【一時休載中】ドラゴンクエスト 勇者アベルともうひとつの伝説 作:しましま猫
カザーブの宿で一夜を明かし、次の日の朝、朝食を済ませたあと、ヒカルの部屋に全員が集まっていた。昨日、ミミが炎の戦士に、いや正確には炎攻撃におびえていた様子が気になったので、とりあえずヒカルは本人に理由を聞いてみることにした。
「なあミミ、言いたくなかったら無理にとはいわないけど、おまえ、ひょっとして火にトラウマでもあるのか?」
「ご主人様……。」
「いや、昨日の恐がり方が普通じゃないような気がしたからさ、何もなければ別にいいんだが。」
「……焼かれちゃったの。」
「え?」
「……私と、おねえちゃんの生まれ育った村ね、宝石モンスターに滅ぼされちゃったの。」
ミミはつらそうな表情をしながら、ぽつりぽつりと、自分と姉がリバーサイドの村にやってくるまでのことを話し始めた。
この世界に、ゾイック大陸という大陸がある。かつて、エスタークという文明が栄え、そして自らの手によって自らを滅ぼした。それは原作の通りなのでヒカルも知っている。同じ大陸にミミたちの故郷、エルフの里があったそうだ。
エスタークの滅亡から長い時間をかけて、ゾイック大陸は徐々に美しい自然を取り戻し、エルフたちはそれを見守り、手助けしながら静かで平和な時を過ごしていたらしい。だが――。
「今から1年ほど前、急に凶悪なモンスターたちが襲ってきたの。私とお姉ちゃんは里の長老様のお遣いで出かけていて、帰ってきたときには里は火の海だった。」
「……ご存じの通り、私たち姉妹には戦う力があまりありません。目の前で炎に焼かれていく里を、呆然と見つめていることしかできませんでした。」
「そして、モンスターたちが私たちにも炎のブレスをはきかけてきたそのとき……。」
そのとき、かろうじて生き残っていた2人の父親が、敵の炎を身代わりになって受けた。最後にありったけの魔力を注ぎ込んでバシルーラを唱え、2人の娘はリバーサイドの村の近くに飛ばされ、そこで気絶しているところを村人に助けられた、ということだった。
「なるほどね、2人ともあの村の元からの住人じゃなかったのか。」
「はい、私たちは村の人たちと、ザナック様のお世話になりながら、今日まで生きてきたのです。」
リバーサイドで暮らすようになったモモは、自分の能力を使って、村の人たちに薬草の調合や、野菜など食料となる植物の栽培方法を教えていたらしい。彼女は戦闘能力はあまりないが、植物を意のままに操ったり、森の木々と会話ができたりと、某漫画の妖狐のような能力を持っている。昨日の戦闘で、炎の戦士の足をとって転倒させたのは、彼女が近くのブドウのツルを伸ばして足に絡めたからだ。こういった力はゲーム的な呪文や特技とは違うもので、日常的に便利なものから戦闘に役立つものまで、多種多彩だという。姉妹はヒカルがバラモスへの対抗策を講じるために旅立ったと聞いて、手助けするために旅に同行することを決めたそうだ。
「でも……、私、このままじゃご主人様の足を引っ張っちゃう、邪魔になっちゃう。」
ミミがうつむいて、肩をふるわせている。今にも泣きそうだ。放っておいたら消えてしまいそうな弱々しいその存在を、ヒカルは無意識のうちに抱きしめてしまっていた。
「ご主人、様。」
「大丈夫、誰にでも、苦手な物のひとつやふたつ、あって当たり前だ。そんなに気にすることじゃない。」
今日のミミは髪を下ろしている。姉と同じピンク色のふわふわな頭をなでてやると、彼女はヒカルにすがりついてしくしくと泣き出した。いつも自分からべたべたくっついてきて、過剰なスキンシップをとってくるのに、今はただ、泣いているだけだ。それほど、故郷の村を焼き払った炎の脅威は、ミミの心に深い傷を残していたということだろう。
***
ミミが落ち着いた後、ヒカルはずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「なあミミ、おまえが攻撃呪文苦手なのって、そのトラウマのせいだろう? 元々使えたのに今は行使できない呪文があるんじゃないのか?」
ミミはだまってこくりとうなずいた。エルフ族はもともと、人間はもちろん呪文が得意なモンスターなどと比べても、非常に高い魔力を持っている。通常は多彩な呪文を操り、その中でも自分が得意とする属性があり、その分野についてはまさにスペシャリストなのだが、現在のミミはたいした呪文は使えない。子供なのだから高レベルの呪文を扱えないのは当然としても、多数の系統があるはずの攻撃呪文も全く使えない状態なのだ。いや正確にいうと、ヒカルが考察したように、元々は使えたはずなのだが、村が焼かれた事件によって精神の内側に封じ込められてしまっていると考えられるのだ。
「……おそらく、エルフ族特有の強大な魔力を行使するためには、今のミミは不安定すぎるのだと思います。過去に植え付けられた恐怖が、呪文の発動にブレーキをかけているのではないかと……。」
しかしいずれにしろ、この状況は良いとはいえないだろう。本人が苦しんでいることもそうだが、この先の世界の行く末を考えると、自分の力を十分に発揮できない状態は、それだけ命の危険にさらされる可能性が高いということになる。ヒカルとともに旅をするしないに関わらず、なんとかトラウマを克服する手立てを講じなければならないだろう。しかし、そうはいってもかなり難しい状況であることは確かだ。ヒカルが思考の海に沈みはじめたとき、それを強制的に引き上げる大声が、外から響いてきた。
「た、大変だ~、火事だぞ~!
