is×acfa(仮)   作:蟹味噌汁

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この小説は突貫工事で執筆されているので誤字脱字が多分に含まれております。
ご指摘下さると助かります。

また後日修正を入れさせて頂きます。


第1話

 

 幾つもの光が空を覆う雲を切り裂き、天目掛けて光の柱を作り出していた。

 

 まるで幻想の世界かと錯覚してしまうかのような光景。

 見る人が変われば世界の始まりとも終わりとも言えるであろう現実離れした光の柱は心奪われるものだった。

 

 しかし、それは知る人が見れば地獄を作り出す絶望の光に過ぎない。

 大地を汚染する有害物質を撒き散らす光の奔流は、世界を更に腐らせる禁忌の存在だ。

 そんな人類を殺し、大地を腐らせる光が幾つもの柱となり空を切り裂く景色は地獄と何ら変わりはなかった。

 

 だが、それと同時に希望の光でもあった。

 確かに大地を汚染する有害物質を撒き散らすが、宇宙への道を切り開く存在でもあるのだ。

 数多にある企業が宇宙へ打ち上げた無差別破壊兵器-アサルトセル。

 無数に宇宙空間を彷徨うそれらを一掃する為に放たれもの。

 そしてアサルトセルを破壊し宇宙への道を切り払いた人類は、腐敗し切った大地を捨て宇宙へと逃げる事が出来るようになる。

 まさに人類を今の窮地から救う希望の光でもある。

 

 どちらにせよ、宇宙空間を漂う無差別兵器を破壊するその光は放たれてしまった。

 そして、宇宙への道を得ると同時に空で暮らしていた人類は計画に沿って汚染された大地へ堕とされる事になる。

 

 それにより万単位で大勢の人間が死ぬだろう。

 腐敗仕切った大地に侵され、絶望の中で死ぬだろう。

 そこに老若男女はなく、力持つ者も、持たない者にも等しく死が訪れる。

 

 多くの争いが生まれるだろう。

 搾取する側もされる側も増え、今以上に地上は混沌に満ちた世界になるだろう。

 

 それを理解しながらも、腐敗した世界を壊す為にその歩みを止める事はなかったORCA旅団。

 その生き残りであるジェイクとシルビアは寄り添いながら宇宙へ伸びる光を見つめていた。

 

 そして二人の背後には純白の機体と一回り大きい漆黒の機体が佇んでいる。

 そのどちらも部位の所々が欠けており、火花を散らしている。

 数多もの戦場を駆け抜けた機体は既に機能を失っており、物言わぬ巨人と化していた。

 

「これで人類は大地へと還る......借りは返したぞステイシス......いや、オッツダルヴァ」

 

 虚ろ気な瞳で光の道を眺めていた男はそう口にする。

 かつて自分を救い、新たな道を示してくれたORCA旅団の仲間に。

 そして自分の肩に寄り添う白髪の少女に視線を向ける。

 

「お前の助けがなければここまで来れなかっただろう......感謝する。シルビア」

 

 シルビアと呼ばれた少女は男の言葉に小さく肩を震わせる。

 

「ふふ......貴方は出会った時からそうだった。何でもかんでも一人でやろうとする。その姿が危なっかしくて」

 

 その言葉に男はかつての記憶を思い出す。

 二人の出会いはネクスト同士の殺し合いから始まった。

 

 企業に人質を取られ首輪を付けられた男と、愛する家族を守る為に戦う少女。

 一見交わる事のないように見えた二人の運命は、その殺し合いを機に密接に交わる事になる。

 

 そして少女と共に生きる中でオーメルのステイシスに大きな借りが生まれ、ORCA旅団のオッツダルヴァの志に賛同し、借りを返す意味を込めて少女と共にORCA旅団へと入る事になる。

 

 かつて単独で企業を壊滅させた伝説の傭兵達の忘れ形見である二人の力は凄まじく、次々と計画遂行に必要である重要拠点を落としていった。

 

 しかし、企業側が黙って見ている筈もなく、ORCA旅団に対し持ちうる全ての兵力を投入。

 その戦いの中で二人以外のORCA旅団員は死に、最後に残った二人は全ての勢力を退け、遂にORCA旅団の悲願を達成した。

 

「......俺の我が儘で迷惑を掛けたな」

 

