ソードアート・オンライン~知られざる天才剣士~   作:モフノリ

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本格的な介入

 レインに頼まれ、アスナという少女を送った次の日、イヴと雪野剛はとある病院に訪れていた。

 

「俺ら、クライン氏に会ったことないけど、大丈夫か?」

 

「そうだけど、仕方ないじゃない。レインは今の彼の前に姿を現せないんだから」

 

「そりゃそうだがな」

 

 坂崎やレイン達と共に仕事をしてきたおかげで初対面の人物に会いに行くことにも慣れた剛だが、今回は少し事情が違う。

 レインの、彼がこの世界で独自に築き上げた彼の交友関係にある人物に会うのだ。

 さらにいえば、裏のある重役や異邦人というわけでもなく、SAO帰還者ではあるが、剛からすればただの一般人でしかない。

 いろんなことが影響して変に緊張してしまう。

 

「坂崎さんが菊岡さんと協力関係になんてなるからこんなことに」

 

「仕方ないでしょ。おかげでレインもこの世界にいてくれることになったんだし」

 

「っていってもなぁ~」

 

 剛がうだうだと言ってしまう理由を知っているイヴはただ苦笑いを浮かべただけだった。

 そうしている間に、『壺井遼太郎』と書かれた病室の前までやってきた。

 

「くそぉ。レインが直接様子見ればいいのに」

 

「クラインさんにオーグマーつけてもらうわけにはいかないでしょ」

 

「まあな」

 

 といっても気が進まないことには変わらない。

 様子を見なくとも、他の犠牲者と同じであることはわかりきっている。それはもちろん、イヴと剛に様子を見てきてほしいと頼んだレインもわかっているだろう。

 それでも、レインは知りたいのだ。クラインが元気なのかどうかを。

 

「元気だといいな」

 

「レインの知り合いよ?元気でしょ」

 

「・・・・・・だろうな」

 

 先ほどより、落ち着いた剛はあったことのない人の病室の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「同時に何箇所も出るなんて聞いてねぇぞ!」

 

「それは私もです!」

 

 騒ぎながらもレインとイヴは歩道を駆けていた。

 向かう先は恵比寿ガーデンプレイスだ。

 二人の頭部にはオーグマーが装着されており、オーディナルスケールは起動済みであり、レインはいつもの様相とそれほど変わらないが、イヴは懐かしい身体に張り付いた戦闘スーツを装備済みだ。もちろん、武器として右手には世界最強のサブマシンガンと言われるMC51を持っている。

 

「直前までオーグマーの使い方がわからないとかどこの馬鹿崎だ!」

 

「あの人と同じにしないで!」

 

「ならちゃんと剛に教えてもらえとけ!」

 

 イヴの不手際で出遅れた二人の眼前ではすでに戦闘が始まっており、慌てて二人ともスピードを上げ、なにやら渋滞している階段の上空を軽々と飛び越えた。

 

 レイン達が所属している組織は今、オーディナルスケールにより記憶を失う人たちを減らすために奔走している。

 恵比寿ガーデンプレイスだけではなくほかの場所に現れたボスの元にも今頃大急ぎで人員が送り込まれているだろう。

 レインとイヴの二人がここに来た理由は"エイジ"と"ユナ"の二人がいるからだ。

 

 すぐに状況を把握に入ったレインの視界に、倒れたアスナと今もドラゴンに狙われているシリカがいた。

 叫んだのはもはや条件反射のようなものだった。

 

「イヴ! 狙われている二人を頼む!」

 

「はい!」

 

 同時に着地したレインとイヴは互いに別方向に向かって地面を蹴った。

 明らかに人間の動きではないスピードでドルゼル・ザ・カオスドレイクまで辿り着いたレインは勢いよく切りかかり、勢いに任せて吹き飛ばした。

 少し遅れて、イヴがアスナとシリカを守るように立つ。

 

「レインさん!」

 

「アスナ!」

 

