ソードアート・オンライン~知られざる天才剣士~   作:モフノリ

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仮想と現実と異世界に

 死銃がいるであろう街――といってもすたれている街なのだが――に着いた三人は二手に分かれていた。

 というのも、川沿いに北に向かったであろう死銃を追いかけ、サテライトスキャンで周囲にいた銃士Xが死銃かもしれないからだ。

 ちなみに真正面から銃士Xに挑みに行くレインとキリト、そして遠くからスナイプするシノンの二手にわかれている。

 つまり、今はキリトと二人並んで歩いているわけなのだが・・・・・・。

 

「本当に殺し方とかわかってないのか?」

 

「わかってないっていってるだろ。こっちで撃たれたあと、ログアウトしたら現実の身体に何かされた感じはあったが、何をされたかわからん程度には回復してからな。多少の違和感があったが何をされたかはさっぱりだ」

 

 実際にレインが感じたことのない身体の違和感なので本当に何をされたのかはわかっていない。

 ミュールゲニアで今まで受けたことのある魔法は数えられないほどあるが、どの感覚とも当てはまらない。だからといって毒を盛られたような感じでもなかった。

 ドラゴンスレイヤーという普通の人間ではなくなった自分だからこそ、何事もなかったかのように生きているのだろうということしかわからない。

 

「ただ、俺の家に誰かが入ったのは間違いない。撃ってきた奴と他人の端末除いてた奴の中身の気配が同一人物。端末には現実の個人情報を打ち込み俺が死銃に撃たれたときに俺の家には誰かが勝手に入ってきた痕跡があった。そこからあいつは個人情報を見て住所を知った奴を標的にするんだろうと推測して死銃が端末除いてた奴を片っ端から仕留めたってわけだ」

 

「つまり、お前も端末に住所打ち込んで見られたってことか。でも、お前なら見られてる時点でなにか問題起こしそうなんだけど」

 

「なんで俺が問題起こすと思ってるのかわからんが、俺は何も打ち込んでない。今の家も坂崎に案内されただけのところで住所自体もわからんしな。撃たれた時はすでにバーサーカーとか呼ばれて目立っていたし、名前はそのまま。SAO当時からすれば多少見た目年齢は上がっているがほとんど変わらん。そしてSAOでの見た目は現実と変わらない。なら、俺を探すのなんて容易いさ。現実の裏社会でもそれなりに目立ってるし」

 

 隣でキリトが苦虫を噛み潰したような顔をしたがスルーする。反応したところで何にもならない。

 なにより、裏社会で目立ちたかったわけでもない。坂崎達が働かざる者食うべからずといって定期的に敵組織のアジトを壊してこいとかの仕事を回してくるせいだ。

 まあ、本当は違う理由で死銃に住所が知られているのだが、それを言うことはない。

 

「ま、俺は今追ってる死銃が誰なのかは知らん。ラフコフのクソ共の事だって殺しまくっただけで名前とかも一切覚えてない。覚えていたとしても、あれが誰なのかもわからんだろうさ」

 

 これ以上話すと墓穴を掘るかもしれないため、レインは話は終わりだと言わんばかりに口を閉じて空気でキリトを黙らせる。

 それからしばらく歩き、すぐに銃士Xなる人物の近くまでたどり着いた。が、

 

「死銃じゃないな」

 

 気配をよめる範囲まで来たレインは落胆する様子もなく淡々と事実を述べた。

 

「もうわかるのかよ」

 

「まあな。お前も気配ぐらい探れるようになれよ」

 

「……ちょっと練習するか」

 

 戦闘センスはあるし、人によって作られた音と動いたことで発生する音を聞き分けられるのだからそれほど集中しなくても気配を探ることなどキリトにだってできるだろう。

 死銃ではないと判断したレインはあっさりと踵を返した。

 

「えっ?どこ行くんだよ」

 

「シノンのところだ。死銃でもないやつを俺とおまえの二人がかりで仕留めに行く必要もないだろ」

 

 逆に二人相手にすることなら全然かまわないのだが、ただの一般人にその逆はする気はない。一緒に戦う人物がキリトならなおさらだ。

 レインは背中を向けながら銃士Xのところに行くであろうキリトにひらひらと手を振った。

 

