ーInfinite Stratosー~Fill me your colors~   作:ecm

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第二十二話:ハチャメチャラプソディ

私は夢を見ていた。

 

それは現世の子供の頃の夢だ。

 

私は生まれてから3歳――死に別れる前夜まで家族と寝ていた。

 

私が真ん中で、左右を両親が挟む、所謂川の字の体勢で。

 

『ふふっ、相変わらず私達と離れたくないのね』

『あぁ、そうだな。椿は甘えん坊さんだ』

『……だめ?』

 

この歳――正確には精神年齢だが――にもなって両親と寝たがるのはどうかと思う時もあったが、私はそんな事はどうでも良かった。嬉しかったのだ。再び家族の温もりを手に入れた事が。

 

『今日は誰に抱きついて寝るのかしらね?』

『お父さんでもいいんだぞー?』

『……ひみつ』

 

その時の私は眠るとき、必ずどちらかに抱きついて眠る癖があった。

 

何故、抱きついて眠るのか。理由は簡単だ。離したくないからだ。二度と失いたくないと。この温もりを忘れたくないと、全身で感じたくなる程に。

 

『あら残念ね』

『お父さんに内緒はいけないぞう』

 

父と母は笑いながらそんな事を言ってくる。

 

『いじわる……えへへ』

『はははっ』

『ふふふっ』

 

私はそれに釣られて笑ってしまった。そして三人で暫く笑いあった。

 

『――さて、じゃぁ寝ましょうか』

『あぁ、そうだな』

『うん』

 

母の提案に私と父は同意した。

 

『おやすみ。おとうさん、おかあさん』

『あぁ、お休み』

『ふふっお休みなさい』

 

皆がおやすみ、と言った後、父は電気を消し、皆で眠る体勢に入った。そして私もは迫り来る睡魔に身を任せながら―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐにっ。

 

……?

 

(……何だ、暖かい?そして柔らかい?)

 

そもそも私は今、夢の中なのだろうか?それにしては妙に感触がリアルで―――

 

「……ふぁ」

「……?」

 

妙な声が聞こえたので、私は嫌な予感を感じつつ、恐る恐る目を開けた。すると目の前に、正確にはほぼ目と鼻の先に本音が居た。顔を真っ赤にしながら。

 

「…………」

 

あまりの異常事態に私は何も反応ができない。

 

「えへへへーおはよ~」

 

だが、本音は恥ずかしがりながらも挨拶をしてくる。しかし、私は何も返さない。それは何故か、何故なら私の手が本音をしっかりと抱き寄せる様にホールドしているのを認識してしまったからである。

 

これは……。

 

「…………何故、俺のベットで寝ている?」

 

やっとの事で声を絞り出す。だが、余りの事態に少し声が裏返りそうになった。

 

「あまっちが居なくて寂しかったから……」

 

本音がそう返してきた。声音は何処か震えている。

 

「…………」

「…………」

 

だが、それでも私は返す言葉が見当たらず、ただ本音を見つめていた。そして本音もまた、私を見つめていた。

 

無言の間。

 

永遠の空白。

 

そして本音が意を決した様にだんだんと顔が近づいけてきた。そして私もまたそれを迎え入れる様に――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――素早くホールドを解除して本音の鼻を摘んだ。

 

少々強めに。

 

何、ヘタレだと?誰だそんな巫山戯た世迷言を言ったのは。表に出ろ。今なら多目的・破砕榴弾砲を使うことも辞さない。かかってくるといい。

 

「ん~~!?ん~~~!?」

「取り敢えず、お仕置きだ」

 

暫く鼻を摘んだ後、私は起き上がり、朝の支度を始める。

 

……顔が赤くなっているのを悟られない様に。

 

「あぅあぅ~」

 

そして本音はと言うと、鼻を痛そうに抑えていた。

 

 

 

 

――いやはや、傑作でしたねぇ

 

(五月蝿い)

 

現在私は本音と共に食堂に向かっている。

 

――でも、まさか、と思ったでしょう?