 耳にシリカの声とキリトの声を捕らえながら、レインは被害者を出さないようにボスに集中する。

 レインにはこの場にいるSAO帰還者が誰なのかわかるはずもない。そのため、とにかくボスからプレイヤーを守り、ボスを倒すしか方法はないのだ。

 今回は下手をすればキリトも被害者になりえるため、イヴに援護を頼むしかない。

 

「サブマシンガンでの援護を頼むぞ」

 

「了解。レインもいろいろ気をつけてね」

 

「へまはせん」

 

 久しぶりの危機が迫る――といってもレインではなくキリトたちにだが――場面に剣を握る手に力がこもる。

 魔法を使うことはできないし、あくまでもこの世界の人間基準に立ち回らないといけない。さらにはARということもあって、敵に攻撃判定があるのは剣の刃の部分だけだ。

 

「縛りプレイなんて趣味じゃないんだがな」

 

「何しにきた」

 

 ぼそりとつぶやくと、明らかに怒気をはらんだ声音が聞こえた。無反応でいることは相手を逆撫でることになるのは考えなくてもわかるのでレインはボスモンスターを気に留めながらも反応を返した。

 

「戦いに来ただけだが?」

 

 怒りをこちらに向けているエイジにレインはなんてことのない顔を見せる。

 エイジとはすでに代々木公園で相対している。

 

「お前にはなにも――」

 

「そのために私が来たんです」

 

「ほぉ?女がなんの役に立つって言うんだ。ここはVRじゃないぞ」

 

「そうですね。ですが、私はもとよりVRなどしたことはありません。しかし、貴方のようなずるい方に負ける気はしませんね」

 

 言い切ったイヴにレインは不敵に笑う。

 エイジのことはイヴに任せ、レインはこちらに駆け寄ってきているリズベットたちにドルゼル・ザ・カオスドレイクが放った炎の球に向かって飛び込んで剣で弾き消す。

 多少飛びすぎたかもしれないが、現実と仮想が入り混じっている今なら大丈夫な範囲だろう。

 

「無事か?」

 

「無事か? じゃないわよ!」

 

 リズベットに声をかければいつものように声を荒げられる。

 だが、リズベットの相手をしている暇はレインに与えられなかった。

 ドルゼル・ザ・カオスドレイクがキリトへと飛んでいったのだ。

 あわてて地面を蹴ってドルゼル・ザ・カオスドレイクとキリトの間に入った瞬間、それまで流れていた歌が途切れた。

 

「ざーんねーん」

 

 ユナがそういうと、フィールドにいたボスたちがいっせいに撤退し始める。

 お疲れ様~と手を振るユナとボスを追いかけるプレイヤーたちを眺めつつ、レインは剣を収めた。エイジはどさくさに紛れてどこかに行ってしまったらしい。

 

「明日奈!大丈夫!?」

 

 リズベットがアスナに駆け寄ってきたが、彼女が無事ではないことをレインは知っている。

 

「レイン」

 

 静かに響いたイヴの声が聞こえ、レインは少しだけ息を吐いて気を落ち着かせた。

 アスナの元に降りてきたユナは無害そうに話しかけていることに対して複雑な気持ちになる。

 レインたちが持っている情報はオーディナルスケールでSAO帰還者のHPがゼロになったときにアインクラットでの記憶が消えていくということぐらいだ。そこにエイジが関わっているというを知ったのは、レインがクラインたちが被害にあっているところに遭遇したからだ。

 ユナに関しては、本当に関わっているのかは定かではない。だが、オーグマーに関係のある人物だということで監視対象になっている。

 彼女は利用されているのか、それとも共犯者なのか。

 それを見定めるためにユナを見ていれば、その視線に気がついたらしいユナとレインは目ががっちりと合った。

 

「あら。貴方・・・・・・ふーん」

 

 すぐにレインがARに興味を示さなかった理由でもある事情に気がついたらしい彼女がぐいっと顔を覗き込んできた。

 

「どうしてこんなところでこの人たちと馴染んでいるの?」

 

「諸事情でいろいろな。黙っていてくれるとありがたい」

 

「うーん。どうしよっかなぁ」

 

 自由奔放で縛られている様子のない、CPUとも違う彼女ができるのであれば利用されているだけであることを願いたい。

 

