胸が痛いな。
クマ
病気か?クマ。
タマ
違うニャ、心だヨ。
大淀
艦娘もイロイロありますから。
「日向の気持ちはね、よく分かるヨ……」
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新「艦娘」グラフティ(第12部)
:第20話<テスト艦娘>改1.2
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思い出したように司令は聞いた。
「もともとあった日向のスキルは誰に渡したんだ?」
「……」
だが彼女は無表情のまま黙っていた。
「今、無理に答えなくても良いわ。後で個別に確認しましょう」
直ぐに秘書艦の祥高が気を利かせる。
「はい」
日向は少し明るい表情になって言った。
そのやり取りを見ていた司令は、彼女にはまだ心の傷があるのだなと理解した。
「そっか、そうなんだ……」
青葉が突然、妙に納得したようなことを言う。
副大臣が彼女を見る。
「どうした?」
「いえ……」
パラパラとメモを開きながら彼女は説明した。
「青葉が横須賀提督の周辺を調べていくと彼の言動には、ちょっと矛盾というか変だなって思うことがチョコチョコあったんですが……今のやりとりで何となく分かりました」
「?」
彼女の説明に首を傾げた美保司令。
だが武蔵も腕を組んで頷いていた。
「横須賀の提督は意外に人格者だからな。今回の件では私も彼を振り回すことになってしまって……結果的には、かなり迷惑をかけたと反省しているのだ」
思わず顔を見合わせて苦笑する司令と副大臣。そんな気遣いの言葉が超弩級戦艦である彼女の口から出ることが意外だったから。
そんな二人に気付いた武蔵が反論する。
「何だ二人とも……見くびって貰っちゃ困るな。そもそも戦艦というのは戦闘能力だけでその名を掲げているわけではないのだぞ」
「確かにそうだ……艦娘を甘く見てはいけない」
「同感です」
二人の男性は頷き合った。確かに彼女の言葉には説得力があった。
資料をまとめながら祥高が言う。
「日向さんと武蔵さんは今日の午後、休暇扱いとします。後はゆっくり休んで下さい」
『ハッ』
秘書艦の言葉に敬礼をした二人。
『武蔵と日向、退室します』
退室しながら武蔵は軽く日向の腰に手を添えて気遣っていた。
執務室には司令夫妻と副大臣、それに青葉が残された。
廊下で武蔵は言った。
「大丈夫か?」
「ありがとう」
頷く日向。
「体は何とも無いかと思っていたけど後からジワジワ来るね」
ポンポンと自分の体の各部を叩く彼女。
その言葉に軽く頷く武蔵。
「そうだな。スキル移動に関しては我々も軍部も、下手したらあの医師も何も分からない。最後は自分を信じるしかないだろうな……では私は失礼する」
軽く手を上げて立ち去る武蔵野の後姿を見つめながら日向は呟いた。
「確信か……」
「日向、ダイジョウブ?」
急に声がした。
その方向を振り向くと階段のところに金剛が軽く腕を組んで立っていた。
「うん、有り難う」
そう応えながらも日向は少し意外だった。金剛といえば豪放かつ大雑把な性格だ。意気消沈気味の自分の目の前に、わざわざ現れること自体が想定外だったから。
だが日向は、さっきの武蔵の言葉を思い出す。
『戦艦というのは戦闘能力だけでその名を掲げているわけではないのだぞ』
金剛も戦艦であり、しかも長女だ。一方の自分は……途中で改装されたとは言え、やはり戦艦には変わりない。
ただ疑問に感じたのは、なぜ金剛が自分を待ち構えていたのか? という点だ。
その疑問に答えるように金剛が口を開いた。
「日向の気持ちはね、よく分かるヨ……」
そう言いながら彼女はさりげなく周りを見回した。金剛にしては珍しく慎重だなと日向は思った。
だが次の瞬間、彼女は信じられない言葉を耳にする。
「ワタシもね……英国でスキル移動のテストサンプルだったんだよ」
「え?」
驚愕する日向。
「ウフフ」
