NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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皆さま、お久しぶりです。
そして大変お待たせしました。

では早速続きをどうぞ。


109.水の国撤退戦 後編

 今回の後日談(オチ)・・・というよりは事後報告的なものを語ろうと思う。

 

 メイが張った三重水陣壁に重ね掛けした雷陣壁を内側から破壊するようにしてオレが発動させたのは万華鏡写輪眼を開眼させた者の中でも僅かしか扱うことができないとされる須佐能乎。

 

 オレは以前に一度だけ発動させたとき(万華鏡写輪眼を開眼させた任務のことな)は制御が安定せず、不安定な状態で自身を大きく覆う“がしゃどくろ”といったものだったが、今回は完成体ではないにしろ、巨大な鬼の上半身に武者姿を模し、日本神話を元ネタにした癖して手には巨大な戟(恐らく一騎当千万夫不当の武将。三国志で有名なあの呂布(字は奉先)が使ったとされる方天画戟だと思われる)を持った状態で須佐能乎は発現した。

 

 オレの須佐能乎は見る者の多くを圧倒した。

 

 そしてその鬼が被る兜の上にでかでかと光るのは『愛』の一文字。

 

 自己主張の激しい『愛』の大文字。

 

 いや、兜は直江兼続かよ。そこは三国志じゃなくて日本の戦国時代かよ。というツッコミは心の中で済ませて、眼下に広がる有象無象の敵(須佐能乎視点で言うと)を見下(みお)ろすように。そして見下(みくだ)すように睨み付け、威圧する。

 

 その威圧に耐えきることのできない者、須佐能乎の異形の姿に戦意を失う者、挙句の果てには気を失う者は捨て置き、それでも尚、敵対の意思を持つ者には横一線。横一閃の一太刀が無慈悲にも無感情に敵を葬り去る。

 

 その太刀筋を幸運にも、もしくは不運にも回避できた者は絶望する。

 

 あまりにも現実離れした目の前の現実に。

 

 苦痛な生よりも、安楽な死のほうが良いと思わされるような理不尽を目の当たりに。

 

 これまでメイを囲んでいた忍びが『威圧』という第一波で大半が気絶し、第二波である戟による一閃で包囲は完全に解けた。

 

 行われているのは戦闘でも狩りでもない。そこから先は簡単で単調で単純な作業(・・)と化した。

 メイのナビゲーションで須佐能乎と内包されているオレとメイが動くたびにモーセの十戒で有名な海割りよろしく()が逃げ惑い左右に分かれ、道ができる。

 その先に呆然とこちらをただただ見つめているのが反政権派の忍び。つまりはメイの仲間だった。

 

 戦場に点在する彼らは未だに状況を把握できていないようだったが、状況を飲み込めていない以上は流されることにしたらしい(理解は追いついていないが、本能で生き残れると感じ取ったともいう)。

 

 そのおかげで撤退作業はすんなりと進んだ。

 敵は戦意喪失してオレたちの動きを邪魔することはないし、メイの仲間たちも何も言わずについて来たしな。

 

 そして現在。

 戦場を天送身の術で離脱し、水の国。それから霧隠れの里の勢力圏からも無事抜け出したオレとメイたち反政府勢力は火の国国内の茶藩領内にいた。

 茶藩があるこの半島は火の国国内では一番水の国に近く、国境警備隊の基地も置かれ、それに伴い配置されている忍びの数も多く木ノ葉隠れの里が誇る国防の最前線のひとつでもある。

 

 現状、霧隠れの抜け忍でしかないメイたちを国防の最前線であり重要施設である基地の内部に入れるわけにもいかないため、いるのは海岸沿いに広がるただの砂浜だったが。

 というか、先程までいた戦場とは打って変わりこっちは天気が良い。雲ひとつない快晴だ。

 

 天気の話はさておき。

 

「さてと。これからどうする?」

 

 反政府勢力の残党回収中すらも目立った会話はなく、安全圏まで来ることになり。それでいてようやくそんな言葉を最初に発したのは誰だったか・・・あ、いや、オレなんだけども。

 

「オレはメイとの約束であなた達を助けたに過ぎないんだから、まだ政府軍と戦い足りないとか、自分だけ助かるのは死んでいった同志達に申し訳ないとか思ってるんだったらまた戦場に送り届けることもできるけど」

 

 まぁ、せっかく助けた命なのに態々死にに行くという選択肢を選ばれるのはあまり気分のいいものではないからご遠慮願いたいが。という言葉は飲み込んで。オレはあの戦場を生き残ったメイを除く6人(そのうちの3人の存在に驚きながらもそれはおくびにも出さず)を見ながらこうも続ける。

 

「あとはこのまま抜け忍として生きるか、オレが火影様に直接話を通して木ノ葉隠れの里の忍びとして登録し、正規部隊に入るか、もしくはそれから暗部の部隊に入るか。だな。あぁ、あとはこれを機にキッパリ忍びを辞めてひっそり一般人になるという道もあるかもな」

 

 そう言ったオレのあとにメイが「ちなみに私は木ノ葉に降るわ」と付け足す。

 

 オレとこいつらとの間に信頼関係があったのならば『宵』に直接勧誘というのも有りかもしれないが、残念ながらそこまでの信頼関係は結べていない。というか今さっきが初めましての初対面だから当たり前か。

 

「僕は新月(しんげつ)さんについて行きます」

「え?あーっと、僕に?んー、じゃあ僕はメイちゃんについて行こうかな。うん、僕らは木ノ葉に厄介になるよ」

 

 そういう麻呂眉の少年と薄い水色の髪を持つ青年の2人組がいれば。

 

「俺もメイが木ノ葉に行くというならそれについて行くことに異論は()ェ。だが、結論を出すのは(こいつ)の処遇を聞いてからだ」

 

 と言って少女にも見えるほどに顔の整った少年の頭に手を置きながら人相の悪い顔と目付きで問いかけて来る青年もいる。

 

 そして。

 

「ふんっ!助けてもらったことは感謝しといてやるが、俺はてめぇの下にはつかねぇぜ」

「アァ。それにテメェみてェな青臭いガキがでけェ顔してメイを侍らせてるのも気に食わねェ」

 

 と、案の定オレの言葉に食ってかかって来る奴もいた。

 あとから分かったことだがそいつらは鬼怒(きぬ)一族の霊頭(れいず)幽頭(ゆうず)という者たちだった。

 先の大戦でも活躍した霧隠れの忍びで、その中では猛者と呼ばれる存在だったらしい。

 

「なら仕方ないな。何処へでも好きに生きてくれ。但し、火の国もしくは木ノ葉隠れの里に手を出したときは容赦しないからな」

 

 相容れない彼らを勧誘する道理もメリットもないオレはこの場から去っていく霊頭と幽頭の背に向かってその言葉をかけた。どこまできちんと聞いていたのかは不明だが、まぁいいだろう。敵対したときは敵対したときだ。

 

「そんでどうなんだ?」

 

 と聞いて来るのは先程の青年(というか百地再不斬)に対してオレが「それはその子の自由です」と答えると「なら、いい」とだけ返してきたことでここにいる全員の去就が決まった。

 何しろ白は見るからに再不斬について来る気満々だったからな。

 

「それじゃあ、もう一度飛ぶぞ」

 

 転移先はもちろん、木ノ葉隠れの里だ。

 

 




次回も未定です。

気長にお待ちいただけたらと思います。

そして私は感想、評価お待ちしてます。←図々しい

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