「そうだ!黙っておいてあげるから今度お茶しましょう?」

 

「それぐらいならお安い御用だ」

 

「なら決定!今度会ったらお茶しましょうね!」

 

 なんていいながら楽しそうに去っていくユナを見送るが、背中に刺さる視線にげんなりする。

 振り向けば案の定じっとりとした目が六つほどあった。そのうちの二つがイヴというのが少し意外だったが、ごまかすように視線をアスナに向けた。

 

「アスナ」

 

「・・・・レイン」

 

「あのナンバー2のやつなんなのよ」

 

 多少顔見知りのように話していたからだろう。説明しろというリズベットの視線を無視して話を進める。

 

「お前たちはもうボス戦に参加するな」

 

「はぁ?なんで――」

 

「申し遅れました。私、菊岡誠二郎さんとおなじ部署に所属しております、イヴと申します」

 

 無理やり話に入ってきたイヴを怪訝そうにリズベットだけではなく、シリカもキリトも見ているのは菊岡と同じ部署だと言ったせいだろう。

 事実としては少し違うのだが、あながち間違っている訳でもない。

 

「えっと・・・・この人たちって全員知ってるんでしたっけ?」

 

 振り向いて聞いてきたイヴの言うものが、どれの何を指しているのか分からないが、予め彼らを色んなことに巻き込むのをレインがやめろと言っているので、異邦人の存在の話だろうとあたりをつけて頷いておく。

 

「なら問題ありませんね。私もレインさん同様に異邦人です。と言っても彼ほど強い訳ではないんですけどね」

 

「っていうことは坂崎先生とも関係が?」

 

「そうですね。というか、私は坂崎さんの所属している組織から菊岡さんの部署に貸し出されている身です」

 

 実際にそうなのだが、事情を知っているレインはおもわず顔を顰めてしまう。なにせ、レインも言ってしまえばイヴ同様貸し出されている身だからだ。

 本人はやりたい放題やっているのでそれほど縛られている気は無いが、イヴの話を聞いていると一社会人としてこの世界に準じていまっている感がなんとも言えない。

 

「イヴの詳しい話はいいだろう。俺同様かなり込み入ってるから深く追求するのはやめてやってくれ。少し天然も入ってるから機密情報とかもペラペラ話すんだ。こいつは」

 

「天然だなんて言うのはレインさんだけです!」

 

「オーグマーの操作がまともに出来んかったやつに言われたかない」

 

「それはすみませんでした。そうすればアスナさんも被害に合わずにすみましたし」

 

 本気で落ち込むイヴにレインは深くため息をついた。

 

「大体、剛がイヴに説明しなかったのも悪い」

 

「ちょっと待ってくれ!明日奈が被害に合わずにってどういうことだよ!」

 

 キリトが黙っていないとは思っていたが、話せば首を突っ込んでくるであろうことも察することも出来る。

 だが、キリトだって被害者になり得る今回は厄介でしかない。

 

「レインさん。どうしますか?この方々への干渉はあなたが権限を独占してましたよね」

 

「いらんことを言わんでいい」

 

 隣のに立つ美人の口を塞げないのがこれほど厄介だとは思わなかった。

 いや、おそらくわざとだろう。何かと秘密主義で裏でこそこそしているレインをどうにか裸の状態でキリトたちの前に転がしたいのだ。

 余計なお世話だと内心でぼやく。

 

「おい、お前何を俺たちに隠してるんだ」

 

 言わんこっちゃないとレインは深くため息をついた。

 

「色々と極秘事項もあって詳しくは言えん。ただ、オーディナル・スケールでSAO帰還者から被害者から出てるのは事実だ。俺とイヴは被害者を減らすために動いてる」

 

 どこまで話せば納得してもらえ、どこまで隠せば誤魔化せれるかを考えながら口を動かす。

 

「なんの被害かは、ここでは言えん。アスナはとりあえず今日は1度帰って休め。だが、明日は病院にかならず行け。何かあればキリトを頼ればいい。キリトはアスナを支えてやれ。こっちの厄介事は俺達がどうにかする」

