STATELESS SLAVE's STORY   作:UNKNOWN WRITER

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前回、3年後と言ってましたが、書いてる内に1年後のお話に。orz


一章~The age of seven~
1


わたしたちの街がもえていた。

 

 わたしの友だちがすんでいる家。

 

 わたしが友だちとあそんだ公園。

 

 わたしの住んでいる家。

 

 みんな、もえていた。

 

 まどの外はほのおとひめいでいっぱいだった。ときどき、どこかからばくはつする音が聞こえてきて、そのたびにひめいがふえた。

 つけっぱなしのラジオから、いつもとちがうほうそうが聞こえる。

 

『○○○市民に次ぐ。今よりこの街は我々フォートレイ連邦が占拠する。抵抗を止め速やかに投降せよ』

 

「なにが投降せよ、だ。ふざけやがって……」

 

 おとうさんがつぶやく声が聞こえた。

 

「くそ、火の回りが早い……!! ×××、お前だけでも早く逃げろ!!」

 

 おとうさんが、わたしにどなってる。

 その顔が、いつもにこにこしていたおとうさんと同じ人に見えなくて、こわくて、わたしはうごけなかった。

 

「なにやってる、急げ……ッ!!」

 

 ひこうきがとんでくる音が聞こえる。

 

「クソッ……ッ!!」

 

 おとうさんが、わたしの上におおいかぶさった。

 次のしゅんかん、家のやねがくずれて、わたしたちの上におちてきた。

 

 

 だれかが、さけんだような気がした。

 

 

     *     *     *     *     *

 

 

 

「………起きろ」

 

 とん、と頭をたたかれて、目がさめた。

 

「……パパ」

 

 目をあけると、パパがわたしの顔をのぞきこんでいる。茶色くて、なんだか()()()みたいにするどいかんじのする、ちょっとこわい目だ。

 でも、あんまりこわくはなかった。よく分からないけど、パパがいると、すごく安心できる。

 ここは「ロンドン」というまちにある、小さなやどやさん。へやはすこしせまいけれど、ちゃんとあかりもつくし、ベッドもある。まえにとまったやどやさんより、ずっときれいだ。

 

「起きたならさっさと支度しろ。もうすぐここを出る」

 

 そう言って、パパは()()()()()をかたづけはじめた。

 

 うしろにさかだったかみのけが、たてがみみたいに見える。たてがみのある()()()()なんて、見たことないけど。

 

 と、()()()をかたづける手がとまった。

 

「言い忘れてたな。……おはよう、カラ」

 

 カラ。パパがわたしにくれた、わたしだけのたいせつな名前。パパにこの名前でよばれると、とってもうれしい。

 

「うん。おはよう、パパ」

 

 そう答えて、わたしもベッドから下りた。

 

 

 

 

 

 わたしとパパが出会ってから、もうすぐ1年。パパといっしょに、わたしは色んな()()をたびした。

 ()()のやどやにつくと、パパはわたしをおいてどこかに行ってしまう。帰ってくるまで外に出るな、とパパに言われているので、いつもへやでじっとしている。

 パパはだいたいお昼ごはんのまえには帰ってきてくれる。そのあとは、わたしに文字のかき方とか、むかしのお話をしてくれた。

 むかし、せかいには、()()が何こもくっついた、大きな()()がいくつもあったらしい。でも、()()()()のなかがわるくなって、大きなせんそうがおきて、みんななくなってしまった。そのせんそうを、みんなは「大戦」とよんでいるんだって。

 「大戦」がおわったあと、人はあちこちの()()に集まって、そこでくらしはじめた。おたがいに何度もうらぎられたから、みんな、おなじ()()の人たちいがいとは、なかよくしないようにすることにした。そしてそれが、いまでもつづいている。

 

(なんで、くにのなかはわるくなったの?)

 

 いっかいだけ、聞いてみたことがある。パパはこう答えた。

 

(さあな。誰にも解らんらしい……。いや、誰でも知ってることだ)

 

 そして、こう言っていた。

 

(きっと俺達は、そういう風に出来てんだろうな。互いを憎んで恨んで、……殺し合うように)

 

 むずかしい話はよくわからなかったけど、そのときのパパは、とてもつらそうな顔をしていた。

 ずっとずっと、わすれられない顔だった。

 

 

 

 

 

 旅のじゅんびをして、わたしたちはやどやをあとにした。

 パパは、まっ黒なコートの上から、旅人がつかうフードつきのマントをはおっていた。コートのポケットがふくらんでいるのは、ピストルがはいっているせい。こしに、いつもしごとのときにもっていく『しんどうけん』をせおって、()()()をつめたふくろをコートの中でしょっている。

 わたしもいつものふくの上から、マントをきていた。にもつはパパがぜんぶもっててくれたので、なにももっていない。

 空ははい色で、もうすぐ雨がふりそうだ。

 

「行くぞ、カラ。俺から離れるな」

 

「うん」

 

 パパの大きな手をしっかりにぎって、はなれないようによりそって、わたしはパパと歩きはじめた。

 パパといっしょにいると、わたしはどんなところでもこわくならなかった。どこへいっても、きっとパパが守ってくれる。そうおもうと、むねのおくがあったかかった。

 外にでて、しばらく歩いたときだった。

 とおくのほうで、ドオォォン……と大きな音がして、けむりがあがった。

 

「チッ、幸先悪りぃな……」

 

 パパがつぶやく。

 

「パパ、あれなに?」

 

「知らん。だが、厄介な事になりそうだな……」

 

ドオォォン、ドオォォン……。

たてつづけに音がなって、それにまじってひめいが聞こえてきた。

 

「巻き込まれねェうちに行くぞ」

 

 少しだけ早足になったパパといっしょに、なんだか人の少ないとおりをぬける。この先にある、ふんすいのあるひろばに、わたしたちの車がとめてあるはずだ。ぬすまれていなければ、だけど。

 ばくはつする音がふえ、ひめいがおおきくなる。

 

「思ったより大事だな、こりゃ……」

 

 しばらく走って、ひろばが見えてきた。にげてきたのか、何人かの人たちがかたまっている。車は、ちゃんととまっていた。

 

「よかった……」

 

 わたしがつぶやいた、そのとき。

 

 なにかがとんできたかとおもうと、ふんすいがふきとんだ。何人かの人たちも、わたしたちの車も、いっしょにふきとんでしまった。

 すなぼこりで、あたりがよく見えなくなる。

 

「チィッ」

 

パパがしたうちして、近くのたてもののかべぎわによる。そして、たてものとたてもののすきまに、わたしをおしこんだ。

 

「キャッ」

 

「カラ、そこでじっとしてろ。俺が来るまで、絶対に身動きをするな。……いいな?」

 

 こくり、とうなずくと、パパがけむりのおくにきえる。

 その手には、大きな『しんどうけん』がにぎられていた。

 

「さて、………………やるか」

 

 パパの声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 




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次回は「パパ」視点の予定です。
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