ソードアート・オンライン~知られざる天才剣士~ 作:モフノリ
王子というよりヤクザ
この世界に留まることになってから随分と経ったのにも関わらず、未だに自身の住まいを持っていないレインは普段は賑わっているはずなのに、今は昼間にも関わらず静かな街道をのんびりと歩いていた。
最近、この世界――アルヴヘイムにログインするプレイヤーが極端に減っている。
聞くところによるとリアルの方でオーグマーというものが流行っているらしい。
らしい、というのはレイン自身はそれに触れたことがない。
現実に仮想を実現するというもので、魔法で言う幻術に近いだろう。
相手は仮想で自分は現実なんてものの相互性など取れるわけがなく、剣を振るい切りつけたとしてもこちらに感触はないし、攻撃を受けても怪我をしたり吹き飛んだりするわけでもない。
オーグマーには私生活にも役立つ特典が色々とついているらしいが、それもレインには興味のないものだ。
ゆえに、レインは大してオーグマーに興味をしめすことはなかった。
今は離れているプレイヤー達もそのうち帰ってくるだろうとぼんやりと思いながら、レインは慣れた手つきでログアウトボタンを押した。
◆
「オーディナル・スケール、起動!」
来てしまったからには腹を括らねばならない。
気乗りはしないながらも桐ヶ谷和人は視線をソードアート・オンラインのボスだったカガチザサムライロードに向けながら明日奈と共に声を張り上げた。
次の瞬間、世界が組み替えられるかのように姿をかえる。
仮想世界にフルダイブした訳でもないのに、眼前に広がる空想世界に思わず目を見張ってしまう。
しかし、今の自分がいるのは間違いなく現実世界で実体を持つわけで。正直なところ、目の前に広がるものと、自身の感覚のちぐはぐさに落ち着かない。
実際にはオーグマーが己の眼球に作られた世界を写しているだけに過ぎないと頭ではわかっているが、それでもリアルなそれに慣れそうにはない。
フルダイブならこんな違和感もないのに。
慣れない感覚にそわそわとしながら戦況を見ていれば、AR戦闘に慣れたらしい風林火山のメンバーが絶妙なコンビネーションでサムライロードにダメージを与えていた。
和人自身はSAO時代にあのボスとの戦いは経験済みで、それ故にAR戦闘に慣れてもいない自分が出しゃばらなければならない場面があるかもと思ったが案外そうでも無いらしい。
きっと、ここにいるプレイヤーの中にALOやGGOなどの経験者もいるのだろう。
今回は明日奈の足になるためにここまでやってきたが、彼らがオーディナル・スケールにハマっている間はALOで久しぶりソロで動くのも悪くは無い。
それに腐れ縁のような、相棒のような、そんなそこら辺にある言葉だけでは説明できない関係であるレインもAR戦闘には興味が無いらしく、オーグマーの話にすら入ろうとはしなかったし、彼と二人でALO内にあるSAOのボスに殴り込みに行くのもいいかもしれない。
あぁでも、レインはかなり神出鬼没だったな、と眉間にしわを寄せる。
連絡を入れても全く反応しない時があったり、かと思えば連日ALOで遭遇したり。
彼本来の世界に帰るのかは未だに不明で、知らぬ間に消えてそうで不安になる日々を送っている。こちらとしても聞くのが怖くて聞いてもいない。
せめて最後の言葉ぐらいかけさせてほしいと思うが、レインのことだ。突然姿を消すだろう。
彼が分裂でもしてくれれば、この世界に彼は残ってくれるのだろうが、そんなことをする質とも思えない。
「キリト!」
ぼんやりと考え事をしていたが、クラインの声で現実に意識が戻る。次の瞬間には視界の隅に白いものが視界にうつった。
反射的に身体が動いて避けれたのは、今までの積み上げてきた経験故だろう。飛び込む形で避けた影響で地面についた手のひらや受け身を取った身体が少し痛いのは地面が凹凸のあるレンガで動かしたのが生身だからだ。
