死神博士か。
クマ
ホントに人間かクマ?
タマ
うん、間違いないニャ。
大淀
ちょっと、不気味なあだ名ですね。
「ブルネイのアイツだろ? ……オレも小耳に挟んだよ」
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新「艦娘」グラフティ(第12部)
:第17話<死神博士>
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青葉が言う。
「今回はホントに大変でしたけど……武蔵さんが言ったとおり、これは艦娘の存在意義そのものを問われる重要な内容でしたよ」
司令は副大臣を見て言った。
「スキル移動については海軍省でも分からないのですか?」
「ああ、あくまでも実験中という位置づけだからな」
彼は肩をすくめる。
「これは例の『死神博士』が絡んでいるのだろう?」
意外な事を武蔵が言う。
「死神……」
日向がボソッと反応する。
その雰囲気が山城に似ているので司令は苦笑した。
(まあ日向も基本設計は扶桑形だけどな……)
青葉が言う。
「クーデーター騒ぎの件は中央に居られた副大臣の方が詳しいでしょうけど」
秘書艦が口を開く。
「姉も一時、陸軍に拘束されて大変だったようです」
「陸軍?」
司令が反応すると副大臣が続けた。
「ああ。機敏なオレは間一髪、海軍省から逃げ出して難を逃れた……というか娘が機転を利かせてね。助かったんだが」
……ニタニタする彼。
司令は直ぐに、それが祥高の妹の石見であることを察した。
武蔵が言う。
「大体、軍の反乱なんて歴史的にも上手く行った例(ためし)が無い。今回も連中は軒並み逮捕され首謀者は誰かに狙撃されたらしい」
その説明に司令は「あっ」と思った。ブルネイの金城提督を思い出したのだ。ハッキリとは聞いていないが今回の騒ぎでは確か裏で彼が動いたという噂は聞いた。
それを察したのか副大臣もニヤリとした。
「ブルネイのアイツだろ? ……オレも小耳に挟んだよ。だいたい今回はブルネイ王室が突然、政府に揺さぶりをかけてきたのが効いたからな」
「は?」
事情が分かっていない司令だった。
青葉が補足する。
「我が国とブルネイの関係は良好なのはご存知ですよね?」
「ああ」
「特に原油の輸送では艦娘の護衛が重要で、それを一手に引受けて居るのが金城提督の鎮守府で」
司令は頷く。
「それは知っているよ。だから彼には色んな噂も付きまとう……私には、とても真似できないな」
司令が肩をすくめたのを見ながら武蔵が言う。
「あの提督はブルネイ王室とも関係が深いというが、まぁそういうことだな」
青葉も頷く。
「はい。実際、彼の存在は今回だけでなく、ブルネイを中心とした地域の安定に重要な役割を果たしているとも言われてます」
これには一同、頷いた。
司令は、ふと思った。
(金城提督についてはこの場の全員が面識があるわけだ)
青葉は口元を押さえながら言う。
「実際、今回もブルネイの大淀さんを介して、いろいろ情報収集の便宜も図ってもらいましたから」
「へえ……あの大淀さんも元気そうだったか?」
司令が聞くと青葉は微笑んだ。
「はい。いつもの杓子定規な……あ、これはウチも同じですね」
青葉の言葉に副大臣も笑う。
「ブルネイもアレだけの規模になると集まる人や情報、カネも膨大だ。彼が悪代官にならないことを祈るばかりだ」
副大臣は冗談とも本気とも分からないことを言う。
「ブルネイ……」
ふと日向が呟く。場の空気が少し変わった。
司令は思った。
(過去の話題に触れると彼女の感情が動くのだろうか?)
過去の記憶……それは彼に、あの舞鶴沖から始まる大井との出来事を思い起こさせた。
「話を戻しますと……」
やや間を置いてから青葉が言う。
「艦娘のスキル移動技術そのものは理論としては昔からあったようです。でもそれを実用レベルに引き上げたのが、あの『死神博士』こと舞鶴にいた軍医ということになります」
話が一気に核心に来た。
ただ司令は、その軍医のあだ名は知らなかったので確認してみた。
「彼は『死神博士』って呼ばれているのか?」
「はい」
青葉は頷く。
「仕事以外は無頓着な雰囲気と、その姿から、いつの間にかそんなあだ名が付きました。もちろん彼が独自に進めていた研究にも由来するでしょうけど」
司令は更に聞いた。
「その軍医はアレだよな。私と同期で舞鶴にも居た作戦参謀の……」
彼女は微笑む。
「はい……確か舞鶴の参謀は以前に視察で、ここにも来られましたよね。彼と軍医は兄弟で性格から何から正反対で、それも軍では有名らしいです」
「へえ」
知らないのは自分だけだったかと司令は思った。
ただその時、日向が少し身体を震わせているのに彼は気づいた。
「どうした? 日向」
「死神……」
彼の呼びかけには反応せず彼女は別のことに意識が行っているようだ。
秘書艦も聞く。
「調子が悪いのですか? 日向さん……大変なら席を外してもらっても構いませんよ」
その言葉にハッとして反応する彼女。
「いえ……大丈夫です」
(どう見ても異常なのだが)
と司令は思った。
ただ恐らく彼女自身もスキル移動については知りたいのだろう。
武蔵が口を開く。
「親父も気付いているか? 同じスキル移動をしたのに私と日向でなぜ、こうも反応が違うのか」
「ああ」
こいつも、いきなり核心を突いてくるなと彼は苦笑した。単刀直入なのは彼女らしい。
そのときだった。
「パパ……」
「はい?」
他の者たちは、その呼びかけには違和感を覚えただろう。普段の日向の性格からは想像できない単語だ。
だが司令は覚えていた。これも日向なのだ。自分の宿舎でのことを思い出しながら彼は応えた。
「どうした?」
「……パパ」
彼女は再度、そう言うと、さめざめと涙を流し始めた。
それを見た彼は、不安ではなく安堵した。
(日向自身も今回、イロイロ葛藤したのだろう。もし出来ることなら今、この場で全て吐き出したら良い)
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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