目まぐるしいクマ。
一体……軍令部は、いや北東アジアはどうなっている?
仲間が増えるのは良いことニャ。
「特に北方共和国はミサイルの開発に力を入れている」
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新「艦娘」グラフティ(第12部)
:第6話<武蔵とミサイル>
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秘書艦の祥高がやってきた。
「今日は目まぐるしいですね」
「しかも全員空路って、どういうことだろうな」
美保司令は半分、呆れ顔で言った。
だが彼は無線に耳を傾けながら驚く。
「この周波数は……米軍機か?」
そこで武蔵は眼鏡の中央を軽く指で持ち上げながら司令に話しかけた。
「実はな司令、今日実施した私の降下と次に来る輸送機からの降下は意図的に違う機体で行う」
「……?」
訝(いぶか)しがる司令に武蔵は続ける。
「これは機密に近い事項だが司令には話しても良いだろう」
「機密?」
「ああ、米軍の指導で来月には木更津にわが国初のオスプレイ専用部隊が配備されることになった。順次、舞鶴、岩国、佐世保と配備されていく」
その情報に司令も驚いた。
「それは聞いてないな」
だが秘書艦は、さほど驚いていない。当然といった雰囲気だった。
納得していない司令を見て武蔵は改めて申し訳なさそうな表情を見せた。
「済まないな司令。祥高殿は知っていたようだが……今日の着任は降下テストも兼ねて緊急で行われた」
「緊急?」
「……ああ、先般の日本海でのシナの動きもあるが今、深海棲艦とシナが手を組んでいるのは明白だ。彼らは特殊な潜水艇を開発して戦車などの上陸部隊を電撃的に侵攻させる準備を着々と進めている」
司令は驚いた。
「特殊な潜水艇……噂は聞いているが、まさか、もう実用化されていたのか?」
武蔵は腕を組んで子供のような素朴な表情を見せる。
「相変わらず鈍いな親父は……」
司令はいつもの武蔵らしからぬ雰囲気に思わず苦笑した。なるほど本音が出るときは親父か。
彼女は少し表情を緩めて続ける。
「そもそも親父が暗殺されかけた、あの時期には既にシナでは試作艇が投入されていた。そしてブルネイの提督が来る頃には実戦投入されていたんだ」
そこに秘書艦が割って入る。
「レールガンがなければ、あのときの上陸作戦は食い止められなかった可能性は高いわね」
武蔵は頷く。
「そう、だからこそ原潜『曙』が日本海、特に山陰には不可欠なのだ。これは元帥の肝入りだろう?」
司令夫妻は頷く。ただ司令は正直、そこまで考えていなかった。
「やはり元帥か……」
武蔵は後ろで聞いている大淀と霞をチラッと見ながら続ける。
「シナは北方共和国とも関係が深い」
「北方共和国……まさか?」
司令の表情が固まった。
武蔵は腕を組んだ。
「その『まさか』だ。諜報に戦闘能力と、全てにおいてシナを上回るとされている。幸いまだ彼らが深海側と手を組んだという情報はないが……」
秘書艦も頷く。
「時間の問題でしょう。状況から考えるとシナ経由で既に何らかのパイプは有ると考えるべきね」
武蔵は真剣な眼差しになる。
「特に北方共和国はミサイルの開発に力を入れている。あれは艦娘にとっても都合が悪いんだ」
それを聞いた司令はブルネイの戦いを思い出した。
「ブルネイの……」
言い掛けた司令を見て武蔵は頷く。
「そう、あの時はタンカーからシナのミサイル攻撃だったな。そのシナは北方共和国へミサイル技術を提供しているらしい。その上で、かの国は独自に技術を向上させている」
司令は内心驚いた。武蔵は、なぜこんな情報を知っているのだ?
彼の疑問には構わず武蔵は続ける。
「だから、もはや我が国だけでは北アジアにおける戦いは、かなり不利に傾いているのだ」
司令はハッとしたように頷く。
「なるほど。レールガンにオスプレイ、それに原潜か」
武蔵は相槌を打つ。
「そう、美保でのオスプレイ運用実験は、かなり良いデータが取れたと聞く。その基礎があっての導入計画だ。親父は誇っても良い……いや祥高殿か早苗たちか」
司令は苦笑した。秘書艦も言う。
「美保は弓ヶ浜半島に砂浜。そして山陰海岸は入り組んだ地形……この鎮守府でのオスプレイ運用での艦娘の移動、回収訓練は島嶼防衛を前提とした敵に対する訓練に、とても有効だわ」
「なるほど……」
いや司令は実は半分も分かっていない。秘書艦には、いつもテキパキと話を進められていて……結局、頭が上がらない。
「島嶼防衛か……学生時代はまだ、あまり重要視されていなかったから単位もいい加減に取ったんだよなあ」
ついつい、苦しい言いわけをしてしまう。
すると珍しく秘書艦が司令に言った。
「時代は刻々と変わっています。指揮官がそれでは困りますね」
この祥高のキツイひと言には、その場に居た他の艦娘たちは驚いた。だが司令は、ただ「ゴメン」と言うだけ。その瞬間、上官と部下というよりは普通の夫婦だった。
武蔵は再び穏やかな眼差しになる。
「親父……我が国を取り巻く状況は日に日に悪化していると考えるべきだ。美保鎮守府への脅威も増している。だから私が美保に来た理由は、この山陰の防衛を祥高殿だけに任せて置けない、その想いからだ。それに早苗と伊吹……艦娘の二世も支えていきたいからな」
「そうか」
押し掛けというよりは彼女の心からの国と艦娘を憂う想いからの行動だったか。彼女のその熱い気持ちに司令は胸が震える想いだった。
霞が呟く。
「オンナたちの尻に敷かれているオトコ」
「こら……」
大淀が慌てて後ろから小突く。
もちろん人間の司令よりも艦娘である秘書艦のほうが建造年数から見ても遥かに年上である。そうは言っても海軍の司令たる者が秘書艦に言い負かされている構図は珍しい。
「これは美保名物……」
「シッ!」
度重なる霞の言葉に、再び慌てる大淀。
ただ大淀は思った。さっきの武蔵のひと言もそうだったが親子、夫婦という関係があると軍隊の階級を飛び越えて直言出来るのだな……と。
彼女の気持ちを察したのか霞が言う。
「どうかしたの?」
「ううん」
大淀は微笑む。
「やっぱり武蔵さんは凄いなって」
「……?」
不思議そうな表情の霞に彼女は応える。
「彼女の大きさは外見や装備だけじゃない。その心情の幅も広いのよ」
大淀の言葉に霞も頷いた。
「でも、それを束ねる司令夫妻あっての美保鎮守府だね」
この言葉に大淀も頷くのだった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府」の略称です。