 

「お前だってSAO帰還者だろ」

 

 あまりにもキリトの言葉が予想通りでクスリと笑ってしまう。

 

「まあ、そうなるが、オーディナル・スケールで俺はチーターだからな。被害には合わん。VRならお前を頼ってもよかったかもしれんがARの戦闘に、現実世界での戦闘に慣れてないの方が危ない。どうしても関わりたいなら菊岡に話すんだな」

 

 と言っても、レインが菊岡に大してキリトたちを巻き込まないようにと言っているのであいつが自主的にキリトを巻き込むことはしないだろう。

 それに、万が一もある。今回はアインクラッドの記憶を失ってしまう。ある程度ならレインもアインクラッドの情報を持っているが、やはりキリト程ではない。

 菊岡はキリトの記憶がなくなることをよしとはしないはずだ。

 

「菊岡の許可が出れば、いいんだな?」

 

「かまわん」

 

 キリトはレインを睨み、レインはそれを真っ向から受ける。

 そんな二人を横目に、イヴはアスナの隣にしゃがみんこんだ。

 

「アスナさん、今真実を言えば取り乱してしまうから言えないけれど、きっと不安になると思う。もしかしたらすでに不安かもしれない。けれど、あなたの周りにはあなたの仲間がいます。安心してとはいえませんが、きっとレインから聞く強いあなたなら乗り越えられるはずです」

 

「・・・・イヴさん」

 

「大丈夫。私達が動いているんですから」

 

 微笑む彼女は相変わらず人間離れした綺麗さがある。

 戦闘スーツに身を包み片手にMC51が握られているのが些か勿体なく感じる。

 

「今日はもう遅い。お前達もさっさと帰れ。悪いがイヴ、そいつらを送ってやってくれ」

 

「わかりました。レインさんも無理はしないでくださいね?」

 

「・・・・・・お前、愛海に似てきたな?」

 

 組織の一員である愛海は何も知らなかった当時の剛を見守ってきたからか、いい意味で言えば面倒見の良い姉気質がある。彼女は忙しそうにあちらこちらに行っていることもあり、滅多に会うことがないが、会えば小言を言われるのが常だ。

 言い方こそ丁寧ではあるが、イヴの空気はどこかそんな愛海に似てきた気がするのだ。

 

「気のせいですよ」

 

「ならいいが。じゃ、先に帰ってる」

 

 背中を向けてひらひらと軽く手を振る動きとは反対に、レインの表情はどこか過去の冷たいレインを髣髴とさせるものだった。




とうとうアスナが被害者に。

そして、異邦人に出てくる人たちの名前をちょくちょくと出させてもらっています。
せっかくの現実世界での話ですし、異邦人でレインと本格的に絡むのが坂崎さんだけだったので彼が中心でしたが、ちょいちょい出そうとおもった所存です。


そして、ふと不思議におもったのが、白いユナや黒いユナ、それからユイたちAIはどのようにして現実世界を見ているのだろうかという疑問が浮かび上がりました。
彼女たち専用のカメラがそこに浮いているわけでもないですからね。

とおもうと、浮いているドローンから地形スキャンを行って、仮想世界に現実世界と酷似した世界を作成。
そして、ユイの場合はオーグマーをユナたちはドローン、もしくは誰かのオーグマーを介してつなぎ合わせ、互いにそこにいるかのような状態を作り上げているのかなぁ、なんて思ったり。
何かで説明されてるものがあるのでしょうか?
プレイヤー側は眼球に直接映像を見せている、見たいな設定だったと思うのですが。


さて、レインの状態を言う気がないくせに隠そうともしないあやふやな文章が続いておりますが、いつになったら明言されることになるのか私にもわかりません。

いつものようにSAOをアニメと映画みてたらわかるよね!!
みたいな文で突き進んでいきますが、どうぞよろしくお願いいたします。
わからなかったらアニメや映画を見ていただければと。
異邦人のキャラは異邦人を一冊読めば大体わかります!


最後になりましたが、いつも読んでいただきありがとうございます。
拙い分ではありますが、がんばって書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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