幻想郷が赤い霧で覆われて行く。時は昼時に差し掛かったころには全域が霧で覆われた。その頃1つの戦いが終わろうとしていた。
地下で行っていたフランドールと綱吉の戦いだ。
戦いは第二ラウンドに入って大きく変わった。綱吉が僅かだが有利になっている。
「……おい、フラン。さっきまでの余裕はどうした?」
「アハハ、叔父様本当に強いんだね!私の攻撃を素手で止める玩具は初めてだよ!」
そう言って絨毯を強く踏み込み絨毯の下のタイルを破壊しながら突っ込んで来た。そして懇親の右ストレートを腹に繰り出した。
ズダァン!!
拳銃を撃ったような音が部屋に響く。が、しかし、俺の体はビクともしない。
「なっ!?」
「どうした、なぜそこで止める?」
「クッ!」
右!左!右!左!フランはラッシュをするが、痛みすら感じない。理由は波動で攻撃のダメージを受け流し緩和しているからだ。そこで俺はひとつ頷き右の拳を左で止めた。
「フム、いいかフラン。パンチってのはこう打つんだ」
優しく語りかけるように言って鳩尾に一発食らわす。ただの突きでは無く、波動を込めてフランの体の自由を奪う一撃だ。
「ガハッ!!!!」
フランは腹を抑えて膝をついた。
「フラン、何遠慮するな。今のうちだぜ、こうやって遊んでもらえるのは。大人だったらすぐに追い討ちをかけて殺しているぞ」
「くっ、じゃ、じゃあ叔父様は手加減してるって言うの⁈」
「当たり前だろ。ガキ相手に本気を出すバカがいるか?全力で相手にはするが、12割の本気は出さないさ」
「糞がぁ!」
フランはそう叫ぶや否や炎の剣を振りかぶり切りつけてきた。
「死ねぇ!」
上段からおおきく振りかぶっての正面斬りを俺は余裕を持って右手の人差し指と中指で白刃取りをした。
「フッ、気迫はいいが、女の子はそんな物騒な言葉を使ってはいけないな」
「く、ぐぐぐ……」
それでも何とか斬ろうと力を込める。
「…………はぁ、やれやれ」
手首を返して炎の刃をへし折ってフランに投げ返す。炎の刃は使い手に届く前に空中に消えた。
「流石にお前の武器では攻撃出来ないか。……次にお前は『子供相手に大人気ないね!』と言う!!」
「フンッ『子供相手に大人気ないね!!』……ハッ!?」
ふふ、セリフの先読みが決まった。フランの表情は驚きに固まっている。これでこの勝負はコッチのもんだ。大抵は、セリフが言い当てられた事によって動揺し、焦る。そして、何とか早く勝負を決めようと突っ込んでくるところをカウンターでぶっ倒す。博麗綱吉、ブランクはあるとはいえ、戦い方は益々健在と言った所か。フランは炎の魔剣を装備して、俺は右手から波動の炎で造った即席の剣で切り結ぶ。
「お前の運命は握られた!お前の運命はーー」
「くっそぉおああ!!」
フランは下段から俺は上段から振り下ろして互いの刃はガキッ!と音を鳴らしてぶつかった。
「『敗北』だ!!」
ーーーー
強い。だんだん戦って行くうちに、私の身体の中にある狂気が恐怖に変わって行くのを感じていた。
此方がいくら攻撃しても、いくら傷を与えても受け流し、躱され弾かれる。
まるで大きな雲に攻撃しているようだ。コッチの考えが読まれているようだ。
「子供相手に大人気ないね!!」
私はそう思い口にして挑発しようとしたら、逆に言い当てられてしまった。
「次にお前は『子供相手に大人気ないね!!』と言う!!」
ビシッと指を刺されて言われてしまった。その瞬間、目の前にいた叔父様が揺らめいて巨大な太陽に変化して行く様に見えた。
膝が震えるほど怖い。それでも私は吠えて魔剣を出現させて大きな太陽に突進した。
「『敗北だ!』」
敗北だ!敗北だ!敗北だ!敗北だ!敗北だ!敗北!敗北!敗北!敗北!敗北!敗北敗北敗北敗北敗北敗北敗北負け負け負け負け負け負け負け負け死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう死死死死死死死死…………。
「あぁ、うがあああぁぁあああああ!」
私はめちゃくちゃに剣を振り回し斬りつけた。視界が霞み間合いが分からないけど、恐怖心を振り払うためひたすら魔剣を振り回した。
力無き魔剣は叔父様の剛拳に吹き飛ばされ天井に突き刺さった。
「っ!そんな!」
「いったんお前をさ、治したら卑怯じゃないよな」
そんなことを言って叔父様は両手を出し白い光を放った。光は私を包み傷を癒していく。これはさっき叔父様が使った技。
「覚悟はいいかぁ……!歯ぁ食いしばれぇ!!」
両手の拳に炎を灯し構えを取る。私はすぐ自分がどうなるか理解した、殺される。殺される!!
