ソードアート・オンライン~知られざる天才剣士~   作:モフノリ

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ファントム・バレッド編
強さを求める二人の出会い


 十一月も半ばに入るころ、白い息が出るにはまだ少し早いが夜はすでに肌寒く、自分が住むアパートの近くにある公園でたたずむ朝田詩乃も例に漏れず厚手のパーカーを羽織ってマフラーを巻いていた。

 華奢ではあるもののそれで事足りるのだが、異様なほどに視界に入ってきた見知らぬ男のせいで、体感よりも少し寒く感じてしまうのは、見ているだけで寒くなる、というあれだろう。

 公園のベンチに座り空を見上げる一人の男。あげている顔は暗がりのせいもあって見えにくい。ただ、そこだけが異様に暗いせいで視界に入ってきたのは、彼が全身真っ黒な服を着ているからだろう。

 それだけならばただ視界に入ってきた男ですむのだが、見た目が寒い。

 先ほども述べたとおり、今は肌寒い十一月。

 にもかかわらず、男は半そでのVネック。ベンチに立てかけられている棒状の何かに巻きついている布は着ていた上着なのかもしれないが、それにしても間違いなく季節はずれだ。

 不審者以外の何者でもないのに、そんな彼に見入ってしまってるのは、闇に溶け込んでいながらも間違いなくそこいるというのがわかるほどの存在感のせいだろう。

 

「そんなに見られたらさすがに気になるんだが」

 

 突然投げかけられた言葉が、真っ黒な男が発したものだと気がついたのは、顔をこちらに向けられてからだった。

 思っていたよりも若い青年はまるで絵画から出てきたような精悍な顔立ちで静かにこちらを見てくる。

 

「聞こえてないのか?それとも通じないか?」

 

 流暢な日本語の癖に通じなていないのかと聞いてくる青年は不思議な空気をまとっている。

 

「あ、いえ、通じてます」

 

「それは良かった。で、女の子がこんな夜に何してるんだ?この世界は平和だが、だからといって安全じゃないだろ」

 

 確かに日本は戦争をしているわけでもないし、治安もそれなりにいいが彼の言うとおり完全に安全とはいえない。

 時刻はすでに夜中の十二時を回っているので、昼に比べるとさらに安全ではないだろう。

 

「まあ、そうなんですけど・・・・・」

 

 夜中の散歩を始める前に見た夢を思い出して思わず口ごもってしまう。

 過去に本当にあった事を夢に見るのはなにも今日ばかりではない。むしろ同じ夢を見ては起きるのは良くあることだ。

 

「なんかわけありというやつか。なら仕方ないな。俺もここに着いたばっかりで動く気にならんし、話し相手ぐらいならなってやらんこともないぞ?」

 

 ふわりとした優しい声で言ってくる青年だが、やはり自分は女で相手は男だと思うと簡単にその言葉に乗ることはできない。

 しかし、今から帰ったとしても寝ることはできないだろう。

 それに、目の前の青年と少し話したいと思っている自分も少なからずいるのだ。

 

「俺が不審者に見えて怖いなら別に無視してもらってもかまわん。ただ、夜道が危ないのは変わらんからさっさと帰ってさっさと寝ろ」

 

 暖かくもあり冷たくもある言葉をきいて、青年が本当に暇つぶし程度に詩乃に声をかけてきたのが伝わってくる。そして、見知らぬ詩乃の事を気にかけてくれているらしいことも伝わってきた。

 どこか不器用な青年がなんだか面白くてくすりと笑った詩乃は、特に何も言わずに青年から少し離れてベンチに座った。

 

「なんだ、結局来るのか」

 

「誘ってきたのはお兄さんじゃないですか」

 

「まあ、そうだが。俺としてはこんな不審者にもほいほいつられるあんたが心配になる」

 

「悪い人なんですか?」

 

「さあな。悪い人のつもりはないが良い人ともいえないかもしれん」

 

 間近で見た不敵に笑う青年の横顔は思ったよりも若く十八歳ぐらいにしか見えない。

 しかし、彼のかもし出す不思議な空気としっかりとした体格のせいか年齢不詳だ。

 

「寒くないんですか?」

 

「寒いな。さすがの俺でも寒さは感じる。ただそれが平気か平気じゃないかというだけだ」

 

 何が、さすがの俺、なのかはわからないが、寒いというわりには全く寒そうにはしない。

 

「なんで寒いのにそんな格好でこんな所に?」

 

 気がつけば、自分から質問を投げかけていることを不思議におもう。

 自分はこんなにも簡単に他人と言葉を交わす性質だっただろうか。

 

「こんな格好なのは、上着をそいつを隠すのに使ったからだ」

 

 そいつ、といいながらぐるぐる巻きにされている棒状の何かを指差す青年は少し困った顔をして肩をすくめる。

 

「で、こんな所にいるのは、成り行きみたいなもんだ。本当は少し休憩したら帰るつもりだったんだが、ここが懐かしくなったのと、あわただしく俺のところに向かってきてる奴らがいるから、おとなしく待ってやってるのさ」

 

 ざっくりとしすぎていて何を言っているのか詩乃にはわからない。

 ただ、どこか楽しそうに笑う青年が嘘を言ってるわけではないのがわかる。

 

「というか、あんたは見たところまだ学生ぐらいに見えるが、明日は学校ないのか?」

 