 この時にはすでに死銃をどうにかしようという気持ちは少なくなっていた。

 確かに今回の事件は昔の自分の不始末が原因ではあるが、やはり異世界の問題だ。永住するらなまだしも、自分はミュールゲニアに帰る気でいる。

 そんな自分が本格的に関与するのはやはり躊躇ってしまう。

 自分のせいで犠牲者が増えるのは嫌だったため、死者が出ないようにすることは全力でしたが、死銃をどうにかするのはやはり自分ではない気がする。

 だから、キリトとシノンの二人に死銃のことは任せようと、自分は邪魔が入らないようにすることだけよしようと思っていた。

 

 ――シノンに死銃が銃を突き付けているのを見るまでは。

 

 地面に倒れるシノンと、そのシノンに人を殺す時に使っている銃を突き付けている死銃を見た瞬間、何も考えることなくレインの手には傾国の剣が握られていた。

 魔力を使って無理やりゲームの世界に傾国の剣を持ち出し、使用することを意識的にレインは避けており、あえてゲーム内の数値やルールに縛られて、あくまでも遊んでいただけだった。

 本戦で死銃の標的を先に仕留める時ですらこの世界にはないものは持ち出していない。

 そんなレインがもはやルール違反どころではない傾国の剣を持ち出したのはそれほどにも逆上したからだ。

 この世界にはないはずの剣を構えながらレインは一気で死銃との距離を詰め、その間にこめた魔力をみえない斬撃をすぐに解き放つ。

 しかし、これはあくまでもシノンから死銃を突き放すためのものだ。

 今ここでヒットポイントをゼロにしてしまっては逆に逃げられてしまう。

 威嚇程度の見えない斬撃は死銃の足元に当たり、突然のことに驚いた死銃はすぐにシノンから飛びのいた。

 それを確認したレインはすぐにシノンと死銃の間に飛び込み、死銃を睨みつけた。

 

「なぜシノンを狙った。俺はお前じゃないもう一人の死銃が誰なのか知っているからシノンが狙われることがないと思っていたんだが。お前の独断か?」

 

 レインのその言葉に死銃ピクリと反応する。

 少し確認したシノンの様子もおかしかったのですぐにでも声をかけたいが、その間に死銃が引き金を引き、シノンに当たればそれで終わる。その時点でシノンは死ぬ。

 剣を持っているので弾をはじき返すことが容易ではあるが、何がどうなるかはわからない。

 万が一にも備えてレインは死銃から目を離さないでいた。

 

「レイン!」

 

 死銃とレインがにらみ合っている間に、銃士Xとの闘いを終えたのであろうキリトが帰ってきた。

 

「キリト。シノンを連れていってくれ」

 

 キリトがシノンに駆け寄ったのを気配で感じ取ったレインはその様子を確認することもなく告げた。

 死銃にも聞こえたらしく、無造作に引き金が引かれたが、レインはやすやすとそれを剣ではじき返した。

 相手もそれがわかりきっていたのだろう。大して慌てている様子もなかった。

 

「レイン、一体何が」

 

「シノンが狙われてる。俺はシノンが狙われることがないと思っていたが、そうでもなかったらしい。俺のミスだ。やつはここで殺す」

 

「殺すって…まさか」

 

「文字通り”殺す”という意味だ。言っただろう。俺はあいつらみたいに見せかけじゃなく、この世界からでも実際に殺すことができるってな」

 

 静かに告げるとキリトは口を閉ざした。

 キリトはレインが人を殺すのを止めたいのだろうが、レインの有無を言わさない空気に何も言えなくなってしまっているのだ。

 止めたい。しかし、言ったところで無駄。

 それがわかってしまったための沈黙。

 

「いけ、キリト!」

 

 喝を入れるようにレインが声を張り上げる。

 直後、キリトがシノン抱き上げた気配を感じた。ガシャガシャという音も聞こえるのでヘカートIIも担いでいるのだろう。

 

「そいつを殺したらシリカ達に会わせるからな!」

 

「なっ?!おい!それは受け付けんぞ!」

 

「絶対だぞ!」

 

「まて!そんな一方的もん俺が受けるとでも――っ!そんな不意打ちに気付かんとでも思ったか!」

 

 思わずキリトの方を向いたレインの隙をつくようにトカレフから放たれた弾丸をいとも容易く切り捨てる。

 傾国の剣を手にしたレインを前にして銃弾が役目を果たすことは無い。

 

