「なんだと…?」
ゼノのその発言にドーナシークは眉間に皺を寄せ、歯を軋ませる。
「貴様いま…自分が何を言ったか…分かっているのか…?」
「そりゃ勿論」
怒りで拳を握りしめながら問い詰めてくるドーナシークに、ゼノは何度も頷く。それによってドーナシークのみならず、カラワーナやミッテルトも不快感を露わにした。
「いつもならば止める立場だが、流石の私も今の発言に腹が立ったな?」
「無関係な奴には手を出すなって言われてるけど、ここまで舐められたら不可抗力ッスよねぇ〜」
己の種族としてのプライドを悪魔どころか、更に非力とされている人間に刺激された3人は、その怒りとも取れる殺意をゼノへと向けていく。
そんな中で、我先にカラワーナが右手に光の槍を生成し、ゼノへ目掛けて狙いを定めた。
「…!!ゼノくん!!」
それを見た小猫は咄嗟にゼノを逃がそうと動くが、間に合わない。カラワーナの腕がゆっくりと振りかぶられる。
「死ねッ!!」
「逃げ___」
その時であった。
グシャ
ゼノの姿が消えると共に妙な音がその場に響き渡る。
「ん?小僧が消えた?それに今の音…」
ドーナシークとミッテルトがゼノを探すべく、何度も何度も視界を移していく中、近くから聞こえてきた音に反応し、その方向へと目を向けた。
「え…」
ミッテルトとドーナシークは言葉を失ってしまった。下から見ていた小猫もそうだ。
皆の目の先には____
______口元から大量の血を吐き出しながら白目を剥き、生き絶えたカラワーナの姿があった。
見ればその背後にはゼノの姿があり、その腕がカラワーナの胴体を貫いていたのだ。
「か…カラワーナ!?」
「俺を殺す?面白い。やってみろよ。俺をアッサリと見失うお前らがどうやって俺を殺すのか楽しみだな」
ミッテルトが驚く中、心臓を貫いたゼノは笑顔のまま、腕を振り回すと、カラワーナの身体を空へと投げ飛ばす。
投げ飛ばされたカラワーナの身体は血を撒き散らせながら宙を舞うと、こちらに向けて再び落下してくる。
それに向けてゼノは手を掲げると、気を集中させた。
「よっ」
___ッ!!!!!
すると、その手から巨大なエネルギー波放たれ、投げ飛ばされて落ちてきたカラワーナの身体を飲み込むと、塵一つ残さず完全に消し去ったのであった。
「か…カラワーナが…」
カラワーナの大柄な身体が一瞬にして塵と化し、空気へと消え去っていく。その光景を、一同が唖然としながら見つめる中、ゼノの鋭い目がドーナシークとミッテルトを捉える。
「さて、これで1匹目だ」
「「!?」」
手についたカラワーナの血を舐め取りながら不適な笑みを浮かべる。
その笑顔を見た瞬間 先程まで2人の中にあった慢心と優越感、そして怒りという感情が消え去り、恐怖心が生まれ、ミッテルトは思わず悲鳴をあげ、ドーナシークも額から冷や汗を流し始める。
「うそ…なんで人間なんかに…ていうか、今のなんなのよ…?」
先程まで侮っていた相手の、到底人間とは思えないその芸当にドーナシークは動揺し、ミッテルトに至っては震えていた。
そんな慌てふためいている間でも、ゼノは二人を逃すことはなかった。
「さて、次はどっちだ?シルクハット?それともチビ?なんなら二人まとめてでも構わないよ…?」
「「…!!」」
そう言いゼノは残りの堕天使2人へと目を向けて人差し指で誘う形で挑発する。だが、先程の光景を目にしていた二人にとって、既に結果は見えており、堕天使としてのプライドも戦意も完全に喪失していたのだ。
「おいドーナシーク!どうするんスか!?」
「知るか!!まずあの小僧について報告せねば!!!」
「はぁ!?アンタがあの小僧に目をつけたんスよ!?」
冷静さを完全に失い、二人が言い争う中、その光景にゼノは首を傾げ尋ねた。
「ん?お〜い。まだ来ないのか?なら、5数える間、待っててやるよ。その間に逃げるなり攻撃するなり、好きにしていいぞ?終わったら俺が動くからな」
「「え…?」」
その言葉と共に、二人の意思を無視するかのようにカウントダウンが始まる。
___5
「おい!どうするんだ!?こんなの聞いてないぞ!?」
「アタシに言うなよ!!元はと言えばお前がコイツと__」
ドーナシークとミッテルトが慌て始める。
___4
「クソ!!ならば光の槍で!!」
「死ねやクソガキ!!」
2人の手に生成された光の槍がゼノに向けて投げ飛ばされた。
__3
「くだらねぇ」
空気を突き抜けながら向かってくる光の槍を、ゼノは手を振り払う形で全て木っ端微塵に粉砕していく。
__2
「な…光の槍が!?ぬぅ…一度撤退だ!!」
「あ、待ってよ!!アタシを置いていくな!!」
もはや敵わないとようやく認識したのか、2人はゼノに背を向けて翼を羽ばたかせ、空に飛び立った。
__1
ゆっくりと、時間は過ぎてついにカウントダウンも終わりの時を迎える。
一方で、空高く飛び去った2人は安堵していたのか、そのまま飛行を続けて教会方面へと向かっていた。
「あんなヤツとどう戦えばいいんだ…!!レイナーレ様はこのことを知っていたのか……!?」
「もうどうなってんスか!!マジで意味わからないッスよ〜!!あんな化け物がいるなんて!!」
___0
「はい。時間」
時が満ち、ゼノは手をゆっくりと2人に向ける。すると、その腕が再び輝き出し、飛んでいる二人へと向けられ、ゼノは笑みを浮かべた。
「抵抗しないなら用はない。消えちゃえ♪」
その言葉と共に____
「ん?なん___」
「え___」
____ゼノの手から再びエネルギー波が放たれ、飛び去ろうとしたミッテルトとドーナシークを消滅させたのであった。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「はぁ〜あ。全然動けなかった。つまんないなぁ……ん?」
降り立ったゼノの視界には、今まで下からその光景を見ていた小猫の姿があったが、その表情は唖然としながら固まっていた。
「ん?どうした?」
「どうしたじゃないよ…」
ゼノが尋ねるも、小猫は震えながら駆け寄り肩を掴んだ。。
「さっきのは何なの!?あんな技…人間ができるものじゃない!!」
「え?」
激しく詰め寄る小猫に対してゼノは首を傾げながら答える。
「あれが“気”だよ。どんな生物にも宿る生命エネルギーを使ったエネルギーの放出」
「あ…あれがゼノくんの…?」
「まぁ」
ゼノが頷くと、小猫は沈黙したまま固まってしまう。
「…ん?どうした?」
「ゼノくん…あの…」
その時であった。
〜♪
小猫の携帯が鳴り出し、言い出そうとした小猫は中断すると、その携帯を取り出し通話に出る。
『小猫ちゃん!いまいいかな?』
「悠斗先輩…?」
相手は木場である。
『実はね。これから____』
ーーーーー
ーーー
ー
それから通話を終えると、小猫はゼノに目を向ける。
「ゼノくん。一緒に来てください」
「ん?なんで?」
「シスターの人を助けるために教会へ行きます。それと、後でゼノくんの事についても教えてください」
それに対してゼノは笑みを浮かべる。
「いいよ。面白そうだ♪」