STATELESS SLAVE's STORY 作:UNKNOWN WRITER
1
めのまえを、たくさんのひとがとおりすぎていく。あのひとたちのかうものは、わたしたちどれい。わたしたちとおなじようにいちばにならべられ、にげないようにくさりでつながれている。でも、もうだれもにげようとおもっていない。
ひとりのおじさんが、わたしたちにめをつけた。
「おうおう、女だらけじゃねえかよ。ま、痩せぎすばっかだし一回遊んだら終わりか。おいおかみさん、コイツらまとめていくらだ?」
「一人20スコル。まとめて買うなら3割引きさね」
ひとり、にじゅうすこる。ちょこれーとがいちまい、かえるぐらいのねだんらしい。それがわたしたちのねだん。わたしたちの、そんざいのかち。
「じゃあこいつで全部売ってくれ」
おおきなおじさんが、なにかをてーぶるにおいた。
「まいどあり。……ほら、お前たち!とっとと動きな!!」
おばさんにどなられ、わたしたちはおじさんのほうにあるいた。
おじさんのほうをみた。このひとは、わたしのあたらしい「パパ」になってくれるかな?
おじさんがふりむいて、わたしのほうをみた。そのかおが、こわくなった。
「テメェ、俺様にガンとばしてんのか?」
いつも、こういわれる。そして、このあとどうなるかもだいたいわかっている。
くびをよこにふるまえに、おじさんのこぶしがわたしのかおにあたった。
「う゛ぁっ」
「なめた真似してんじゃねえ、このクソガキ!」
つぎはおなかにこぶしがとんだ。おなかのそこからにがいのがでてきて、それをはいてしまった。
「ちょっと、なにすんのさ!大事な売り物なんだ!!」
「黙ってろ!!よくも奴隷の分際で」
おじさんがてをふりあげる。いつものようにまたなぐられるとおもって、めをとじた。
そのとき、べつのだれかのこえがきこえた。
「マックさん、その辺にしてやってください」
「んだと、若造が!俺様に指図できる立場か、テメェは!!」
そっとめをあけると、おじさんのとなりに、べつのおとこのひとがたっていた。おじさんよりはわかかったけど、ふんいきはおじさんににていた。
「雇われの分際で、俺様のジャマをすんじゃねぇ!!クソッタレが!」
「違いますよ。俺はこいつを買いたいんです。なかなかのべっぴんですぜ、このガキ」
「だったらこいつの死体でも買ってろ!!」
どなったおじさんは、またわたしをなぐった。
わたしは、うれのこった。わたしは、またひとりぼっちになった。
いつもこうだった。ここへきてからなんにちもたったけど、わたしだけが、いつまでもここにいる。
わたしのママは、わたしがうまれたときにしんだとパパから聞いた。そのパパは、ひこうきのばくだんからわたしをかばってしんだ。わたしだけがのこった。
もうパパはいない。ひとりぼっちはいやだ。だから、あたらしいパパがほしい。
でも、だれもパパになってくれない。
こんどはおばさんがわたしをなぐった。
「こぉんのバカタレ!!毎回客をにらみつけやがって……。次やったら、スクラップ行きだから覚悟しな!!」
わたしたちがしんだら、からだはおおきなすくらっぷにほおりこまれて、ばらばらのぐちゃぐちゃになる。
わたしは、しぬの?
しぬのは、いやだ。
わたしは、いきたい。
つぎのひも、わたしとみんなはおみせのまえにならんだ。なぐられたところがあおくなっていて、そのせいか、だれもわたしをかおうとしなかった。
みんながなんにんかうれたところで、きゅうにあめがふってきた。さむくなってきて、なんにんかがくしゃみをした。みんな、おばさんになぐられた。
わたしもくしゃみがでそうだったけど、なぐられたくなくてがまんしていた。でも、とうとうくしゃみがでてしまった。くしゃみがでたあと、めのまえにだれかがたっていることにきがついた。
「俺の脚に、唾吐きかけやがって……」
そのひとは、おとこのひとだった。おもわず、わたしはそのひとのかおをみつめてしまった。
おとこのひとは、さいしょこわいかおをしていた。また、どなられて、なぐられるんだとおもった。
(…………あれ?)
けれど、わたしのかおをみたあと、そのおとこのひとのかおは、おこっていなかった。
そのひとは、おばさんにきいた。
「おいおかみさん、こいついくらだ?」
「ああ?なんだいあんた。そいつを買おうってのかい?」
「ああ」
このひとが、わたしのパパになってくれるの?わたしはそのひとのかおをみつめた。
「そいつ、ガンとばしてこなかったかい?」
「……確かに、とばして来たな」
「じゃあ駄目だ。そんな出来損ない、売れるわけないだろ」
そういって、おばさんはわたしにむかってにらんできた。
きのうのおばさんのことばをおもいだした。
『次やったら、スクラップ行きだから覚悟しな……』
わたし、しんじゃうの?
いやだ。
しにたくない。
「いや」
そうしたら、おとこのひとがいった。
「ガンとばしてきたから、買うんだよ。気に入った」
「へえ……あんた、物好きだね」
「従順すぎる人形より、生意気なガキの方が好みなんでな」
「まあいい。20スコル、頂くよ」
おとこのひとが、おばさんにおかねをわたす。そしてわたしをつないでいたくさりをとった。
わたしは、いま、このひとにかわれたんだ。このひとが、わたしのあたらしい「パパ」になるみたい。
「いくぞ」
そのひとにいわれるまま、わたしはあるきだした。