この素晴らしい世界に鉄華団を!!   作:北岡ブルー

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※最期辺りが雑かもしれませんのでご了承ください。いつか直します(フラグ)


#4 この前髪ブレードに仕事という名の日常を!

 この世界に来てから1ヶ月後。セシリーやアクアに助けられた恩を返すためアクシズ教に入信したオルガは、資金集めのために新しい仕事を見つけた。

 

 そこでの朝は早い。毎日4時起きで、新入りであるオルガは3キロ先の井戸まで走り、水を汲まなければならない。それを3往復してやっと朝の分になる。

 

 作業場所は、『モンスター』という生物がたむろする町の外側。先輩方の中には傷があるものも多く、どの人もオルガ以上の巨漢だ。

 初めて会った時に明弘に勝る筋肉を持つ彼らを見て、開いた口が塞がらなくなったのは記憶に新しい。

 

 さて申し遅れたが、オルガが見つけた仕事というのは……。

 

「おうオルガ。ツルハシぶん回して頑張ってんな」

「あぁおやっさん!」

 

 壁の建築である。もっと言うと労働者だ。

 

 先程も言ったようにモンスターのいるこの世界では、防衛のため『壁』が円を描いて町を囲んでいる。無論壁はそれを越えようとしてくるモンスターのせいで傷だらけだ。

 だからこそ年に何回か、冒険者が周りのモンスターを全滅させ、再び増えるその前に壁を補強・強化する必要がある。

 

 だがたまに、強力なモンスターが出現して死傷者が出る事もあるという。そのためこの仕事に就く者はそう多くなく、故に万年募集中なのだ。

 

「前は壁の中で仕事を探してたからな、外にある仕事は手付かずだった…。それに、この世界の学がねぇオレにはこの仕事が向いてるッ!」

 

 ガツンッ!!と、降り下ろしたツルハシが地面にめり込む。

 

 今オルガが作業しているのは、地面を潜るモンスター用の壁だ。固められた地面を掘り進み、その中に壁を通すという重労働。しかし、だからといって手を抜くオルガではない。

 

 この風景と賑わい豊かな町を守るこの仕事が、オルガはなかなか気に入っていた。今まで作る事と無縁の人生を歩んで来た反動だろうか。

 

 そして、オルガのモチベーションが崩れないもう一つの理由がある。それは…。

 

「おいコラ新入りィ!!ぶっ続けで働きやがっていい加減休みやがれ!こっちに来て昼飯だ!!オメェはボーナスで大盛りにしといやるよ!」

「はい!ありがとうございます!」

「へっ!べっ、別にお前の事心配していってんじゃねぇんだからな!!」

 

 周りの先輩方が親身に接してくれるからだ。

 

 汚したくないスーツの代わりに正社員用の服を与えてもらい。工具の扱いやコツ、注意すべき所など様々な課題をタダで教えてもらった。今では分からない事があれば先輩方や親方――おやっさんに聞くほど信頼している。

 

 前にオルガは、なぜこんなに親切にしてくれるのか尋ねたことがある。

 新参者が恨まれるのは名瀬の件で痛感していたし、厳しい環境という事でCGSを思い浮かべたからかもしれない。

 

 すると巨漢たちは語ったのだ。

 

「なに言ってんだよ新入り!ここじゃあチームワークが命!そんな事してたらモンスターに食われちまうよ!いちいちちいせぇ事を気にしてんじゃねぇ!」

 

 と笑い、オルガの背中をバシンと叩いたのだ。これが効いた。

 

 恩を返す事を信条とするオルガの火に油を注いだのだ。信頼できる大人たちに囲まれて、気負う事がなかったのも大きいかもしれない。

 

 そんなこんなもあって、時は夕焼け前。

 

 ここを仕切る棟梁…オルガがおやっさんと呼ぶ人物が高台の上に上がり、すんぐりとした大きな声で作業の終了を伝えた。

 

「よぉし、お前らよく頑張ってくれたな。夕焼けになればモンスターが活性化すっから今日の仕事は終わりだ。」

「ん…?おやっさん、まだ早くないですか?いつもならまだ作業をしている気がするんですが…」

 

 オルガが違和感を感じ、上の棟梁に話しかける。それに周りの先輩方はニヤニヤ笑っていた。

 

「どっかのバカのやる気が飛び火して、早く修復が終わったからな。明日はゆっくり休んで、次の日来い」

「わかりました。先輩方、おやっさんもご苦労さんでした!」

 