「!! なにっ?!」
急いで窓から顔を出してみると、通りを挟んで向かい側の家が燃えていた。どういう理由かはもちろんわからないが、かなり大きな炎が上がっていて、真っ黒い煙がもうもうと周囲に立ちこめている。
「やばいな、燃え移らないとは思うが、一応最低限の貴重品だけ持ってここを離れるぞ!」
「はい!!」
ヒカルは震えるミミを抱き上げ、宿を飛び出した。幸い1階であったから、すぐに外には出られた。通りに出てみると、眼前には燃えさかる民家。周囲の人がバケツリレーで水をかけているが、火の勢いが強すぎて全く鎮火できていない。どうやらおさまるまで待つしかないようだ。
「ひ、火が……。」
ヒカルの腕の中で、ミミは相変わらず小刻みに震えている。まったく運が悪い。炎攻撃の次は火事、何故わざわざトラウマをフラッシュバックさせることばかり起こるのか、ヒカルは心の中で運命というものに悪態をついた。
「お、お願い、子供がまだ中に、助けて、お願い!」
「無茶だ、もう火が回ってしまっている!」
「そんな………。」
「ああ、やっとできた私たちの子供なのに……。」
建物の前で泣き崩れる女性と、それを抱きしめる男性。おそらく夫婦だろうか。燃えさかる小さな家の中から、かすかに赤ん坊の鳴き声のようなものが聞こえているのだが、炎が木造の建物を焼いているバチバチという音に遮られてよく聞こえない。子供を助けてくれと懇願された村人も、さすがにこの炎ではできることはなく、今にも飛び込まんとする夫婦を押しとどめるのが精一杯だった。ヒカルは精神を集中して、目の前のエネルギーの流れをさぐる。熱い炎のもう少し向こう、確かに、小さな生命の力を感じる、赤ん坊は確かにまだ生きていて、この家の中にいる。それがわかったとき、彼は抱いていたミミを地面に下ろして走り出していた。
「ご主人様っ! だめだようっ!」
後ろでミミの叫ぶ声が聞こえる。しかし、ヒカルの体は驚くほどスムーズに動き、もはや彼自身でも止めることはできない!