 

(……あぁ、そうだな)

 

思い出すのは本音と至近距離で見つめ合った所。

 

のほほんとした雰囲気を持つ、おっとりとした瞳。

 

すらりとした鼻筋。

 

血色の良い健康的な唇。

 

見るからに手入れの行き届いた髪と柔らかい肌。

 

そして女性特有の甘い香り。

 

少しだけ近づけば、直ぐに触れ合う距離で私達は見つめ合った。思い出すだけで恥ずかしくなる。

 

「うぅ……鼻が痛い~」

「それは自業自得だ」

 

どれだけ私が驚いたと思っている。

 

どれだけ私が恥ずかしかったと思っている。

 

どれだけ私が――――――――

 

――胸が高鳴りまイダダダァァアアアアア!?!?

 

(何か言おうとしたか?駄コアが)

 

――イエナニモ

 

「だからって鼻を摘まなくても~」

「知らんな」

 

生憎、今回ばかりは容赦はせん。

 

――さて、この和やかな会話をいつまでも聞いておきたい所ですが、私は意識を集中させます

 

(……あぁ、頼んだ)

 

私は本音の不満を聞き流しながら古鷹との会話を終えた。

そして暫く歩くと食堂に着いた。

 

「と~ちゃくぅ~」

「あぁ、そうだな。ではさっさと食券を選んで……おや?」

「どうしたの~?ってあれ?」

 

私と本音は思わず疑問符を浮かびあがらせた。

何故なら券売機の目の前に、珍しい組み合わせが居たからだ。

 

「かんちゃんとしののんおはよ~」

「おはよう、簪、箒」

 

そう、目の前には簪と箒が親しそうに話しながら食券を選んでいたからだ。

 

以前共に食事を取った時以来、そんなに会うことは無かったはずだが、どう言う事だろうか?それとも私が見ていないだけで、以前から親交があったのだろうか?

 

「おはよ。椿、本音」

「ん?椿と本音か。おはよう」

「所で、聞きたいのだが、二人は何時の間に仲良くなった?」

 

気になっていたので思わず聞かずにはいられなかった。

 

「まぁ、その、何だ。五人で朝食を取った後に少し会話をして、色々と気が合ったのでな」

「……うん。そう、だよ」

「……そうか」

 

恐くその色々とは、互いに出来過ぎた姉を持った事についても含まれるのだろう。妹にしか解らない共通認識、と言ったところか。まぁ、それは関係無いとしても交友関係は広くしておくに越した事はないだろう。これは歓迎すべきことなのだ。

 

「ところで、だ。どうせなら一緒に食べないか?」

「いいよ」

「あぁ、いいだろう」

 

簪と箒は同意してくれた。

 

「では……ふむ、丁度あの席が空いているな。あそこにしよう」

 

私は丁度四人分の空いていたテーブルに指を差した。

 

「解った」

「……うん」

「お~け~」

「では本音、さっさと選んでしまおう」

「わかった~」

 

私と本音は券売機の前に立ち、朝食選んだ。

 

 

 

 

「それで、一夏とは上手くいっているのか?」

 

私は朝食を食べ終えてから一言漏らす。

 

「ブフゥっ!?」

 

丁度茶を飲んでいた箒が噴いていた。

 

「汚いな」

「お前のせいだ……」

「預かり知らぬ事だ」

 

失礼な奴だ。

 

「あまっちー?」

「椿……」

 

本音達もジト目で見てきた。

 

「知らぬ存ぜぬ省みぬ」

 

敢えて言おう、無実だ。だって、そうだろう?箒が一夏を好いているのは周知の事実だからだ。ましてや同室なのだ。気になるだろう、ネタ的に。

 

「……まぁ、いい」

「そうか。で、その反応から見ると上手くいってない様だな」

「……そうだ」

 

箒は素直に認めてきた。

 

「箒なら、十分小町娘でも大和撫子としても通じるとは思うんだがな」

「私もそう思うよ~」

「うん。そう思う」

 

