ソードアート・オンライン~知られざる天才剣士~   作:モフノリ

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二人の攻略 Ep.3

 すっと静かに目を開けたレインは寝惚けるでもなく体を起こした。

 小さい頃から父親に寝起きだけはしっかりしろと教えられていたこともあり、レインの寝起きはかなりよく、寝ぼけることはない。

 きょろきょろと当たりを見回し、ベッドで熟睡をしているキリトを確認して寝る直前までのことを思い出して顔を顰める。

 時計を見れば昼過ぎで睡眠をとらなかったにも関わらずあまり寝なかったなと他人事のように思ったレインは立ち上がってキリトをたたき起こす。

 

「起きろ。風呂行って飯食うぞ」

 

「んぁ?」

 

 目を開けたものの、まだぼんやりとしているらしいキリトにレインはなにをするでもなく見続けた。

 まだ寝ていたいという気持ちがわからなくもないからなのだが、基本的に無表情の彼がただ見ているだけでもそれなりの威圧感はあり、キリトは勢いよく起き上がった。

 

「な、なに?」

 

「風呂と飯」

 

 簡潔にそれだけ言ったレインにキリトは顔を引き攣らせながらも、この層に備え付けられている風呂場に案内するためにベッドから這い出た。

 

「別に一人で行けばよかったのに」

 

 寝るときよりは外向けになってはいるが、一見攻略組とは思えないラフな服装に着替えたまだ眠くて目がしっかりと開いていないキリトはこの街に唯一ある銭湯に向かいながら、隣を歩くダンジョンでも街でも変わらないラフな服装のレインにつぶやくように声をかけた。

 一瞬だけキリトに視線を向けたレインはすぐに目線を前に向ける。

 

「この世界の風呂の入り方がいまいちわからん」

 

「はあ?いや、まあ確かに蛇口をひねったりシャンプー出したりするのもアインクラッドじゃウィンドウ操作だからわかりにくいっちゃわかりにくいけど・・・・・・」

 

 キリトが怪訝な顔でこちらを見てくるがレインは特に何かを言うでもなく視線を受け流す。

 レインの言うこの世界とはもちろん地球ということになる。

 組織では不思議な箱に入れば綺麗になったし、それから数日歩き回ったときは元々お風呂に毎日入るという習慣がすんでいた世界ではなかったので必要性も感じなかったということもあるが、風呂に入る方法もわからなかったというのがお風呂に入るということをしなかった大きな要因であるのは間違いない。

 現実世界では一応、清潔を保つために服も体も魔法を使って清潔を保っていたので、小汚くなることはなかった。

 そして、仮想世界に来てからは入ったことすらないし、ぶっちゃけどんなものなのかよく分かっておらず、蛇口とは何だ、というところから入ってしまう。

 一応異邦人だということを隠しているのでそんなことを言えるわけもなく、無言を貫くという強硬手段でその場を乗り切った。

 

 

 

 

 なぜこの層の主街区には温泉があるのだろうかとキリトは不思議におもっていた。

 第一層でアスナがキリトの止まっていた宿にお風呂目当てでやってきたときのことを思い出しそうになり、無理やりそれを頭から追い出して、この層の温泉に頭を戻す。

 今までの層ではINNと書かれた宿じゃない宿にお風呂が着いていることは多かった。

だからなのかは分からないが主街区には温泉というものはなく、あってもシャワーを浴びる程度のものしかなった気がする。

 しかし、この層は主街区のほぼど真ん中に宿でもないのに大きめの温泉があり、お風呂目当てにくる人が多かった。

 別にこの層のテーマというわけでもないのに置かれているその温泉があるのは割と謎だったのだが、昨日までの体験でなんとなく予想がついた。

 毎日風呂に入る日本人からしたらたとえデータで風呂に入らなくても汚れも自然になくなって服だって清潔にできるといえど、あのグロテスクな見た目の生き物の体液を浴びれば誰だろうと風呂に入りたくなる。