「氷の精霊よ、我が身を包む衣となれ、ヒャド!」
全身に冷気をまとわせ、ヒカルは家の中へ駆け込んだ。幸い小さく単純な構造のため、ゆりかごの中で泣いている赤ん坊をすぐに見つけることができた。
「よしよし、もう大丈夫だぞ。」
ヒカルは、凍り付かせないように冷気を消して、赤ん坊をそっと抱き上げてみた。体の大きさからして、予想はしていたが、まだ首が据わっていない。自分を助けに来た存在に安心したのか、その瞳はヒカルをじっと見つめているが、もう泣いてはいない。そっと両手で支えて、彼は脱出するために踵を返した。しかし、まさにその瞬間だった。
「くっ、しまった……!」
ある程度目的を達したことで、少しだけ安心して気が緩んでしまったのだろう、完全に反応が遅れた。ヒカルと抱かれている赤ん坊の頭上から、炎に包まれた木材が墜ちてくる。赤ん坊を両手で抱いているため、呪文を発動して打ち落とすことができない。また、かなり広範囲の木材が崩れてきており、走って脱出しようにも退路が断たれた状態だ。
「ご主人様あっ!!!」
家の外から、ミミの悲痛な叫び声が聞こえる。ああ、あんなに大声で叫んで、ずいぶんと心配をさせてしまったと、ヒカルはそう思ったが、不思議と後悔はしていなかった。何も知らずにその澄んだ瞳を向けてくる赤ん坊に、守ってやれなかったことを心の中でわびて、彼は最後の時を覚悟し、目を閉じた。
しかし、どうしたことか、最後の時が訪れるどころか、何も衝突してこないし、痛みも熱さもない。それどころか、上から何かが落ちてくる気配すら一向にない。目を閉じる瞬間まで、炎に包まれた幾多の木材が、ヒカルとその腕の中の赤ん坊めがけて崩れ落ちてきていたはずだ。ヒカルは不思議に思い、もう一度目を開けて周囲を見渡した。
「えっ?」
そこには信じられない光景があった。さっきまで墜ちてきていた木材が、そのまま空中で停止している。それだけではない、ヒカルたちよりもずっと遠くで燃え上がり、少しずつ崩壊していた柱、屋根、壁などのすべてが、倒壊する途中でぴたりと停止していたのだ。しかし、火が消し止められたわけではなく、すべてのものが中途半端な状態で止まりながら燃えているという異様な光景が広がっていたのだ。
「氷の精霊よ、凍てつかせよ。我の行く手を阻む者を極寒の嵐によりて殲滅せよ!」
入り口の方から呪文の詠唱と思われる声がする。何かに耐えるような、しかし強い決意のこもったようなその声は、激しい音を立てて燃えさかる炎の中にあっても、何故かはっきりとヒカルの耳に届いていた。
「ヒャダルコ!」
「つっ……!」
魔力をおびた冷気が燃えさかる家の中へ流れ込んでくる。それはたちまちあたりを包んでいた炎をかき消していく。周囲の熱が奪われ、肌にまとわりついていた熱気が引いてきたとき、ヒカルはようやく我に返った。とにかく、炎が治まってきているのならば、脱出するチャンスは今しかない。彼は、頭にまとわりつく様々な疑問を振り払い、急いで入り口の方へ走り出す。いつの間にか、吹き込む冷気がやんでおり、難なく家から脱出することができた。理由は分からないが無事に赤ん坊を助けることができたようだ。
***
「あの、ミミさん? そろそろ勘弁していただけませんかね。」
「だめ。」
「もう1時間くらいこんな感じで、かなり足が痛いんですけど……。」
「だめ、絶対。」
数時間後、宿の部屋で、ヒカルは正座をさせられていた。しかも、何故か膝の上にはミミがずっと座っており、抱っこ状態だ。さすがにミミが小さくて軽いといっても1時間はきつい。しかしどうやら怒っているらしく、解放してもらおうとしても、速攻で拒否されてしまう。
あの後、赤ん坊の両親からは非常に感謝された。どうやら結婚して長いこと子供ができず、やっと授かった愛娘だったらしい。そういう意味では確かに良いことをしたのだが、ヒカル自身もなぜあんなことをしたのか分からない。ミミがトラウマを克服して
「……っちゃやだ。」
「え?」
「ご主人様、おいて行っちゃ嫌だよう……。」