 一応の理解をしめしたどっかのバカは、先輩方の工具をもらい受け、それぞれの安置場所へと置いていく。もちろんその時に水筒を渡すのを忘れない。

 

 最後に不要品である接着土や塗料、レンガなどを持てば、ここの仕事は終了だ。

 

「悪いなオルガ。ゴミ押し付けちまってよ」

「そんな事はないです。ありがたくもらっていきます」

 

 オルガはそれら全てを袋に詰めこむと、背中に背負って立ち上がった。

 

 

 

 

 

 ――このすばぁあああ!!byオルガ――

 

 

 

 

 

「よっ…と、なかなか大量じゃねぇか」

 

 夕焼けが極まる時、オルガは自分の住み()に不要品を運び終え、一息ついていた。

 

 ちなみに服は「汚くて使えやしねぇ!オラ新入り持っていきやがれ!」と渡された作業着だ。白のタンクトップとダボダボなズボンで構成されており、花の香りと日干しの暖かさを感じる。

 

 今のオルガの住み処は馬小屋だ。三日月が見れば「そんなオルガは見たくない」と気難しい顔をするだろうが、背に腹は変えられない。

オルガ自身も、ずっとこんな所でくすぶる気はない。まだやるべきことがあるのだ。

 

「さぁ次の仕事だ。気合い入れてかねぇとな」

 

 

 

 

 

――あぁんなに見てんだ新入り!このすばァ!!――

 

 

 

 

 

「五番テーブルからカエルのソテーにシュワシュワ3本注文入りました―っ!」

「新人くん鳥の丸焼き二体焼き上がったよ!それもって三番テーブルね!」

「了解!」

 

 日が沈み、アクセルの町の街灯が灯る頃。オルガは料理店のウェイターとして働いていた。

 

 今の服は紳士といった出で立ちであるが、その姿に高貴さはなく、どちらかというと戦える野生のジェントルマンを思わせた。

 

 事実、戦場で鍛えた足は寸分の狂いもない歩行を実現し、大きな料理を持ってもソレは崩れない。

 しかも、それを交代なしで続けられるタフネスが学も料理もないオルガをこの店に引き止めていた。

 

 ちなみにこの店。最初に金が無くて追い出された店だったりする。

 

「しっかしもったいないなぁ~。何でオルガくん冒険者やらないんだろ?ガタイいいし結構強そうなのに…。わお♪」

 

 緑のストライプパーカーの上からピンクのエプロンを羽織った少女、リーンがホットケーキをひっくり返しながら呟く。いい出来だからか、お尻から生えるタヌキ尻尾がフリフリ揺れた。

 

 リーンはこの町の冒険者で、それでは稼ぎが足りないとここでアルバイトをしていた。その道の勘というヤツがオルガの何かを察知したのだろう。

 

 それに対して糸目のマスターがコーヒーを煎れて諭す。

 

「こらこらリーン君。人とはそれぞれ道があるもの。人の選択をとやかく言ってはダメだよ?」

「ううっ、一理ある…。でも店長ぉ~、こんなボロボロの店であの子使い潰すのダメな気がするなぁ~」

「おい今なんつった君?」

 

 オルガはそんな会話があるとはつゆしらず、料理を次々と運んでいく。

 すると、ある男が店長の目についた。店長の目が開眼され、親の仇を見るように睨み付けている。

 

「あ。(きゃつ)め…、また来おったか…!」

「あぁ、あの客ですか…」

 

 オルガもその男の顔は見飽きてるため、あきれ半分でため息をついていた。その様子は「もういい加減にしてくれ」というような疲れを感じさせる。

 

「オルガ君。君を雇っているもうひとつの理由だ。やってくれるね?」

「あぁはい、わかりました。ったく、あきねぇなお前も…」

 

 オルガは、持ち上げていた皿をお客の所へ置いていくと、回り道をする形で皿の山に近づいていく。

 

 すると山の主はオルガの気配を察知したのか、大量の料理を食べるのをやめてオルガの方を振り向いた。

 

「んん?来たなオルガ!いつも通りオレに金はねぇ!今日こそはどっちがアクセルの町の元締めか…、決めようじゃねぇか!」

「なぁダスト。お前なんで店先で追い出されねぇんだ?不思議でたまらねぇよオレは」

「へっ!女のパンツを見るために滑り込みをマスターしているオレには、客の足下から侵入するなんざお茶の子さいさいよ!」

「お前のせいかよ客足が遠のいてるのは…、おい誰かサツ呼んできてくれ!」

 