しかし、敵の攻撃から生まれるはずの風圧を感じることは無い。
「身体が重い」
ぼそりと零しながらも身体を動かして敵から距離をとる。
いつもならこういう時でも羽を使っているが、現実世界に妖精の羽はない。
「タゲそっちいったぞ!!」
ボスを挟んで反対側にいるクラインが叫んだ通り、カガチザサムライロードのタゲは完全にこちらに来たらしく、向かい合えば視線が交差した。
現実と仮想が混ざり合い、この身体が現実だからなのか少し恐怖という感情が生まれる。
もしこれが全て現実だったら。
そんなことを頭に過ぎる。
偽物と分かっていても、そこにいるわけではないと分かっていても、それでも死がそこにあるのではないかと不安になるのはSAOでの体験のせいなのか、それともこれが現実として違う世界にあるということをレインを通して知っているからなのか。二択が生まれたがおそらく両者だろう。
仮想世界で握ってきたどの剣よりも軽いオーグマーによって今は剣に見えている端末を握る力強くして軽く構える。
心もとない。
ふと湧き上がる気持ちをぐっと堪え、ボスに向かって駆け出した。
SAOでカガチザサムライロードと戦った時よりも遅い自分のスピードに気を取られそうになるが、そんなことを気にしている暇はない。今は目の前の敵に集中しなければ――
「うぉっ?!」
上手く集中できそうなタイミングで地面の凹凸につまづいたと気がついたのはボスの前に転がったあとだった。
仰向けに転がった視線の先にはこちらを見下ろしているカガチザサムライロードがいる。
客観的な自分がどんな漫画展開だと突っ込むが、ボスが刀を振り上げるのが見えてそれどころではないと背中に力を込めた。
「ってここALOじゃないんだった!!」
反射的に羽を使って逃げようとしたロスタイムのせいで今更起き上がったところで間に合うかは五分五分だ。
咄嗟に起き上がって避けるのではなく剣で受け止めようとを持ち上げようとした時、ふっと視界に影が落ちた。
「あまりにも戦え無さすぎじゃないか?」
聞こえたこえた声に全身の緊張が解けて力が抜ける。
「リアルは動きにくて仕方がない」
「お前の場合はただの運動不足だ」
次の瞬間、刀と剣がぶつかり合う音がオーグマーを通して響き、ぶつかった衝撃のエフェクトが自分の上で刀を受け止める男の姿をはっきりと浮かび上げた。
ピンチな姫を救うかのようなその男はあまりにもかっこよすぎるが、ピンチなのは姫なんて可愛い子ではなく、ただの野郎なのが実に残念だ。せめてGGOの姿であれば見栄えは良かったかもしれない。
いや、無様に転けた時点で残念だ。
一連の想像をやめて和人は颯爽と現れた王子――本性を知ってるせいでどちらかといえばヤクザのほうが近い――に声をかけた。
「さすがにこの登場の仕方はカッコよすぎるんじゃないか? レイン」
「俺がかっこいいのは当たり前のことだろ」
あいも変わらず全身真っ黒の姿で不敵な笑みを浮かべながら振り返ったレインはただただかっこよく、そしてなによりも頼もしかった。
始まりました。
オーディナル・スケール編でございます!!
いや、アニメ、アリシゼーションが始まりました。
アリシゼーション見ずにこれを読んでいるのであれば早くアリシゼーション見て欲しいですね。
マジで最高でした。
ありがとう。アニメ化。ありがとうA1-picture
生きていてよかった。
さて、オーディナル・スケール編ですが、現状まだ続きかけておりません
すみません!!
原稿、ネーム、他小説、そしてコレを同時進行でしているため全体的に筆が遅い状況です。
かきたいものをかいていたらこんなことになってしまいました………
気長にまっていただければ幸いです
今までと変わらず、原作にレインを添える程度の展開になりますので、どうぞよろしくお願いします( ˇωˇ )
ここまで読んでくださってありがとうございます。
そしてしばらくの間、またよろしくお願いします!