「くそっ。お前のせいでキリトを問い詰められんかっただろうが。どうしてくれる」

 

「ほう。律儀にさっきの俺を殺さないとかいう約束を守るのか?」

 

「あんなもん約束なんていうわけないだろ。だが、あの言葉を無視したらしたで面倒なのは間違いない。よかったな。お前の命が守られたぞ」

 

 殺しさえしなければ問題ない。つまり、瀕死はありだ。

 魔力を適度に流して動けないようにする。直接脳にこの世界に無いはずの魔力を叩き込むことになるので、殺さない程度に調整するのはかなり難しい。

 ドラゴンスレイヤーになってそれなりに力加減ができるようになってきてはいるが、VRの世界から現実に直接流し込むということ自体は初めてなのでじっくりやらなければいけないだろう。

 

「四肢を切り落としてもHPが無くならなければいいんだがなぁ」

 

 傾国の剣を構え、駆け出すために一歩踏み出し――

 

 

為す術もなく、レインはその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 切りかかろうとしたのにも関わらず、突然視界がブラックアウトしたレインだったが、慌てることもなく流れに身をまかせた。

 何が起きたのかは分からないが、仮想世界での異変に対してどうすることも出来ないのは身をもって知っている。

 意識が無理やり浮上させられ、頭に強い衝撃を受けたレインだったが、そんなことなどは表面に出すことなく瞼を開けた。

 

「ちょっとレイン?!何してくれてんのさ!」

 

 真っ先に視界に飛び込んできたのは坂崎のあわてた様子の顔だった。

 視線をぐるりと変えれば彼の手にアミュスフィアにつながれているはずのコードが握られている。

 今度は自分の感じた不快感を隠そうとはせず、顔を精一杯ゆがめながら坂崎の顔をつかんだ。

 

「何してくれてんのさ、はオレの台詞だ。今からってところで無理やりアミュスフィアの電源を落としてくれやがって。そのせいで犠牲者が出たらお前のせいだぞ」

 

「いだっ!!!いだだだだ!まって力緩めて!つぶれる!!」

 

「で、無理やり電源落とした理由は何だ」

 

 強制切断のせいでがんがんと響く頭痛を小さくため息をついて振り払ったレインは坂崎から手を離し、じとりとした目を向けた。

 

「そうだ、そうだった。君が君の姿のままでGGOに潜って傾国の剣まで持ち出しただろ?それでGGOのレインが、僕らの組織に加担してる異邦人のレインだとバレたんだよ!GGOに潜ってる間なら君が出てこないとおもったのか、いろんな組織がいっせいに攻めてきてるわけ!!」

 

 そんな坂崎の言葉にレインは今度は大きくため息をついて体を起こした。

 

「わかった。そいつらをさっさと黙らせよう。俺は急ぎの用事があるから後処理は任せたぞ」

 

「え?急ぎの用事?どういうことだい?」

 

「うるさい。黙れ。あぁ、あともしかしたら電話で呼び出すかも知れんから出れるようにしとけよ」

 

「一方的過ぎないかな?!ちょっと!レイン!!」

 

 アミュスフィアを頭からはずしたレインはすぐそばにあった傾国の剣をつかんで騒がしいエクシードの方へと駆け出した。




お久しぶりです

そしてあけましておめでとうございます!!

あけました。年が明けました



だらだらしていたわけでもなく、ほかの事をしていたのですが・・・
にしてもほんとうに遅くて申し訳ないです!!!

次でGGO編おわります!!

その後はまあ、書きたいなとは思っていますが
別ジャンルでいろいろしているのと、次をどうするかをちゃんと決め切れていないということもありどうなるかわからないです。

マザーズロザリオ???
いや、でもあれはほとんどレインを出す気はありませんからねぇ・・・・
オーディナルスケールもちょっとやりたかったり。
アリシゼーションは原作自体が長すぎてどこにレインを入れ込むか悩みどころ満載ですし

実に難しいと思いながら考えているところでございます。

キリトとレインが並んで「ここは通行止めだ」ってやりたいですね
マジで誰も突破できないのでは???

さて、重複しますがGGO編次で最終話。
急ぎ足気味に駆け抜けてしまったGGO編でありますが、どうぞよろしくお願いいたします。
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