 先ほどまでなにやら異空間に紛れ込んだような会話から突然現実味のある質問を投げかけられたのできょとんとしてしまう。

 しかし、すぐに我にかえった詩乃は不思議な青年をじっとりとした目で見た。

 

「明日は日曜日だから普通の学校なら休みですよ。曜日感覚ないんですか?」

 

「ああ、日曜日なのか。ちなみに、曜日感覚どころか今が何年の何月かもわかってない。肌寒い感じから冬だろう事しかわからんな」

 

 なぜかドヤ顔でそんなことを言い出すものだから、やはりこの人と話し始めたのは間違いだったかもしれないと思ってしまうのは仕方がないだろう。

 

「記憶、ないんですか?」

 

 流暢な日本語を話すことと、黒目黒髪から日本人なのだろうことはわかるが、曜日感覚がないだけではなく、何もわかっていないということは記憶がないぐらいしかすぐには思いつかない。

 しかし、すぐに返ってきたのは否定の言葉だった。

 

「ちょっと前までここのことを忘れてたからそれまでは記憶喪失だっただろうが、今は思い出してるから記憶喪失ではないな」

 

 あえていろいろとぼかしながら話すのが楽しいのか、不敵に笑う彼は感情豊かでころころと表情を変えるので見てるだけで飽きない。

 悩みも暗い過去もなさそうな彼がうらやましいな、と思って見てしまう。

 敏感にもその視線に気がついたらしい青年は先ほどまではこちらを見ずに話していたくせに、急にこちらをむいた。

 

「どうかしたのか?」

 

 ああ、これか。

 微笑みながら優しく包み込んでくれるような声に詩乃は確信した。

 この優しさが、不審者極まりない青年としゃべりたいと思ってしまった原因なのだと。

 

「あなたは一体何なの?」

 

「そうだなぁ」

 

 適当に答えられると思いきや、意外にも真剣な顔つきで考え始めた青年は、しばらく考えた後、にやりと不敵な笑みでさらりと答えた。

 

「世界最強の男だ」

 

 そんなふざけた答えに詩乃は思わず笑ってしまう。

 青年も一緒に笑うので、真剣な顔してどれだけおかしなことを言おうか悩んでいたのだろう。

 

「いまどき、そんなこというのは十五歳前後の中学生ぐらいじゃない?」

 

「失礼だな。これでも俺は二十歳だぞ」

 

「うっそ。あんたどう見ても十八ぐらいにしか見えないわよ?」

 

「俺はイケメンだからな。若く見えるのさ」

 

 髪をかきあげて不敵に笑う青年がかっこつけているのが妙に様になっているのが癇に触る。

 

「さて、俺のお迎えがそろそろやって来るんだが、お前の家はどこだ?見送ってやる」

 

「ありがと。でも、すぐそこのアパートだからいらないわ」

 

 なんだか気分が良い詩乃は立ち上がって体を伸ばし、巻いていたマフラーを取って自称世界最強の男に差し出した。

 

「私も帰るわ。あんた、見てるこっちが寒いからこのマフラーあげる」

 

 青年は面を食らったような顔をしたがすぐに笑顔に戻った。

 

「いや、どうせ俺は――」

 

「返してもらわなくてもいいのよ。あんたと話していい気分転換になったし、そのお礼だと思って受け取って」

 

 困った表情で頭をかいた青年は丁寧にマフラーを受け取った。

 

「そういうことなら受け取らないわけにはいかないか。そうだ、かわりといっては何だが、まじないをかけてやろう」

 

 そういって立ち上がった青年は思っていたよりも背が高く、百八十はありそうで、彼が自分よりも年上らしいことを納得させられる。

 見上げようとする顔を押さえつけるように頭の上に手を置かれた。

 男性特有のごつごつした手にどきりとする。

 

「目をつぶってくれ」

 

 あっさりと青年の言うとおりにしてしまう自分を不思議に思いながら詩乃は静かに目を閉じてしまう。

 一体何をされるのかと思っていると、ただ、優しく頭をなでられた。

 

「あんたに何があったのか俺は知らんがな、どんなときでも笑ったほうがいいぞ。特に、お前みたいな女の子はな」

 

 自分の顔が赤くなるのが手に取るようにわかった。

 恥ずかしさと照れで、頭から手が離れた瞬間に何か言ってやろうと目を開いて青年見たが、

 

――――まるでそこには最初から青年がいなかったかのように忽然と姿を消していた。

 

 彼が座っていたベンチを見れば、上着に包まれていた棒状のものもなくなっている。

 幻覚でも見ていたのかと思ったが、自分の首からマフラーがなくなり、頭には彼に触れられていた感覚がまだ残っていて、幻覚ではなかったと理解する。

 終始不思議だった青年とはもう会うことはないだろう。

 不思議な出会いにくすりと笑った詩乃は家に帰り、その日の夜は悪夢で飛び起きることもなく、ぐっすりと寝ることができた。

 

 

 

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「あんたってほんとふざけたやつね。そのくせ勝てないからほんとむかつく」

 

 強さを求める少女と出会い

 

 

 

「え?!うそだろ?!ほんとにお前なのか?!」

 

 共に戦った相棒と再会し

 

 

 

「絶対に殺してやる」

 

 殺し損ねた奴に遭遇する

 

 

 

 

 成長した自称世界最強の彼が鉛の弾が飛び交う世界に今降り立つ。

 

 

------------------to be continued-----------------




更新は未定です
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