書きます。
「結局眠れなかった……」
私は明るくなっていく窓の外を見ながらため息をついた。
あの後も何度かお兄ちゃんの部屋の前に行ってみたけれどお兄ちゃんが眠っている様子はなかった。
「……支度しよ……」
何時までも呆けている訳にはいかない。
私は頬を両手で叩いて気合いを入れて、学校へ行く準備をはじめた。
「結局徹夜でネトゲをしてしまった……」
俺はネトゲをログアウトすると、椅子に座ったまま大きく伸びをする。
「……腹へったな」
そういえば昨晩から何も食べていない。
「カップ麺でも食うか」
そう言って立ち上がると、俺は部屋のドアを開ける。
「あ……」
「へ……?」
そこには天音がいた。
「お、おはy――(バタム)」
なんか言ってた!?いや、今はそれよりも……。
「どうする、俺……」
これはまずい。元カノが同情心で起こしに来るとか拷問かよ。
この状況をどう打破するか――。
『開けろーー!(ドンドンドン)』
うわ、めっちゃノックされてる!殺される!
「意地でも開けるか!」
『……へーぇ、ふぅーん?いいんだぁー?そんなこと言っちゃって?(メキメキメキ)』
ドアノブからヤバイ音が!?
「くそっ!こうなったら……」
あれをやるしかねぇ!
「我が身を包め遥かなる闇よ、その役目は他者を拒絶する壁――"
この魔術の効果は他者に認識されない結界を張るというもの。つまりこれを使えば無敵。
「(バキィッ)御用だー!ってあれ?」
ああ、ドアが……。
母さんに頼めば直してもらえるかなぁ……。
「霊君?どこに隠れてるの?」
よし、今のうちに部屋から脱出しt「あ、見っけ」はぁ!?
「んな馬鹿な……」
「馬鹿は霊君でしょ?何で逃げるの?」
「逃げるに決まってんだろ!さらばだっ」
俺は猫又化しつつ走り去る。
玄関を抜け、そのまま町の方へと。
「待てぇーっ!」
ちっ、もう追いかけてきたか。
「ふん」
俺は鼻を鳴らしながら塀の上に飛び乗る。
このまま走り去れば撒くことができるだろう。
そう考えた俺はそのまま走り去った。
「はぁっ、はぁっ……み、見失った……」
私は膝に手をついて、呼吸を整える。
そしてふと周りを見渡す。
「あれ、ここって……」
視界一杯に広がる青。
忘れもしないあの場所。
霊君と付き合いはじめてから、初めてのデートで来た海。
まだ1ヶ月も経っていない筈なのに、随分と昔の事のように感じる。
「そういえば、あのときだっけ。ちゃんと話してくれたのは」
まだ人のいる海。
その一角にある堤防の上に座って海を眺めていたら、なんだか視界が潤んできた。
「私、霊君に嫌われちゃったのかな……」
何かしてしまっただろうか。
もう、一緒にいれないのかな。
他にも様々な想いが頭の中を回る。
「うっ……ぐすっ……」
涙が溢れる。
止まらない涙を拭う。
嫌だ、嫌われたくない。
会いたい。
「ひっぐ、ぐすっ……」
涙が止まらない。
私は声を抑えて泣いた。
走っていたら、海に着いてしまった。
「まぁここまで来れば大丈夫だろ……」
そう呟いた俺は一休みしようと、堤防に向かう。
しかし、途中で先客がいることに気がつく。
「げっ……」
しかも先客というのは天音だったのだ。
逃げようと思ったが、様子がおかしい事に気づく。
「……泣いてる?」
そっと耳を澄ませる。
『ひぐっ……霊君…………』
なぜに俺。
『私、何か嫌われるようなことしたかな……ぐすっ』
いや、むしろやらかしたのは俺……あれ?
なんであいつが俺に嫌われたと勘違いしてるんだ?
まさか――
俺は携帯を取りだし、PCメールの項目を開く。
そこには天音からのメールが。
内容は『なにかあったの?大丈夫?』。
つまり纏めるとこういうこと?
1・俺がやらかし、そこに天音が起こしに来なかったことで、振られたと勘違い。
2・引きこもった俺を心配した天音がメールを送るも無視した俺。
3・そして今朝を経て今に至る。
「Oh……」
全面的に悪いのは俺だ。
そしてその結果、一番大切な人を泣かせた。
「……どうしよう……」
立ち尽くすことしか出来ない俺の視界から、天音はいつの間にか消えていた。
私が泣いていると、誰かが声を掛けてきた。
「大丈夫かい、姉ちゃん?可愛い顔が台無しだぜ?」
「あなたは……あ、あのときのナンパ男達!」
ナンパ男A「ん?あぁーっ!てめぇよく見たらあん時の化け物の彼女じゃねぇか!」
ナンパ男B「ちょうどいい!あのときの借りを返させてもらうぜ!」
「ちょっ、やだ!離して!」
だめだ、振りほどけない。
魔族化していない私の力は普通の女子となんら変わりない。
しかもサキュバスは昼間は魔族化するのに大量の魔力を消費する。
「離してよぉっ!やだぁ!」
男A「うるせぇ!ギャーギャー喚くんじゃねえ!」
「んむっ!?んーっ!」
声も出せない状態では助けも呼べない。
それでもなんとか抜け出そうともがく。
「んんーーっ!!」
男B「ちっ、うるせえな。ちょっと静かにしてろ」
バチン
「!?!?」
首の後ろに電撃を喰らったかのような感覚。
恐らくスタンガン……。
そこまで考えたところで私の意識はプツリと途切れた。
次回に続くよ!