「気にしないで。私が好きでやった事だから」

 

 何時もとは違う弱々しいシルビアの声を聞く度に男は胸が締め付けられるような痛みを感じていた。

 

--恐らくシルビアはもうじき死ぬ。そして俺も長くはない。

 

 自身の身体の事を誰よりも理解している男は冷静に判断する。

 そして共に生きてきた少女の身体の事も理解していた。

 

 生まれつきアルビノ症だった少女は身体が弱かった。

 それでもORCA旅団として戦い続け、その命を削り続けた。

 愛する男と家族が幸せに生きる未来を勝ち取る為にと。

 その結果、酷使した身体は限界を迎え、その命は風前の灯になっていた。

 

 一方男の身体は有害物質であるコジマ粒子の汚染が進みすぎていた。

 男に首輪を付けたオーメル社が男に合わせ改造した00-ARETHA。

 搭乗者の事を一切考慮しない設計は幾らAMS適正がすば抜けて高い彼でも長期の戦闘行動により精神、肉体共に限界を超えていた。

 

 男は痛む身体に呻き声を上げながら、寄り添う少女の手に自身の手を重ね強く握る。

 小さく震える二人の手は死に対する恐怖なのか、それともすぐに訪れる永遠の別れへの恐怖なのか。

 

 そんな思いを振り払うかのように男は口を再び開く。

 

「この光景の先に私達が望んだ世界が

あるのか」

 

 二人が望む世界。

 それは争いのない平和な世界。

 戦いの中でしか生きる事を知らなかった二人が望んだ滑稽な夢物語。

 人の世で生きる以上、決して訪れる事のない夢を追い続け、二人は戦い続けてきた。

 

「......必ず訪れる。時間は掛かるかもしれないけど......何時か、きっと」

 

 少女の言葉に何処か含みがあったのは、彼女自身が滑稽な夢物語だと理解しているからだろう。

 

 しかし、それでも諦める事の出来ない羨望があったからこそ歩みを止める事はなかった。

 

「......そうだな」

 

 企業が支配する体制を壊し、汚染されていない空で生き延びていた人類を大地に引き摺り堕ろし、宇宙への道を切り開いた。

 その結果、更に争いが加速するかもしれない。

 もしかしたら、二人が望んだ世界が訪れるかもしれない。

 

 だが、既に死が決定している二人にはこの後訪れる世界を見ることは出来ない。

  

「望むなら......平和な世界と言うものをお前と過ごしてみたかった」

 

「......そうね。私も貴方とそんな世界で暮らしてみたかった。だけど......ごめんなさい。私はもう駄目みたい......」

 

 一体何が駄目なのか。

 そんな分かりきっている事を聞く必要はなかった。

 もう二人に残されている時間はない。

 男は最後に、今ままで伝えられていなかった言葉を口にした。

 

「ありがとうシルビア。ゆっくり休むといい。私も直にそちらに行く。......愛している」

 

 男の言葉に少女は驚きに目を見開いた。

 しかし、それも一瞬の事で何かを噛み締めるかのように瞼を閉じると儚げな笑顔を浮かべた。

 

「やっと私が言って欲しい言葉を言ってくれた。私もあなたの事を愛してる......ジェイ......ク......」

 

 その言葉を最後に少女は静かに息を引き取った。

 

 肩に寄り掛かる少女の重みを感じながら、男は静かに涙を流す。

 

「平和な世界、か。そうだな......もし次があるなら二人......で......」

 

 そして男も少女の後を追うかのように息を引き取った。

 ORCA旅団として戦い続けた二人は最後に笑みを浮かべながらその生涯に幕を閉じた。

 

 二人が成した事により世界は変わるだろう。

 決まって二人が望んだ世界になる訳ではない。

 だが、そうなる為のきっかけを作ることは出来た。

 後はこの世界に残る者達がどう変えて行くかだけ。

 

 最後まで戦い、誰にも知られず荒野で寄り添うように眠る二人は夢を見る。

 それは二人が望んだ平和な世界。

 小さな火種はあれど、この世界に比べたら可愛いものだ。

 そんな世界で二人は望んだ生活を手にし、新たな望みを持つ。

 そして伝説の傭兵達の忘れ形見は再び歩み始める。




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