屈託の無い笑顔とは裏腹に寂しそうな表情を見せる金剛。
「ワタシ、日本からの発注だったでしょ? だから逆に英国海軍としてもテストしやすかったと思うネ」
「そう……」
それ以上は何も答えられない日向。だが金剛の普段のチグハグな言動の理由が何となく分かったような気がした。
そんな日向の思いを悟ったのか金剛は妙に安堵した表情を浮かべた。
そういえば彼女はいつも大げさな言動で自分を誤魔化しているのではないだろうか? ふと、そんなことも感じた日向だった。自分はとてもそういう性格ではないが金剛のようなタイプならそれも有り得るのだろう。
一方、執務室では青葉が司令から声をかけられていた。
「君も今回はイロイロ取材して大変だったろう。まずはご苦労さん」
司令の言葉に萎縮する青葉。
「いえ……というか、むしろ青葉が勝手に動いた部分も結構、あったんじゃないかと恐縮至極です」
すると副大臣が自分の頭の後ろに手を廻しながら言う。
「いや、ブン屋(記者)は、そのくらいの勢いがあったほうが良いよね」
そんな男性二人を見て微笑み軽く頷く祥高。
「司令も仰ってましたが青葉さんも取材では取材費とかも大変でしょう。必要経費は今後は、こちらでも見ますから……もちろん内容は吟味しますが貴女の判断で必要なものは請求書を大淀さんや霞ちゃんに廻して下さい」
司令も言う。
「君の活動は取材という観点と同時に美保鎮守府の諜報機関としての内容も十分にある。そこは上手にやってくれることを信じているよ」
少し顔を紅潮させた青葉は小声で「はい」と頷いた。
「……諜報機関か」
副大臣がノンビリした口調で言う。
「まだ甘いけどな」
その言葉に苦笑する司令。
すると副大臣は身を乗り出す。
「これはオレの案だが……どうだろう、あの艦娘と一緒に居たドイツの諜報部員が居ただろう? 彼に協力を仰いだらどうか?」
副大臣の言葉に、顔を見合わせる司令と秘書艦。
彼は続ける。
「日独同盟は健在だ。今はアメリカも協力的ではあるが、ブルネイでお前も感じたと思う。あのドイツ人のプロとしての仕事っぷりを」
「……そうですね、彼は見事でした」
頷く司令を見て彼は立ち上がると窓辺に立つ。そこには大山が見えた。
「美保は地勢的にも日本海を挟んで舞鶴に継ぐ要衝だ。特に美保は海軍の拠点としての認識は、恐らくまだロシアにもシナにも薄い。それが逆に諜報部隊としては利点となる」
すると青葉。
「でも大臣、美保はシナに何度も攻撃されて……」
そこでメモ帳をめくりながら、ちょっと困惑したような表情になる彼女。
「どうかしましたか?」
祥高が聞くと、彼女はちょっと声を潜めるようにして言う。
「艦娘の技術、特に量産化については各国が注目しています。特にその軍事的な力に気付いたシナやロシア、北方共和国が動き出しているんです」
「……だろうな」
これは副大臣。
青葉は続ける。
「米国も喉から手が出るほど艦娘の技術は欲しいはずですが、恐らく元帥閣下がオスプレイなどの支援と交換条件で技術提供の話をつけたと思われます」
「その噂はオレも聞いたことがある」
窓辺に居た副大臣が祥高をチラ見しながら言う。秘書艦は少し苦笑していたが……その反応は、あながち見当違いでもないことを暗示していた。
それを受けるように副大臣は続ける。
「そのシナが何度も山陰に来ているのは、連中が舞鶴と美保をを取り違えているのか或いは、ここが艦娘を中心とする重要な拠点となりつつあるのを察知しているのか……省のお偉方は前者だというがオレは後者だと思うナ」
美保司令も腕を組んだ。
「それはつまり、シナの諜報能力も高いということですか?」
副大臣は立ったまま苦笑した。
「残念ながら、そういうことだ。だいたいシナやロシアは諜報能力には昔から長けている国家だ。我が国は艦娘が出現してからは、ちょっと軍事的に彼女たちに頼り過ぎてしまって、そこが弱くなったかも知れない」
「はあ……」
副大臣は司令に近寄って言った。