ヒカルはここで、ミミが何故トラウマに打ち勝つことができたのか、おおよその理由を悟った。彼女のトラウマは、自分には何もできずに大切な人たちを失ってしまったこと。その象徴が炎に焼かれる故郷の光景だったのだろう。そして、今回また、状況は異なっているものの見知った者が炎に巻かれて命を落とそうとしていた。そのことが彼女の心を奮い立たせ、元々の得意分野であったヒャド系呪文を再び使用できるようにした、ということだろうか。そこまで考えて、ヒカルは何か引っかかるものを感じた。仮にそうだとしても、トラウマを克服するだけの強い思いを抱かせるためには、助けたいと思う相手も相応に大切な存在でなければならないはずだ。そう考えると、ミミは大切な存在であるヒカルを失いたくないがために、恐怖に打ち勝って攻撃呪文を使いこなしたということになる。そこまで思い至っても、ヒカルはその考えが正しいという確証を得られないでいた。確かにかつて彼女たちを助けたことで、ずいぶん感謝をされたし、その例としてやり過ぎなくらいに世話を焼いてもらった。しかし彼女たちとの関わりは半年足らずのことであり、自分が故郷や家族といった、長い間関わってきた者たちと同等かそれ以上の存在であるという実感を、ヒカルは持つことができないでいたのだ。
「ご主人様は、どう思っているかわかりませんけど……。」
いつのまにか、外へ買い物に行っていたモモが帰ってきていた。ヒカルとミミの様子、特に頭に多数の疑問符を浮かべていそうなヒカルの表情を見て、彼女はひとつ軽いため息をはいた後、いつになく真剣な表情になり、静かに話し始めた。
「ご主人様、あの日、あなたに助けていただいたあのときから、私たちの止まっていた時間は動き出しました。それはあなたにとってはたいしたことではないのかもしれません。けれど、私たちにとってあなたは、失いたくない大切な人です。あなたが大魔王バラモスに立ち向かうと決めたのなら、どうして何も言ってくださらなかったのですか? 私もミミも、とても悲しい思いをしたんですよ?」
そう、それは何気ないことだった。たまたま村の外でモンスターに襲われていた姉妹を、助けただけのことだったのだ。ヒカルは意識してはいないが、彼は誰かが困っていると、後先考えずとにかく助けようとするところがある。お人好しと言ってしまえばそれまでだが、何一つ見返りを求めず、ただ相手のために善意のままに行動できる人間性というのは、誰でも持っているようなものではない。助けた事実そのものよりも、彼の裏表のない善意が、大切な者を失ってどこか空虚になってしまっていたモモとミミの心を埋め合わせる何かを、再び与えていたのだ。それが彼女たちの過剰な奉仕にもつながっていたし、もう一度誰かを大切に思い、その相手とともに過ごす幸せを与えていた。故にこそ、彼女たちはその大切な者を、再び失ってしまうことを恐れたのだ。
「約束してください、ご主人様、私たちをおいて、いなくなったりしないって。お手伝いでもメイドでも愛玩動物でも性処理玩具でもかまいませんから、一緒に連れて行ってください!」
モモが真剣な顔で訴えかけてくる。――なのだが、いつにないその迫力とはどこかずれている、危ないセリフが混じっているような気がしたが、ヒカルはその言葉を全力で無視した。彼女たちの嗜好はともかく、向けられている思いは本物だ。それを受け止めてやらないなど、男としてどうこうという前に人間としてあり得ないだろう。それに、異世界に来て右も左も分からないヒカルがここまでやってこられたのは、彼女たちの助けによるところも大きかったのは紛れもない事実だ。
「わかったよ、俺はおまえたちを巻き込みたくなかったけど、そこまで俺のことを思ってくれるんなら、もう止めない。みんなでバラモスの野郎にたっぷり嫌がらせをしてやろうぜ。」
「一緒に行ってもいいの? ご主人様。」
膝の上でミミがヒカルを見上げている。その瞳にはまだわずかばかりの不安が見て取れるが、もはや先ほどのような頼りなさはない。ヒカルはその瞳に正面から答えることを決意し、ミミの顔をまっすぐに見つめかえした。そして軽くうなずくと、傍らに立つモモの方に目をやる。彼女はいつもと同じ、柔らかな微笑を浮かべてヒカルとミミを見つめていた。
***
いろいろあって、結局カザーブの村にもう一泊したヒカルたちは、次の日の朝食後にこれからの旅をどうしようかと相談していた。
「そうですね、順番は大切ですよね。」
「そうそう、港に行くのは確定として、どこの街によって、どんな順番で行こうか。」
「唇とかうなじとか胸とかおしりとか、内ももや……恥ずかしゅうございます、ぽっ。」
「おい、何の話だ。」
「ミミは胸からがいい~~。人差し指と親指で……。」
「だあっ、やめなさい! このお話が18禁にカテゴリされちゃうでしょうが! アベル伝説がゴールデン枠で放送できねえし、ハーメルンの運営から怒られたらどうすんだ!」
「はい? 何ですか? はーめるん? あべるでんせつ?」
