NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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092.九尾の封印術式 其の肆

 ククッ

 

 クッハッハハハッ!!

 

 

 あと少しで・・・

 

 あともう少しで・・・・・・

 

 この呪縛から解放される・・・・・・ッ

 

 ・・・忌々しいこの呪縛からッ!!

 

 

 

「あともう少しで?悪いけどそうは行かないんだよなぁ・・・九尾さんよぉ」

 

 暗がりの中。

 巨大な牢の中から禍々しいチャクラを放つ、これまた巨大な躰を持つ妖狐。

 

 強大なチャクラを持つ尾獣と呼ばれるバケモノの中でも最強と称される九尾の妖狐。

 

 生みの親、六道仙人・大筒木ハゴロモから付けられた名は、『九喇嘛(クラマ)』。

 

「貴様・・・クシナじゃないな。誰だ」

 

 牢の外へと出てきている思念体九喇嘛の大きな双眼がオレの姿を捉える。そしてオレの眼を見て納得する素振りを見せる。

 

「そうか。うちはの者か・・・」

「いや、オレはうちはじゃないけど」

「よくぞここまで成長したものだ・・・」

 

 オレは羽衣一族の羽衣カルタ。お前の生みの親である六道仙人、大筒木ハゴロモの末裔!

 

 と、オレは誤解した認識を訂正する間もなく。九喇嘛は語りを続ける。

 

「クシナの中のワシが見えるまでになるとはな・・・」

「ねぇ。聞いてる?オレ、うちはじゃなくて・・・」

 

 あぁ。だめだこりゃ。完全に自分の世界に入られてしまっている。

 

 悲劇のヒロイン症候群とやらなのだろうか。ワシ、昔うちはマダラに操られて可哀そうっ!・・・という感じなのだろうか。

 

「忌まわしきその万華鏡写輪眼は呪われた血統の力という訳か・・・」

「人の話を聞けよ!バカ狐ッ!!」

 

 オレの仏のような寛大な器を持つ堪忍袋であっても緒は切れた。

 

 鼻頭に向かって全力の右ストレート。

 

 ボフンッと思念体九喇嘛が煙を立てて消え去る。

 

「あ、やっちまった」

 

 そうオレが呟いたのもつかの間。ボコボコとマグマのような思念体九喇嘛が復活する。

 

 なんだ。封印が緩んでいるからか、一回消しても戻るのか。話が続けられるようで一安心。

 

「きッ!貴様!何をするッ!?」

「何をする!?じゃねーんだよ。人の話は最後までちゃんと聞け!」

「ふんっ!ワシが何故愚かで矮小な人間の話に耳を傾けなければならんのだ」

「はぁ?人の話は最後まで目を見て聞けって親から習わなかったのか?全く・・・これだから最近の尾獣は」

 

 親の顔が見てみたいぜー。と、挑発を続けるオレに対して九喇嘛は「貴様、ワシの封印が解かれた暁には真っ先に嬲り殺してやるからな」と睨みつけながら吐き捨てる。

 

 それ、負け犬の遠吠えだろ。いや、負け狐の遠吠えか?などとまたくだらない思考をしているオレを差し置いて九喇嘛の病気は再発する。

 

「その忌々しい瞳力とワシ以上のチャクラ量。まるでかつてのうちはマダラと同じだな・・・」

 

 

 まさかこのワシの力を抑え込もうとするとはな・・・。

 

 最後になるかもしれんが、一つだけ忠告はしといてやる・・・。

 

 クシナは殺すな・・・後悔することになるぞ。

 

 

 なんて。独り語りをしている九喇嘛。

 

 あーあ。自分に浸っちまいやがって。まったくもう。

 

 話が通じないったらありゃしない。

 

「だ~か~ら!まず、お前はオレの話を聞けよっ!」

「誰が貴様の話など」

「オレはうちは一族じゃない。六道仙人・大筒木ハゴロモの末裔、羽衣カルタだ」

「聞くものか・・・って、ちょっと待て。六道仙人だと?」

 