「おいおい、美保の司令がその反応では困るなぁ」
そう言いつつ彼は再びソファに座る。
「実は、一連の話はもっと深刻なんだ……スキル移動と艦娘の量産化から何か見えてこないか?」
『……』
全員がお互いに顔を見合わせる。無言の司令を見て、ちょっとため息をつく副大臣。ただ青葉だけは何かを察したようだった。
彼は今度は青葉を見て言う。
「もし、お前が海軍省のトップだったら、スキル移動と艦娘の量産化で何をしたいと思う?」
副大臣の言葉に彼女は答える。
「艦娘の口から言うのも何ですけど……青葉だったら、艦娘を量産化して無敵艦隊を作ります!」
「……」
ハッとしたように、しかし直ぐに表情を曇らせた美保司令。
それを見た副大臣は軽く頷いて真面目な顔で言う。
「そこだよ。軍部はスキル移動を使って艦娘を純粋に攻撃ロボットとして兵器量産の足掛かりにしようとしてる。兵士育成の合理化、つまりはシステム化だ」
司令は聞く。
「スキル数値そのものは量産化出来ないのですか?」
副大臣はため息混じりに言う。
「さすがにそこまでは、まだ無理らしい……だがな、スキル移動によって日向にも見られた現象、つまり記憶障害や鬱に近い症状も出るようだ」
「……」
司令は黙った。
青葉が付け加える。
「はい。量産化した艦娘でも精神不安定は出るのですが、特に初期型の艦娘(オリジナル)のスキル移動では激しい記憶障害が認められています」
司令は呻(うめ)くように反応する。
「ひょっとして……大井か?」
青葉は頷く。
「はい……大井さんは舞鶴でスキル移動の実験を受けたという噂で……それで性格が大きく変わった上に記憶が失われたんじゃないかと」
「そうなのか?」
司令は頭を抱えた。
ここで祥高が口を開いた。
「スキル移動は軍にとっては夢のような技術ですが、そのために艦娘の個性を著しく歪めること、つまり艦娘の個性や人格を押し潰す……端的に言うと『殺す』ことになります」
絶句する司令。
「危うく……日向は死に掛けたわけか?」
再び青葉。
「そのことに気付いた舞鶴の作戦参謀は大井さんやお兄さんを止めようとしたんです」
司令は青葉を見た。
「でも……止められなかったのか」
「はい」
美保司令の顔が苦痛に歪む。
「スキル移動……知らなかった」
少し考えて彼は呟くように言った。
「まさか私は、そんな状態の彼女を出撃させたのか?」
青葉が言う。
「大井さんの気持ちも分かります。私だって、そんな技術があったら飛びつきたい……ただ調べた結果はスキル移動の反作用の多さです。それに当時はまだ初期段階ですから、今以上に不安定だったと思われます」
「……」
司令は黙った。
副大臣が口を開く。
「お前も知っているだろうが海軍省内にも派閥があってね。スキル移動を推進する派と、そうでない派……元帥や舞鶴の作戦参謀は反対派だが、この前、反乱を起こした一派は推進派だ」
「……」
副大臣は続ける。
「青葉も言った通りスキル移動は、まだ未完成だ。だが一部のアホ連中がこれに浮かれてね。この技術で深海棲艦や、さらにシナやロシアまでも巻き返した上で世界制覇を目論んでいるようだ」
「それで反乱を?」
これは祥高。
「ああ……それに気付いた元帥閣下が阻止を図ったんだ。米軍と手を結ぶのもアホ連中の暴走を止めたいというのもあるようだが」
青葉はメモ帳を見てボソッと付け加える。
「舞鶴では大井さんと仲が良かった北上さんが一番心配していて……作戦参謀は以前美保に視察に来たとき、そのことも北上さんに、お詫びしたかったようです」
「……」
それを聞いた美保司令は、すべての糸がつながっていく感覚を覚えた。同時に、これだけで話が終わるはずが無いと思うのだった。
そのとき、司令と秘書艦の持っている端末がアラート信号を発した。
同時に直ぐ内線が鳴った。受話器を取った秘書艦。
「何事ですか?」
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府」の略称です。