一歩引いて男性を立て、男性に尽くす。と言う意味では大和撫子ではないが、清楚で凛としているとは思う。無論、容姿も体型も十分魅力的ではあるが。まぁ、そこはやはり一夏クオリティなのだろう。絶対に只の幼馴染とでしか思ってない筈だ。全く、嘆かわしい。

 

「……その、なんだ。褒めすぎだ」

「見たまんまの評価だ。他意はない」

 

箒は恥ずかしそうに身じろぎしていたが……ふむ。

 

「そういう恥じらいも一夏に見せたらどうだ?」

 

案外コロッといくかもしれん。

 

「か、簡単に言うな!」

「そうは言ってもな。どう思う?」

 

私は本音達に話を振る。

 

「しののんの恥じらいは可愛いけど~もっと積極的でも良いと思うよ~?」

「……ギャップ萌え?」

 

……若干簪だけズレていた様な気がする。いや、私の語彙が少ないだけで理解しきれていないだけか?まぁ、今はその事は置いておこう。

 

「ふむ、このままだと確実にセシリアや鈴に一夏を取られるだろうな」

「ぐっ……」

「まぁ、色気で誘惑しろとは言わん。だがこのままで良いと思っていないだろう?」

「あぁ」

 

箒は絶対に嫌だ、と言う雰囲気を纏わせながら頷いた。

 

全く、それぐらい好きならさっさと告白でもしろと言いたいところだが、流石に本人の気持ちが纏まっていないし、そもそも一夏が彼女を意識してないから土台無理な相談なのだろうがな。

 

「ならば本音の言う通り、積極的に攻めるといい。きっかけはさり気なく作る」

「……それについては感謝するが、私だけ、ではないのだろう?」

「当たり前だ。一人だけに依怙贔屓はしない」

「そうか……」

 

箒は残念そうにしていた。まぁ、努力するといい。確かこの場合、世はこう言うだろう?

 

恋する乙女よ大志を抱け、と。

 

……違ったか?まぁ、どうでも良いか。

 

「さて、徐々時間も時間だ。食器を片付けて教室に向かおう。流石の俺でも織斑先生にどやされるのは望むモノではない」

 

この私の提案を皮切りに、それぞれ食器を片付け始めた。

 

 

 

 

――放課後――

 

 

今日の授業が全て終った。

 

さて、これからどうしようかと思っていたが―――――

 

バンっ!

 

「椿!」

 

一夏が私の机を叩いて叫んだ。

 

そして未だ多く残っているクラスメイトが一斉に注目してきた。

 

「……一夏、いきなりどうした?」

 

何かあったのだろうか。と言うよりもこの注目の視線は色々面倒なのだが。

 

「俺さ、やっぱり思ったんだ」

「だから何をだ……」

 

しかし私の言葉を意に返さずに一夏は続ける。

 

「ずっと考えてた。セシリアや箒と訓練してる時。何時もお前の事を考えていた」

 

おい貴様、何を言っている……?

 

「この気持ちは嘘じゃない。本当だって気づいたんだ……」

 

一夏が私に向ける視線が熱い。

 

まさか……嘘だろう?

 

「お前の存在が俺にとって如何に大切だって事に」

 

冗談、だろう……?

 

「椿!」

「あ、あぁ。なんだ?」

「付き合ってくれ!―――――――俺の訓練に!」

「わ、解った……ん?」

 

何故、私は頷いたのだ!?……ってなんだ、訓練か。よか――――――――はっ!?

 

私は何か悪寒を感じ、急いで耳を塞いだ。

 

『キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

 

女子が一斉に黄色い雄叫びを上げ、一年一組という空間が腐り果てた。

 

「のわっ!?なんだよいきなり……」

「い、一夏さん……」

「一夏、お前はそういう趣味が……」

「あ、あまっちぃ……」

 

先程の一言の最後の部分を聞き逃したセシリアと箒が何か絶望した表情をしていた。しかし、当の一夏は自分の言った発言をよく理解していない様である。

 

そして本音よ、頼む、誤解しないでくれ。

 

因みに周りのクラスメイトの反応はと言うと――――

 

『キタコレ!ワンサマ×カメリア!』『いや、カメリア×ワンサマよ!』

『誘い受け?襲い受け?』『まさかの姫受?いやベットジプシー?』

『妄想が、止まらない!』『薄い本はよ』『夏コミはこれで決まりね!』

 

――――理解したくない単語が幾つか聞こえてきた。

 

まぁ、なんだ。敢えて言わせてもらう。

 

「このたわけっ!!」

 

次いでにスナップを効かせながら手刀を喰らわせる。

これが私の、全力全開だっ!