 おそらくそのためのこの施設だったのだろう。

 アルゴの情報がなかったことから自分たちがあの隠しダンジョンに初めていったのだろう。

 自分とレインだからこそあのダンジョンを二人で切り抜けられたので、あれに他の人が数人で行ってしまったら生きて帰れるかは正直怪しい。

最悪な場合の事が起こってしまってはいけないので、キリトは温泉について服を脱ぐためにウィンドウを操作するついでにアルゴに注意するように連絡をいれておく。

 まあ、無茶をしたことに関してアルゴに何か言われるのは間違いないだろうが仕方がない。

 しかし、少し前までやっていた無茶のことと、レインの事もあってかなりうるさそうなことが予想されて、思わずげんなりとしてしまう。

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、アルゴに――」

 

 不意にレインに視線を向け、キリトは思わず言葉を失う。

 温泉のある建物の入り口に受付があり、そこでは腰に巻くアイテムが配られていたので、レインもそれをつけるものだという認識を持っており、お風呂に入るために全てを脱いだものの、腰にタオルを巻いている。

 それは普通だ。むしろ、隠されていて良かったとおもう。たとえ男同士といえど、キリトは自分以外のソレをどちらかといえばみたくない質だったので本当に良かったとおもっている。

 がしかしである。

 隣に立つレインの体の筋肉の出来上がり具合がすごいのだ。

 筋肉をつけすぎているわけでもなく、程よくついていて無駄な肉は一切見受けられない。

 高身長もあいまって男のキリトですらかっこいいとおもってしまうほどの肉体だった。

 スポーツ選手特有の競技によって偏った筋肉の付き方ではなく、自身の全身を円滑に無駄なく動かせるような、本当に満遍なく無駄なく、無さすぎず、あり過ぎずという感じだ。

 美術館にあるような、リアルな肉体美ではないし、だからといって二次元のような理想を詰め込まれたような肉体美でもない。

 それはレインの身体だからかっこよくて美しく、彼の癖や戦い方の特徴に合うように鍛え上げられた唯一無二の美しさと言えよう。

 バキバキに割れてるでもないが、それなりに割れている腹筋に、瞬発力を重視された脹脛に太ももの筋肉。剣を振り回して鍛え上げられたのか、胸筋も腕の筋肉も常人よりは鍛えられているが、それは動きの邪魔にならない程度になっている。

 これほどにも無駄のない身体をしている人物がいるだろうか。

 いや、この世界にいないだろう。

 基本的にゲーマーしかいないこの世界では太っているか痩せすぎているかに偏っている。

 キリトはまだ子供ということもあってそこまでの偏りはないが、どちらかと言えば細身だし、筋肉だって大してついていない。

 この世界のNPCだって、所詮デザイナーが作り上げた理想の人間だ。

 可愛い子もかっこいい人もいるが、そこはやはりどこか作られたという違和感が生じる。

 しかし、目の前の男にはそれが一切なかった。

 究極の肉体美とは目の前の男の持ち合わせているものの事を言うのではないのか。

 だがしかしである、目の前の男は自分と同年代だ。

 まだ成長過程の現在でこれだとしたら二十歳になった時にはいったいどうなる。

 身長だってまだ伸びそうだし、それに合わせて身体の筋肉の付き方だって――

 

「おい」

 

「はっ!」

 

 レインに声をかけられてようやく我に返ったキリトは自分が男の身体をじろじろと見てしまっていたことに気が付き、なんとも言えない気持ちになる。

 

「ぼうっとしてどうかしたのか?」

 

 とくに見られていたと思っていないらしいレインにほっと胸を撫で下ろす。

 男の身体をまじまじと見ていたと知られて、変態扱いされるのは困る。

 

「いや、アルゴにあのダンジョンの事とか送ってたんだけど、なにか伝え忘れたような気がしてさ。思い出すのにぼんやりしてたんだ」

 

「思い出せたのか?」

 

「んー、まあ、思い出せないなら大したことじゃないだろうしいいかな」

 

 口から出た出任せを信じてくれたらしいレインに感謝しつつ、キリトもさっさと服を脱いで腰にタオルを装備する。

 腰タオルはズボンと同じ分類に分けられていることに少し面白みを感じつつ、脱衣場を後にした。

 脱衣所も日本風ではなかったことからも想像できたが風呂場はどちらかといえばローマを髣髴とさせる内装になっていた。

 

「貴族の風呂みたいだな」

 

「貴族?」

 

「・・・・・・豪華だな、と」

 

