ゼロのポケヒーロー   作:ディア

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第2話

「アンタ達、誰?」

ルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール。矢鱈長ったらしいこの名前の持ち主ルイズは戸惑っていた。

 

彼女は使い魔召喚試験を実施し、使い魔を召喚するはずであった。しかし出てきたのは使い魔として異例な人間。それも4人。数だけで言えば周りの生徒達の4倍である。しかし見るからに平凡そうな少年少女が3人に大女が1人。そのうち平凡そうな少女の1人は爆睡している有様で頼りない。共通して言えるのは服の材質が似ていることくらいだった。

「はぁ……」

故にルイズの感情は困惑から落胆へと変わりため息を吐いた。

 

「ミスタ・コルベール! やり直しを要求します!」

頭が寂しい中年の教師コルベールにルイズがそう異議を申し立て、抗議するがコルベールは首を振った。

「我儘を言うんじゃありません。第一、4人も召喚出来たのだから1人くらい当たりが出てもおかしくないでしょう。それにミス・ヴァリエール、君は召喚に失敗して一体どれだけの時間を犠牲にしているのかわかっているのかね? そのことを考慮すると再召喚する機会なんてものは与えられない」

因みにこの会話は日本語や英語、地球にあった様々な言語とは違う言語で会話されている。故に凡人たる才人は何を言っているのかわからず、翻訳機を所持している和那や真央ですらも訛りが強い方言で会話をしているようにしか見えない。唯一理解出来そうなピンクは寝ているので論外である。

 

「わかりました……契約します」

「分かれば良いです。さあ全員と契約しなさい」

「全員とですか?」

「そうですぞ。始祖ブリミルも4人の使い魔を従えたというじゃないか。君もやるんですよ」

「う、うゥゥゥ…! ひ、1人じゃダメなんですか?」

「全員とやりたまえ、ミス・ヴァリエール」

ルイズは肩を落とし、爆睡している茶髪の少女に近づき、詠唱を始めた。

 

ブチュリ!

 

そんな生々しい音が聞こえ、ルイズはピンクにキスをする。それを見た三人は目を見開いてしまう。

「あんな美少女がレズかよ……」

特にショックを受けたのは巨乳大好き才人君であり、胸はともかく自分の好みドンピシャな美少女がレズに走っているとは思いもしなかった。

「いやいや才人君、よう考えてみいや。人工呼吸か何かの類いやろ。そう思わへんかリーダー?」

和那は混乱している!

「でもいい気味……」

「んぎゃーっ!!」

非リア充の真央がリア充のピンクがキスされた事に対して笑みを浮かべるといきなりピンクが叫び出し、ゴロゴロと転がった。

 

「ワレ、ピンクに何した!?」

和那はドスの効いた声でルイズの頭を掴み吊るし上げた。通常の人間であれば握力や腕力が足りず、吊るし上げることなど無理だが、和那の右手の握力は115kgもあり左手ですら3桁に迫る。故に体重の軽いルイズを頭から吊るし上げることなど容易いことである。

「ぱなしゃなさー!(離しなさい!)」

それを見たコルベールが咄嗟に杖を構え、ルイズを解放するように要求するが無駄だった。

「ああっ? 何言うてんのかわからんわ!?」

二人の会話は翻訳機で一応翻訳されていることにはされているが訛りがお互いに強い方言で翻訳されている為にコミュニケーションが成立せず、このように言い争うことになる。

 

「もう、いきなり何よ……」

ピンクが目を覚まし、起き上がると頭に文字が浮かび上がっていた。

「ピンク、お前その頭どないした?!」

ルイズを掴んだまま和那が指摘するとピンクは髪の毛を弄り、頭に異変がないかを確かめる。

「え? 頭?」

「額に文字が書かれている」

「嘘おっ!?」

ピンクは能力を発動させ、自分の額に書かれている文字を見つめる。その文字は一般人では訳がわからない言語で書かれていた。

「何よこれーっ!? これじゃ彼氏に会えないわよ〜っ!?」

ピンクは絶叫し、orzの体勢を取り泣いてしまう。

 

