日向は大丈夫だろうか
クマ
同一人物クマ?
タマ
うん、間違いないニャ。
大淀
何か、とんでもないことが起きているのかしら……
「ここはもう他所(よそ)の鎮守府じゃないのだから」
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新「艦娘」グラフティ(第12部)
:第16話<青葉、泣き笑い>
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執務室は妙な緊張感に包まれていた。
そもそも、いつもは能天気な副大臣からしてシリアスな表情な上に久しぶりに顔を合わせる日向は、まるで別人かと思わせるくらいにオドオドして陰鬱な雰囲気だ。
武蔵は腕を組んでいる。もっとも、それは威圧しているわけではなく、彼女の標準的なポーズである。ただ、それがまた余計に特異な感じを引き立てる。
そんな空気を感じたのだろう。秘書艦は内線で、お茶を頼んだ後に、口を開いた。
「日向さん、正式に転属になっているし、貴女にとっても、ここはもう他所(よそ)の鎮守府じゃないのだから、もっとリラックスして良いのよ」
「……はい」
やはりオドオドしている日向。
するとドアをノックする音がした。
「はい」
「失礼します」
入ってきたのは青葉。その瞳は、何かを掴んだようにキラキラしていた。
お茶を配る彼女に司令は問い掛けた。
「その目は何か情報を得たって感じだな」
「えへへ」
いつもの笑い声で彼女はニタニタしている。
司令が秘書艦に何かを聞こうとすると彼女は気を利かせて言った。
「では青葉さんも、同席して頂きましょうか」
「はい!」
……と言いながら既に彼女は、ちゃっかりと自分のお茶も準備していた。
美保司令は改めて室内を見た。
今、執務室に居る中で最も中央の情報に近いのは副大臣だ。
同時に彼は政治力も持ち合わせているから、かなりダイナミックな情報収集が可能だ。
次に元帥閣下の孫であり中央参謀たちを姉妹に持つ秘書艦の祥高。
艦娘でありながら、なぜ孫なのか? それは美保鎮守府に有るような養子縁組なのか、それとも違うのか?
その点は美保司令自身も追及したことが無かった。考えてみれば謎の多い彼女だ。
ただ美保司令も、あまり彼女の素性は知らずとも美保鎮守府の組織運営には困ることも無かったため敢えて触れなかった。
司令でありながら余りにも能天気といえばそれまでなのだが。
そして当事者である艦娘、武蔵と日向である。
特に今回のスキル移動に関しては、当事者である彼女たちに関しては、あまりにも不明な点が多過ぎた。
また、ほぼ同時期にスキル移動したはずなのに、現れた反応の違い……武蔵はいつもと変わらないのに、逆に日向の性格の豹変振りは何故だろうか?
司令は、このときばかりは青葉が、お茶を配り終えるのを、まどろっこしく感じた。
(早く調査結果を聞きたいな……)
彼だけではないく室内の全員が同じ想いだっただろう。
そんな中でも日向だけは、いつもと違ってオドオドした雰囲気のままだった。
それでも時々司令に向ける彼女の眼差しの奥には、かつて美保鎮守府で活躍していた頃の雰囲気を、ふと感じさせるのだった。
(それだけが最後の希望か)
そう思わざるを得ない司令だった。
「えっと……」
ようやく青葉がメモを開く。思わず全員が身を乗り出す。
「今回は青葉が持っている全てのコネクションを総動員して……いやはや大変でしたよ」
そう言いながら彼女は、お茶をすすって、ため息をついた。
「おい、もったいぶるなよ」
副大臣が痺れを切らしたように言う。
「いえ、そのぉ」
すると彼女は、ちょっと困惑したような表情を見せる。
「この件に関して司令にご相談が」
「何だ?」
青葉は尚もモジモジしている。
「ああ、やっぱりやめようかな」
(なんだ……日向に引き続いて、こいつも変になったのか?)
司令が訝(いぶか)しんでいると武蔵が声を出した。
「親父、こいつは必死で調べるあまり今回は、内外ともに相当苦労したんだぞ」
「あ、そうか」
司令は自分の察しの悪さに恥ずかしそうに頭をかいた。
更に武蔵は続ける。
「艦娘は給料も安定していて、一部のバカ共を除けば、無駄遣いすることもない。むしろ青葉のように趣味と実益を兼ねて適切に消費する方が望ましいくらいだ。だが青葉は……」
「武蔵さん」
更に何かを言いかけた武蔵を青葉が止めようとした。
しかし武蔵は手の平を上げて軽く制した。
「いや言わせてくれ。今回は日向や私だけではない。艦娘という存在意義にも関わる内容だ。……もちろん青葉自身も、その事は承知の上で果敢に切り込んだのだろう」
彼女は眼鏡越しに鋭い眼差しを全体に向ける。
「そして有益な情報には資金……お金がかかるものだ。美保のような諜報部隊が自ら動くのであれば、その心配は無いのだがな」
思わず顔を見合わせた副大臣と美保司令。
「そうだな」
ここで武蔵は、お茶をすすった。
「今回の調査は命令でも何でもなく軍部としてはむしろ触れて欲しくない部分だ。そこを切り崩そうと思えば時間だけじゃない。他にもイロイロ必要になる……分かるな?」
『……』
一同、沈黙。
「軍規スレスレという危険度に加えて青葉自身、誰にも相談出来ない孤独と葛藤。それでいながら自身も記者だから個人的に知りたくて仕方がない部分もあったことだろう?」
「えっと……まぁ」
武蔵の言葉に青葉は恥ずかしそうに頷いてうつむいた。
「そういう個人的な感情で動けば、なおさら手弁当でやらざるを得ない」
それまで鋭かった武蔵の瞳がふっと、穏やかになる。
ここまで話すと青葉は下を向いたままボロボロと涙を流し始めた。
これには司令も副大臣も驚いた。
(……そうか、青葉にも相当な重圧と苦労だったか)
その場に居る艦娘たちはむしろ青葉の苦労が分かっているように頷いていた。
秘書艦が口を開く。
「貴女の苦労は察して余りあるものがありますね」
司令も続く。
「そうだな……済まなかった青葉」
彼が詫びると青葉は首を左右に振った。
「いえ……武蔵さんも仰ったように、これは青葉が自主的に調べたことですから……そりゃ正直、資金も援助してもらえると嬉しいのは確かですけど……ああ、言っちゃった」
泣き笑いの表情の青葉から率直な言葉が出て一同は笑った
その時司令は日向も笑顔になったのを見て安堵した。
(まだ笑う余裕は残っているのだな)
その弱々しいまでの彼女の雰囲気は艦娘というよりも普通の少女そのものだった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府」の略称です。