 

バッシィイイインッ!!!

 

凄まじい音が響き、一夏は一瞬で撃沈する。

 

「痛ぅううう!?………な、何すんだよ!」

「喧しい、自分の発言を思い出せこのうつけが」

「お、思い出せって、しかもうつけって何時時代の言葉だよ……それに俺は別に変な事は……あ」

 

気付いた様だな。まぁ、そんな所で、だ。

 

「箒、セシリア。殺っても構わん。A級戦犯だ」

 

「「委細承知!」」

 

「ほ、箒?せ、セシリア?い、一体何を……」

 

一夏は非常に青ざめていた。

 

だが、容赦はしない。する訳がない。

 

「一夏……」

「椿……」

 

私は一夏の名前を呼び、一夏もまた、縋る様に私の名前を呼ぶ。

 

「後一週間だ。その間まで生きていたら、とことん教えてやろう。……達者でな」

 

そして私は一言、別れを告げた。もっとも、前々から約束してたのだが、な。

 

指導の余りの酷さにまいってしまったのだろうか?一応、休み時間にできるだけアドバイスはしたし、指導の仕方の方もセシリア達にレクチャーしたのだがな。一夏が喜ぶと餌にして。

 

「ぜ、絶対だからなぁ~~……――――――――」

「さらばだ、一夏。お前の事はきっと、忘れる」

 

そして悲壮感を滲ませながら叫んだ一夏はセシリア達に連行されていった。

 

まぁ、今日は二人がかりでのフルコース確定だろうな。

 

そう判断しながら、手をひらひら振っていると本音が話しかけてきた。

 

「あまっち……」

「何だ?」

「あまっちは、男色な「抜かせ」あうっ」

 

私は言ってはいけない一言を言おうとした本音に軽くデコピンを喰らわせた。

 

「俺は至ってノーマルだ。普通に異性が好きだ。」

「だってだって~」

 

言いたい事は解る。私だって勢いで頷いた私をぶん殴ってやりたいぐらいだ。

 

「本音?」

 

取り敢えず再びデコピンを放つ体勢に入る。

 

「わ、わかってるよ~」

「全く……さぁ、さっさと行くぞ」

「あいあいさ~」

 

そして一緒に整備室に向かおうか、と思ったが忘れるところだった。

 

「っと思い出した」

「ほえ?」

「いや、少し古鷹でやっておくべきがあるのでな、一時間程アリーナで訓練する」

「そうなんだ~」

「あぁ、だから簪には遅れると伝えくれ」

「は~い」

 

そして一度私は本音と別れ、一路アリーナへ向かった。目的は勿論、不知火から古鷹に再度乗り換えたのでそれを慣らす為である。無論、PICのマニュアル制御もそこに含まれるがな。

 

 

 

 

――1年生寮―― ~広間~

 

さて、現在私は機体作成を終え、広間で寛いでいる。

 

尚、古鷹は依然として自分の体作りの為に全力を費やしている様で、相変わらず反応がない。因みに、訓練の方は特にアクシデントはなかった。やはり古鷹は鈍足なので飛行訓練が不知火程難しくはなく、千歳さんや楯無との模擬戦が行きた結果が形で現れた。そしてゆったりと時間を過ごしていると、簪が廊下から歩いてきて私に話しかけてきた。

 

「ちょっと、いい?」

「どうした?」

「前に、川崎の製品を使ってみないかって、言ったよね?」

「あぁ、そうだな」

 

過去、簪とその会話をしていたのを思い出そうとして―――止めた。あの時の出来事は黒歴史だ。あまり思い返したくない。

 

「あれから調べて見たんだけど、コレって今もある?」

 