 ようやく聞く耳を持ったらしい九喇嘛が反応を見せた言葉が六道仙人だった。

 

 やっぱり、尾獣たちにとって六道仙人はどんなに時が経っても特別な存在と記憶しているみたいだな。

 

「あぁ。六道仙人の末裔だ」

「あのじじぃの?」

 

 その問いにオレは頷きで返して話を続ける。

 

「だからというわけではないが、うちはマダラのように九喇嘛を操ってむやみやたらと自由を奪うつもりは毛頭ない」

「きさ、貴様・・・今、ワシの名を」

「もちろん知っている。それに今のオレは多重人柱力。守鶴に又旅、孫悟空に穆王、重明と共にいる。ほら、ちょっとオレの中に意識を向けてみろ」

 

 オレの言葉に対して素直に意識を集中させる九喇嘛。

 とはいっても、そんな穴が空くほど見ろとは言ってないんだが・・・。

 

「確かに。忌々しくも懐かしい奴らのチャクラが感じ取れるな。だが、お前の口から出てこなかった八尾のチャクラもあったが?」

「あーそれはな。八尾の意識本体は雲隠れの里のとある忍びのところにいるんだ。ただ八尾牛鬼はそこの人柱力と仲が良くてな。意識ごとオレが取り入れると情報を漏らされるかもしれなかったからチャクラだけ貰っといたんだ」

「・・・ふんっ。どいつもこいつも飼いならされやがって」

 

 そう悪態をつく九喇嘛だったが、その言葉からはそれほど棘は感じられなかった。

 それにオレに対する呼び方も「貴様」から「お前」と多少なりとも柔らかくなっているし。

 

 九喇嘛(ブルータス)、お前もツンデレなのか。男?のツンデレが今期のトレンドなのか!?

 

「それで?お前はどうするつもりなんだ。お前ほどの者なら今ならワシをクシナから引き剝がすことも逆に縛り付けることも容易いだろう」

「九喇嘛を引き剝がしてオレに再封印したら、クシナが死ぬ・・・人柱力だからな」

「なら封印から逃れようとするワシを縛り付けるのか?」

「いや、未来への保険として是非とも九喇嘛には一緒に来てもらいたい」

 

 この相反する主張に九喇嘛の頭の上には疑問符が浮かんでいることだろう。

 

「オレのご先祖様。大筒木ハゴロモが行ったように分かれてもらいたいんだ」

 

 十尾を分割して九つの尾獣にしたように。

 

 九尾九喇嘛を2つの意識体へと。

 

 陰のチャクラを持つ九喇嘛と。陽のチャクラを持つ九喇嘛に。

 

「・・・そんなこと本当にできるのか?」

「当然」

「そうか・・・じゃあやってみろ。羽衣カルタ」

 

 初めて名前を呼んでくれたことに驚きを隠さないオレに対して九喇嘛が笑う。

 

「いや、ちゃんとオレの名前覚えてくれてたんだなぁって」

「・・・たまたまだ」

 

 またまたー。ツンデレっちゃって。

 いや、九喇嘛が言った「たまたま」とかけて「またまた」といったわけじゃないぞ。うん、本当に。

 

 それにしても。

 

「九喇嘛のことをオレが求める理由は聞いてこないんだな?」

「今聞かなくとも、お前とは長い付き合いになるだろうからな。その内聞きたくなくとも語ってくれるのだろう?」

 

 その言葉に嬉しくなるオレは果たしてニヤケ顔をきちんと隠せているのだろうか。

 

「あったりめぇよ!べらぼうめっ!」

 

 照れ隠しに江戸っ子口調で返すオレの耳に、九喇嘛がぼそぼそっと呟いたその言葉が届くことは無かった。

 

 

 

 じじぃのチャクラを持つお前が悪い奴なわけないからな・・・。

 

 

 




九尾のツンデレは公式ですが、うちの場合はチョロインと化してしまった。

な、なぜだ・・・。

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