「あ……ああ、イヤァ!」
――――ぐしゃり。
「あ…………」
右手に伝わる感触。小さな球体を潰した感触。『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』が発動した感触。
視線を右手から前方に移すとおじ様だったものが潰れ、血溜りとなり、肉片が浮いていた。
「ああ、あああ!……死んだ死んだ、かわいそう」
そう呟くと、お腹の底がウズウズしてくる。口角がつり上がっていくのが抑えられない。
「フフ、フフフ、そうよ。叔父様が調子に乗っているからこんなことになるのよ。アハハハハハ!!」
「アハハハハハハハハハハッ!!……そうだ血を飲みましょう」
そう言って一歩動こうとした瞬間。体が動かなくなった。
『動くな』
「な、何!?」
私が驚いていると後ろから声が響く。
「俺が『奥義』を使った。そして、脱出できた。やれやれだぜ」
後ろを振り向きたくても振り向けない。心臓がバクバクと音を鳴らしている。
「お前が壊したのは残像。これを見破れるのは嫁くらいなものだ」
低い声で言いながら死んだと思ったヒトが目の前に現れる。
「これからてめーを殺すのに、1秒ともかかんねーぜっ!」
鋭い目線でそう言った叔父様。その目は強い意志で燃えていた。
「……私の、負けです」
体中の力が抜けて蚊の鳴くような声で負けを認めた。目頭が熱くなって視界がぼやけてくる。
「……なさい……」
「……はい?」
「ごべんなさいっ!!」
「……フラン?」
「あだしっ、叔父様を、殺そうとして……!!」
「……そうか、わかった。俺も謝るよ、痛い思いさせてしまったな、すまなかった」
叔父様は、しゃがんで目線を合わせて言った。私はワンワン泣いていた。それを叔父様は優しく抱きしめて慰めてくれた。
暖かい感触。血の暖かとは違う感触。私が一番欲しかったもの。ずっとこのままいたいな……。
そう思ったら私の意識は闇に沈んでいった。
「寝たか」
いやー、死ぬかと思った、ガチで。『奥義』使って何とかしたが、できなかった場合を考えるとゾッとするぜ。腕の中で俺の服を掴んで寝ているフランを見ながら動かせる右手を使って冷や汗を拭う。……やれやれ、折角の上着がボロボロになっちまった。捨てるしかねぇな。
取り敢えずフランを楽にできる場所を探して寝させてやろう。そう思って室内見ると、案の定ひどい有様。戦闘の激しさを物語っている。それでもソファーは何とか原型を留めていたのでそこにフランを寝かせてあげることにした。
ゆっくりフランを抱えて、起こさないように静かに寝かせる。思いのほか、ソファーが大きいので俺も座らせてもらうことにした。
「やばいな、俺の波動がもう無い。フランみたいなやつがあと何体いるか。……しかも太陽拳がやはり全力を出しきれていないのが辛いな。フランの前で強がってみたのはいいが、ちゃっかり全力出していたし……。……何とかして全盛期の力を出さないと……。失敗したな、朱鳥がいれば助かるんだけどな。クソッ」
すやすや眠るフランを見て優しく頭を撫でる。
「10年か、失った時間は大きいな。フランより幼かった霊夢が大きくなって、たくましくなってしまった。俺は父親として一番いるべき時間にいなかったからな。寂しい思いをさせてしまった。全く父親失格だ。しかし、こんな俺を霊夢はまだ父と呼んでくれている。霊夢のためにも頑張らないと」
俺は拳を握り締めて心に言葉を刻み込み、少し休むため瞼を下ろし眠ることにした。