青く澄んだ大空に綿飴のような雲が漂っている。境内では朱鳥が今まで押し入れにしまっていた布団を物干し竿に掛けて干している。
俺と霊夢は部屋の片付けをしていた。
「お父さん、これはどうすればいい?」
「あ~~そこに置いといて、後で霖之助に売るから」
2人で掃除しながら、これから必要な物とそうでない物と分別していく。
「霊夢、何か欲しいモノがあったらあげるぜ」
「別に欲しいものなんてないわ」
「そうか、まあそれならいいk「あった!!」……何だ?」
霊夢の方を見ると手の中には小さなお賽銭箱があった。霊夢の目はキラキラ光っている。
「おとーさん、これ頂戴」
ああ、小銭入れね。
「その前に中身あんのか?」
「うん!けっこー重いよっ!!」
そう言って賽銭箱を軽く振ると箱の中からジャラジャラと音が鳴った。
「そうか、ならそれ全部お前にやるからな、大切に使えよ」
「うん!!ありがと!」
「ああ」
後ろではしゃいでいる霊夢に内心苦笑いしながら、部屋の掃除は一通り終わったことを確認する。
「さて、こんなもんか。案外物はなかったかな」
「何か面白いものが出てくると思っていたけれど、そんな事はなかったね」
「面白いものってなんだよ、霊夢」
「えっと、父さんから母さんへの恋文とか」
「そんな恋愛じゃあなかったからな、俺らは。毎回毎回ぶつかり合っていがみ合って戦って、一方的に俺が叩きのめしていただけだぜ」
「じゃあ、何で2人は結婚したの?」
「『喧嘩するほど仲がいい』って言うだろ」
少し照れていう俺に霊夢は笑った。
「さてと、いい天気だな、人里に行って挨拶回りでもするか」
俺は腕を伸ばしてあくびを一つしてそう呟いた。
「そう、それなら私もついて行くわ」
箒を手にした朱鳥がそう言ってきた。
「別に構わないが、お前やることは無いのか?」
「大半は終わらせたし、霊夢に頼んであるし一緒に行きましょ」
そう言って腕にひっついて来る朱鳥。なんかこうするの久しぶりだな、と少し感動してしまった。
「そうか、じゃあ案内頼むぜ」
「ええ、じゃあ飛んでいきましょ」
「ああ、そうしようか…………あ?」
「え?どうしたの?」
ここでふと気がついた事、俺は空を飛ぶことが出来るのか?10年間霊力とか波動が起こせない環境にいて空を飛んでない。
まぁ、感でやればいいか。
「いや、なんでもない。さぁ、行こう」
朱鳥から離れてズボンのポケットからグローブを取り出す。俺のマジックアイテム『波動グローブ』だ。
これは波動を何倍も引き上げ、コントロールすることができる能力を持つ長年の相棒だ。
両手に力を加える。すると両手が熱くなり波動が溢れてくる。赤く炎のような波動、別名:太陽の波動。これを球体にしたのを握り潰し、放つイメージをする。そうすると体は一気に空へと舞い上がる。
「っ!……ハハッ、ヒューー!」
外の世界では出来なかった事ができるようになってて心が弾んでいる。俺はしばらく空を駆け巡っていた。
「ったく、何やっているのかしらうちの旦那は。はしゃいで力が出ないってバカじゃないの?」
「……すまん」
頭を垂れて謝ってくる夫を叱っているのは私、妻の朱鳥です。理由は人里で挨拶回りをしている最中に夫が軽い貧血で倒れたため。原因は急に飛び回って体が付いていずに限界を超えたため、今は寺子屋の前で説教中です。
「大体、あんたはね――――……」
いつもは「こんなことはもうするな」って釘を刺す程度なのだけれども、昨日は私と一緒に寝なかった罰としてちょっと厳し目に説教中です。ええ、寂しかったですよ。
「悪かった、許してくれ」
土下座までやられたら許すしかないでしょうに。反省の色も出ているし、今回はこれで終いにしましょう。気が付いたら人が結構見ているし、慧音も微笑みながらこちらを見ている。ちと、ハズいわね。
「ならばよし。……本当に注意してよね、また、怪我されたら心臓いくつあっても足りはしないわ」
頭の中に浮かんできた光景は、血まみれになって紫のスキマから運ばれてくる綱吉。あの時は本当に怖かった。あんなことがもう一度起きたらと思うとゾッとする。
気が付いたら肩に手を置き、苦笑している夫がいた。
「ああ、いつも心配掛けてすまない。……これで借りができたな」
「いいえ、これも妻の仕事ですもの」
人がいるっていうのに恥ずかしいことを言ってる私、まぁ、久しぶりなのだからしょうがない。うん、だから周りはニヤニヤすんな。
慧音が困った様に聞いてきた。
「あのー、先代様?いいですか?」
「む、すまない。迷惑かけた」
「い、いえ、夫婦仲良くていいと思います」
「そ、そうか……で何だ?」
「皆さんが、綱吉さんが帰ってきたお祝いに宴会をしたいというのですが、どうでしょうか?」
「ふむ、どうする?やる?」
夫に聞く私。あの人は頷いて言った。
「ああ、いいぜ。場所は神社、1人酒とか料理とか持ってくること、後賽銭ね」
まあ、宴会参加費みたいなもんだな、と言いながらちゃっかり賽銭を要求するところは霊夢に似ているわね。
あれ?私に似ているって?……そうかしら?
