップを確認したらしいキリトはウィンドウを表示しながら歩きはじめた。

 その足取りは重いもので、疲労が溜まっているのがよく分かる。

 レインも普段はしっかりと伸びた背中をほとんどわからない程度ではあるが少し曲げてキリトの後を黙ってついて行った。

 そして三十分もかかることなく、無事に主街区までたどり着いた二人は足早に一番近い宿屋に向かう。

 

「飯はどーする?」

 

「寝ながら食うことになりそうだから俺は寝る」

 

 酷い形相のキリトは今にも人を殺しそうな顔でレインに言い返す。

 二人とも服の耐久値もそれなりに減ってきていることもあり、所々ほつれていて、ほぼ二日間に及ぶダンジョン攻略を強制的にし続けてきた直後なので、まだ街に人が出歩いていない夜に帰ってこれたのは不幸中の幸いだろう。

 そそくさと同じ部屋に宿をとった二人は部屋に入った瞬間、全ての服を着替えた。

 たとえ、データの世界で服はすでに乾いているといっても、芋虫の体液を浴びた服で寝るのは二人共嫌だったのだろう。

 キリトはハーフパンツにTシャツというラフな格好でレインはいつもと変わらないような服装だった。

 

「お前、もうちょっと変えないのか?」

 

「変える必要性がない」

 

 あっさりとそう言ったレインは部屋に置かれていた二人掛け程度の大きさのソファに寝転ぶ。

 

「お前がベッドを使え」

 

 一言だけ言ったレインは有無を言わせないためにすぐに目を閉じた。

 ぶつぶつと文句を言いながらもベッドに入るキリトの様子を音で確認したレインはそのまますぐに眠りについた。

 




戦闘描写のむずさは相変わらずで(白目)

次回、蛇足中の蛇足 温泉回()
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