あの日。私は母を失い、父のみならず堕天使そのものを憎んでしまった。
人間の母と堕天使の父が結ばれて、二人の間に生まれた私をよく思わない一族の手によって、命を狙われ、私を庇った母が殺されてしまった。
私が殺されそうになったとき、空から突然と飛来した彼によって命を救われたが、自分の母の死に耐え切れず、感謝や生きた心地という感情は一切沸くことがなく、ただ自身が狙われた大元の理由たる父そして姫島家を憎んでしまった。
彼に助けられたにも関わらず、それに気づかなかった自分は愚かだ。
だけど、精神が成長し感受性が育ってきた今だからこそ思う。
あの人がいたからこそ今の自身がある。彼に会ったならば伝えなければならない。この気持ちを。
○◇○◇○◇
招かれたのは、とある神社だった。朱乃の案内の元、彼女の後ろをついていきながら、鳥居を潜り抜ける。
「神社か…ここに住んでるのか?」
「そうですわ。どうぞこちらへ」
中へと招かれたゼノは久方ぶりに見るその家屋の作りや畳の匂いを堪能ながら置かれているテーブルの側に敷かれた座布団へと腰を下ろす。
「普通は神主さんがいると思うけど、いないのか?」
「ここは私1人で管理しているのですわ」
すると、奥の部屋からTシャツに長いスカートといったラフな服装に着替えた女性が現れ、自身に向かい合うように座ると、湯呑みを起き、お茶を注ぐ。
「粗茶ですわ」
「どうも」
置かれた湯呑みを掴むと、湯気の出るお茶を喉へと流し込む。そして、飲み終えて息をつくと、ゼノは改めて尋ねた。
「んで?何で俺をここに?それに、俺はアンタと面識が___」
「ありますわ」
「え?」
朱乃の言葉にゼノは驚き首を傾げる。
「そうなのか?」
「はい。私は10年ほど前…貴方と出会い、そして救われました。だからずっと、お礼が言いたかったのです」
そう言い女性は語り出した。
自身は五大宗家という日本の呪術を扱う家計において最大規模の家の者であり、数年以上も前に“ある理由”により一族の者から襲撃を受け、その際に自身を庇った母が死に、殺されかけたところで現れたゼノによって救われたのだと。
「…なるほど」
ある理由については詳しくは話さなかったものの、ゼノはそれについては深く言及せず頷く。
「確かにあの時、墜落したはしたけども…そうか。神社に墜落したのか。それで、俺が殺したのがアンタの家の奴らと」
「えぇ…。あの時…貴方がいなければ私は命を落としていました…感謝してもしきれません。本当に…ありがとうございました…!」
そう言い朱乃は深々と頭を下げながらお礼の言葉をつたえ伝えた。その一方で、ゼノは首を傾げていた。
「別に、俺はアンタを助けたくてアイツらを殺した訳じゃない。襲いかかってきたから反撃しただけだ」
「それでも、貴方が来てくれなければ、今の私はここにはおりませんわ」
「そうか……(まぁ、これ以上、言っても同じか…)」
これ以上釈明しても、彼女は考えを変える事はないだろうと、頭の中で理解すると、話を終わらせるために頷く。
そんな中、彼女の目がゼノの巨大な荷物へと映る。
「見た所、家がないご様子ですが、どのようにするおつもりだったのですか?」
「近くの林でキャンプして、朝イチで不動産屋に行こうと思ってた」
「そうでしたか。夜も遅いですし…もしよろしければ、家が決まるまでは此方に泊まってはどうでしょう?」
「ここに?良いのか?見ず知らずの奴なんて泊めて」
「えぇ」
女性の提案にゼノが尋ねると女性は笑みを浮かべながら答える。
「ご夕食をご馳走したいですし…貴方の素性は知りませんが、寝首を襲うほどの危ない方とは思っておりませんわ」
「でも、身元不明な奴だぞ?」
「それもまた明日、お伺いします。だから今日はここでごゆっくりとお休みください」
「成る程…(確かに知らない土地で野宿して面倒ごとを起こすよりかはマシだな…それに夕飯つきなんて…断る理由がない!!!)_____
___じゃあ頼む」
「はい!」
その返事を耳にした途端に女性はパァと目を輝かせ笑みを浮かべる。
「お名前は?」
「ゼノ。アンタは?」
「姫島朱乃ですわ」
この日、ゼノは女性改め朱乃の家で1日だけ世話になる事が決まったのだった。
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一方その頃、ビルス星では。
「あ〜あ、何かアイツがいなくなった途端に静かになっちゃったな〜」
「毎日が破茶滅茶でしたからね〜。おや?ゼノさんから報告が…ふむ。どうやら悪魔か天使のいずれかと接触したようです」
「ほぅ?良いねぇ。報告によっては、僕も行こうかな〜」
ゼノからの報告にビルスは胸を高鳴らせるのであった。