真白達が王立マギア学園に着いたのは午前8時を回った頃だった。隆也と葵は中等部の方に通う生徒なので途中で別れた。
真白達が通う王立マギア学園は、中高大一貫ちゅうこうだいいっかんの共学校だ。
毎年、王立マギア学園は最も多くの卒業生を送り込んでいる中高大一貫魔法教育機関として知られている。
それと同時に、優秀な魔道士を最も多く輩出しているエリート校ということである。
登校したばかりの一年2組の教室に入ると、雑然とした雰囲気に包まれていた。
まだホームルームまで充分時間があったため、教室のそこかしこで雑談の小集団が形成されていた。
窓際から数えて二列目の席に鞄を置いた真白と黒那は名前を呼ばれて顔を上げた。
「真白君、黒那君、おはようございます。」
声の主は真白と黒那の幼馴染みの笹木ささき詩穂しほだった。
「可愛い」というよりは「美しい」少女だろう。実際の年齢より落ち着いた、物静かな印象がある。
ただ、制服越しでも分かる程、豊かな胸元だけがアンバランスだった。
「白くん、黒くん、おはようっす!」
詩穂の次に挨拶をしてきたのは真白と黒那と詩穂の幼馴染みの霧隠忍きりがくれしのぶだった。
ポニーテールの髪型にキリッとした目つきに凛々しい姿が印象的だった。
「よう、 白、黒、おはよう。」
「白君、黒君、おはよう。」
忍の次に挨拶をしてきたのは真白達の幼馴染みの矢阪兄弟の兄、矢阪悠輝やさかゆうきと弟の矢阪優太やさかゆうただった。
兄の悠輝はピンと伸びた背筋と少し目つきが鋭い以外は中性的な顔立ちの容姿をしている。
一方で弟の優太は、控えめで柔和な印象だった。
「詩穂、忍、ゆっきー、ゆーた、おはよう。」
「うん、おはよう。」
真白と黒那の言葉に詩穂達は笑顔を返す。と、忍の隣で悠輝が不満そうな顔をしていた。
「おい! 白、何度も言ってるだろう! ゆっきーって呼ぶなって。」
「まあまあ、落ち着いてください。悠輝君」
と、詩穂は苦笑。
「うんうん、落ち着こう、ゆっきー。」
と、黒那。
「そうっすよ、ゆっきーくん、落ち着くッスよ。」
と忍。
「落ち着いて、ゆっきー兄さん。」
と弟の優太。
「お前ら! 俺の事をゆっきーって、呼ぶなぁぁぁぁぁッ!!」
たまらず、悠輝は叫ぶ。こういう皆のノリの良さは、いつもの光景だった。
と、悠輝が叫んだあと聞き慣れた予鈴が鳴った。
予鈴が鳴り、忍達は自分達の席に戻った。
それに合わせるように、教室の扉がガラガラと開けられる。そしてそこからスラリとした長身で、物腰が柔らかい女性が現れ、教卓についた。
「はい、皆さんおはようございます。今日は皆さんにお知らせがあります、このクラスに転校生が2人来てます。アルディギアさん、リンダートさん、入ってきてください。」
間延びしたような声でそう言って、担当の笹木千穂ささきちほ教諭・通称千穂ちゃんでそれにそののんびりとした性格で生徒と先生からは絶大な人気を誇る美人教師である。
名前を呼ばれた2人は教室の扉を開けると、千穂の立つ、教卓についた。
「それじゃあ2人とも自己紹介をしてもらっていいかしら?」
「エリス・アルディギアだ。」
エリスはそっけないことこの上ない挨拶だった。
「わかりました。セリカ・リンダートです。皆さんと仲良くできたら嬉しいです。これからはよろしくお願いします。」
セリカの態度はエリスと違って、初々しく慎ましい態度で男たちのハートを鷲掴みだった。
「はい、2人とも自己紹介ありがとう、じゃあ席は神原君、黒那君の方の隣に座ってもらっていいかしら?」
「はい。」
「わかりました。」
そんなエリスとセリカを見つめるクラスメートたちの視線は様々だった。
興味津々なもの、無関心なもの、探るようなものだった。
「えーでは先週言った通り、今日は身体能力測定の日です。」
ぶー、と唇を突き出しながら不満そうに生徒達は言う。
「はいはい皆、静かに。」
千穂は苦笑すると、皆を静かにさせた。
「来たばかりのアルディギアさんとリンダートさんには悪いのですが、全員グラウンドにでてください。」
先生の指示に従い、生徒達は体操着を携えて廊下に出ると、途中で詩穂と忍と別れて更衣室に入り着替えを済ませて校庭に出た。
するとすぐに始業のチャイムが鳴り、ジャージに身を包んだ体育担当の五十嵐教諭が現れて、生徒たちを整列させる。