STATELESS SLAVE's STORY 作:UNKNOWN WRITER
1
わたしたちの街がもえていた。
わたしの友だちがすんでいる家。
わたしが友だちとあそんだ公園。
わたしの住んでいる家。
みんな、もえていた。
まどの外はほのおとひめいでいっぱいだった。ときどき、どこかからばくはつする音が聞こえてきて、そのたびにひめいがふえた。
つけっぱなしのラジオから、いつもとちがうほうそうが聞こえる。
『○○○市民に次ぐ。今よりこの街は我々フォートレイ連邦が占拠する。抵抗を止め速やかに投降せよ』
「なにが投降せよ、だ。ふざけやがって……」
おとうさんがつぶやく声が聞こえた。
「くそ、火の回りが早い……!! ×××、お前だけでも早く逃げろ!!」
おとうさんが、わたしにどなってる。
その顔が、いつもにこにこしていたおとうさんと同じ人に見えなくて、こわくて、わたしはうごけなかった。
「なにやってる、急げ……ッ!!」
ひこうきがとんでくる音が聞こえる。
「クソッ……ッ!!」
おとうさんが、わたしの上におおいかぶさった。
次のしゅんかん、家のやねがくずれて、わたしたちの上におちてきた。
だれかが、さけんだような気がした。
* * * * *
「………起きろ」
とん、と頭をたたかれて、目がさめた。
「……パパ」
目をあけると、パパがわたしの顔をのぞきこんでいる。茶色くて、なんだか
でも、あんまりこわくはなかった。よく分からないけど、パパがいると、すごく安心できる。
ここは「ロンドン」というまちにある、小さなやどやさん。へやはすこしせまいけれど、ちゃんとあかりもつくし、ベッドもある。まえにとまったやどやさんより、ずっときれいだ。
「起きたならさっさと支度しろ。もうすぐここを出る」
そう言って、パパは
うしろにさかだったかみのけが、たてがみみたいに見える。たてがみのある
と、
「言い忘れてたな。……おはよう、カラ」
カラ。パパがわたしにくれた、わたしだけのたいせつな名前。パパにこの名前でよばれると、とってもうれしい。
「うん。おはよう、パパ」
そう答えて、わたしもベッドから下りた。
わたしとパパが出会ってから、もうすぐ1年。パパといっしょに、わたしは色んな
パパはだいたいお昼ごはんのまえには帰ってきてくれる。そのあとは、わたしに文字のかき方とか、むかしのお話をしてくれた。
むかし、せかいには、
「大戦」がおわったあと、人はあちこちの
(なんで、くにのなかはわるくなったの?)
いっかいだけ、聞いてみたことがある。パパはこう答えた。
(さあな。誰にも解らんらしい……。いや、誰でも知ってることだ)
そして、こう言っていた。
(きっと俺達は、そういう風に出来てんだろうな。互いを憎んで恨んで、……殺し合うように)
むずかしい話はよくわからなかったけど、そのときのパパは、とてもつらそうな顔をしていた。
ずっとずっと、わすれられない顔だった。
旅のじゅんびをして、わたしたちはやどやをあとにした。
パパは、まっ黒なコートの上から、旅人がつかうフードつきのマントをはおっていた。コートのポケットがふくらんでいるのは、ピストルがはいっているせい。こしに、いつもしごとのときにもっていく『しんどうけん』をせおって、
わたしもいつものふくの上から、マントをきていた。にもつはパパがぜんぶもっててくれたので、なにももっていない。
空ははい色で、もうすぐ雨がふりそうだ。
「行くぞ、カラ。俺から離れるな」
「うん」
パパの大きな手をしっかりにぎって、はなれないようによりそって、わたしはパパと歩きはじめた。
パパといっしょにいると、わたしはどんなところでもこわくならなかった。どこへいっても、きっとパパが守ってくれる。そうおもうと、むねのおくがあったかかった。
外にでて、しばらく歩いたときだった。
とおくのほうで、ドオォォン……と大きな音がして、けむりがあがった。
「チッ、幸先悪りぃな……」
パパがつぶやく。
「パパ、あれなに?」
「知らん。だが、厄介な事になりそうだな……」
ドオォォン、ドオォォン……。
たてつづけに音がなって、それにまじってひめいが聞こえてきた。
「巻き込まれねェうちに行くぞ」
少しだけ早足になったパパといっしょに、なんだか人の少ないとおりをぬける。この先にある、ふんすいのあるひろばに、わたしたちの車がとめてあるはずだ。ぬすまれていなければ、だけど。
ばくはつする音がふえ、ひめいがおおきくなる。
「思ったより大事だな、こりゃ……」
しばらく走って、ひろばが見えてきた。にげてきたのか、何人かの人たちがかたまっている。車は、ちゃんととまっていた。
「よかった……」
わたしがつぶやいた、そのとき。
なにかがとんできたかとおもうと、ふんすいがふきとんだ。何人かの人たちも、わたしたちの車も、いっしょにふきとんでしまった。
すなぼこりで、あたりがよく見えなくなる。
「チィッ」
パパがしたうちして、近くのたてもののかべぎわによる。そして、たてものとたてもののすきまに、わたしをおしこんだ。
「キャッ」
「カラ、そこでじっとしてろ。俺が来るまで、絶対に身動きをするな。……いいな?」
こくり、とうなずくと、パパがけむりのおくにきえる。
その手には、大きな『しんどうけん』がにぎられていた。
「さて、………………やるか」
パパの声が聞こえた。
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次回は「パパ」視点の予定です。