今日から夏休み……ゆっくり寝るか。
「で、俺は寝たいんだが……」
「寝てもいいよー」
「いや、なんでお前がここにいる」
なんで天音がここにいるのか。
話は数分前に遡る。
「さーて、夏休みくらい吸血鬼らしく昼夜逆転の生活をしてみよう」
つか、徹夜で課題終わらせたから流石に眠い……。
「じゃ、寝るか(ピンポーン)誰だよ畜生」
ったく朝から誰だ。
「はーい、何の用ですか(ガチャ)」
「おっはよー霊君!遊ぼ!」
「無理」
「なんでー?遊ぼーよー」
「無理、俺もう寝るから(ギィ――ガシッ)あ?」
「なんで閉めるの?(ギチギチギチ)」
「ヒィッ!」
「(ギィッ)お邪魔しまーす」
「あ、こら!」
そして今に至る。
「なぁ、俺は寝たいんだが」
「むー……」
「はぁ……おやすみ」
「じゃあ、霊君が寝てる間に秘蔵コレクションとか探そうかな」
「ねーよ、んなもん」
よし、寝るか――
「なにこれ、裏取引写真?って私!?」
――詰んだ。
久遠に渡されたのそのまま持ってきちまってた!
「れ、霊君……」
「殺せ」
「その……霊君になら、いくらでも……」
「そうだよな、死んで当然だよな……へ?」
「だ、だから!霊君になら見せてあげるって言ってるの!」
「し、正気か?」
「うん。だって私は……霊君のか、彼女だから……」
うっ、可愛い。
はぁ……俺もしっかり彼氏しないとな……。
「……なぁ、天音」
「ん、何?」
「海、行くか」
「え?」
ん、フリーズした?
「天音?」
「えぇぇぇぇ!?」
んなに驚くなよ。
「きゅ、急に海って……なんで!?」
「いや、夏と言ったら海だろ?」
「そうだね……うん!行こう!」
そうと決まれば早速海に――
――着いた。
この流れ、どっかでみたな。
まぁいいか。
「じゃあ、着替えたらここに集合な」
「はーい」
うん、いい笑顔で走っていった。
じゃあ、俺も着替えてくるか。
「……遅いな」
もうだいぶ経ったはずだが……。
「まさか、ナンパ?」
だとしたらまずい!
確か天音は向こうに……!
「くっそぉ!」
この炎天下で吸血鬼の力を使うのは気が引けるが、そんなことをいっている暇ではない。
「無事なら良いけどな」
「いた!」
案の定ナンパされてやがる。
男が二人か、余裕だな。
男A「ねぇ、少しならいいじゃん?」
「あ、あの、私、人を待たせてるので」
男B「そんな時間掛からないって」
「で、でも」
はぁ、行くか。
「おい、あんたら」
男達「あ?」
A「なんだ?テメェ、この女の連れか?」
B「邪魔だ、失せな」
「失せるのはテメェらだ。消えろ」
A「んだとぉ!?」
B「ちょっと面貸せや!」
はぁ、面倒だな。
「わかったよ」
人気のない岩影か。馬鹿も馬鹿なりに考えたか。
A「ちょっとばかし痛い思いしてもらうぜ!」
ケンカなれした動きだな……でも。
「遅いな(ヒョイ)」
B「くらえっ!」
「まだまだ(ヒョイ)」
なんだこいつら、遅いな。
A「ちょこまかすんな!(ドゴッ)よっしゃ!」
B「まだまだいくぜ!(ドガッ)」
A「どうした?やり返してみろよ!(ゴガッ)」
B「くたばれよ!(ボゴッ)」
A「くたばれ!(ガッ)」
B「死ね!(ゴッ)」
AB「なっ!?」
「ちょこまかしないで全部受けたが……なんだ、こんなもんか」
沖にでも投げ捨てるか。
「よっと(ヒョイ)」
AB「や、やめろぉー!」
「吸血鬼の彼女に手を出したこと、後悔しろ(ポイッ)」
よし、おーわり。
「天音、無事だな?」
「う、うん。ありがと」
ふぅ、無事で良かった……。
「ねぇ、霊君……」
「うん?」
「吸血鬼って……なんの事?」
「え……」
しまった……。
「それにさっきの……人間に出来ることじゃないよ」
やばい、やらかしまくりだ。
どうやって誤魔化すか……。
「あ」
「あ?」
「あ、愛の力だよ」
「真面目に答えて」
「……」
ああ、きっと嫌われるんだろうな……。
「俺は……」
嫌だなぁ、天音に嫌われるのは。
「俺はっ……」
どうして……俺なんだ。
「俺……」
俺は……。
俺は、何者なんだ?
「わからない……」
「霊君……?」
「わからないんだよ!なんで俺がこんな目に逢わなきゃなんないのか!」
「……」
「いきなり訳もわからないまま化け物にされて……」
「……」
「でも、これまで通りにしようって、周りに嫌われないようにしようって!」
「……」
「でも、大事な人を護ろうとして……それだけでまた!」
「……」
「護ろうとしただけなのに!」
ああ、なに言ってるんだろう俺。
「もう……嫌なんだよ、自分が段々……自分じゃなくなるみたいで……」
涙が出てくる。
天音に言ったって、どうにもならないのに。
「……霊君」
「……」
「私は霊君が人間じゃなくたって、ずっと大好きだよ」
やめてくれ。
同情なんて……辛いだけだ。
「霊君が人間じゃなくなったのがいつかは知らないけど、今日まで私は気付かなかった。それってさ……」
もう、いいよ。
それ以上は……駄目だ。
言わないでくれ。
「霊君は霊君で、ずっと変わってないってことでしょ?」
やめてくれ。
そんな、優しい笑顔なんて。
俺には、眩しすぎる。
「だからさ、何があったのか正直に話して……」
「なん……で」
「ん?」
「なんで、人間じゃない俺に……そんなに優しいんだよ」
「人間か人間じゃないかなんて些細な事だよ……だって、そういうことで悩めるってことは、心は人間のままってことでしょ?だったら、いいじゃん」
「ッ!……わかったよ……話すよ。これまでの事」
「うん、聞くよ」
「天音には敵わないな」
「あ、先に言っておくね」
「ん?」
「これからも、その力で私を護ってね」
「……」
「……嫌、かな?」
「……その笑顔は反則だろ」
「そう?」
「ああ……まぁ、ずっと護ってやる」
「うん、お願いね」
「んじゃ、本題に入るか」
俺の身に起きた異変。
この三ヶ月の間におきた出来事を。
次回、省いた部分を書きます。
ではまた。