2日目の朝
とある空き地の前に大量のクレーン等が集まっていた。そしてそれを見守る一つの影が。
「ざっとここら辺か」
ゼノは工事の図面を見ながら呟いていた。目には大量の隈があり徹夜していたことが分かる。
「ここでいいですかい?」
「あぁ」
話している相手は普通の大工さん…ではなく、地球よりも工業文明が発達している遠方の惑星『ダストロイ』の大手建築会社の社員である。姿は地球人とあまり変わらないがそのかわり体格がたくましく背丈は2メートルを越していた。
「悪いな。遠い星からはるばる来てもらって」
「何言ってるんですか水くさい。銀河神様のお陰で俺達は安全に生活できてるんですから安いモンですよ」
そう言い親方らしき人物は腕を組みながら言った。
「んで、外見はこれでいいんですかい?」
「こんなもんで。あまりにも派手すぎると流石に目立つから」
「分かりやした。よしゃー!始めるぞー!!!」
『おぉぉぉー!!!!!』
親方の掛け声と共に建築が始まった。
因みに建てる場所は…
「ふわぁ…何かうるさいですね…ってえぇぇ!?」
今住んでるアパートより左程遠くない場所である。その距離わずか500m。普通の目では見えないが大きめのダンプやショベルカー等でその様子が確認できる。
通常よりも騒々しい工事の音で目を覚ました小猫は目を飛び出しながら驚いた。
「建てるのは聞いてましたけどいくらなんでも近すぎるでしょ…」
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あれから数時間 遂に念願のマイホームが出来上がる。
「できやしたぁー!!!」
「お?できたか」
「はや!?」
親方の知らせに小猫は目を飛び出し驚いた。
「じゃあ早速拝見っと」
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「これは見事だ…」
「でしょ?」
目の前に建っていたのはまさしく豪邸であった。コンクリートの上に敷かれた大きな建物それはまるで一つの施設と同等かそれ以上の大きさを誇り複雑な屋根の形が特徴的であった。
「一応 結界も仕組んでおきやした。強度はだいたい一つの国滅びるくらいのエネルギー弾1発くらいですかね」
「じゃあ師匠かウイスさんが来たらソッコーぶっ壊れるな。取り敢えずいくら?」
「えっとジャスト10億です」
「ほい」
ゼノはポンと手渡しで札束を渡すと親方は唾をつけながら確認し「たしかに受け取りやしたぜ」と言い仲間と共に故郷の星へと帰っていった。
「よし、引っ越すか」
「あ……はい…」
それからゼノ達は引っ越し荷物を全て移した。そして驚いた事に隣人の『ミルタン』も引っ越したらしくその場所は何故かゼノの豪邸のお隣にあるアパートである。
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「それそれ。ちゃんと避けれてるか?」
引っ越しが済むとすぐ修行となり現在は深い森の中で鬼ごっこをしていた。ルールは簡単 上空からのエネルギー弾を避ける事を15分続ける。しかもこの森は完全なる樹海で上空からでは中の様子が確認できないほど木々が生い茂っている為、逃げる側は気配だけで避けなくてはならない。
「当たったらただじゃ済まない…全力で避けないと死んじゃう…けど成長した感知能力を試すには丁度いい…」
そう言い小猫は汗を垂らしながらも次々と降って来る気弾をかわしていた。
「(現れる直前…僅かながらに殺気が感じますわ…この感覚を掴むことが大切ですね…)」
一方で朱乃は小猫と同じ無口となりながら無駄な事は考えず神経を全て周りの背景そして感覚へと集中させてコツを掴んでいた。
「師匠!私の方だけなんか気弾の量がエゲツないですッ!!!」
そう言いながらティアマットは朱乃達よりも多い気弾の雨の中を走っていた。
15分後
『疲れました……』
あれから3人は見事に耐え抜き今は休憩の時間となっていた。
「お疲れ様。今日はこんなもんか」
そう言い終了を知らせる。すると3人は終わったー!!という表情を浮かべ地面に手をついた。
「ここまでキツいのは初めてですわ…」
ゼノはその場に座る3人へと惑星名物である果物を差し出した。
「ほい。食べな」
『いただきます!』
よほどお腹が空いていたのか3人はすぐさまかぶりついた。
「お…美味しいです!」
「何か涙がでてきてしまいましたわ…」
小猫と朱乃は疲れた身体に染み渡ってくる果物の果肉や果汁の美味さに感動していた。
その時
ドンッ!!!!!
