新「艦娘グラフティ」(第12部)   作:しろっこ

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その夜、当直の艦娘である球磨と多摩は、謎の電文を受けて大淀さんを呼び出した。


序章<着任>

 序章<着任>

 

 その夜の指令部の当直は球磨だった。彼女は持ち込んだラーメンをすすっていた。

「今夜も平和だクマ」

 

 本当は指令部で飲食……もちろんラーメンを食べることも禁止なのだが、球磨は大淀さんが何度注意しても聴く耳を持たない。

 結局、司令部が根負けして、以下のお約束となった。

 

1)端末の側では食べない。

2)汁を飛ばさない。

3)後片付けはきちんとする。

 

 この三項目を厳守することで、美保鎮守府ではオッケーとなった。(マジか?)

 

「多摩は食べないクマ?」

額から汗を流しながら球磨は同じ当直当番である多摩に聞いた。

 

 一方の彼女は、食欲はあまり無さそうだった。ただソファーにジッと座ってクッションを抱えて目をつぶっている。

しばしの沈黙の後、薄目をあけた彼女は、ひとこと言った。

「要らないニャ」

 

「ふーん」

球磨はラーメンの続きをすすりながら「多摩らしいな」と思うのだった。この二人が当直のペアを組むことは、ほぼ固定されていた。マイペースな二人にとっては、当直は至福の時間と言えるのだった。

 

 そのとき多摩は、いくつか並んだモニター画面が赤く点滅しているのに気付いた。

「何にゃ?」

 

 のっそりと起き上がって端末へ向かう多摩。その姿を見た球磨は言った。

「やっぱり目はつぶっても寝てないんだクマ」

 

それには応えず細い目を更に細めて端末の液晶画面を見詰める多摩。直ぐに怪訝な表情になった。

「えっと、『待たせたな、今行く……』何にゃ? これ」

 

ラーメンを机に置いた球磨も端末に近づいて、その電文を読んで言った。

「……謎だ、クマ」

「ダヨ?」

「取り敢えず、緊急性はないクマ?」

「でも、テロ攻撃の可能性は否定できないニャ」

珍しく悩み始めた二人だった。

 

 しばらく腕を組んでいた球磨は決断した。

「司令を呼ぶのは悪いクマ、大淀さんを呼ぶクマ」

「それが良いニャ」

 

 非常用の内線をかけた後、数分と経たないうちに眠そうな顔をした大淀さん(1号)が来た。制服ではなく寝巻きなのが可愛らしい。

「……その電文の発信元は確認しましたか?」

 

その問い掛けに顔を見合わせる二人。

「見てないクマ」

「忘れてたニャ」

 

「……」

基本的な対応事項をぶっ飛ばして叩き起こされた大淀さんは、ちょっとだけ憮然とした表情になった。

 

 しかし、マイペースな二人に何を言っても無意味だろう。眼鏡を掛け直した彼女は、端末の発信元に目を凝らした。

「一応、発信は軍令部ね。でも文面は、かなりふざけている感じね」

 

さすがの大淀さんも、この不可思議な状況には困惑するばかりだった。

 

 その時、別の端末に新たな反応があった。

「ん? ……美保鎮守府上空を輸送機が通過するニャ」

 

 それが単なる輸送機だったら、特に問題はなかっただろう。だがこれは新たな物語の単なる序章に過ぎなかった。

 

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新「艦娘」グラフティ:序章<着任>

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 多摩は再び端末のアラートの点滅を認めた。

「また?」

 

 今度は球磨が駆け寄った。

「えっと……今から降りる。受け入れ態勢は不要、哨兵への発砲禁止指示は、こちらから強制的に出すから悪しからず」

 

「クマ?」

坦々と文面を読む球磨には事態が良く飲み込めていないらしい。

 

 だが大淀さんは少し青ざめた。

「何? 相手は、こちらのセキュリティに強制介入できるって言うの?」

『はあ?』

 

