NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》 作:新名蝦夷守
まさか、あんなリアルア〇ジャッシュを自分がやることになるとは・・・。
配役としてはどっちが世界の渡部で、どっちが大島だったんだろう。
・・・いや、どっちでもいいんだけどさ。
お互いの会話の内容に齟齬が発生していたことに気が付いたオレたちはしばらく顔を見合った。
そして自分が恥ずかしい勘違いをしていると気が付いたらしいマブイはみるみるうちに顔全体を真っ赤にしていく。
オレはそんな茹でた蛸みたいになっているマブイを眺めていた。
「ご、ごめんなさい!私ったらとんでもない勘違いをっ」
そう言って、あたふたしているマブイは年相応な少女という感じがしてほっこりする。
「いやいや、なんもだよ。でもまさか真面目そうなマブイが『変なトコ』や『変なこと』で、真っ先に卑猥で破廉恥なことを想像するとは・・・」
「わーわーわーっ!そんなこと言わないでください!!お願いします!恥ずかしいですからぁ~」
赤くなった顔で涙目になりながらじたばたするマブイはいつもと違う可愛さがあった。
・・・なにこれかわいい。もっと弄りたい!虐めたいィィィ!!
という欲望(という名の悪魔の囁き)を良心(但し、好奇心旺盛な天使ちゃん)で押さえつける。
「それにこともあろうことかその妄想に自分はおろか、まだ子どものオレも混ぜて4・・・」
「いぃぃやぁぁぁぁぁ!!」
否、抑えきれなかった。オレの中の天使は、悪魔に敗れたのだった。
というか、マブイの反応を面白がった天使ちゃんは悪魔を後押ししたのだった。
どんまいオレ。どんまいマブイ。
そして、真昼間の大通りのど真ん中という一等地で悲鳴を上げたマブイに周りの視線が一気に突き刺さる。
マブイはそのことに気付くことなく、羞恥心が臨界点に達したのか「きゅ~」という謎の音を発して、煙を頭から立てながら気を失った。
「おっと、あぶね」
ばたりと地面に倒れる前に抱きかかえることに成功したオレは未だに周囲の視線がこちらに集中していることを察してとりあえず別の場所へと避難するのであった・・・。
時間は少し流れ、場所は変わってとある建物内にある一室。
部屋の明かりは淡く光っているものの少し薄暗く。
視界に広がるのは薄いピンク色をした壁紙。
余計なものは一切置いておらず、部屋にあるのは小さめの冷蔵庫と壁に掛けられている絵画くらいのもの。
いや、部屋の入り口付近には色とりどりの綺麗な花も飾ってあったか。
その部屋の入り口から真っすぐ行ったところにある扉を開けるとトイレや洗面台に加えてシャワールーム、お風呂場まで完備されている。
そこまで行く途中、右手側。ひとりで寝るには広すぎるダブルベッドが部屋のほぼ真ん中付近に鎮座しており、その上には純白の天蓋がかけられていた。
「んぅ」
ベッドの上に横たわる人影から吐息がひとつ漏れる。
一度、寝返りをして。
寝返りをしたその先でもぞもぞと少しだけ動いたかと思うと、その人物はゆったりとした動作で身体を起こした。
「・・・ここは」
どこ?と、続ける前にガタっという物音がする。
その人物・・・少女はその物音に対して敏感に反応し、音がした方。つまり、部屋の入り口へと視線と身体と意識を向ける。
その際、やけにスプリングが効いているベッドが軋む。
「あ、起きてる。気分はどう?」
そう言いながら、少女の返事も聞かずにズカズカと部屋に入り込んでくる齢9歳になる少年。
自分が寝ていたこの部屋に入って来たのが顔見知りのその少年であったことに、少し安堵した少女だが、それと同時にここがどこなのかという疑問が沸々と湧いてくる。
「え?ここ?・・・ホテルだけど」
ホテル。というその一言で、少女は先程自分が気を失う前の状況をまるで走馬灯のように一瞬にして思い出す。
そして。
「ほ、ほて!?って、え、あ・・・いやぁ」
少女はボフンと音と煙を立てて爆発したのだった。
いや、もちろん爆発は比喩だが。
急展開なこの状況に思考回路が追い付かなくなった少女はまた気を失い、スプリングを軋ませてベッドの上に倒れこむのだった・・・。
って!いやいやいや。
だった・・・。じゃあないんだよ!だった・・・。じゃあ!
もう既にお分かりだろうけど、部屋のベッドに寝ていたマブイを起こしに来たオレ、羽衣カルタは現在木ノ葉の里内で行方不明というか迷子になっているサムイとダルイを影分身に捜索させて、無事に居場所を突き詰めたんだ。
それをマブイを起こすのと同時に報告しようと部屋に入ったら、もう既に起きていたマブイと目が合って二言三言会話を交わしたらまた顔を真っ赤にして気絶してしまったのだ。
今度は何を勘違いして気絶したっていうんだ。
というか、意外と妄想が激しいのなこの子。
一応言っておくが、別にここはいかがわしいホテルなんかじゃない。大人の男と女が絡み合うラブなホテルなんかじゃあない。
ここはオレの友達・・・桜田ラクサのご両親が経営している木ノ葉の里内にあるごく普通のホテルだ。
まぁ、そのホテルの中ではそこそこ良いランクの部屋を貸してくれたから、なんかお姫様の部屋みたいに天蓋があったり、入り口付近には毎日取り換えていそうなくらい瑞々しく綺麗な花が飾られたりなどしているけどな。
お客さんが倒れてしまってどこでもいいからホテルの開いてる部屋貸してと、お願いしたら急なことであったのにも関わらず快く貸してくれたラクサのご両親には感謝だ。
とりあえず、マブイを起こしてきちんと説明するとしよう。
このまま誤解を解かない限りはまともに会話が成立しないような気がするし、いやまぁ、それはそれで顔色がコロコロ変わるマブイを見ているのも楽しいだろうけど。
マブイのせいでオレがSに目覚めさせられそうなのだが、それは一先ず横に置いておき、今度こそちゃんとマブイを起こして状況を説明する。
きちんと状況を把握して、自分の考えていた状況がえろい被害妄想でしかなかったと気付いたときのマブイの反応は言わなくてももうわかるだろ?