そう言って簪が川崎のカタログをコピーした端末を差し出してくる。

 

私はそれを受け取り、確認する。するとそこには一つ、チェックがつけられていた。

 

「あぁ、この106㎜無反動砲か……だが、悪いな。生憎これは生産中止だ。」

 

簪が選んできたのは、以前資料で確認したモノだ。この106㎜砲は第二世代の中期の時に売り出していたモノで、この頃は武装開発のノウハウを手に入れる為に色々と試行錯誤してた時期である。そして暫く経って第二世代後半の時に最早不要、との事で生産中止になったものだ。

 

「そう、なんだ……」

 

簪は漸く自分の機体に合うものを見つけたのに、それが無いと解って気落ちしていた。

 

「因みに散弾系はどうする?」

「この九七式散弾銃〈古狼〉にするつもり」

 

この古狼とは、川崎が作り出した中では比較的に普通なモノで、一撃の重さに特化した水平二連式散弾銃だ。銃自体の大きさで言えば小さい部類に入るのだが、強力な火力を秘めている。欠点は毎回装填しなければいけない事。正に一撃離脱に相応しいショットガンである。

 

「経費はどうするのだ?」

「これぐらい、倉持に払わせる」

 

どうやら弍式を完成させなかった事を根に持っているらしい。まぁ、当然と言えば当然か。

 

「そうか……ふむ」

 

さて、これはどうするべきなのだろうか……?

 

――お悩みですか?

 

そんな中、古鷹が戻ってきた。

 

(あぁ、そうだ。お前の方は一区切りがついたのか?)

 

――そうですね。流石に主任も一度休憩する様です。と言うよりMs.千歳に連行されました

 

(そうか。で、聞くが、川崎に106㎜無反動砲は残っているか?)

 

――もしかしてMs.簪が必要としていました?

 

(あぁ、そうだ)

 

――まぁ、結論から言いますと有りますよ

 

(本当か?)

 

これは耳寄りな情報だな。私は古鷹に詳細を話すよう促した。

 

――貴方が初めて触れた打鉄があるでしょう?覚えていますか?

 

(覚えている。あれがお前との出会いだからな)

 

あの時は辞めた先任の打鉄を教習用としてオーバーホールの訓練をしようとしていたな。しかし何故だろうか、この事を思い出すと何年も前の出来事のように思える。それだけ濃い日常を送れた、と言う事だろうか?まぁ、其処は置いておくとして、だ。

 

(つまり、打鉄の拡張領域内に106㎜無反動砲があると?)

 

――そうです。それ以外にもありますが……どうします?確保して置くように進言しますか?

 

(あぁ、頼めるか?それを簪に渡せば――)

 

――駄目ですね

 

(……どう言う事だ?)

 

自分か進言してきたのに。

 

――貴方は全く解ってない。女の子へのプレゼントなんですよ?だったら嗜好を凝らさなくては。そのまま渡すなんてありえないですはい。

 

(つまり、私に再設計しろと?)

 

と言うか、女の子へのプレゼントが106㎜無反動砲の改良型とは一体どういう了見なんだ……気にしても、しょうがないのだろうか?まぁ取り敢えず、置いておこう。

 

――Exactly.貴方なら大丈夫です。その手の知識は散々得て来たのでしょう?

 

(まぁ、確かにそうだが)

 

高校3年間、遊ぶ間も食べる間も寝る間も惜しんでISに関する知識、つまり機体整備、開発の知識をひたすら入れ込んだからな。その過程で幾つか思いつきの武装の設計図を書いてみたりした事もある。まぁ、結局は出来栄えがあまり良くない、と自分でも判断できる出来だったのでそれ以来だ。正直に言えばあまり自信が無い。

 

――では細かい設計図は後でPCに送ります。次いでに確保もさせておきましょう。出来栄え次第では主任も手伝うでしょう。彼も気分転換で付き合ってくれますよ

 

(……解った)

 

ならば私が持てる全力をもって改造を施そう。

 

――ではその事を早速MS.簪に伝えると良いでしょう。

 

(解った)

 

一度古鷹との会話を止め、思考加速を解除する。そして簪に告げる。

 

「……簪、待てるだろうか?」

「待つ?」

 

まぁ、いきなり待ってくれ、と言っても疑問に思うだろう。

 

「あぁ、もしかしたら俺の裁量で106㎜無反動砲を確保出来るかもしれない」

「……本当?」

 

これはある意味嘘だ。渡す時に驚くだろう。そしてその気に入って貰えれば幸いなのだが、な。

 

――大丈夫ですよ、彼女なら気に入ってくれる

 

(そう言うものなのか?)