「じゃあ、今日は宴会するからな、来れる人は来るように。無理に来なくてもいいぜ、妖怪に襲われたら危ないからな。ふんじゃ、行こうか朱鳥。俺たちも準備しなくてはならないからな」
「え、ああ、そうね。それでは先生失礼します」
「はい、それではまた会いましょう」
慧音がそう言ったということは、今晩来るのね。久々に騒がしい夜になりそうね。
お父さん達がデート(?)に行った頃、お客さんが来ていた。白黒の魔法使いで私の友、霧雨魔理沙だ。
あいつは片付けをしている私を見て意外そうな顔をした。
「おいおい、珍しいな。こんなとこでお前が昼間っから片付けをしているなんて」
「うるさいわね、あんたみたいにゴミ屋敷は勘弁よ」
「おっと、ゴミ屋敷とは失礼な。私から見たら宝の屋敷だぜ」
「片付けが出来ないだけでしょ」
「片付ける場所がないんだぜ」
「ハァ~、もういいわ。今日は忙しいの、用がないなら帰って」
「そりゃないぜ、しかも忙しいなんてこれまた珍しい、なんでなんだ?お袋さんと何かあったか?」
「いや違うわ、お父さんが帰ってきたよ」
「なんだ、親父さんが帰ってきただけか、そうか……って、ええ!?嘘ぉ!!」
「うるさいわね~、嘘ではないわ」
耳元で大声を出して叫ぶ魔理沙。お父さんがいることは知っているが私かお母さんから聞いた話しか無い。いつか会って話をしてみたいとは言ってたけれども、ここまで反応するとは。
「じ、じゃあ今お袋さんと出かけているのか?」
「そうね、人里に挨拶回りしに行ったからしばらくしたら帰ってくると思うわ」
「そうか、じゃあ今日はここにいるぜ」
「会って行くの?」
「勿論、なんせ魔法陣のノートをくれた人だからな」
「……お母さんが魔理沙にあげたやつね。あれは全部勘で書いたらしいわよ。魔法の知識ないらしいし」
「そうだってな、あれで、結構助かったりしているんだ。お礼を言わないとダメだぜ。後、『波動』だっけ?それについて色々とご教授願いたいぜ」
「そう、なら片付け手伝って」
「おう、任せろ!で、何をすればいいんだ?」
「そうねーー、じゃあこれをーーー」
お父さん達が帰って来たら、宴会になりそうだからそれの準備もしなくちゃ、魔理沙もいるし今日も楽しい夜になりそうだわ。
帰って来たら宴会の準備が霊夢と、霊夢の友達の手でできていた。
スゲェ、こいつら。
友達は霧雨魔理沙と言ってどうやら霧雨道具店の娘らしいが、あえてそこは聞かなかった。なんか聞かない方がいいかと思ったから。
最初は緊張してて、敬語になってたけど慣れてからは男の子っぽく「だぜ」口調になった。元気が良くて可愛い子だなと思った。
魔法使いに成り立てで、昔、俺が適当にそれっぽい魔法陣を書いたノートを見て独学で魔法の形に仕上げたと言う。いいセンスだ。
彼女曰く、「すごく大切に扱っている」らしい。俺も、波動は独学だったから一人でやることの難しさとか痛いほど判る。魔理沙とはいい酒が飲めそうだ。
日が暮れ、妖怪たちがそろそろ活動する時間に入ってきた。神社の道は霊夢が道の整備をサボってたらしく獣道になってたので急いで俺が道を切り開いて、宴会に参加する人たちの護衛をした。
慧音先生も来たので皆は安心して来れたと言うからホッとした。
怪我されたら本当に楽しい宴会が一瞬でダメになるからね。
ざっと数えて150人位。慧音先生や昔世話になった人たち、妖怪退治を生業にしている友人などが来てくれてた。どうやら、スキマ妖怪の紫は来てないらしく姿は見えなかったが……まぁ、あいつのことだ、日常生活でいきなり現れるだろうから気にしなくていいだろう。
「さて、じゃあ今日は主役の綱吉にご挨拶といこうじゃないか」
酔っているのかいつもより饒舌に喋る慧音先生。いつの間にか司会みたいなことをやっている。
俺は立ち上がりみんなの前に移動した。そして一礼していった。
「あ~、どうもお久しぶりです。ようやく幻想郷へと帰ってきました。10年前、俺は吸血鬼との戦いで重症の怪我を負い皆さんに心配かけた事をお詫びいたします。今日は皆さん飲んで騒いで楽しんで下さい。それでは……」
そう言って俺は手に持った盃を少し掲げる、するとみんなも待ってましたと言わんばかりに少し腰を浮かせ盃を手に取る。
俺はみんなが盃を手に入れたことを確認して大きい声で言った。
「乾杯ーー!!」
「「「かんぱぁぁああい!!」」」
「親父さん!!波動について教えてくれ!」
「お父さん!じゃんじゃん飲んでね!!」
「なぁなぁ、外の世界ってどんな感じなんだ?」
「それは僕も気になるね。是非、教えてもらいたいところだ」
「こらこら、一気に話したら困るだろう。落ち着け」
皆一斉に話してくるから何にどう答えればいいのか解らない。朱鳥は微笑みながらこっちを見ていて助けてくれそうもない。慧音先生が皆をなだめてくれて本当に助かった。
っていうか、
「霖之助、来ていたのか」
香霖堂の店主、森近霖之助が来ていたのは驚きだ。すると霖之助は溜息を吐いて言った。
「まあね、なんたって魔理沙と霊夢が来るように言ってくるもんだから、出てきたよ。流石君の子だね、性格がそっくりだ」
「フフ、そうか来てくれて嬉しいよ。じゃあ、外の生活について話をしよう。何、時間はあるんだ、ゆっくり話していこう」
こうして俺たちは朝まで飲み、語り合った。