これは並盛中生徒会長の日常である。   作:ガイドライン

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陰謀というには弱すぎて、願望というには身勝手だ。

「………こ、ここは……」

 

 

 

千種が目を覚ましたらそこは真っ暗な世界。

何もなくただ暗闇に包まれている。

すると目の前から誰かが現れた。

 

 

 

 

「君は……"S"」

 

 

 

すぐさま攻撃体勢に入ったがポケットにヨーヨーがなく攻撃できない。

すると"S"は携帯を投げて千種に渡した。

そしてそこには"S"からのメッセージが表示されていた。

 

 

 

 

『物騒だったからね、回収させてもらったよ』

 

「……何が目的なの?」

 

『話が早くて分かる。

君達には……いい提案だと思う』

 

「それは…僕が決める」

 

 

 

未だに警戒を解かない千種。

それはそうだろう、相手は"S"。

さっき戦ってあっという間に倒された相手。

どれだけ強いのかなんて分かっている。

 

そしてこの場所も"S"のテリトリー

警戒を解くなんてありえない。

 

 

 

『簡単だよ。

どうしようもないとき、助けを求めればいい。

そしたら助けてあげるよ』

 

 

 

その文章に千種は目を見開いた。

そんな罠だと分かることをこんな風に提示してくるなんて

 

 

 

「ふざけているの?」

 

『いや、真面目だよ。

君達の過去は知っている。

エストラーネオファミリーの人間だったよね』

 

 

 

すると千種がかけより"S"の胸ぐらを掴む。

間近で"S"の顔を見ようとした瞬間、フードから眩しい光が放たれてすぐに飛び退いた。

 

 

 

『同情なんて言葉は軽すぎるけど、大変な思いをしたことは分かる。

だからといって他のマフィアを消す必要はあるのかい』

 

「消さないと……何も変わらない」

 

『まぁ、否定はしないよ。

だけどこれだけは言っておくよ。

君達は今回のことで最大のピンチを向かえる。

助かりたいなら呼べばいい。それはいつ何処でもいいよ。必ず助け出す。』

 

「そんなこと…信じられるわけ……」

 

 

 

すると上空から光が差し込み千種を照らし出す。

その光が千種の体を浮かせてどんどん上昇していく。

 

 

 

『まずは君のやるべきことをやればいい。

いま君にはそれが生きる糧だからね。

だから奪われたくないなら………』

 

 

 

最後まで読みきる前にこの真っ暗な世界から光の中へと入り意識を失うことになった。

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

「…っ、ここって……」

 

 

 

千種が目覚めるとそこは見覚えのある場所、黒曜ランドの敷地内だった。

体を起こすとそこには見覚えのある人物がいた。

 

 

 

「お前は…並盛中生徒会長、黒田 光明」

 

「やっぱり僕のこと知っているんだね。

さて、ここに今回の首謀者がいると思うだけど、教えてくれないかな?

こうして君をここまで、って、うおっ!!!」

 

 

 

間髪要らずに千種はヨーヨーを取り出して攻撃してきた。

慌てたように光明は避けたが、予想はしていたから演技で慌てたように見せて簡単に避けた。

 

 

 

 

「危ないですよ。

本校だったら取り締まらないといけないですけどね」

 

「…ダルいから、早く終わらせる……」

 

「これは口を開いてくれそうにないですかね。

探すのは大変かと思ってのことでしたが、仕方ありません」

 

 

 

 

ヨーヨーから飛び出てくる毒針を今度は意図も簡単に避けていく光明。

それを目の当たりにした千種はさっきの避けかたは嘘だったと悟ったのだが、それはすでに遅かった。

 

気づいたときには間合いに入られて防御をしようとしたが、次の瞬間には脳が揺れて意識を保てなくなっていた。

 

倒れるその前に千種は理解した。

見えない、気づかないほどのスピードで顎を殴られたと。

 

 

しかし千種の体は言うことを聞かずにそのまま地面に倒れた。

 

 

 

 

「力の差を見せるつもりだったけど……ちょっと速すぎたかな……」

 

 

 

 

少しでも危険対象と認識させるためにやった。

そうすれば何処かで自分の無力感を感じて助けを求めるだろう。

助けを求めるということは少なくともその者を信用することになる。

 

いきなり骸と仲良くなるなんて思ってない。

だったら周りからと思い、犬より知能的な千種を選んだ。

 

うまくいけば復讐者(ヴィンディチェ)に捕まる前に助けられる。

あくまでも助けを求めてもらわないと、勝手に助けると疑われるし、まぁ、助けた時点で疑われるけど少しは緩和されるかなーと安易な考えである。

 

 

 

正直、助けを求めないのならそれでいい。

あくまでも傍観者でいるつもりでいる。

この場合傍観者というのはツナとその周りの成長に対してだ。

 

ツナには強くなってもらう必要がある。

だからそれ以外に関しては接触する気満々である。

 

でも絶対に変える必要があるとは思えない。

 

 

結局は、自分の都合だ、身勝手だ。

だから関わるからには自分が出来ることをやろうと決めた。

骸を少しでも真っ当な人間にしたい。

願望というより無謀と言われそうだけどやるだけやってダメなら諦める。

 

骸に対してはそんな感じでいいと思っている。

 

 

 

「さて、そろそろランチアが出てくるところかな?」

 

 

 

次はツナに繋げるまでお相手をしましょうかね。

 


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