 

――えぇ、そうです。では、私はこれで

 

(解った)

 

「あぁ、だが生憎時間が掛かる。だから待って貰えるだろうか?」

「わかった」

「では俺はその準備を始める。ではお休み、簪」

「うん。お休み、椿」

 

私達は別れ、それぞれの部屋に戻りに行く。そして私が部屋に戻ると本音が出迎えてくれた。

 

「おかえり~」

「あぁ、ただいま」

 

私は挨拶を返し、そのままPCを起動させる。

 

「なにするの~?」

「少し、会社のほうでな。」

「ふ~ん」

 

暫くしてPCが完全に立ち上がった。そして古鷹が言った通り、IS用106㎜無反動砲の設計図がメールに添付されていた。そしてメールの本文にはある一文が書かれていた。

 

『good luck』

 

私はそれを確認すると、フンと鼻をならし、106㎜無反動砲の再設計を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、ある老爺達の通話。

 

『―――と言う事だ。理解したか?』

『えぇ、にわかに信じ難いですがね』

 

片方の老爺が何かに同意しながら眉をひそめた。

 

『抜かせ、お前の事だ。既に薄々感づいていたのだろう?』

『まぁ、そうなのですが、如何せん確証が無くてね』

『老いたな十蔵。昔のお前ならそれだけでも十分だろうに』

『恐くそうなのでしょうね。全く、歳はとりたくないものですよ』

 

十蔵と呼ばれた老爺はしみじみ呟く。

 

『なに、老いるのもまた一興だ。精々残りの余生を楽しむといい』

『それは貴方にも言える事ですがね。まぁその事は置いておきましょう。――ところで五十六、貴方は亡国機業と言う組織を知っていますか?』

『私が知らない訳がないだろう。寧ろ、私がそこら辺の政府高官共よりも知っている事をお前は知っている筈だと認識していたのだが?』

 

ボケでも始まったのか?と、五十六と呼ばれた老爺は言葉を漏らす。

 

『失礼、只のジョークですよ』

『全く……それで、あの過去の亡霊共がどうした?』

『ここ10年、動きが活発になってきました』

『ほう。差し詰め、奴らもISを手に入れた、と言ったところか』

 

無論、五十六は既に知っているが、敢えて其処は言わない。いついかなる時・状況・場所においても、不用意に情報を言うのは得策ではないからだ。

 

『ご名答。既にアメリカを始めとする各国のISが何者かによって強奪されています。よって現在一部のIS委員会の議員と協力して情報統制や箝口令を敷いています。今は何とか一般への情報漏洩を防いでますが、彼等、いや、彼女達が行動を起こせば、何れは世間に露呈する事になるでしょう』

 

十蔵は少し疲れた様に言った。余程面倒事だったのだろう。やれやれ、と呟いていた。

 

『それで私にも協力して欲しいと?具体的に言えば政府の意思に左右されない、第三者で尚且つ、諜報能力を有する私兵を持つ私にも協力を、と?』

『それに信頼できる、と付け足してください。そして察しが良くて助かりますよ。お願いできますか?』

『友人からの願いなら断らないでもない。と言ってもタダでは無いがな』

 

無償の友情等有り得ないからな、と五十六が言った。そして彼は利用し、利用され合うのもまた立派な友人関係、だとも言う。

 

所謂持ちつ持たれつと言ったところである。

 

今回は既に事情を知っている五十六が十蔵を利用する形になるだろう。

 