マイペースな二人の艦娘は相手に出来ない。大淀さんはチラッと時計を見て呟いた。

「午前4時前か……副司令なら大丈夫かしら?」

 

 緊急回線を開いて誰かを呼び出す大淀さん。直ぐに出たのは……

「あ、寛代ちゃん? 副司令はいらっしゃる? ……そう、では今から緊急電文を転送するから、それを司令ご夫妻にお見せして判断を仰いで。そう……電文の緊急度がこちらでは判断出来ないの」

 

 通信を終わると安堵した表情になる大淀さん。

「はあ」

 

「何か分かったクマ?」

さすがに何かの緊急事態だと悟った球磨も不安そうな顔を見せる。

 

大淀さんは少しだけ微笑んで首を振った。

「ううん……これだけの情報じゃ、正直何も分からないわ。でも何となく意図的に、こういう情報の流し方をしているような感じね」

 

すると多摩も言う。

「ますます分からないニャ」

 

「はい!」

その時、大淀さん本人にダイレクトに通信が入ったようだ。彼女が反応する。

 

「あ、司令ですか? お早うございます……はい。はい、そうです……では? ええ、でも……。そうですね、分かりました。ではお待ちしております」

通信を終わった彼女は、今度は不安そうな表情になっている。

 

「どうしたニャ?」

多摩が聞くと大淀さんは苦笑して言った。

 

「これから、ココで起きることは、全て司令も、軍令部も了承済みなので私たちはただ、事実を受け入れるように……との指示でです」

 

『?』

上からの指示なら、素直に従うはずの大淀さんが、今日は変だなと当直の二人は思った。だが彼女がそういうなら、それ以外の選択肢はない。

 

 彼女は言う。

「哨戒中の艦娘にも伝えて」

 

「はい」

直ぐに鎮守府内外を哨戒中の艦娘に通達が出された。

 

 ほどなくして遠くから、低空を飛行する大艇か何かのエンジン音が響く。それは徐々にエンジンの回転数を上げている。

 

「上昇?」

大淀さんが呟く。

 

ハッとしたように彼女は球磨に指示を出す。

「球磨さん、念のために改めて哨戒部隊に指示、今から下りてくる艦娘は決して攻撃しないように言って」

「分かったクマ」

 

多摩が呟く。

「空から艦娘?」

 

 何となく、その指示で鎮守府内の当直や歩哨たちは、誰もが今、駆逐艦か誰かが空から降りてくるのだと知った。

 

 大艇らしきエンジン音がかなり近づき、やがてドップラー効果で遠ざかる。思わずナイトスコープを取ると窓を開けて空を見る大淀さん。

「……見えない」

 

多摩が言う。

「何か降りてくるニャ」

 

 しばらく夜空を見上げていた大淀さんは多摩の言葉で直ぐに顔をしかめると指令室の端末からコードを引っ張り出して自分の身体に繋いだ。

「索敵モード、電探に同調……居た!」

 

今度は直ぐに目標を発見したが。

「まさか?」

 

その言葉に球磨も言う。

「誰が来たクマ?」

 

「武蔵さん?」

絶句する大淀さん。

 

『!』

同様に言葉を失う当直の二人。さすがに空から帝国海軍の誇る超弩級戦艦が降りてくるとなれば、もはや普通でないことは分かる。

 

 直ぐに大淀さんは指示を出す。

「場内を哨戒している部隊とあなたたち、どちらでも良いから、直ぐにサーチライトを広場に向けて……あと、M-ATVにもライトは付いていたわね」

 

「クマ!」

「にゃあ!」

ここは動物園かと思わせるような返事をしつつ当直の二人は連絡を取ったり、退出して車庫へ向かうのだった。

 

慌てて飛び出す二人を見送りながら大淀さんは微笑んだ。

「さて……私も着替えますか」

 

 その笑顔は勿体ないくらいに可愛らしかった。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府」の略称です。
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