「たいよぉぉおおおけぇええんん!!!!これで最後だぁ!くたばれクソコウモリィ!!!!」
『豪炎:天照』
「ぎゃあああああ!!熱い焼かれるぅぅ!!おのれ綱吉、綱吉ぃぃいい!!」
「うぐっ⁉何だこの牙は!気が遠くなる」
「おとうさん、死なないで!おとうさぁぁあん!!!!」
ーーーー
「っ!夢か……」
目がパッチリと開いて綱吉は眠りから覚醒した。額には玉のような汗を滲ませ、心臓はバクバクと音を鳴らしている。
――――懐かしい夢を見たものだ。
布団から這い出て障子を開けて思う。幻想郷に帰ってきたからか、見たくないものを見てしまったと後悔してしまう。だがそれは悔いても仕方がないこと、寝ているあいだに汗をかいたので喉がカラカラになっている。
時間は大体5時くらいだろうか、二度寝するにも胸糞悪い物を見たので寝れる気がしない。外に出て新鮮な空気でも吸って気持ちをリセットしよう。
そう心の中で結論を弾き出し、台所にある水瓶からお椀一杯分の水を飲んだ。喉を冷たい水が通って体の熱を下げていく。
寝巻き姿のまま、下駄を履き外へ出て、新鮮な空気を深呼吸で取り入れる。頭の中はスッキリとしているが心のモヤモヤは晴れない。
―――らしくないね。
内心苦笑しながら、ちょっと朝の運動ということで空を飛ぶことにした。
神社から飛んで人里に向かっているとふと気になる疑問が浮かんだ。
――――俺が吸血鬼と戦った場所はどうなっているのだろう。
大きな湖の近くで吸血鬼と多くのゾンビ相手に素手で戦ったあの時。習得したての太陽拳で吸血鬼と渡り合い、大きな傷を負い、満身創痍のところを倒したと思った敵から呪いの牙を喰らい、心肺停止の状況に陥り……。
俺の人生が大きく変わった場所。
今どうなっているのか気になって仕方が無い。まだ、霊夢も朱鳥も起きていないし朝ごはんになるのにまだ時間はある。行ってみることにした。
大きな湖に着いたが霧が出ていて周りがよく見えない。10m先は霧で覆われている。
「すごい霧だ、これではどこにいるのかが解らない。そして、腕時計も持ってくるのを忘れているし、装備も不十分だ。ここは引くか」
下駄が湖に落ちないように足の指で下駄紐を掴みながら浮いているのもいささか面倒だ。綱吉は回れ右をして今来た道を引き返した。
神社に帰って朝ごはんを食べ終わった時、朱鳥が机を布巾で拭きながら訪ねてきた。
「どうしたの?貴方らしくないわよ」
「何が?」
「様子がおかしいわよ、霊夢が話しかけても、聞いてなかったりボーッとしてたり。まるで心此処にあらずって感じだったわよ」
「そうか……」
「何かあったの?妻なんだから相談してよね」
胸を張って言い切る飛鳥に、綱吉の心が暖かくなる。
「ふふ、そうだな…………実は――――」
自分のことを想ってくれている嫁に感謝しつつ夢のことを話した。
「……なるほど、昔の夢ねぇ」
「ああ、しかも心に引っかかるんだ。また何か起こりそうで」
「ヤダ、やめてよ。貴方がそう言うと現実になるんだから。第一私もあなたも引退するべき者よ。霊夢に引き継いで行かなくてはならない。それは解っているでしょ。」
「ああ、それは理解している。だが、まだ俺にはやるべきことが残っている。紫が言っていた『スペルカードルール』。そのルールに基づいて霊夢や魔理沙が妖怪退治をしていく時代へと変わっていく。新しい時代だ、俺はそれを受け入れよう。だが、それを拒む妖怪が出てくる。そいつらと決着をつけたら俺の役目は終わって引退だ。近いうちに俺と戦う奴がいる。これは俺の勘だが、俺の勘は絶対に当たる!……戦う時まで鈍った体を昔みたいに動けるようにしなくてはならない。修行をしなければ」
「そう……それならくれぐれも無茶をしないこと。いいわね」
「ああ、約束する」
拳と拳をお互いに合わせて約束をする二人。すると、霊夢が茶の間に戻ってきた。
「片付け終わったわ。ってなんかいい雰囲気?イチャイチャするなら他所でやってよ」
「霊夢がそれ言う?お父さんにベタベタくっついている人が?」
「べっ、別にいいの!お父さんの子なんだからいいの!」
「いいかしら、霊夢。貴方のお父さんの前に、私の男よ。そこ忘れないでね」
「う、うん」
妙に威圧のある声で霊夢に釘を指す飛鳥に内心ビビっている霊夢と綱吉だった。
「それじゃあ、全力で行くから」
「ああ、来い」
神社境内で2人は相対していた。綱吉が全盛期の力を取り戻すには本気の朱鳥と戦ったほうが早いと思い、手合わせをすることにした。