『対等であってこその真の友。相変わらずですね。それで、何がお望みですか?』

『そんなに難しい話じゃない。願いは二つ。一つは活動資金。そしてもう一つは川崎の行動に色々と便宜を図ってほしい。具体例を一つ上げるとしたら、臨海学校時の行動で、私達の行動の自由を保証する、だな。臨海学校は確実に篠ノ之束が大きく動くと私は踏んでいる』

『では、可能な限り、そうしましょう』

 

十蔵は五十六の提案に即頷いた。恐く、それだけ切羽詰った事態なのだろう。それに、臨海学校の件は五十六と同様の結論に至ったのだろう。渋る様な雰囲気は一切無かった。

 

『あぁ、頼む。私も全力で亡霊共の足取りを追う。だがしかし奴らは知っての通り蜘蛛の巣の様な形態の組織だからな、よって幾つか拠点を少々派手に潰すことになるだろうが、何ら問題はあるまいだろうな?』

『えぇ。その様にお願いします。不足の事態が起きた場合の後始末は任せて下さい。―――――所で、話が変わりますが、彼女、どうでしたか?』

『どうでした、とは?』

 

五十六は軽く疑問符を浮かべた。

 

『惚けなくてもいいでしょう。彼女、櫻華に良く似ていたでしょう?』

『……あぁ、そうだな。初めて見た時は少し驚いたな』

『私もです。完全な生き写しでしたからね』

『あぁ、お陰で私は柄にもなく短い掛け合いで話を受けてしまったよ』

『貴方は櫻花にベタ惚れでしたからねぇ。今でも思い出せますよ』

 

結局は龍蔵に取られましたが、と言って十蔵はハッハッハと笑った

 

『たわけ、過去の話をぶり返すな』

 

五十六は不機嫌さを隠さずに言う。

 

『いや失礼失礼。でも、その後も仲は良かったでしょう?』

『あぁ、取られた時は少々恨んでいたがな。櫻花とも仲が少し険悪になった。だが、櫻花共々龍蔵とまた直ぐに仲良くなったさ。時が過ぎれば良き思い出だ』

 

それに、と五十六は続ける。

 

『何時だったか、奴が当主を降りた、と言って唐突に社長室に現れて酒に誘われた時は驚いたよ。私が頭を振り絞って作った防衛網をいとも簡単にすり抜けてきたのだからな。それには私も思わず笑ってしまったさ。変わらんな、と言ってな』

 

五十六は昔を懐かしむ様に笑いなが言った。その顔は冷徹な経営者の顔ではない、ただ一人の優しき老人の様にも見える。

 

『そうですか……それで、彼等は今何処に?』

『京都だ。気楽に隠居生活を決め込んでいる。今度酒にでも誘うといい』

『それは魅力的な提案ですね。暇ができればそうしましょう。その時は貴方もご一緒にどうですか?』

『それも良いな。なら、その時は仕事を部下共に押し付けてでも駆けつよう』

 

十蔵の提案に五十六は頷いた。

 

『それは楽しみですね。では、これで』

『あぁ、私も徐々仕事に戻らなくてはな。ではまた』

『えぇ、今度は声だけではなく、お互いの姿を見ながら』

 

そう言って老爺達はお互いに電話を切った。

 




スイマセン(;_;)間違えて本文繰り返してました……orz
そして気が動転して削除……。こっちがハチャメチャ過ぎるorz


更識龍蔵
先々代更識家当主の元『楯無』。十蔵と五十六の同期の人物。
五十六とは過去に櫻花を取り合った所謂恋敵な関係。
更識家当主として動く前から五十六とは仲が良かった。
現在は京都で櫻花と共に気楽な隠居生活を送っている

元ネタは航空母艦龍驤をもじったもの

更識櫻花
先々代の楯無の妻。十蔵や五十六と同期の人物。
十蔵や五十六曰く、若き頃は楯無に非常に似ている容姿だったらしい。
現在は京都に龍蔵と共に余生を過ごしている。

元ネタは桜花作戦の桜花の漢字を変えただけ

次は本文繰り返さないように見直しします……
お騒がせしましたorz
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