『!?』
その場に巨大な何かが飛来した。その衝撃により小猫達は500メートルもの距離まで吹き飛ばされた。するとゼノは察知していたかの様に目を鋭くさせるとその場を睨んだ。
「ようやく姿を現したな」
すると突然砂嵐が吹き飛ばされ、姿が露わとなる。
「ほう?随分と強い気かと思ったらただの子供と女か」
そこにいたのは青いローブに身をつつみ、身体が子供、言うなればほぼゼノと同じくらい小柄な少年が立っていた。
吹き飛ばされた小猫と朱乃そしてティアマットは磨き上げられた精神そして感知能力によってこの異形の者が危険である事を読み取った。
「朱乃さん…」
「えぇ分かってます…この男の子…確実にサーゼクス様達よりも強いです…」
「あぁ…魔力量もしかり…二天龍を軽く超えている…」
そう言い3人は目の前にいる相手が神クラスとほぼ同等だということを悟る。対するゼノも気を解放して臨戦態勢を取る。
「お前らは下がってろ。アイツはちょっとヤバい」
「…!…分かりました」
小猫がそう言いうと他の2人も後ろに行き距離を取る。3人が離れた事を確認するとゼノはゆっくりとその少年へと近づく。
「ほう?俺を前にして立っていられるか。貴様…ただのガキではないな」
「テメェもガキだろ?元暗黒魔界軍 メチカブラの側近『魔神サルサ』」
「俺の名前を知っているとは…何者だ…?」
するとゼノは相手の目の前に立ち止まると口を開いた。
「北と南の銀河担当の神 黒崎ゼノ」
「宇宙の神か。面白い…!」
その瞬間 相手の手が消えた。
「さすがは宇宙の神だ。雑魚の集まりである地球の神とは大違いだ」
「こんな攻撃ぐらい誰でも防げるんだよ」
見ると相手の消えた拳がゼノの目の前に迫っておりその拳をゼノは片手で受け止めていた。
するとサルサの目が赤く染まるとまたもや拳が消えた。
「_____いくぞ?」
それと同時にゼノの双方の拳も消えた。
その瞬間 空が割れた。激しい大気と大気がぶつかり合い、その場の空気だけでなく、空間を歪ませていた。
空気中に次々と拳と拳が混ざる音 が響きわたりその場を揺らす。遠方から見ていた小猫達は何が起こったのか分からなかった。
「朱乃先輩…見えますか…?」
「いえまったく…」
成長度が著しく高い朱乃でも今の戦闘を見ることが困難だった。ただこれだけは言える。あのサルサという少年は今まで闘ってきた相手よりもダントツで強いという事。
そしてそれと対峙しているゼノも普段より少し力を出している事を悟った。
その時
ドォンッ!
2人の場所が突然光ったと同時に天に向かって輝く極太い柱が現れた。
それと同時に朱乃達に強烈な風圧が向かってきた。
「こ…これは…!?」
朱乃達は風圧を地面にへばりつく形で耐えていた。少し経つと風圧が止み辺りが静かになった。
「何が起こったのだ…」
「取り敢えず行ってみましょう!」
3人はすぐさまその場所へと向かっていった。
一方で謎の爆発が起きた場所では巨大なクレーターが出来上がっており、その中心ではゼノが上空に浮いているサルサを見上げていた。
「今のは危なかった。掠っただけで腕がこんな事になってしまったよ」
そう言いサルサは手を出す。見ると左腕が消失しており、切れ目から血が溢れていた。
「そんなもんお前らにとっては擦り傷みたいなもんだろ?どうせ数秒後には再生……したな」
ゼノが話し終わろうとした時サルサの左腕の付け根から骨が出ると同時に筋肉が次々と掲載され元の腕へと戻った。
「さて、今日はもう撤退させてもらうよ。じゃあまた会おう銀河神 。戦争の時に」
そう言うとサルサの背後に黒い穴が現れ彼はその中へと消えて行った。
「………これで確信したな…“暗黒魔界”は復活した」
その後、走ってきた朱乃達を地球へ戻すと同時にゼノは時の巣へとすぐさま向かっていった。