ソードアート・オンライン~知られざる天才剣士~   作:モフノリ

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戦場の歌姫と騎士

レインが力任せに剣を押し返すとそう簡単に吹き飛ぶはずのないカガチザサムライロードが吹き飛んだ。

どういう情報伝達でそうなったのかは分からないが、どうしてだろうか、レインだからという理由で素直にその現象を受け入れてしまっている時分がいる。

 

「あぁ……なんか気持ち悪い感覚だ。どう力を込めたらいいのかイマイチわからんな」

 

肩をグルグルと回し、オーディナル・スケール用の剣を軽く振り回して調子を整えているレインを横目にキリトは立ち上がる。

パンパンと土埃を払うが見えている服と触れているものが違うことにそわりとしてしまう。

 

「軽いか?」

 

眉間にシワを寄せたままぶんぶんと腕を振り回すレインに声をかける。

 

「だいぶ。特に剣がだめだ。軽すぎる光剣のほうがまだ質量を感じるぐらいだ」

 

「わかる。あと――」

 

言葉を続けようとするが、カガチザサムライロードがこちらに刀を振り下ろして来るのが見えていたので、今度は余裕を持って避けそのまま距離をとるために走り出す。

ちらりと横を見ればレインは余裕のある様子で和人の隣を並走していた。

 

「思うように身体が動かない」

 

「それはキリト君が運動不足なだけでしょ?」

 

いつの間にか並走していた明日奈が呆れた様子でぼそりと言った。

先程レインにも言われたこともあり、そんなに自分は運動不足だろうかと考える。体感的には運動してる方だったがほとんどが仮想世界だったことを思い出し、リアルでは確かに運動をほとんどしていないことを思い出す。

 

「これからだよ!」

 

駆けながら誤魔化すように叫ぶ。

 

「ラストアタックいただき!」

 

その直後だった。まだラストアタックと言うには体力が残っているのにも関わらずキリトたちとすれ違った虎顔の男は大砲を構え、遠慮なく打っ放した。

それだけ威力があるものなのかと思うが、GGOで見たレインの暴走銃に比べればそんなに強いものには見えない。

 

「おい!」

 

レインも同じことを思っていたのだろう。反射的に声をあげていた。

突然すぎることに和人もレインも明日奈も足を止めて弾がボスに向かっていくところを見ることしか出来ない。

当たれば御の字。おそらくではあるが戦闘パターンが変わるぐらいまではHPが減るだろう。

だが、そんなこともなく、カガチザサムライロードはあっさりと弾を避けてしまった。

 

「あっ、やべっ」

 

トラ男がそう発したのは弾の軌道上に今まさに戦場の歌姫が如く歌い続けているユナというAIがいたからだ。

AIである彼女に当たるとどうなってしまうのか。

そんなことよりも助けなければいけないはずなのに、ふとそんなことが過ぎる。

いや、きっとそちらに頭が働いたのは生身の自分があの高速で飛ぶ弾に追いついて、さらには二階分ほど高いところに立つ彼女の目の前に飛び上がることも出来ないことを理解しているからだろう。

だが、きっとレインなら生身でもやろうと思えばできるのは想像がついた。

しかし、動くの様子のない彼はこの世界の人間が多くいる中でそんな言わば人外のようなことをしたらどうなるか分かっているのだろう。

異邦人である彼だがかなりこの世界に馴染んでいる。

違う意味で現実世界だから動けない2人はただ、AIであるユナに弾があたるのを静観していると、突然彼女の前に黒い影が飛んできて弾をはじき、弾は背後からのものにはさすがに反応できなかったボスの後頭部に直撃した。

華麗に地面に降り立った影は姿勢よく立つ。まるでユナの騎士であるかのようにその場に存在を知らしめるには十二分な演出だ。

突然現れた影を――青年を見つめたことで頭上に2という数字が表示される。それはつまりランキング2位という事だ。先程の身体能力を見せつけられれば当然のこととも言える。

レインの登場といいランク2位の彼の登場といい最近は漫画のような登場が流行りなのか、などと考えていると、先程の一撃で行動パターンが変わったらしいカガチザサムライロードが見境なく暴れ始める。

そこからもキリトはただ見ているだけだった。

隣で立つレインも参戦するつもりはないらしく鞘にしまうことの出来ない剣をぶら下げたままぼんやりと観戦している。

 

「お前、興味なかったんじゃなかったのか?」

 

暇つぶしにここまで来たくせに参加するつもりのないレインに声をかける。

和人の問いかけは自分自身にも同じことを言えるのだが、自分は明日奈の付き添いのようなものだ。一人でやってきたレインとは少し違う。

 

「興味はないな」

 

「ないのかよ」

 

考えていたよりも早い即答に変に呆れてしまう。

 

「じゃあ、なんでわざわざ来たんだよ。来てくれて助かったけどさ」

 

「……まぁ、なんだ。様子を見て来いって言われたんだ。SAO絡みは問題がよく起きるから」

 

つまり、彼にとってこれは仕事みたいなものなのだろう。レインが所属している組織はいまだにどんなことをしているのかよくわからないが、菊岡と知人らしい坂崎先生から考えるに本当に大丈夫なのかと問いただしたくなる程度には怪しさを感じる。

もとより、SAOに途中参加することになった原因からしてレインの背後からは常に怪しい何かを感じているので今更感はなくもないだが、それでも心配はしてしまう。

なんでもできる彼には不要な心配だろうが、如何せんSAO初期の時のレインの様子を知っているせいで、いくら見た目が自分より年上でも世話のやける弟のような感覚は抜けない。

 

「オーグマー自体はそれほど好きじゃないけど、さすがに仮想世界のSAO関連の問題がARのオーディナル・スケールでなにか起こる可能性はないんじゃないか?」

 

現実を仮想にしてしまうオーグマーのせいでなにか問題が起こる可能性はあるが、それはSAO絡みではない。

SAOのボスモンスターが実際に人間を殺し始めるならそれはSAO絡みの問題だが、所詮AR。人を傷つけることはできない。

 

「一応警戒しておこう、って認識だ。ただの警備みたいなもんだから気にするほどのことでもない。リアルのイベントに警備がついてるのと変わらん」

 

そう言いながらラストアタックを決めるアスナを眺めていたレインはいつものように掴みどころのなく、いまいち何を考えているのか分からなかった。




時間を開けてしまい申し訳ないです!!
難産にも程がありました………


基本的には原作を読んで欲しい、みてほしい
私が語ることではない
という気持ちから、それほどレインが関わることの無い部分は原作を見ればわかるところは大分カットさせていただいてます。

そのせいで分かりにくい部分があれば申し訳ないです


最後になってしまいましたが、いつも読んでいただいてありがとうございます!
ぼちぼちとスローペースにはなってしまいますが、頑張りますのでよろしくお願い致します!


アリシゼーションみてたらアリシゼーションも書きたくなる欲が出ているのが最近の悩みです

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