悠斗SIDE
俺たちはショッピングセンターに入った。
まずファストフード店で買い食いをして、その次に上の階のゲームセンターに行った。
しばらくゲームで遊んで違うところに行こうとしたところ、突然走ってきたスーツケースを持った男に突き飛ばされた。
「いってぇな~」
俺は突き飛ばしてそのまま走り去った男の方を見ながら言う。
するとすぐにもう一人、男性が同じ方向に走っていく。
「なんなんだよ一体………」
「大丈夫か?」
「ああ、まったく大の大人が何やってるんだか」
こんなことろで全力疾走するなんてさ。
まあ、きっとよほどのことが――――
「………そうだよな、よほどのことがあったんだよな………」
「ど、どうしたんだ? 悠斗」
「なあ、あの二人追いかけてみないか?」
口の端を吊り上げながら、当麻に提案する。
「えぇー、ダ、ダメだって。当麻さん的に、このフラグは間違いなく不幸につながるパターンだから!!」
「そうか、だったらそのほうがいいな。暇だったし。ほら、行くぞ当麻」
「勘弁してくれよ~」
まったく、いつもこう言ってるのに結局人助けしちまうんだからさ、当麻は。
俺は、当麻の手を引っ張りながら、男二人が走って行った方に向かって走り出した。
「皆さん、管理局です!!! そこのスーツケースは爆弾の可能性があります。早く離れてください!!!」
しばらく走ると、大声でそんな言葉が聞こえてきた。
あーあー、こんなことを言ったら、たちまちパニックになるぞ。
思った通り、一瞬沈黙したほかの客はすぐにパニックになる。
「どうするんだ、悠斗」
「そうだな、あれは多分、さっきの男が持っていたスーツケースだろ。っていうことはあの男が犯人………もしくはそれに準ずる人物だってことだ。俺はそいつを追いかけようと思う。当麻は?」
「俺はここに残って様子を見ようと思う」
俺もそうだけど、爆弾があるな言いて言われたのに、当麻もかなり落ち着いてるよな。
まあ、いつも俺たちを追い回してくる某ビリビリ超能力者と爆弾、どちらが危険かと言われると正直即答できないので、そのせいで感覚がマヒしているのかもしれないけど。
「分かった、でも気をつけろよ。もしあれが本当に爆弾で、異能の力が全く使われてなかったら、お前の右手は全く役に立たないんだからな」
「分かってるよ。そっちこそ気をつけろ。もしかしたら相手は、爆弾を仕掛けるような奴かもしれないんだからな」
その言葉に俺は軽くうなずくと、なるべく人ごみが薄い所を狙って走り出した。
当麻SIDE
悠斗が走り去ったあと、俺は人通りが少ない所で様子を見ていた。
「はぁ~、まったく不幸だよな」
悠斗の無軌道さにはまいったよ。
ま、そこを含めてあいつはいい奴なんだけどさ。
そう思っていると、5歳くらいの男の子がつまずいて転んでしまった。
そしてスーツケースも不自然に膨らむ。
まさか………爆発するのか!?
「クソッ!!!」
俺は全力で走り、男の子の前に出る。
「頼むぜ、異能の力が使われてろよ」
祈りながら右手を前に突き出す。
直後、スーツケースがとてつもない音とともに爆発した。
が、その爆炎は俺の右手に触れたとたん、甲高い音がして掻き消えた。
良かった、魔法か超能力での爆発だったんだな。
と、いうことは、あの男は本気でこの爆弾を爆発させるつもりだったのか。
とりあえず、あの男の事は悠斗に任せておけばいいな。
悠斗SIDE
当麻と別れた俺は、身体能力強化魔法と、売り場を突っ切るというショートカットで男に追い付いてきた。
が、あのスーツケースが爆弾だという証拠がないので、まだ何もしていない。
1分くらいあとを追いかけたところ、どこか遠くからとてつもない轟音が聞こえてきた。
おっと、爆発したらしいな。
当麻は大丈夫だったのか?
それは今考えても仕方ないことだし、俺は俺の役割を果たしますかね。
俺は、今はもう歩いている男に、ゆっくりと近づいていく。
「………予定とは違うが、きちんと爆発させたんだ………あとは金をもらってどこか遠い世界に………」
おっと、今後の未来設定をしてるよ。
っていうか『金をもらって』ってことは、誰かに依頼されたってことか。
そこを調べるのは俺じゃなくて、管理局さんの仕事だな。
「まだビルから出てもいないのに未来設計なんて、ずいぶん余裕ですね」
男は飛び上るほど驚いたらしい。
一瞬飛び上がりゆっくりと振り向いた。
「な、何を言ってるんだい坊や」
「ごまかさなくてもいいですよ。俺は、あなたが俺を突き飛ばしてからずっと追いかけて来てますから」
ただでさえ青白かった男の顔がさらに青白くなる。
「ち、違うんだ。俺は頼まれただけで………本当なんだ! 信じてくれよ!」
俺みたいな子供におびえるなんてとっぽど追いつめられてるな。
「あー………すいません。俺は管理局じゃないんで、そーゆーのは管理局員に言ってもらえますか?」
その言葉で絶動的な顔になった男は、俺に背を向けて一直線に走りだした。
「逃がすかっての。“光の精霊 17柱 集い来たりて 敵を射て 魔法の射手 集束・光の17矢”………」
俺は魔法の射手を発射待機状態にして、男に迫る。
「『桜華崩拳』!!!」
男の背中に桜華崩拳を叩き込む。
何の防御もしなかった男は10メートルほど吹き飛び、商品棚をなぎ倒して止まった。
少しやりすぎちまったかな。
普通に魔法の射手を撃つだけでも良かったかも。
ま、いっか。
それじゃあ、事情聴取とか面倒だし、管理教員が来る前に退散するか。
俺は急いでその場を後にした。
ショッピングセンターから出た俺は、携帯を取り出して当麻に電話をかけた。
「悠斗か?」
「ああ、そっちは大丈夫だったか?」
「まあな、あの爆弾、異能の力が使われてたから」
「へぇ~、ソイツは運が良かったな」
「何言ってんだよ、こんな事件に出くわした時点で不幸だろうが」
「それもそうだな。それで、これからどうする?」
「今日はもう、このままお開きでいいんじゃないか?」
「じゃあ、そうするか。じゃあ今度な」
「おう」
俺は電話を切って家路についた。