 歯切れの悪いレインに珍しいさを感じつつも、シャワーやシャンプーなどの使い方を教えたキリトはさっさと全身を洗って湯銭にはいって体を伸ばした。

 最近は攻略とレインの世話を並行して行っていたせいでのんびり過ごすという暇がなかったのだが、その間に蓄積されていたらしい疲れが全て消えていくような感覚になる。

 ここに来る間に少しだけ食べたこともあって空腹も多少は収まっているおかげでのんびりと温泉につかることができた。

 慣れていないということでようやく体を洗い終わったレインはキリトから少し離れたところに腰を下ろした。

 水の表現はむずかしいせいで現実のそれとは多少違和感があることに一瞬眉間にしわを寄せたレインだったが、肩までつかるとほっと一息をついた。

 水にぬれていることもあっておとなしくなっている髪型と目をつぶって穏やかな表情で温泉を満喫しているレインからは普段の頼もしさや勇ましさなどは微塵も感じず、どこかそわそわとしてしまう。

 風呂を満喫しているらしいレインにキリトは声をかけるということもできず、二人は静かにお風呂を満喫した。

 

 

 

 

 

 

 

 いろんなことを思い出しながらレインとキリトは食事中にやって来たアルゴにここ二日の出来事を話していた。

 話している間もスプーンや箸をとめることのない二人にアルゴは呆れ顔だったが、それまで限界を超えて空いていたお腹が食べ始めたと同時に機能を回復させたようで、とめることができなかったのだ。

 

「二人ともほんと人間じゃないよナ」

 

 そんなことをじっとりとした目を向けられながらアルゴにいわれ、それまで食べ物にがっついていた二人の手が同時に止まる。

 キリトはアルゴに対してそうじゃなきゃ前線でやっていけないと言い返しているが、レインは少し考える。

 異邦人の自分はこの世界で本当に人間と呼べる分類に当てはまるのか、と。

 

「どうかしたか?」

 

 スプーンをとめていたレインの顔をキリトが覗き込む。

 

「いや、別に」

 

 それだけいったレインは再びスプーンを動かし始める。

 いまだキリトの弁解は続いていたらしく、キリトは言葉を続ける。

 

「とにかく、レインに関しては同意だが、俺は今までの戦闘でレベルが上がって、パラメータの数値だってそれなりにあるからちょっと人間離れしてるだけだ」

 

「まて、なぜ俺に関しては同意してるんだ」

 

 キリトの言い分に思わずレインは言葉を挟んでしまう。

 異邦人だということは言っていないはずなのになぜ同意されなければいけないのかがわからなかったのだ。

 そんなレインの心境をしらないキリトは怪訝な顔でレインを見る。

 

「そりゃ同意するだろ。大してパラメータが上がってるわけでもないお前のあの意味不明な跳躍とか意味がわからないし」

 

「っていうカ、レインのレベルで最前線で敵と戦ってる時点で人間離れしてるとおもうヨ」

 

「ほんとそれな」

 

「・・・・・・それは、俺が元々鍛えてたからだろ」

 

 異邦人だからといえるわけもなく、仏頂面でレインは適当に返し、再びスプーンを動かして食べ始める。

 これでも、元の世界では自分よりも強い人はまだまだいるとおもっているレインが本当の意味で人間離れするのは数年後のお話。




まず最初に

キリトが変態っぽくなってしまって申し訳ないです。
すまぬ、キリト
とおもっています。

うp主の語彙力の無さでレインの(うp主の妄想および偏見による)肉体美を描写できず、血涙を流すことしかできません。
あの部分で何がいいたいかと言うと

レインはかっこいい

それだけです
もちろん、原作ではここまで書かれてはいませんがw
原作を知っている方であれば、男同士でも腰にタオルを巻いているレインが逆に違和感かもしれませんが
それもうp主の趣味です。
お風呂の腰タオルってなかなかに良い
腰タオルのうえに見える骨盤がs(ry



それはさておき。

遅くなりましたが、読んでくださった方、お気に入り登録してくださった方
ほんとうにありがとうございます!

次にUPするのはゴールデンウィーク明けになります。
とうとうフェアリーダンス始動します!

これからも読んでいただければ幸いです。
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