「で、あんたらピンクに何したんや?」

「そんまーにミシィ・ビャリェールをぱなしゃーてくりゃせ! そうすりゃオイラもぱなしゃ(その前にミス・ヴァリエールを離してください! そうしていただければ私がお話しします)」

「だからわからんて……」

コルベールは和那の言葉を理解しているが逆に和那はむちゃくちゃな訛りのコルベールの言葉を理解していなかった。

「その禿げたおっさんはカズが持っている女の子を離せば、事情を話すって言っているわ」

「ホンマかいな……」

和那は胡散臭いものを見るような目でピンクを見る。

「私からすればなんでこんなに丁寧に話しているのにわからない方がおかしいわ」

「そらどういうこっちゃねん?」

「このルーンのせいね。翻訳機能が働いているみたいで翻訳機よりもずっと正しく翻訳しているわ」

「もしかしてそのルーンはそれだけ?」

ここまで口を挟まなかった真央が口を挟むとピンクが首を振った。

「これはあくまで副次的な効果にしか過ぎないわ」

「本命は?」

「ありとあらゆる道具の使用用途を知る……みたいな効果よ」

「みたいな?」

「大方そんなものだと思ってくれればいいわ。それより貴方、この子は何をしたの?」

「じ、じちゃ……(じ、実は……)」

 

〜コルベール説明中〜

 

「なるほど、つまりルイズちゃんは魔法学院の昇格試験で使い魔を召喚するつもりが私達四人を呼び出してしまったと。それで止む無く私達を使い魔にしようとした訳ね」

「ゆうとーりだぎゃ(仰る通りです)」

「そういうことらしいわよ。リーダー、カズ、少年」

「……そう」

「そらまたけったいなことに巻き込まれたなぁ」

「マジかよファンタジー!?」

真央、和那、才人の反応はそれぞれ、静かに受け入れる、頭を掻く、絶叫するの三者三様であった。

「ところで帰る方法は?」

「ありゃーせん(ありません)」

それを聞いた四人が絶句した。

 

「ふ、ふざけんなーっ!!」

そして最初に意識が戻ったのは才人で、今にもルイズに掴みかからんばかりに詰め寄る。

「今すぐ戻せ!」

「落ち着かんかい!」

意外にも和那がルイズに詰め寄った才人を引き剥がした。

「才人君、ここで怒鳴ったところでしゃーない。帰る手段はウチらで見つけなアカンちゅうこっちゃ」

「でもどうやって?」

「それは後で考えればええやろ? 今は従うしかあらへんよ」

「俺はこいつの使い魔になるのはゴメンだ!」

才人がそう告げ逃げだそうとすると真央が腹を殴り、才人を力ずくで止めた。

「ぐっ!」

殴られた才人は腹をくの字に曲げ、膝をついた。

「今貴方は会話も出来ない状態。ましてや非力な私にも劣る。そんな状態で生活するのは不可能」

「ほ、ほな。ルイズ、この少年にやっちゃってぇな」

和那がルイズにアイコンタクトを送り、目で口に出したことを伝えるとルイズにそれが伝わり、詠唱を始めキスをして契約する。

「ぐぎぃィィっ……」

才人は左手と腹を抑え、痛みを堪える。次第に才人の左手の甲に文字が映し出された。

「ウチらもサクッとやって契約しようや。どうせ使い魔言うても大したことあらへんやろうし」

「……」

ルイズは和那と真央にも契約し、前代未聞のキスのバーゲンセールが終了すると真央は右手に、和那は胸に文字が刻まれる。

 

「そ、それでは魔法学院に戻りましょう」

「は、はい……」

一悶着あった後、コルベールが魔法学院に戻るように指示するとボロボロになった生徒達が力なく返事を返した。

「全く、スケベなガキンチョどもめ。ウチの身体見てええんはあいつだけや」

その一悶着というのはコルベールがルーンをメモして写そうとしたことである。コルベールが和那のルーンをメモしようとするが和那のルーンは胸に刻まれている。コルベールはどうしたものかと迷っていたが、生徒達が和那の胸目当てにルーンをスケッチしようと立候補し、和那にボコられてしまったのが真相である。

「よかったー、俺を殴ったのが和那さんじゃなくて」

その一方、才人は和那ではなく真央の拳で済んだことを安堵していた。


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