洛陽で響達が受けた海藤陸の芥炎隊共に曹操が収める領地陳留へと向かう一同。
予定では五日で目的地へと到着するこの護送は出発してから五日目を迎えていて現段階では何も不測の事態は起きていなかった。
「……なあ海藤……」
「ん?なんや?響……後俺のことは陸でええで」
山賊は出てこず響は警戒心を緩めており、話し相手と隣の馬車にいる陸に声を掛ける。
「今更だが気にしていたことなんだけど…陸ってどうしてこんなに馬や馬車なんかの運搬用具をここまで揃えられたんだ?」
陸の芥炎隊の充実した輸送団を見てしみじみと思っていた響。
これを揃えるには相当の一般の商人では到底不可能なことは見ただけで理解していた。
だからこそ……その理由を響は陸に聞きたかったのだ。
「ああ、これな……いやあ……あれはもう半年前になるかな~」
と思い出を頭の中から掘り出しているのか陸は顔を空にむけて語り出した。
「まだ商いをして4ヶ月ほどやった俺は華北の河間中所におったんや。そこで前に偶然見つけた何の勝ちもない金色のただの大きな石を買っていった人が居ってな……その人がそれを買うために物凄うのたくさんの金貨で購入して……この金貨を使ってこの通り運搬用具や人を雇うことが出来るようになったんや」
「…………」
一通りの話を聞いていた響であったがいくら何でもと唖然としていた。
「あの……海藤さん…もしかしてその人って袁紹さんという名前のかたじゃなかった?」
「袁紹………おお!そうやそうや確かにそんな名前やったで!なんや知り合いなんか!」
「袁紹ってたしか」
如月は恐る恐るその人物は袁紹ではないかと確認すると陸は頭を使ってその人物の名前を思い出し肯定と頷いた。
それを聞いていた響も如月が昔教えてくれた袁紹のことを思い出す。
如月曰く名族の威光を振り回す凡愚
つまり陸から買った物をただの金色の石だとは気付きもせずに大金をはたいたのだ…その時、響は如月が言っていた凡愚の意味を理解し袁紹のもとへ仕官しなかったことを間違いではなかったとほっとした。
「おっ!そんなこんな、しとったら…陳留が見えてきたで!」
陸は前方に指を指し響も前方に顔を向けるとまだ少し距離があるのだが遠くに城塞が見えてくる。
「あれが……陳留か…」
意味深にそう呟く響…あそこに曹操がいるとなると…そういった顔になるのも無理はなかった。
都市から15㎞程離れた小さな村そこに一時的ではあるが停止した芥炎隊は小休憩を取る中、陸と響、如月は対面するように立っていた。
「いやあ~ほんま助かったわ…それで報酬の方なんやけど……ほんま、そんなんで良いんか?」
とここまで護衛して付いてきていた響にお礼を述べる陸、しかし陸は響に報酬として渡したもので良いのかと少し不服そうな顔で訪ねた。
「別に構わないよ……今はそっちのほうがいいし何より…使わなければいざって時に使えるしな」
と響は不服そうな陸を説得するように話し合い、何とか納得してくれた。
「ほんなら、俺らはここで……また生きてどっかで会おうな!」
陸はまたの再会を期待しつつ、芥炎隊を引き連れ陳留の都市へと向かっていくのであった。
「さてと、如月……依頼は完了したから…少し村を見て回ってから洛陽に戻るか」
陸達を見送った後、響はこのまま帰路につくのもいかなる物かと思い、少し村を散策した後に陳留から離れることを提案し少しばかりならきづかれないだろうと如月も縦に頷いた。
しかし、陳留からは離れた小さい村…それといって観光するような場所などない。
村の中にあった茶屋で一息つこうと店内に入り響と如月は持っている路銀で茶と団子を注文する。
「さてと、少し休んだら…どうしようか」
「そうね…少し曹孟徳がどのような政事をしているか興味があるから…少し見て回るのも一興かもね」
「いいのか?」
団子などを待つ中、これからどうするかの方針を決める響は如月の少し見て回ることを聞くと大丈夫なのかと少し心配した顔で訪ねた。
「うん、少し見てみたかったから」
そういって首を縦に振るい。幾分か待っていると注文した団子がやって来てそれを二人で食べていると鐘が鳴り響く音が聞こえてくる。
平穏な村に飢えた賊が迫り来る。