神社には霊夢と魔理沙の2人がいるが、2人には「自分の身は自分で守れ」と言っている。つまり、子ども2人を気にかける余裕は無い。神社の中にいるという選択もあるのだが、2人はそれを選択しなかった。
「よし!まずは『霊術:月霊モード』!」
「フン、こちらも全力で行く!『太陽拳』!だぁありゃあーー!!」
朱鳥の目は銀色に輝き、陰陽玉が浮かぶ。一方綱吉からは炎のように赤く輝く波動が吹き出す。2人からは見るものを圧倒する気迫が出ていた。
「行くぞ!『博式封魔陣』と『氷河千本』!!」
「フン、『百式:炎手拳』!!」
大量の弾幕と氷の針が綱吉を襲う。それを炎の百烈拳ですべて打ち落とす。それでも構わず朱鳥は弾幕を張りつつ印を結ぶ。
『守式:一夜城』
氷のバリアーが展開され、そして更に宣言する。
『博式:四十結界』
氷のバリヤーの上に結界を張る。大妖怪でもなかなか壊せない結界だ。その上外にある陰陽玉は綱吉に向けて弾幕を放つ。
それを空中で躱しながら綱吉は陰陽玉を破壊するために波動の槍を形成する。そして思いっきり投げつけた。
波動の槍は弾幕を切り裂き跳ね返し、陰陽玉の1つを貫き破壊する。
「へぇ、鈍ったて言う割には動けてるじゃないの」
「ふん、てめぇには負けねえぜ。そぉら!」
一気に陰陽玉に近づいて破壊する。
「こいつで2つ!」
顔面に弾幕を放ってくるのを躱し、波動の槍を形成し放ち破壊する。
「これで3つ!」
最後に残った陰陽玉を膝蹴りで破壊した。
「こいつで全部だ!そろそろ決着をつけてやる!」
一旦距離を取り一気に結界前に近づき、そして――
「おらぁ!!」
正拳突きを思いっきりぶつけた。その衝撃と波動が勝負を見ていた魔理沙と霊夢を襲う。
「魔理沙!」
「解ってらぁ!」
「『霊符:夢想封印』!!」
「『恋符:マスタースパーク』!!」
2人は自分の技で最高級に当たる技で衝撃から身を守った。
朱鳥の結界はヒビが入り粉砕してしまう。
「嘘!?」
「終わりだ!!」
驚愕する朱鳥に対して攻撃の手を緩めない。目の前に両手を突き出し波動を一点に集中する。
『豪炎:天照』
両手から放たれる金色の波動は氷のバリヤーを破壊し、朱鳥を飲み込んでいった。
「何が鈍ったのよ~、前より強くなっているじゃない。私もそれなりに強くなったと思ってたのにそんなことなかったわ、グスン」
「おいおい、こいつらの前で泣くなよ」
朱鳥は体に擦り傷を負って綱吉に手当をしてもらっていた。負けて悔しいのか泣き言を言う朱鳥に戸惑っていた。
「せっかく貴方の『太陽拳』を参考にして『月霊モード』を完成させていじめられると思ったのに」
「おい、なんだって?」
「婚約の時のリベンジが出来ると思ったのに、悔し~!」
「まぁ、強かったよお前も」
「まぁ!?まぁって何よ!それとあっさり結界打ち破ったあなたが言う!?」
「あ、あ~~……」
その様子を見ていて魔理沙が霊夢に言った。
「親父さん困っているみたいだぜ、助けないのか?」
「今あの中に割り込んだらお母さんに何されるかわからないわ。関わらないほうがいいの。それに――」
「それに?」
「お父さんとお母さんを一緒にしてたほうがいいでしょ、お母さんだって甘たいのよお父さんに」
「ふ~ん、それじゃあその言い方だと霊夢は親父さんに甘えっぱなしだったって事か」
「まあ、一緒に寝てたりしたけど…………ッハ!」
自分の言ったことの重大さに気がついたのか魔理沙の方をみる。魔理沙はニヤニヤしながら霊夢を見ていた。
「へぇ~~霊夢は甘えん坊だったのか」
「なっ、ちょっ、ち、違うわよ。ただ、その、……あれよ!寝たかったから一緒に寝ただけよ!」
「まあまあ落ち着け霊夢、自爆している」
「ああ~もう!別にいいじゃない親子なんだし!!」
「ハハ、まあいいんじゃないか?」
「なによ~その言い方!!」
霊夢はひとつ札を取り出して叫んだ。
「これでも喰らえ!『霊符:夢想封印』!」
「なっ、やめろ霊夢!落ち着けッ……ぎゃあああああ!!」
爆音とともに魔理沙は人里の方へ吹っ飛んでいった。
「おい、霊夢。魔理沙はどうした?」
綱吉が朱鳥の手当てを終わらせ霊夢に訪ねた。
「ん?魔理沙なら今帰ったわよ」
笑顔で霊夢は嘘をついた。それに気づかずに綱吉は残念そうに眉尻を少し下げ、
「そうか、せっかくだから人里に行って魔理沙も一緒に晩飯を食べようかと思ったんだがいないなら仕方がない。霊夢と朱鳥と俺と3人で食うか」
この後、木に引っかかった魔理沙を発見・回収し、結局4人で食べることとなった。
食事中に霊夢の目線が怖かったと魔理沙は後に語った。