 椅子の上でヤンキー座りをし、偉そうにしている青年の名はダスト。トサカのように跳ねた金髪と泣きボクロが特徴の冒険者で、ここらでは有名なチンピラだ。

 

 昔ここで無銭飲食を働いた際、オルガに蹴り飛ばされた過去を持ち、それ以来因縁をふっかけて邪魔してやろうとよく絡んでいた。

 

 まさしく、両者は天敵の間柄だったのだ。

 

「そもそもアクセルの元締めってなんだ?テメェの自称なんざ欲しくもなんともねぇよ。ツケを払いやがれツケを」

「払うかッ!!払わないでツケるのはオレ様の特権なんだよ存在意義なんだよ!!どうしても払って欲しけりゃリーンの奴に言え!」

「仲間にツケ払えってか?ったく、そんな奴がよく冒険者やってられるモンだな」

「ヤツじゃねぇですぅぅぅなんか文句あるんかぁ―――い!!」

「上等だ。払う気ねぇなら無駄食いされた店にムショで詫びてこい…!」

 

 冷静に睨みを聞かせ、合わせた両腕をパキパキ鳴らすオルガ。

 対してムカつくアヒル口とへの字目で挑発しまくるダスト。

 

 攻撃はほぼ同時。ダストが「あっエリス様のパンツあるぜ!」と窓を指差した瞬間、オルガが殴り飛ばした事で始まった。

 

 そこからはまさしく、拳飛び交う店内乱戦。

 

 後半からはダストが冒険者としての身軽さを生かして飛び回り、それをオルガが追いかける逃走劇。

 

 オルガが靴を掴むとダストは脱いで回避し、ステーキを焼く鉄板を踏んで絶叫を上げる。

 

 水をかけてオルガの目を潰すと、ダストはその様子を嘲笑ってバランスを崩し、股間を椅子に打ち付けた。

 

 果てに戦いは他の従業員とタダで食べたい派の無銭飲食軍団を巻き込んだ闘争へと発展し、鮮烈を極める始末。

 

 その戦いの結果は…。

 

 

 

 

 

 ――よっしゃあ言うぞ!このsパンパンパン!byダスト――

 

 

 

 

 

「…………」

 

 真夜中。オルガは石造りの腰掛けに座り、顔を両手で覆っていた。

 

 正面には先ほどまで戦っていたダストがおり、フレンドリーに話しかけてくる。ちなみにここがどこかと言うと…。

 

「いやぁ~今日のは凄かったな~!特にお前のアイスクリームによる突き攻撃!あれはうまかったぜ!!」

「テメェ生まれ変わらせてやろうか!?」

 

 両者営業妨害によるブタ箱行きである。これにはオルガも銃を持ち込むプッチンぶり。

 流石に我慢できなかったようで、向こう側の檻にいるダストを青筋立てて怒鳴っていた。

 

「ふざけた真似しやがって!冷凍庫に閉じ込めてケリつけたってのにサツが来た瞬間「ハイハイオレとコイツがやりました~」って共犯扱いか!?おかげで札付きだぞどうしてくれんだ!」

 

 オルガの顔はもともとしかめっ面な方だ。元が底辺の生まれとあって、金の入らない状況に引きずりこんだダストを般若の顔で睨み付けている。

 

 対してダストはどこ吹く風とばかりに横になってリラックス状態。図太いというかクズ野郎と言うべきか。

 

「いやぁ~オレの知り合いお前みたいな顔多くてさ!上手くいくと思ったんだよ!」

「そっちの話じゃねぇよ!ったく…、これから馬小屋の世話や牛乳配達のバイトがあったってのに…」

 

 今までゲラゲラ笑っていたダストだったが、その言葉にピシリと固まる。もう一度いうが今は『真夜中』だ。それを小窓を見て確認したダストはオルガの方を振り向き、改めて問う。

 

 その顔は青ざめていた。

 

「……は?ちょっとまでオイ。お前他にも仕事してんのか?」

「あぁ…、休日出勤前提で20件な…」

「ここで休め!休めよお前!仕事し過ぎ!!」

「仕事してねぇと身体がなまるんだよ!」

「冒険者であるオレと対等な勝負してる時点でなまるも何も無いと思うけどォ!?」

 

 結局オルガにとって不本意なことに、この夜中は仕事を行えることなく終わってしまった。

 

 ちなみに後日。オルガはリーンやマスターの弁明により檻から出ることになる。ダストはそのままで。

 




ちなみにオルガが普段着にしている作業着は、アクアが着ていたものと同じです。
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