最近夢に見る景色。
崩れたビル。
燃え盛る街。
ありとあらゆるモノが破壊され、自分以外は誰もいない。
あるのは無数の亡骸。
何があったのかはわからない。
それなのに自分はここに立っている。
なぜ、自分が――自分だけが生き残った?
わからない。
何も。
「っは!……はぁっ、はぁっ……」
また、あの夢……。
私は何度も見る夢。
自らの愛する者も全て消えた、絶望の世界。
「いずれこうなると……言うのか……」
隣には愛する夫が眠っている。
まだ、壊す訳にはいかない。
「壊す訳には……いかないのだ……」
拳を握り混む。
しかし、強くではない。
優しく、包み込むように。
「エリス、どうした?」
「霊哉……私は……」
「嫌な夢でも見たのかい?」
「あぁ……全てを失う夢だ……」
怖かった。
何もかもを失うのが。
今だって怖い。
「失う……か」
笑っている?
「どうして……笑うのだ?」
「いや、そんな事を言えるのは吸血鬼くらいだとおもってね」
「?」
どういうことだろう。
「俺達みたいな人外や、ふつうの人間は有限の時を生きてる」
「それは知っている」
「全ての人がそうだとは限らないが、俺は失う事は仕方ないと思う」
「仕方ない……?」
仕方ないと、そう割りきるというのか……。
「ああ。吸血鬼じゃない俺達はいずれ死ぬ。何も失わない為には永遠の命を手にいれるしかない。でもそんなことはできないだろう?」
「ならば私がっ……!」
「違うんだよ。そんなものは要らないけど、代わりにその時を精一杯生きるんだ。そうすれば、失うのは怖くないと、俺は思う」
「霊哉は……強いのだな……」
「違うさ。弱いからこそ、割りきるしかないんだよ」
弱いからこそ、割りきる……。
それで……。
「それでいいのか?」
「いいんだ。俺の決めた生き方だからな」
「だが、霊哉が死んだら私は……」
「大丈夫だ。あと数百年は一緒にいられるさ」
「え?」
数百年?
数百年しか……?
「数百年しか……いられないのか?」
嫌だ。
たったの数百年なんて。
「嫌だ!数百年経ったらあなたと別れなければいけないなど!耐えられない!私はっ……私は!」
「エリス……」
「霊哉……」
「そんなこと言われたら……俺も辛くなるだろ?」
「……すまない」
「なぁ、エリス。俺が居なくなるのは嫌か?」
「ああ、嫌だ」
「じゃあ、俺を吸血鬼にするか?」
「ッ!それは……ッ!」
「吸血鬼になって、数千年たって心の死んだ俺と、一緒にいたいか?」
「それは……嫌だ。私が辛い」
「はは……エリスはわがままだなぁ」
う……わがまま……。
……わがままか。
霊哉といたいと願うのも、わがまま。
霊斗やエイラといたいと願うのも、わがまま。
全部、わがまま。
「……」
「なぁ、エリス。今は、どうなんだ?」
「えっ?」
「今、俺や霊斗、エイラと暮らして、幸せかい?」
「ああ。幸せだ。とても……とても」
「俺も幸せだ。だけど、いつまでもは、続かないだろ?」
霊哉は死ぬ。
霊斗も、遅かれ早かれ死ぬ。
エイラも霊斗と同じ……。
また、私だけが生き残る。
「霊哉……私は……どうして生きてしまうのだろうな」
「さぁ……吸血鬼の特性じゃないのか?」
「いや……私の母も、祖母も、皆死んだ」
「そうか……じゃあ、なんでだろうな」
「私は、呪いだと思うのだ」
「呪い?」
私は……人を殺めすぎた。
母よりも、祖母よりも。
どんな吸血鬼よりも多く。
「私への……罰だと……」
「まったく……なに言ってるんだよ」
「え?」
「俺はこの長命の体を罰や呪いだと思ったことはない。偶然、他の人より長いだけだと思ってる。それと、同じじゃないか。他の人より生きる力が強いんだ」
「だが……死にたくても死ねないのは……」
「別に、難しく考えなくていいんじゃないかな?そんな未来の話より、今の楽しい話をしよう」
「霊哉……」
「なんだい?」
「いい話っぽく纏めようとしたな」
「はうっ!」
図星か……。
まぁ……。
「まぁ、いろいろ話せて楽になった。その……ありがとう」
「いいさ。ほら、もう寝よう」
「うむ。おやすみ」
「おやすみ~」
すぐに寝息をたて始めた……。
普段も高校生のような顔が、今はもっと幼くみえる。
「ふふ……愛しているぞ……」
「離せッ!離せぇぇぇぇ!」
「駄目だよ、霊君。抵抗しないで?」
「くそっ!なんで吸血鬼化もできないんだよ!」
「え、だって夢の中だし」
なんだと!?
つまり、俺は今、無力な人間?
「離せぇぇぇぇ!」
「はいはい、騒いでも誰も来ないよ?」
まずい、やられる!
逃げるには……。
「逃げようとしても無駄だよ?ふふふ……新鮮な精を……」
「止めろっ、やめろぉぉぉぉぉ!ズボンに手をかけるなぁぁぁ!」
「?なんで?」
「いや、いろいろ見えちまうだろ?」
「霊君のなら別に構わないよ?」
「俺が構うんだよ!」
しかも、精って生命力とかじゃなくてそっちかよ!
「うふふふふ……大丈夫、優しくするから」
「止めろっ、せめて現実でそう言うことをしてから!」
「じゃあ、する?」
「しないよ!つか、まだそう言うことをするつもりはないから!」
「そう……残念だなぁ」
「まぁ……俺らが成人したら、考えてもいい」
「霊君のヘタレ」
「返す言葉もない」
「……もう帰る」
「そうか、おやすみ」
「おやすみ……ばか」
なんなんだよ……。
まぁ、とりあえず貞操は守れたという事で。
「安眠だな」
ああ、視界が暗くなる――。
「まったく!霊君のヘタレ!無駄貞操観念!」
なんで、駄目なのだろう。
「って言うか男の子ってそういうことが大好きなんじゃないの!?」
って、雑誌で見た。
なのに……。
「なのにぃー!なんで!」
私は……。
「霊君の事考えるだけで……」
心臓がドキドキする。
体が暖かい。
「霊君は私の事、どう思ってるんだろう」
ふぅ……文を書くのが楽しい。
じゃ、また次回!