相変わらず変なことばかりをのたまう姉妹のため、方針決定は遅々として進まない。やはり一人旅の方がよかったかと、ヒカルは頭を抱えた。
「あ、ところでご主人様、リバーサイドで聖水を買われましたよね?」
「あ、ああ、道具屋の奥さんが、売れないから半額でかまわないっていうから。」
「……、この大陸には、あれの価値がわかる方はいませんね、残念です。」
ヒカルはリバーサイドで旅支度を調えるとき、道具屋でいくつかのアイテムを買いそろえている。薬草、毒消し草、まだらクモ糸などのおなじみのアイテムと、聖水の小瓶を何本かだ。この世界で売っているのは珍しいという話を聞いたことがあったため、興味を引いたことと安かったことが購入を決めた主な理由だが、もう一つ、確かめてみたいこともあった。
「ねえねえ、せいすいって、おトイレでするあれのこと?」
「ミミ、その聖水はご主人様に個人的に差し上げる物ですわ、道具屋さんでは売っていないのよ?」
「ふ~んそうなんだ。」
「いやいやいやいや、そんなもん欲しくないから、君たちと黄金水プレイとか、なんで俺がそんなことしないといけないの!!」
この姉妹はまた妙な方向へ話を脱線させている。そもそもそちら側のプレイなど、ヒカルにはさしたる興味もなかった。エルフの黄金水プレイとか、18禁ゲームなどであったなら確実に喜ぶ人種がいそうだが、彼はその辺は至ってノーマルである。
「この聖水は、私たちの村の神官様が神に祈りを捧げて清められたものです。私が少しだけ持ち歩いていた物を、道具屋さんにお売りしたのですが、やはりこの大陸では認知度が薄いようですね。」
「ええと、それって邪悪なモンスターを寄せ付けなくしたり、少量のダメージを与える物だったよな?」
「はい、ですがゾイック大陸では水の汚染で材料となる澄んだ水が減ってきていて、今では作ることができないと思われます。」
どうやら買い求めた聖水はモモが持ち込んだもので、効果はほぼゲームと同じらしい。原作では同じようなアイテムとして「聖なる水」というものがあった。バラモスにそれなりのダメージを与えていたことから、ゲームの聖水と同じものとも考えられるが、ゲームをモデルにした物語で、同じ名前を使わないことが引っかかっていた。もっとも、名前や効果の違うアイテムは他にもあったから、名前だけ違う同じアイテムという可能性はある。しかしそもそも、バラモスと部下たちはただきれいなだけの普通の水でもダメージを受けており、アベルたちがモーラの都で手に入れた聖なる水というアイテムが現在所持している聖水と同じものかはよくわからない。また、モーラの都があるシオンの山から湧き出る水は、ガイムに対しても影響を及ぼしていたが、これにも何か聖なる力が働いていたのか、はたまたただの非常にきれいな水なのか、作中の描写から判断するのは難しい。そういったことを総合的に考えて、ヒカルはモーラの都について調べてみようと考えた。
「よし、次の目的地を決めたぞ。」
「どちらへ行かれるんですか?」
「モーラの都だよ。」
to be continued
※解説
ヒャダルコ:ヒャドの上位呪文。敵位置グループに凍結系のダメージを与える。Ⅲではやまたのおろち戦で活躍した。メラやギラに比べて耐性持ちが少ないため重宝する場合がある。ヒャド系は他の系統と異なり呪文のランクによって効果範囲が変わるという謎仕様だった。
毒消し草:毒を消し去る回復アイテム。キアリーを覚えるまでは必需品。DQでは毒状態は戦闘後に解除されないうえ、宿に泊まっても回復しないので、教会に行くか毒消し層やキアリーで回復することになる。通常の「どく」状態では移動中でなければダメージを受けないが、「もうどく」の状態になると戦闘中もターンごとにダメージを受ける。
まだらクモ糸:敵の素早さを下げ、行動を遅くするボミオスと同じ効果がある。ただ、DQの行動はランダム要素が意外と大きいので、このアイテム一つで行動順を大きく変えることはできない。おそらく一度も購入したことがない人もいるであろう微妙アイテム。
聖水:移動中に使うと弱い敵と遭遇しなくなり、戦闘中に使うとモンスターに小ダメージを与えるアイテム。Ⅳ(FC版)でははぐれメタルやメタルキングにも10以上のダメージを与えることができたが、後のシリーズでは修正されている。
アベル伝説の作中で出てくる「聖なる水」とゲーム上の「聖水」が同一のアイテムであるのかは疑問が残るため、拙作ではこの部分を独自解釈している。ご了承頂きたい。